それぞれの憂鬱~深海棲艦大戦の軌跡~《完結》   作:とらんらん

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またダイスが荒ぶりおった……


艦これZERO3話 国際会議 奮戦

 世界各国の海に現れた正体不明の存在による攻撃は、各国に大きな混乱をもたらした。付近を航行していた貨物船や漁船の撃沈はもちろんのこと、救援のために駆け付けた救難船にも攻撃がされたため、より被害が拡大していた。

 特に被害が酷かったのはドーバー海峡だった。後に『ドーバーの惨劇』と呼ばれる十八からなる未確認物体の集団から沿岸砲撃は、英仏共に民間人に多数の死傷者が発生させた。この突然の攻撃に、両政府は混乱。効果的な対応が出来ず、最終的に砲撃の主を取り逃がしてしまう失態を見せることとなる。

 これらの事件に各国が混乱する中、アメリカは国連を通じて各国に国際会議を開くことを提案。この提案に各国は賛同し、緊急会議が行われることとなった。

 

「我が国は世界各国に出現した未確認物体の情報を提供する用意がある」

 

 会議が始まり真っ先に口を開いたのはアメリカだった。

この言葉に各国代表は驚愕するが、顔に出すようなことはしない。それに会議を開くことを提案したのはアメリカだ。会議で主導権を握れる情報を持っていることは予測できていた。またアメリカ側も未確認物体についての情報を秘匿したところで、近い内に各国が独自に未確認物体の情報を得られるである状況のため、会議における手札になるならと公開することを決めていた。

 

「ほう。金の亡者にしては随分とサービスが良いじゃないか。」

「二枚舌三枚舌で利益を得る事を得意とする貴国にはかなわないがね」

 

 イギリスの皮肉に対し、しれっと返すアメリカの代表。議場に不穏な空気が漂い始めるがそれを遮る存在があった。

 

「それで、あの害獣の情報を見せてもらおうか」

 

 フランスの代表がただならぬ雰囲気を漂わせつつ声を上げる。フランスでは現在『ドーバーの惨劇』の際の政府の対応の不味さから、現政権に対する批判が激しくなっていた。これ以上の失態を見せてしまえば政権が転覆しかねないため、状況を打破しようと必死だった。

 

「……まあいい。これより資料を配布する」

 

 アメリカ側から未確認物体に対する資料が各国代表に配られる。読み進める彼らの顔には変化はないが、明らかに失望していることは分かった。何せ資料を提供したアメリカ側も碌な情報を持っていないのだ。

 

「つまり正体は何も分からない、ということか。こんな情報を出してよく自信満々でいられるな」

 

 特にフランスの失望は大きく、その声には若干怒りすらにじませていたが、それを無視してアメリカの代表は発言する。

 

「このように我が国でも情報は不足している。そのため未確認物体に関する情報を各国で共有することを提案したい」

 

 アメリカとしても情報が全く足りない状況であり、それを補完するためにこのような提案を行った。各国が自国にとって有利になる情報は秘匿されるだろうが、ある程度の情報が手に入ることを見込んでいた。

 

「いいだろう。イギリスとしてはその提案に賛成する」

 

 イギリスの代表の言葉を皮切りに、各国が賛同の声を上げていく。最終的に全会一致で未確認物体についての情報共有の提案は可決、同時に各国が協力して対応していくことが決定した。

 

「そうそう、襲撃事件の首謀者の呼称はどうする?いつまでも未確認物体では味気ない」

「そんなもの害獣でいいだろう」

「呼称は大事だ。ふむ、海中から現れ艦載砲相当の攻撃を行う存在か。『深海棲艦』などどうかね」

「……いいだろう。今後、未確認物体を『深海棲艦』と呼称する」

 

 

 

 深海棲艦の出現。その情報に各国の民衆は最初は誰もが冗談か何かだととらえていた。しかしドーバーの惨劇を始め各種被害の詳細が明らかになるとパニックに陥ることになった。

 経済に関してはシーレーン断絶の不安による食料品の買い占めが発生したため、連動して物価の上昇が発生。同時に株価も大変動が起き、資産家や投資家が悲鳴を上げることになる。また物の運搬の大部分を担っていた海運が危険になったことから、迂闊に船を動かせなくなってしまっていた。

 沿岸部に住む住民たちの中からは、海から遠い内陸部へと避難する者も現れるようになった。彼らにとってドーバーの惨劇は他人事ではないのだ。急速に発生した多数の人の避難に行政も混乱することとなる。

 民衆が大混乱に陥る中、各国政府関係者は早急に対応に追われることとなる。各種補助金や国家が貯蓄していた物資の開放、中には株価操作を行う国もあった。政治家、官僚の奮戦により、ある程度の落ち着きは見られるようになったものの、深海棲艦への不安は消えることはない。早急に深海棲艦を殲滅する必要があった。

 各国政府の要請を受けた軍は、深海棲艦殲滅のために各地で激戦を繰り広げることとなる。

 

 この頃、各国海軍と深海棲艦との戦闘は各地で行われていたが、その中で有名な戦闘を上げていく。

 

第二次ハワイ沖海戦

 当時アメリカ海軍はハワイ沖にて深海棲艦を血眼になって探していた。以前、漁船からのSOS信号を受けた駆逐艦が現場に急行、駆逐イ級六隻と交戦したことがあった。後に第一次ハワイ沖海戦と呼ばれるこの戦闘は、アメリカ海軍の判定負けと評価されることとなる。漁船は撃沈され、駆逐イ級を三隻撃破するも残りは取り逃がしてしまった。漁船の生存者の救助を優先したため、積極的な攻勢に出れなかったことが原因だった。生存者がそれなりにいたことは、多少の慰めにはなったのだが。

 人命救助を優先したこの海戦だが、駆逐艦艦長の指揮については良いのだが、イ級を三隻取り逃がしたことが問題だった。残った三隻がまた民間船を襲撃する可能性があるためだ。この海戦以降、アメリカ海軍はハワイ周辺海域の哨戒を大幅に強化していた。

 第一次ハワイ沖海戦から一週間。その執念が実を結び、ついに深海棲艦の艦隊を発見する。数は駆逐イ級八隻と未確認の深海棲艦――のちに駆逐ロ級と命名――四隻。しかし駆逐艦が攻撃を仕掛けるにはやや遠い地点であり、該当海域に向かっている間に敵を見失う可能性があった。

 その報告を受けた艦隊司令部は、空母艦載機による攻撃を指示した。即座に空母より対艦兵装を施したスーパーホーネットが発艦。該当海域にて敵艦隊を発見した攻撃隊は、対艦攻撃を繰り出し、深海棲艦を全艦撃沈させることに成功した。

この海戦以降、各国でも深海棲艦に対する航空攻撃が行われるようになる。

 

第一次岩手沖海戦

 アメリカからもたらされた深海棲艦のデータを入手した海上自衛隊は、早期から対潜警戒を強化していた。彼らは深海棲艦が潜航して移動したことに注目したためであった。

 そんなある日、哨戒機が福島沖百キロの地点で海中を進む十二の不審な物体の群れを発見。海上自衛隊はこれを深海棲艦と判断し、大湊より護衛艦隊を派遣した。艦隊の移動中も哨戒機は深海棲艦の位置を逐次報告。深海棲艦は自身を見張っている哨戒機の存在に気付くことなく、北西へ潜航していった。

 海上自衛隊は報告を元に、艦隊を深海棲艦の進路上に展開。哨戒ヘリを出し、対潜ミサイルによる先制攻撃を画策した。

 深海棲艦が岩手沖に差し掛かったところで、護衛艦隊は対潜ミサイルを発射。奇襲を受ける形となった深海棲艦はそれに対処できずに、大半が撃破されることとなる。先制攻撃に驚いたのか、なんとか生き残った三隻のイ級が浮上。今更になって発見した哨戒機に攻撃を仕掛けようとするも、追撃とばかりに護衛艦隊から放たれた対艦ミサイルが襲い掛かり、全滅することとなる。

 

第一次ビスケー湾海戦

 ドーバーの惨劇以降、フランス政府――というよりフランスという国自体が追い詰められていた。

 フランスも他国と同じように、シーレーンの不安定化による物資不足からくる生活不安や経済の混乱が起こっていた。そのためフランス政府も対策に乗り出していたのだが、自由な経済活動が出来なくなることを危惧した一部大企業や投資家が反発。政権交代を狙う野党もこれに便乗し、結果的に経済政策が頓挫しまう。

 経済政策の失敗により国内はさらに混乱を極め、その煽りを受けた中小企業は倒産が相次ぎ失業者が続出。治安の悪化も起こり始め、更には宗教問題や人種問題にも飛び火し大炎上することになる。結果、フランス国内では毎日どこかしらでデモや暴動が起きていた。ドーバーの惨劇時に碌な対応を取れなかったために低くなっていた政権への支持率が、より低下することは当然のことだった。

 その様な中で、ビスケー湾近海に十八隻からなる深海棲艦の艦隊が出現。フランス政府は軍に全力出撃を命じた。

 この時出現した深海棲艦は今まで各地で確認されていた駆逐イ級や駆逐ロ級だけでなく、駆逐系列とは明らかに形状が異なる深海棲艦が三隻存在していた。軍上層部としては新型を警戒して、慎重に動きたかったが、これ以上の支持率低下を防ぎたい政府側が出撃を強要した。また軍内部でもドーバーの惨劇の際にまともに動けなかったことによる民衆から支持を取り戻したいという意見があり、深海棲艦の艦隊がフランス本土に向かって進撃していたことから、空母も含めた艦隊による出撃を行うことになった。

 ビスケー湾近海にて両艦隊は接触、海戦が始まった。新型の深海棲艦――後に軽巡ホ級の砲撃能力は、威力こそ5インチ砲相当ではあるが砲門数が多く、総合的な攻撃力は駆逐級と比べて格段に上がっていた。もちろんフランス海軍の攻撃はミサイルが中心であるため、射程外から攻撃できていたのだが、ホ級は耐久力も向上していることを知らなかったことが大参事に繋がる。

 フランス艦隊から放たれる攻撃により深海棲艦は次々に撃破されていく。その光景に彼らは気が緩んでしまった。そしてその隙を深海棲艦は見逃さなかった。

 ミサイルの雨が降り注ぐ中、一隻の軽巡ホ級がボロボロになりながらもフランス艦隊に肉薄。射程内にあった駆逐艦にその砲撃能力を見せつけた。狙われた駆逐艦は短時間に多数の命中弾を浴び、ダメージコントロールが間に合わず撃沈されることとなる。

 最終的にこの海戦は全深海棲艦撃破によるフランスの勝利となったのだが、フランス側にも無視できない損害が出てしまった。

 

 

 

 深海棲艦との戦いが始まった初期は、人類は多少の損害を受けることはあるものの、深海棲艦に対し圧倒していた。深海棲艦を駆逐していく各国海軍の姿に、民衆は少しずつではあるが落ち着いていく。敵に対して圧倒出来るという事実はある程度の安堵感をもたらしていた。

 また、軍上層部を初めとした軍事に関わる人々も落ち着いていた。深海棲艦の正体は分からないが、自分達の使う火器は有効であり、余裕を持てる相手であったためだ。勿論、深海棲艦の火力は高いため決して油断できるものではないが、致命的な失敗をしない限り完勝出来る。この時期の各国の軍内部での深海棲艦への意識は、害獣駆除と同じ感覚であった。

 対して国の運営を担う者たちにとっては安心感もあったが、同時に不安もあった。確かに深海棲艦に優位ではあるが、石油を筆頭とした各種資源の入手が未だ不安定であったためだ。国家主導による輸送船団を形成したものの、以前と比べれば入手できる資源は減っている。国内の鉱山資源も使えるが、コストが割高であることもある。

 また対深海棲艦で使われる軍事予算は各国の財政に大きくのしかかっていた。まだ深海棲艦との戦いが始まって半年であったため予算の都合はつけられるのではあるが、戦いが長引けば財政に影響が出てしまう。

 ゆえに彼らは深海棲艦を根本的に殲滅出来ないか考え、軍に深海棲艦の拠点の探索を指示していた。

 

 こうして各国が深海棲艦の拠点を必死に探している中、アメリカからとある映像が各国にもたらされた。それは哨戒機から撮影された映像だった。

 きっかけは哨戒機が見つけた深海棲艦の艦隊だった。深海棲艦の艦隊が駆逐級に守られるように航行する新型深海棲艦の姿があり、当時報告を受けた軍は哨戒機に監視を命じた。哨戒機による監視の中、艦隊が近隣の無人島に差し掛かったところで新型が艦隊から離脱した。鉄球と人が合体したような新型深海棲艦は海岸に乗り上げ、そのまま停止する。

 哨戒機の乗組員が不審に思い、機体を無人島に向かわせようとしたところで異変が起きた。

 新型深海棲艦が突如として赤く発光、同時に新型を中心に直系二百メートル程の赤色光の円が発生する。光は徐々に強くなっていき、二十分経過したところで突如視界を覆われるような大きな光が放たれた。

 しばらくして視界が戻った時、哨戒機の乗組員はその光景に目を疑った。赤色光の円に包まれていた場所が綺麗サッパリなくなっており、代わりに海が広がっていたのだ。当の新型だが発光は辞めており、自分の成果に満足したのか、悠々と沖で待機していた駆逐級と合流。海中へと身を沈めていった。

 

 この情報を得た人々は悟ることとなる。人類の置かれた状況を端的に表したある国の指導者の言葉が歴史に残っている。

 

「何が害獣駆除だ。これは奴らとの生存戦争だ」

 

 

 




イギリスドーバー時対処:27 失敗
フランスドーバー時対処:23 失敗
イギリスもフランスとどっこいどっこいじゃないか(;゚Д゚)

イギリス国内統制:52
日本国内統制:91
アメリカ国内統制:50
まあ問題ないな。
フランス国内統制:07 統制失敗
( ゚д゚) ・・・ 国家が崩壊寸前かな?

ハワイ沖判定:55
岩手沖判定:61
ビスケー湾戦闘判定:23
 ……低すぎる。損害判定だな
ビスケー湾損害判定:80 
駆逐艦轟沈しちゃった……

フランスにハード過ぎませんかねぇ……

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