それぞれの憂鬱~深海棲艦大戦の軌跡~《完結》 作:とらんらん
今回から艦これZEROが完結するまで、艦これZEROの執筆に集中させていただきます。(予定では後二話くらいで完結)鎮守府編は、多分艦これZEROが詰まった時にストックしている分を投稿することになると思います。
「全艦所定の位置に着きました」
第一艦隊旗艦、ブルー・リッジのCICに緊張感のある声が響く。これからが作戦の本番であるためかCICはいつも以上に緊張した空気が漂っている。
「第二艦隊は?」
「準備完了とのことです」
オペレーション・ビギニングは、大まかに四つの段階に分かれていた。
第一段階、艦載型巡航ミサイルでの敵地上施設への長距離攻撃。
第二段階、戦略爆撃機による対地爆撃。
第三段階、敵艦隊戦力の撃退。
第四段階、地上戦力投入。
これが先日行われた会議で決定された大まかな方針だった。最も深海棲艦の正確な戦力は分からない上に、どんな隠し玉があるのか分からない。そのため政治的な思惑はともかく作戦の本質は強行偵察の色が強く、不測の事態が発生した場合は即座に作戦は中止されることになっていた。
「よし、攻撃開始」
号令と共に二つの艦隊から無数の巡航ミサイルが発射され、目標へと飛翔を開始する。その数はイージス艦を多数所有するアメリカ海軍でも完璧には防ぎきれない程だ。
誰もがミサイルの行方を見守る中、それは突如として起こった。
「ミサイル一機の反応がロストしました」
その報告にCICの誰もが困惑した。
「故障による墜落か?」
深海棲艦によってミサイルが迎撃された事例は存在しない。参謀長が言うように、故障が原因だと考える方が自然である。しかし悲報は続いていく。
「ミサイルが次々とロストしています!」
悲鳴のような声が響いた。彼の目には艦隊が誘導していたミサイル群が、次々に消失していくのが映っていた。
「敵の迎撃か!」
ここに至って、司令官はこの現象の正体に気付く。しかし分かったからと言って。この事態をどうすることもできない。彼らは歯を食いしばりながらただ見ている事しかできなかった。
(どうなっているんだ。アメリカ海軍ですらこのミサイルの群れは対処しきれないんだぞ!)
彼らは思ってもみないだろう。この迎撃がたった四隻の深海棲艦によって起こされているなどと。
艦隊の遥か先。人類が目指す小島では火砲による壁が形成されてる。そしてその光景はたったの四隻で作られていた。
彼女たちは白い長髪の少女の様な姿をしており、その背中には生物の様な連装砲が四基備わっている。そして突き出されている砲からは、機関銃と見間違えるほどの連射速度で砲弾が吐き出されている。
防空棲姫。
後に人類からそう呼ばれるようになる彼女たちは、島の沖合で飛来するミサイル群を次々と撃墜していった。
「全てのミサイルの反応が消失。全弾迎撃されました」
二つの艦隊から放たれたミサイルは、最終的には一発も敵の拠点に命中することなく全て叩き落された。
誰もが呆然とする中で、司令官は気付いた。敵はあのミサイル群を防ぎきれる程の防空能力を持つ。そんな場所に航空機を突入させればどうなるか。司令官は自然と叫び声を上げていた。
「マズイ、作戦本部に連絡!爆撃機隊がやられるぞ!」
「隊長、作戦本部より通信。爆撃中止とのことです」
「何?」
深海棲艦の拠点から北に300㎞地点の空域。B-52戦略爆撃機の編隊の中で、爆撃機隊の指揮官は耳を疑った。ここまで作戦は順調、強硬偵察であるため途中で切り上げられる事は覚悟していたが、まさか爆撃すらせずに作戦が中止になるとは思ってもみなかったのだ。
「作戦第一段階の巡航ミサイル攻撃が全て迎撃された模様です」
「全て、か」
敵はミサイルの飽和攻撃を迎撃しきる能力を持っている。今回の爆撃のためにバンカーバスターを初めとした各種爆弾を持ってきていたが、これらを使う前に爆撃機隊がやられかねないと本部が判断したのだった。そして指揮官もこの決定に異論はない。
「各機に通達、現空域を離脱する」
指揮官の指示が爆撃機の編隊に通達される。彼の指示に従い、規律正しく離脱しようとしていたその時――
先頭を飛んでいたB-52が爆散した。
「なんだ!?」
粉々になりながら海に向かって墜落していくB-52。搭乗員が脱出する様子は見えない。
「迎撃機か!?」
「ここは高度一万三千mだぞ!?」
機内に動揺が広がる。僚機も動きこそ平静を保っているが、指揮官には彼らも戸惑っているように見えた。
これまで深海棲艦の艦載機は高度一万m以上の地点では確認されていない。仮に敵の拠点に爆撃機のいる高度まで上昇出来る航空機がいるのなら、もっと早く迎撃に来るはずである。
思考を巡らせている間にも、二機目が爆散する。
だがそのおかげで、一瞬だったが指揮官の目はそれを捉えることが出来た。自分たちの遥か下方から飛来した何かが僚機を貫通したのだ。つまり――
「対空砲火だ!」
現在、爆撃機隊のいる空域は目標の敵の拠点から300㎞以上離れている。そして爆撃機のいる海域には深海棲艦は確認出来ない。つまりこの超長距離にいる爆撃機に対して、対空用の榴弾も使わずに、砲弾を直撃させて撃墜するなどという、とんでもない迎撃能力を深海棲艦は持っているということになる。
正直、結論を出した指揮官も納得しきれていないが、現実には僚機が撃ち落とされているのだ。それに彼が出す指示は何も変わらない。
「退避だ、急げ!」
次々に砲弾が飛来する中、指揮官は指揮を執るべく集中する。
「総司令官より作戦中止の命令が出ました」
「やはりか」
第二艦隊旗艦、遼寧のCICで中将はため息を吐いていた。
作戦第一段階の失敗に続いて、爆撃機隊への被害。このまま作戦を続けたところで戦果が挙げられないことは解り切っていた。政治家たちはうるさくなるだろうが、ここで無駄な被害を出す必要はない。
「撤退する」
号令と共に艦隊は反転し、元来た道を帰っていく。勿論、警戒は怠らない。
「追撃はあると思うか?」
「可能性は十分あるかと」
それが中将の一番の懸念だった。戦場において戦果の大半は追撃戦で発生するものなのだ。そして現海域は深海棲艦の拠点から1000㎞程離れている。これだけの距離があれば、海上戦力は追いつけないと考えていた。そうなれば追撃の手段は限られる。
「空襲か」
「はい。しかし多少の空襲は第二艦隊の戦力なら対処可能なはずです」
参謀長の言葉に中将は頷く。第二艦隊は日本艦隊が見せた様な航空機をまとめて撃墜するミサイルは無いが、それなりの対空能力は有している。対処は可能だった。
「他に待ち伏せの可能性もありますが、警戒を密にするしかありません」
「結局は出たとこ勝負か」
敵の情報が不足しており、次の一手が読めない。そのため中将は警戒を怠らないように指示を出すしかなかった。そしてこの指示は功を奏することとなる。
撤退開始から一時間。早期哨戒機が敵を捉え、旗艦に通信が入る。
「二時方向より敵艦隊確認!36隻の大艦隊です!」
「多いな。敵編成は?」
「戦艦4、重巡6、軽巡8、駆逐18。既存の深海棲艦ですが、赤いオーラの様なモノを纏っているそうです」
「そうか……」
ここにきて赤いオーラなどという初めて確認される情報が飛び込んできたことに、中将は不安を覚える。この状況での不確定要素は、自分たちの死に直結しかねない。
「逃げ切れるか?」
「敵艦隊の速度は推定35ノットと思われます。振り切ることは困難です」
「既存のタイプより速度が出ているか」
旗艦遼寧の最大速度は29ノット。艦隊というものは一番遅い艦に合わせて航行するため、報告した士官の言うように逃げ切れずに交戦することになるだろう。だからこそ中将は、避けられない海戦を前に決断する。
「艦載機隊を出す」
「よろしいのですか?」
「敵の数が多すぎる。水上艦だけでは無理だ」
中将の命令は苦渋の決断だった。機体の性能の不足や練度不足は当然のことだが、貴重な空母に離着艦出来るパイロットを喪失する可能性もある。中将は中国海軍の空母艦載機隊のこれからを担うパイロットをここで失いたくなかったのだ。
中将の苦悩とは対照的に、出撃命令を受けた遼寧の艦載機隊のパイロットは士気を上げていた。深海棲艦との戦いが始まって以来、水上艦や空軍は戦果を挙げているにも関わらず、自分たちは訓練のみで歯がゆい思いを続けていた。今回の作戦で空母が必要だと言われ意気揚々と南太平洋まで来たにも関わらず、やっていたのは待機だけ。そんな待遇のため誰もが不満をため込んでいた所に出撃だ。士気が大いに上がるのは当然だった。
「俺たちの力を世界に見せつけてやる!」
気炎を上げる艦載機隊のJ15が遼寧から飛び立っていく。装備は対艦攻撃型。本来のJ15には空対艦攻撃の運用能力は持たないが、改良の末に対艦ミサイルを使用できるようになっていた。
深海棲艦は艦載機を出しておらず、彼らを遮るものはない。空対艦ミサイルの射程距離に入る。
「全機、攻撃開始」
隊長の合図と共にミサイルが放たれ、深海棲艦に殺到する。敵はミサイルを迎撃しようと弾幕を張るが一機も撃墜できずに次々と被弾していく。――だが、
「クソッ、駆逐級二隻だけか!」
命中したミサイルの数に対して、戦果は芳しくなかった。ミサイルが旧式の物であったし、狙いがばらけてしまったこともあるが、いくら何でも駆逐級を二隻しか撃沈出来ないのはおかしい。
「隊長、あいつ等防御力も上がっているかもしれません」
「だろうな」
部下の意見に隊長は頷いた。
(速度、防御が上がっているということは、大方攻撃力も上がっているか)
もし第二艦隊が交戦することになれば、苦戦は免れないだろう。なんとしてでも艦載機隊が敵を叩かなければならない。
「ミサイルの残段は?」
「全機、残段ゼロです」
「全機帰投だ。補給後に再出撃する」
隊長の命令と共に、艦載機隊は引き返していく。
確かに戦果は思ったより上げることが出来なかったが、まだまだ攻撃するチャンスはある。何度でもミサイルを叩きつけてやればいい。
誰もがそのように考えていた所に、突如として遼寧の通信士からの通信が飛び込んできた。
「現在、第二艦隊は敵の空襲を受けている。遼寧艦載機隊は第一艦隊へ進路を変更し、米空母に着艦せよ」
その通信に誰もが息を呑む。空母は艦載機の離着艦時が一番無防備になる。そのためこの指示は理に適ている。しかし自分たちの拠点に帰ることが出来ないということに、精神的なショックがあった。また現在の地点から第一艦隊までかなりの距離があり、現在の燃料の残量に不安があった。
「隊長、我々も第二艦隊の防空に向かいましょう!」
部下からの進言が飛ぶ。だが隊長はその提案を即座に拒否することになる。
「ダメだ。我々は対空装備を持っていない。それに機銃では敵に命中させられない……」
「……」
目の前で敵が暴れているにも関わらず、自分たちは何も出来ない。いつも感じていた悔しさが蘇ってくる。
「……第一艦隊へ向かうぞ」
指揮を執る隊長の声には、先程まで満ち溢れていた覇気なかった。
「敵航空機、撤退していきます」
第二艦隊はどうにか空襲から艦隊を守り切った。損害こそ出たものの航行不能になった艦はなく、空襲によって弾薬の消耗は激しいが戦闘もある程度なら可能だった。だが空襲によって、第二艦隊は最も欲していた時間を奪われることになった。
「敵艦隊との距離はどうだ」
「ミサイルの射程範囲まで、およそ五分」
いつの間にか深海棲艦の大艦隊が目の前まで接近していた。
「やられたな」
中将は艦載機隊で繰り返し敵に損害を与えた後、艦隊決戦で敵の殲滅を測ろうとしていた。しかし結果は艦載機隊を第一艦隊に預ける羽目になり、実質的に第二艦隊の艦載機隊は戦力外になった。しかも空襲の対処を行っている間に、敵艦隊に接近されてしまったのだ。現状で艦隊決戦を行えば、第二艦隊が壊滅する可能性すらあった。
「第一艦隊に救援を要請する」
だからこそ、中将の行動は早かった。彼の言葉にCICの誰もが息を呑む。
「……よろしいのですか?」
参謀長が不安げに声を掛ける。彼の決断はアメリカに救援を求めるということだ。本国の共産党が、彼の事を中国の面子をつぶした愚か者と判断しかねない。中将の今後の進退に関わりかねないのだ。
「構わん。そんなことより、各艦の戦闘準備を急がせろ。敵艦隊を迎え撃つ」
だが中将の決意は固い。彼はこの場を生き残ることに集中していたのだ。第二艦隊は彼の指示に従い、いつでも攻撃できるよう準備していく。
そして、その時がやってきた。
「敵艦隊、対艦ミサイルの射程に入りました」
CICに鋭い声が響く。
「攻撃開始」
各艦からミサイルが放たれる。後のことなど考えない出し惜しみなしの全力攻撃だった。深海棲艦にミサイルが殺到する。
「駆逐級4、軽巡級1撃破」
「撃ち続けろ!」
第二艦隊の攻撃は苛烈を極めた。接近されればその攻撃力によって大打撃を受けることは目に見えており、なんとしてでも攻撃される前に倒し切ろうと必死だった。対して深海棲艦側は現状では攻撃の範囲外だが航行速度は上回っており、第二艦隊の猛攻を凌ぎ切れば深海棲艦の勝ちはほぼ確定だった・
近づけまいと攻撃を続ける第二艦隊。接近しようと猛追する深海棲艦。大規模艦隊同士による史上初の海戦は、ミサイルの雨を潜り抜けた戦艦ル級によって次の段階に移る。
「距離二万、敵の攻撃範囲内です」
第二艦隊のあちこちで特大の水柱が上がる。戦艦級の放つ16インチ砲によるものだった。だが距離が大きく離れているため、命中弾は出ていない。
「この距離なら命中弾はない!落ち着いて攻撃を続けろ!」
戦艦級の攻撃範囲内に入ってしまったが、まだまだ距離があり狙いも甘い。そのためそう簡単には被害は出ないだろう。
そう見立てていた中将だったが、再度立ち上る水柱に顔を歪ませる。
「発射速度が上がっているか……」
当たって欲しくなかった予測が当たってしまった。
これまで確認されていた戦艦級の主砲の発射速度は毎分二発。実際の16インチ砲搭載艦と同じ発射速度だった。だが今回、相対している戦艦級は二十秒で再度砲撃を行っていた。明らかに発射速度が向上されていた。
そして悪い知らせは続く。
「重巡級砲撃開始!」
悲鳴のような声と共にあちこちで水柱が立ち上る。重巡級の砲撃は8インチ砲であるため破壊力は戦艦級程ではないが、装甲などない人類の軍艦には十分致命傷になりうる威力だった。
「敵の残存艦は!?」
「戦艦4、重巡4、軽巡3、駆逐8です!」
「第一艦隊はまだか!」
「現在、第一艦隊も襲撃を受けている模様です!」
「あちらもか!」
絶望的な状況の中、第二艦隊は生き残るために足掻き続ける。
時間は少しだけさかのぼる。遼寧艦載機隊を第一艦隊が収容し終えた頃、第一艦隊旗艦、ブルー・リッジに第二艦隊からの通信が入った。
「第二艦隊より救援要請です」
「あらかじめ用意しておいて正解でしたな」
第一艦隊では遼寧の艦載機隊から、第二艦隊が置かれている状況をある程度把握できていた。そのためいつでも救援に向かえるように、あらかじめ艦載機発艦の準備をしていた。現在いつでも出撃は可能であり、後は救援要請を待つのみとなっていた。
「第一艦隊は第二艦隊の救援に向かう。艦載機隊を出せ」
予定通りに、司令官は発艦の指示を出した。
対艦装備のF-18がカタパルトに着き、発艦しようとしたその瞬間――
空母はいくつもの水柱に包まれ、そして大きな爆発を起こした。
「どうした!」
「砲撃です!推定16インチ砲!」
「戦艦か!」
慌てて砲撃された空母「ロナルド・レーガン」を確認する。空母は炎上しており、甲板で消火作業を行っている乗員の姿が見える。
「早期哨戒機より通信。敵艦隊発見、新型1、戦艦2、駆逐3。距離四万!また、既存の艦も赤いオーラを纏っています!」
「何!?」
「対潜哨戒はどうした!」
「感知出来なかったようです!」
撤退においても周囲の警戒は続けていた。勿論空中、水上、水中問わずだ。それにも関わらず、敵は警戒網を易々と突破して見せたのだ。
「新型か……」
呻くようにつぶやく司令官。原因と考えられるものはそれしかなかった。だがいつまでもこうしている訳にはいかない。司令官は即座に命令を下す。
「反撃する!」
第一艦隊から次々とミサイルが放たれる。ここまで近づかれてしまっては空母戦力は当てに出来ないため、水上艦のみによる攻撃だった。第一艦隊の規模は第二艦隊より大きい。第二艦隊の様に新型の艦対艦ミサイルは無いが、十分な攻撃力は持っていた。
深海棲艦の艦隊に次々と命中していき、爆炎によってその姿を覆い隠す。しかし次の瞬間には、新型が放った砲撃の衝撃で爆炎が吹き飛ばされた。狙いはある一隻の駆逐艦。ミサイルを放ちつつもジグザグに回避運動をしていたが、その動きを予測されていたかのように三発の砲弾が駆逐艦に叩きつけられた。艦の内部で炸裂した砲弾は内部構造物を徹底的に破壊、艦としての機能を失った船体は海底に引きずり込まれていく。
「こんごう轟沈!」
「距離四万だぞ!」
信じられないように叫ぶ参謀長。だが現実は変わらない。巨人の様なモノを背に従えた人型の新型深海棲艦が砲撃するたびに、第一艦隊は損害を受けていく。
「新型に攻撃を集中しろ!」
新型を止めなければ第一艦隊は壊滅する。誰もがそれを理解していた。だからこそ本来なら放置することが危険な戦艦級を無視してでも、彼らは全火力を新型に集中させる。
だが彼らの努力など意に介さず、新型は砲撃を続けている。それどころか砲撃の精度は発射するたびに高くなっていた。また戦艦級も砲撃に加わり、艦隊の損害は加速していった。
「第一艦隊の三分の一が轟沈。残った艦も損傷を受けているか……」
司令官は第一艦隊の余りの被害を聞き絶句した。
(ここまでか……)
そして彼は艦隊の全滅を悟っていた。
ふと司令官は深海棲艦のいる方角へ目を向けた。CICにいるため各種モニターやそれを必死に操作する士官しか見えない。だがそれにも関わらず新型の深海棲艦の姿が見えた様な気がした。彼女の砲は自分の乗艦している艦に向けられている。
「お前は――」
何者だ?そう訊ねようとした直後、六発の砲弾がブルー・リッジに直撃。CICにいた第一艦隊司令官以下全ての人員を全滅させた。そして生き残った船員が脱出する暇もなく、沈んでいった。
数日後、オペレーション・ビギニングに参加した艦艇はハワイに帰還した。出迎えた軍関係者はその姿に驚愕することとなる。
先に帰還したのは第二艦隊だった。彼らは損傷艦を殿とし深海棲艦を足止めを行うことにより、何とか逃げ切ることに成功したのだった。追撃は激しくハワイまでたどり着いたのは七割しかいなかった。また生き残った艦も大小の損傷を負っていた。
更に被害が大きかったのは第一艦隊だった。旗艦であるブルー・リッジは轟沈。そしてアメリカ海軍が誇る原子力空母ロナルド・レーガンは大破。また他の艦艇も大きな損傷を負っていた。最終的には全艦艇の半数が水底に沈むことになるという大損害だった。
こうして人類初の深海棲艦拠点制圧作戦、オペレーション・ビギニングは失敗した。
第一艦隊損耗率判定:60
第二艦隊損耗率判定:40
人類フルボッコだ(白目)