それぞれの憂鬱~深海棲艦大戦の軌跡~《完結》   作:とらんらん

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あけましておめでとうございます。元旦ですが火曜日ですので、いつも通り投稿です。


それはそうとダイス判定

欧州での艦娘を巡る環境:83
ロシアでの艦娘を巡る環境:81
日本での艦娘を巡る環境:81
???:90

全部一発振りなのに、全部高いってどういう事? そして???でやらかした。






海を征く者たち46話 平穏な鎮守府 停滞する外交

 アメリカ艦娘の亡命がテレビを通して日本全国に知れ渡った翌日。多くの日本国民は亡命を希望するアメリカ艦娘に対して、歓迎の意を表していた。提督の悪行、アメリカでの艦娘への不当な扱い、そしてそれらから逃れるためと言う事情を、幼い外見の艦娘の口から語られたのだ。絵的なインパクトもあり、多くの国民が同情する事となる。

 こうして世論が亡命受け入れに傾いている日本だが、亡命希望を預っている鎮守府としては、仕事の内容が大幅に変わる事は無かった。現状、亡命希望の艦娘は客人として扱われており、当のアメリカ艦娘も一先ず日本に保護されたという事で落ち着いていた。それは伊豆諸島鎮守府も同じであり、サラトガは思わぬ珍客に興味津々な艦娘たちとの交流を深めていた。

 

(皆活気がありますね)

 

 昼過ぎ。サラトガの姿はピークが過ぎて閑散としている食堂にあった。少し前まで談笑していた艦娘たちは午後の業務に取り掛かっており、ここにいるのは彼女だけであった。

 

(それに比べて……)

 

サラトガは少し前までいた以前の提督の下での生活を思い出し、思わずため息を吐いた。どの艦娘もいつ轟沈するか不安がっており、いつも沈鬱な雰囲気が漂っていた。提督との会話も事務的な物以外には無く、鎮守府はバラバラだった。よく1年近く持ったものだと、逆に感心してしまうものだ。

気分が沈むサラトガ。そんな時、コトリと言う物音と共に彼女の目の前に、ティーカップが置かれた。振り向くと、ある人物と目が合った。

 

「どうぞ」

「ありがとうございます」

 

この伊豆諸島鎮守府を構成する重要人物の一人である間宮だった。彼女はサラトガの向かい側の席に腰かける。

 

「本当ならコーヒーの方が良いでしょうけど、生憎とコーヒーは置いてないの。ごめんなさいね」

「いえ、お構いなく」

 

 深海棲艦によりコーヒー豆の生産地からの輸入が出来なくなって以来、日本ではコーヒーは貴重品となっていた。当然の事ながら、日本の重要戦力としてそれなりに優遇されている鎮守府関係者でもそれは変わらない。この事もあり、日本ではタンポポや大豆が代用コーヒーとして用いられる事が多かった。

 

「ここは良い所ですね。艦娘たちに活気がありますし、提督と艦娘との仲も良さそうです」

「ありがとうございます。そう言っていただけると、提督も喜びます」

 

 間宮は嬉しそうに笑った。そこにはサラトガへの警戒は欠片も無かった。ここまで無防備に接せられるとサラトガとしては、逆に心配になって来る。

 

「でも良いのでしょうか?」

「何がですか?」

「サラは鎮守府で自由にさせて頂いておりますけど、監視もありませんし警戒感がなさ過ぎるのでは? もしサラがアメリカのスパイだったら、大変な事になりますよ?」

 

 サラトガは艦載機を始めとした武装こそ鎮守府に預けたものの、艤装自体は持ったままだ。それにも関わらず、サラトガに監視も着けず自由にさせていた。日米は一応は同盟国だが、軍事機密の事も考えれば、問題となりかねなかった。しかし、

 

「あ、その事ですか」

 

間宮は動じない。

 

「監視はありますよ?」

「え?」

「川内さん」

 

 呆気に取られるサラトガを余所に、間宮は天井に向けて声を掛けた。すると天井に備え付けられている点検口の蓋が開き、首にマフラーを巻いた艦娘が顔を出す。

 

「もー、間宮さんバラしちゃマズいって」

「大丈夫ですよ。提督も知られても良いとおっしゃっていました」

「あ、そうなんだ」

「ええ?」

 

 思わぬ展開に困惑するサラトガに気付いた川内は、小さく手を振る。

 

「監視役の川内だよ、よろしく!」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「うん。それじゃあ、私は仕事に戻るね」

 

 そう言うと彼女は再び点検口の蓋を戻した。慌ててサラトガは気配を探るも、天井に気配は感じない。

 呆然とするサラトガ。そんな様子に間宮はクスクスと笑いながら、更に追撃を入れる。

 

「そう言えばサラトガさん。昨日の夜に通信をしていましたね? 通信をする場合は、提督に一声かけてからの方が余計な詮索を受けないですよ?」

「え?」

 

 確かにサラトガは他の鎮守府に保護されている同僚に、現状の確認のために通信を入れていた。この事は鎮守府側に気付かれている可能性も頭にあったのだが、まさか給糧艦であるはずの間宮の口から出てくるとは思わなかったのだ。

 

「なぜそれを?」

「私は給糧艦ですが、無線検知艦でもあります。鎮守府近海の無線は傍受していますよ?」

「……因みに、もしこれがスパイ行為と判断された場合、サラはどうなるのでしょう?」

「……」

 

 間宮はサラトガの質問には答えず、終始微笑むだけだった。ただその笑みがサラトガにはとても恐ろしく思えた。

 

 

 

 

 アメリカ艦娘が日本に亡命を希望して2日目の夜。アメリカ大使館のある一室で、二人の男が頭を抱えていた。

 

「……やはり日本はこちらの要望に応じませんでしたね」

 

アーロン司令官はため息を吐いた。それにデイビス駐日大使は不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 

「折角穏便に纏まっていたのに、昨日の放送のせいで全てが台無しだ。面倒な置き土産をしてくれたものだ」

 

 今日の昼に亡命艦娘の引き渡しのための交渉が再度行われたのだが、交渉は難航していた。

 

「亡命艦娘を貴国に引き渡す事は出来ない」

 

 天野外務大臣は昨日の会談をまるで最初から無かったかのように、そう断言した。亡命の件が日本全国に知れ渡ったため、方針を転換せざるを得なかったのだ。

 それでも食い下がるデイビスだったが、天野は呆れたようにこう返した。

 

「我が国は難民条約に加入している。貴国により迫害を受けている艦娘と言う人種が我が国に保護を求めてきたのなら、受け入れるのは当然ではないかね?」

 

 ここでネックとなったのが、日米の艦娘に対する扱いの相違だった。日本では艦娘に対して一部制限こそあるが日本国民と同等の権利を与えている。それに対してアメリカでは諸々の事情により、艦娘はアメリカ国民と同等の権利を持っておらず、法的には艦娘は提督が所有する器物なのだ。日本の立場としては、器物扱いされており、更に迫害も受けていた艦娘を、難民として受け入れ、若しくは人道上の理由で在留を認めなければならなかったのだ。

 とは言え、アメリカとしても、「はいそうですか」と引き下がる事は出来ない。近くパナマ攻略が行われるため、戦力の確保は急務なのだ。そうでなくとも太平洋艦隊が無事に帰還するためには、少しでも戦力が欲しかった。

 その後も交渉が行われたが話は平行線をたどり、結論は翌日以降に持ち越される事となる。

 

「交渉が長引く事は確実か……」

 

 渋い顔で腕を組むデイビス。だがそう悠長に構える事が出来ないでいた。

 

「それはマズいです。パナマ攻略作戦の事を考えれば、太平洋艦隊の出港日を容易に先延ばしする事は出来ません」

「分かっている。……だが後5日で交渉を纏めるのも難しいぞ」

 

 たった26人の艦娘で、日本から太平洋を渡りアメリカまで辿り着く事は不可能である。アメリカに帰還させるには太平洋艦隊に合流させるしかないのだが、交渉が纏まるまで日本にいる訳には行かない。時間は亡命艦娘の味方となっていた。

 

「アーロン司令官、せめて3日位出港を伸ばせないか?」

「大使、先程も申しましたが――」

「分かっている。だがこのままでは本当に何も得られずに交渉が打ち切られる事になる」

 

 デイビスとしては仮に艦娘が帰ってこなかったとしても、日本から何かしらの対価を得る事を考えていた。秘密交渉での日本の態度から見ても、外交問題にはしたくない事は分かっている為、何かしらの対価を要求すれば承諾する可能性は高い。デイビスとしては、日本が飲めるギリギリのラインを見つけ出したかったのだ。そのためにも、少しでも時間が欲していた。しかしアーロンは頭を振るう。

 

「やはり、難しいかと」

「パナマの事か? それなら許容範囲のはずだが?」

「確かにパナマの事だけであれば、3日の出港延長は可能でしょう。問題は太平洋艦隊自体にあります」

「……何があった?」

 

 嫌な予感を覚えつつ尋ねるデイビスに、アーロンは憂鬱気にため息を吐いた。

 

「亡命騒ぎにより艦隊内に動揺が走っています。それに伴い一部の艦娘及び提督が亡命しかねない状況にあるとの報告が上がっています」

「待て、艦娘だけでなく提督もだと?」

「その通りです」

「なぜだ。報告では他の太平洋艦隊の提督に問題は無いと結論が出ていたはずだ」

 

 昨日の亡命騒ぎの直後、日本に来航している太平洋艦隊では提督の身辺調査が大慌てで行われた。これは更なる脱走艦娘が現れないか警戒しての物だった。結果は幸いな事に、艦娘に逃げられた提督以外は、どの提督も艦娘との関係は良好と言える物であった。

 しかしそんな提督だからこそ、亡命と言う選択肢に心を動かしかねなかったのだ。

 

「どうやら提督の中には、アメリカでの艦娘を巡る環境に大きな不満を持っている者もいる様です」

 

 多くの国民に恐れられ、時に八つ当たり紛いの事すらされ、そして人権も無い。このアメリカでの艦娘の扱いに、提督たちは不満を持っていた。彼らも改善しようと動いてはいたのだが、そう簡単に艦娘への不当な扱いを変える事は出来ないでいた。

 そこへ降って湧いたのが、日本へ亡命という選択肢だ。これが成功すれば、少なくとも自分の艦娘の環境が好転する事は確実なのだ。真面目に亡命を検討する提督は少なからず存在していた。

 

「なお、この傾向は所謂優秀な提督に見られるようです」

「優秀だからこそ、艦娘のために亡命を考える、か。対応は?」

「監視を強めると同時に、留まる様にそれとなく説得を続けています。しかしそれでも不安は残ります。ですので、日本に留まるのは我々にとって危険とも言えます」

「……仕方ない。何とか5日で頑張ってみよう」

「……よろしくお願いします」

 

 ため息を吐く二人。そんな時、二人のいる部屋にノックの音が響いた。

 

「入れ」

「失礼します」

 

 扉が開き入ってきたのはデイビスの秘書を務めている男だった。彼は素早くデイビスに駆け寄ると、彼に耳打ちをする。その瞬間、デイビスは顔を歪めた。

 

「……本当か」

「はい」

「分かった。そのまま情報収集を続けろ」

「かしこまりました」

 

 一つ礼をして秘書が出ていく。アーロンは何か良くない事が起こった事を察した。

 

「何がありました」

 

 彼の問いに、デイビスは苦り切った表情で吐き捨てた。

 

「イギリスに寄港中の、大西洋艦隊で提督及び艦娘の亡命が起きた」

 




大西洋からの亡命判定。1~50は平穏無事、51~80は亡命未遂、81~は亡命。
大西洋艦隊からの亡命:90

ダイスの女神様ってアメリカが相当嫌いなんじゃ……。
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