ガシッボカッ悪は死んだ。ガンマレイ~♪

シルヴァリオ ヴェンデッタのヴァルゼライド総統がアカメが斬る!世界で大臣一派という糞袋相手に死ねよ貴様ら!塵屑だろうが!して民に光を齎す一発ネタになります。

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ヴァルゼライド閣下なら出来るぞ?ヴァルゼライド閣下なら出来るぞ?ヴァルゼライド閣下なら出来るぞ?


ヴァルゼライドが斬る!

 人が次第に朽ちゆくように

 

 国もいずれは滅びゆく

 

 千年栄えた帝都すらも

 

 いまや腐敗し生き地獄

 

 人の形の魑魅魍魎が

 

 我が物顔で跋扈する

 

 ふざけるな。死ねよ貴様ら、塵屑だろうが。

 

 苦悶の喘ぎを漏らしながら地獄の底まで堕ちるがいいッ。

 

 それが叶わぬというのなら……裁断者が必要とされるのならば、いいだろう、俺がやってやる。

 

 罪には罰を。

 

 悪には裁きを。

 

 奪われた希望には、相応しい闇と嘆きと絶望を。

 

 そうだ、俺は歪んでいる。光を守る? いいや否。

 

 “正義の味方”には程遠く、もはや目指したいとも思っておらん。資格もない。

 

 俺はその逆、邪悪を滅ぼす死の光に――“悪の敵”に成りたいのだ!

 

 

 

 

 どんなものにも終りというのは訪れる、人であれ、国であれ、星にさえも寿命があるのだから、この世に永遠という存在は在りはしない。故に、それもあるいは必然だったのだろうか、永劫に続くとさえ想われた千年帝国、その崩壊の足跡は確実に近づいていた。幼き皇帝を誑かし、国政を壟断する大臣「オネスト」とその一派、彼らによって帝国は荒れ果てた。善良な無辜の民を、人の皮を被った畜生共が蹂躙する。裁かれるべき悪党が見逃されて、罪無きものがその代わりに断頭台へと運ばれる。心ある者達が無実の罪を被されて粛清される。

 まさに地獄と呼ぶべきそんな時代に、いや、そんな時代だからこそその男は現れた。悪に裁きを、民に光を齎すべく時代に選ばれた寵児、民の希望を一身に背負う“悪の敵”、“英雄”、その男の名をクリストファー・ヴァルゼライドと言った……

 

 

「ヴァルゼライド将軍。此度の西の異民族の討伐、真に大義であったと陛下はお喜びです、つきましてはその功績を讃えるとのことですので、将軍殿には至急軍を副将軍たるナジェンダ殿に預けて帝都へと来るようにという勅命です」

 

 そう告げてくる皇帝よりの、否、大臣オネストからの使者の発言にその場に居合わせたヴァルゼライドの腹心達は苦虫を噛み潰した顔を浮かべる。罠である事は明白であった。帝都のスラム出身ながら身一つでついには将軍にまで登り詰めて、国が荒れ果てる中腐敗の入る余地など欠片もないその清廉潔白さと、重ねた武功によって市井の民や部下から絶大なる支持を誇り、帝国最後の砦とも称されるヴァルゼライドを大臣は以前より邪魔に想っていた。だからこそ、ついにその時が来たのだ。応じれば十中八九濡れ衣を着せられてヴァルゼライドは殺される、だが応じねば叛乱の意志有りとみなしてすぐさま討伐軍が編成される事となるだろう。

 だがその場に居合わせたものに迷いは無い、例え賊軍の汚名を着せられようと構わない、この方ならば(・・・・・・)必ずやこの国を変えてくれると信じているからだ。そう、ヴァルゼライドは何時とてそうだった。どのような絶望的な窮地にあろうと決して諦めなかった、もがき足掻き、そして最後には必ずや勝利を齎した。お飾りでしかない皇帝になどもはや彼らの忠誠は向けられていない、彼らの忠誠が向けられているのはこの世において真実ただ一人、“英雄”クリストファー・ヴァルゼライドその人なのだから。故に彼らはただヴァルゼライドが一言「行くぞ」と告げてくれるのを待つのみだった。

 

「承知した、陛下のご厚情にはただただ恐れ入るばかりである。勅命に従い、早急に出立の準備を行なおう」

 

 そうヴァルゼライドが告げるとナジェンダはすぐさま部下を呼び使者に対する歓待の席へと案内させる。そうして、さあこれで邪魔者は消えた。後は自分達の主君からの号令を待つばかりだとナジェンダはその場に居合わせる者達を代表して口を開く。

 

「さあ、将軍閣下。どうか号令をおかけ下さい、我ら全員地獄の果てであろうと貴方へと付いていく所存です!!!」

 

「ああ、どこまでもアンタに俺たちはついていくぜ!」

 

「大臣によって虜囚となったこの身を救っていただいた御恩、このリヴァ忘れてはおりませぬ。我が主君は貴方を置いて他におりませぬヴァルゼライド様」

 

 そんなナジェンダに続いてブラートとリヴァ、ヴァルゼライドからの信認も熱き二人の忠臣たちもこぞって口にする、大臣を討つのだとそう宣言してくれと、この腐った国を変えるのだと、そんな部下からの視線を静かに受けた上でヴァルゼライドは……

 

「勅命に従い、軍をナジェンダ副将軍、貴官へと預ける。ブラート千人長とリヴァ千人長は以後ナジェンダ副将軍の命に従うように」

 

「な!?」

 

 告げられたのはそんな命令に従うのだという言葉、その言葉に三人の瞳は驚愕に染められる。

 

「何故ですか閣下!これは罠である事は明白です、帝都に赴けば貴方を待っているのはでっちあげられた罪状と処刑台です!」

 

「ああ、無論理解しているとも。あの豚が異民族の討伐という役割を終えた俺を放置する道理はどこにもない、陛下を誑かして謀反の嫌疑をかけてくることは自明の理というものだろう」

 

「それがわかっていて何故……!?」

 

 涼しげに言うヴァルゼライドへとナジェンダは理解できぬと言った様子で言い募る。

 

「……ひょっとして如何なる理由があろうが皇帝の命には逆らえないとかそういうアレなのかい、大将」

 

 ポツリとブラートはまさに武人の鑑、帝国と帝室の守護者、そう称されるヴァルゼライドの評判を思い出してヴァルゼライドがこと此処に至って挙兵しようとせずに、罠だとわかりながらも勅命へと従おうとする理由を推測する。

 

「否。我が心臓はこの国と民のためにこそ存在する、例え陛下であろうとこの国に仇名すとなればそれを討つことに躊躇いは無い。主君殺しの汚名は甘んじて受け入れよう」

 

 クリストファー・ヴァルゼライドの忠誠と愛は国とそこに住まう民という不特定多数(・・・・・)の存在へと向けられている。決して皇帝という個人に捧げられたものではない。だからこそ、例え皇帝が幼く本人自身に非はなかったとしても、それを討つことが国の益となると判断すればヴァルゼライドは一片のためらいを見せることもなく討つだろう。自分自身を救いようのない塵屑だと断じながらも。

 

「ならば何故……?」

 

「理由は二つある、一つ此処で挙兵すればブドー大将軍も敵に回してしまう事となる、あの方は大臣をこそ快く思っていないが同時に自らの職責に対して誰よりも忠実だ。公的に我が軍が賊軍となれば、それを討ち果たすべく動く事となるだろう。そしてそうなれば我が軍は北方にいるエスデス将軍とブドー大将軍の二人から挟撃を食らうこととなる」

 

「しかし閣下、貴方ならばそうなったとしても必ずや勝利を」

 

「掴み取ったとしても我が国は内戦によって大きな被害を受けることとなる、そしてその隙を異民族たちは見逃さないだろう。内憂を排除したところで外患によって滅んでしまっては意味が無い」

 

 どこまでも冷静に先を見据えたヴァルゼライドの言葉に三人は押し黙る。

 

「そして二つ目の理由、奴は俺を罠へと嵌めたつもりでいるのだろう、逃れようの無い袋小路、どうしようもない二者択一へと追い込んだのだと、だがそうではない」

 

 そうしてヴァルゼライドは己が腹心達へと決して自分は諦めていないのだと何よりも雄弁に語る、その強い意志を宿した瞳で見据えて。

 

「罠に嵌ったのは奴の方だ。この時をこそ(・・・・・・)、俺は待ち望んでいたのだから」

 

 ようやく醜く肥えた悪党へと然るべき裁きを下すべき時が来たのだと、マグマのように煮えたぎり続けていたその灼熱の憤怒を覗かせながら己が計画を伝えるのであった……

 

 

 

 

「のう、大臣よ。ヴァルゼライド将軍が謀反を企んでいるというのは本当なのか?余にはどうにも信じられぬのだが……」

 

 先帝の代より帝国と帝室に仕え続けて、帝国の敵を討ち果たしてきた帝国の守護者、そう称されて自身も何度か会話したことのある男の様子を思い浮かべながら少年皇帝は控え目に己が忠臣(・・)たる大臣オネストへと問いかける。

 

「ええ、陛下。なんとも哀しい事にヴァルゼライド将軍も人が変わられてしまったのでしょう、欲とは際限がないものです。元々卑しいスラムの出身ですからなぁ、今の地位では満足が出来なくなってしまったのでしょう」

 

 むしゃりと肉にかぶりつきながらそんな事を言う大臣に対してどの口でほざくのかと叫ぶ者はその場にいない。言えば待っているのは自分だけでなく家族も含めた破滅だからである。故に少年皇帝は気づけない、そもそもヴァルゼライドが自身に対して叛意を抱いているのならば単身で帝都に赴かずに挙兵しているだろうという事に。

 

「………………」

 

 そしてそんな様子を皇室を守護する近衛軍の長を務めるブドー大将軍は憮然とした面持ちで見ていた。

 

「ぬっふっふっふ、ブドー大将軍、もしもの時は頼みますよ」

 

「貴様に言われるまでも無い、陛下をお守りするのが我が使命。もしも奴が陛下に仇名すというのならばその時は確実に討ち果たそう」

 

「頼もしい限りですよ、最も貴方の出番はないかもしれませんがね」

 

 そうして大臣はブドー将軍の対面に座る己が息子と用意した部下達を見る。

 

「任せとけよ親父、陛下に仇名す逆賊ヴァルゼライドが牙を向いたとしてもその時は確実に俺たちワイルドハントが仕留めてやるからよ」

 

 頼もしくそう応える自身の息子シュラと自身の直属の部下である羅刹四鬼に笑みを向ける。

 

(ぬっふっふ、帝具使いが10人、そしてブドー大将軍に至っては貴方と並び帝国最強とも謳われるお方。これでは如何に貴方とてどうしようもないでしょう、ヴァルゼライド)

 

 憎き政敵、その最期を想像してオネストはほくそ笑む。

 

(大方陛下を説得しようとでも想ったのでしょう、ですが愚かですねぇヴァルゼライド)

 

 皇帝は自分に絶対の信頼を置いている。自分が白といえば黒でも白になるし、黒といえば白でも黒になるのだ。どのような絶望的な戦場に送っても悉くに勝利してしまい、始末できなかった男。途中からはならばいっそその強さを利用してしまえば良いと異民族への平定へと当てたが、それも終わった今もはや用はない。自らに訪れる薔薇色の未来を想像して大臣はその時を待ち焦がれていた……

 

 

 

「な、な………こんな、こんな馬鹿な………」

 

「どうしたオネスト、何をそんなに驚く」

 

 苦悶の声を漏らしながら倒れ付す周囲で絶命している子飼いの部下達とは異なり、未だ息のあるオネストへと、コツコツと慈悲など欠片も見せずに死神は近づきながら断罪の言葉を述べる。

 

「あ、有り得ない……帝具の4つ同時使用(・・・・・・)だと……」

 

 帝具、それは帝国を築いた始皇帝の命により造られた48の超兵器。その性能は強大だがその反面それを使用した術者の体力、精神力を著しく消耗する文字通りの諸刃の剣でひとつ扱うだけも至難とされる。そしてヴァルゼライドが使用する帝具天神の雷霆(ケラウノス)はその中でも一際身体への反動が大きいものである。絶大なる威力を誇る代わりに術者はそれを使用している最中、凄まじい激痛に襲われる代物で、本来であるならばすぐにでもその場でうずくまって苦悶の叫びを挙げて然るべきものなのだ。そして今ヴァルゼライドはそんな自身が元々有していた帝具以外にもなんと3つの帝具を同時使用している。有り得ない、自殺行為としか言いようがないのだ。立っていることすらおかしい激痛がヴァルゼライドの体を蝕んでいるはずなのだ。

 

「この程度のリスクすら飲まずに貴様らを打ち倒せると想うほどに俺は蒙昧ではない。我が身を可愛がっているような男がどうして勝利を掴めるというのか」

 

 そう、ヴァルゼライドの用意していた策とは部下達からそれぞれが所有する帝具を借り受けての同時使用。ヴァルゼライドの狙いとはすなわち自身を謀殺しにかかる場に置いて逆に単身にて大臣とその私兵達を自らの手で一掃する事だったのだ。この時のためにこそ彼はずっと雌伏を続けていたのだ、いずれ来るべき大臣一派との闘争、それらを一人で全員(・・・・・)相手取ることを想定して入念な準備を重ねてきた。ならば後は語るまでもないだろう、数を理由に油断していた者達が必勝の覚悟を持って挑んだ英雄に勝てるはずもなし。大臣一派は自身も含めてその配下の悉くがヴァルゼライドによって切伏せられて沈んだ。

 

「ブ、ブドー将軍!先ほどから一体何をして居るのですか!!!これは明確な謀反です!直ちに逆賊ヴァルゼライドを討伐しなさい!」

 

 激闘の余波によって気絶した少年皇帝を背に、護るように仁王立ちしているブドー大将軍へとオネストは助けを求めるが。

 

「我が剣を捧げたお方は皇帝陛下のみ(・・・・・・)、何故陛下のお傍にあって陛下を誑かす寄生虫如きを俺が護らばならぬ」

 

「な!?」

 

 どこまでも冷たくオネストへと言い捨てた後、ブドーはどこかわざとらしさが漂うような様子でヴァルゼライドへと問いかける。

 

「ヴァルゼライド将軍、貴様は陛下に剣を向ける逆賊か?」

 

「否、此度の騒乱はあくまで陛下を誑かす寄生虫の駆除のためのもの。その証拠に俺は陛下の軍をナジェンダ副将軍に預けよという勅命に従い、速やかに帝都へと帰参した。恐れ多くも仮に陛下へと刃を向けようというのならその時点で俺はその命へと反していた。その程度の事は貴方にもお分かりのはずだ、ブドー大将軍」

 

「との事だオネスト大臣、そういう事ならばこれは貴様らの私戦、俺がでしゃばるものではあるまい」

 

 いけしゃあしゃあと告げるそのブドーの様子にオネストは全てを悟る。最初からこの二人はグルであったのだと、いやグルという表現は適切ではないのかもしれない。今回ブドーはヴァルゼライドに最後まで加勢するような事はなく、あくまで中立を貫いていた。だが、その中立を貫くという事自体が常のブドーならばおかしいのだ。

 皇帝の御前で抜刀して帝具を使用する、その時点で常のこの男ならば叛意有りとみなして粛清しようと動くはずなのだ。それにも関わらず今回ブドーが行なったのは皇帝を守護する、その一点のみ。まるで最初から(・・・・)ヴァルゼライドが皇帝へと剣を向けないと知っていたかのように。

 

「~~~~~~~~~~~!!」

 

 クリストファー・ヴァルゼライドとブドー大将軍は結託していた、少なくとも事前に今回の一件に対する中立の確約を取り付けていたのだろう。ヴァルゼライドは罠に嵌ったのではなかった、むしろその逆、この逆境をこそむしろ千載一遇の好機と考えてこの時を待ち続けていたのだと、そう理解した瞬間にオネストの体を屈辱が埋め尽くす。そうして倒れ伏すオネストの元まで来たヴァルゼライドはその断罪の刃を構える。

 

「ま、待ってくださいヴァルゼライド!見逃してさえくれれば何でも貴方の望むとおりに」

 

「そのまま惨めに死ぬがいい」

 

 告げようとした命乞いの言葉は最期まで告げる事は出来ずに一片の慈悲なくヴァルゼライドは吐き捨てるかのように、そう口にして奸賊オネストにその断罪の刃を振り下ろした。

 かくしてヴァルゼライド将軍一派、否ヴァルゼライド将軍単騎(・・・・・・・・・・・)による決起はこうして幕を降ろした。奸賊オネストの死亡とヴァルゼライド将軍の勝利によって……

 

 

 

「何故じゃヴァルゼライド!何故そなたは余の忠臣である大臣を殺したのじゃ!」

 

 目を覚ました皇帝にヴァルゼライドはそう詰問を受けていた。

 オネストとその一派の主だった者の粛清には成功したものの、未だ帝国に巣食う病巣の一掃に成功したわけではない。

 早急に宮中を掌握して、本格的な改革へと邁進する必要があった。そしてそのために避けて通れないのが、大臣に絶大な信頼を抱いていたこの少年皇帝の信頼を勝ち取る事である。

 1000年間にもわたって皇帝が君臨し続けたこの国では帝室の権威は絶大と言って良い、オネストがあれほどまでに国政を壟断できたのもひとえに皇帝の信認を受けていればこそ。

 だからこそ、ヴァルゼライドが目の前の主君からの信頼を得るのは彼が今後この帝国を変えるにあたって絶対的な必要な行為であり、あるいは大臣がそうしていたように良い様に騙して操るのが一番楽な道ではあったのだが……

 

「答えよ、ヴァルゼライド!」

 

「よろしい、ならば仔細教授しよう」

 

 その言葉と共にヴァルゼライドが始めたのは懇切丁寧な講義であった。オネストとその一派が一体何をやっていたのか、その結果国がどうなっているのか、彼の愛する民が如何ほどの苦しみを味わっているか、それら一切をオブラートに包むような事はなく全身全霊を持って皇帝へと教える。

 始まりは反発していた皇帝もその聡明さゆえに次第に何が真実かを理解していき、やがて自らが何をしていたのかを理解していき、ただ涙を流しながら「嘘だ……嘘だ……」と首を振るようになっていく。

 しかし、ヴァルゼライドは止まらない。子どもだったから仕方が無い、悪いのは大臣であり、陛下は騙されていただけなのです等という優しさでもって庇うような真似をせずにただただどこまでも真摯に真実を伝えていく。そうして蒼白な顔になった皇帝へと……

 

「陛下、確かに陛下は大臣によって騙されていたのでしょう。悪いのはオネストである、それは確かな真実です。ですが、この世にはそういった言い訳をしてはいけない立場が存在する。皇帝陛下、あなたはそういったお立場なのです」

 

 自分は悪くない!などと叫ぶことは許さないし、許されない、何故ならば皇帝が大臣によって騙されたことで多くの犠牲となった民がいるのだから、とヴァルゼライドはどこまでも容赦なく告げていく。自分が手をこまねいている間にも犠牲となった多くの無辜の民草、その嘆きを決して忘れてはいけないのだと誰よりも自分自身を責めながら、血が滲むほどに強く握り締めながら。

 

「余は……僕は………」

 

「だが、だからこそ貴方は立ち止まってはならない。此処であなたが立ち止まってしまえばそれこそ犠牲となった者たちの死が無駄になってしまう。それは大臣に国政を壟断させていた事にさえ勝る大罪となるでしょう」

 

 無駄にするかしないかは貴方次第なのだと、どこまでもどこまでも真摯に見据えられながら告げられるヴァルゼライドの本気の思い。はぐらかし続けていたオネストとは異なり、自分にどこまでも真摯に向き合うそんな本物の男の本気の思いに幼き皇帝は涙を拭い去って。

 

「僕は……余は……罪を償えるだろうか」

 

「それを決めるのは俺でも貴方でもない、だが少なくとも貴方にしかできないことは無数にある」

 

 大臣によって蓋をされ続けていた名君としての片鱗を見せ付ける確かな決意を瞳に宿して。

 

「ヴァルゼライド将軍、奸族オネストの粛清、真に大義であった」

 

「は、勿体無きお言葉」

 

 自然とヴァルゼライドは目の前の皇帝に対して臣下の礼を取る、それは今までに何度もしてきた儀礼的なものではない。目の前の主君に対する紛れもない敬意がそうさせたものであった。

 

「この功績を以ってそなたをブドー大将軍と同じく大将軍へと任ずる、以後ブドー将軍直属の近衛軍以外の帝国軍、その総指揮官へとそなたを任命する。加えて奸族オネストの死によって空白となった宰相位へと任命する。オネストにより荒れ果てたこの国を建て直し、民に光と希望を齎すのだ」

 

 それは事実上の全権委任も同様であった、この瞬間クリストファー・ヴァルゼライドは武官と文官、凡そ臣下の身に在って登り詰められることの出来る最高位、その頂点へと登り詰める。

 

「謹んで拝命させていただきます。この身のすべては皆を幸福にするためにある。輝く明日を、誰もが笑顔で誰もが明日を向いて生きられるように」

 

 かくして悲劇は幕を下ろす、これより男が紡ぐのは光輝く英雄譚。長きに渡る帝国の歴史においても一際輝きを放つ黄金時代が今、ここに幕を開けた。

 男の名前はクリストファー・ヴァルゼライド、大臣オネストによる専横を終わらせて、千年帝国を立て直した帝国中興の英雄クリストファー・ヴァルゼライドである。

 

 

 

 

 

「此処が帝都か~~~」

 

「やっぱりでっけぇな~村とは大違いだぜ」

 

「もうタツミもイエヤスも辞めてよね、如何にも田舎者丸出しって感じで恥ずかしいじゃない」

 

 そう言いながらもサヨという少女も興味深そうにキョロキョロと辺りを見回す。三人が訪れた帝都、そこはこの国の首都に相応しく活気に賑わい、多くの笑顔が溢れていた。

 そうして通りを歩んでいくと、子ども達の「覚悟しろ~悪の大臣、このヴァルゼライド将軍が裁いてやる!」などと言う声が聞こえて来て三人は苦笑する

 

「ははは、懐かしいな~ヴァルゼライド将軍ごっこ」

 

「俺たちもよくやったよな~いっつもやるたび誰がヴァルゼライド将軍役やるかで揉めたけどよ」

 

 昔を思い出しながらそんな事を呟く二人に苦笑しながらサヨは告げる。

 

「でも、ごっこで終わらせる気はないんでしょう?」

 

「あったりまえだぜ、俺たちも絶対にヴァルゼライド大将軍みたいなこの国を救った英雄になるんだ!なあイエヤス!!!」

 

 そんな風にこれから来る未来に思いを馳せながらタツミは掛け替えのない友人二人と共に意気揚々と帝国軍の門を叩くのであった。憧れた背中に追いついて、肩を並べるその時を夢見て……




やっぱりヴァルゼライド閣下は最高だぜ!


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