龍郎転生。   作:ヤーンスポナー

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二話目。最終話。




最初から専門家に叶う訳がない。

 突然だが、"世界線"と言う言葉を知っているだろうか。

 

 

 某ADVにて提唱された概念であり、元ネタはジョン・タイターとやらが提唱した奴である。

 

 曰く、過去から未来までを含んだ1通り世界の歴史である。様々な可能性が重ね合わせになっており完全に決定論的ではないが、別の過程を経ても収束と呼ばれる現象により場合によっては奇跡的な偶然が起こるなどして決まった結果に行き着く。他の歴史の可能性も可能性世界線として存在していて、なんらかの事態で歴史が変わるようになればそれに沿った別の世界線の世界へと再構成される、との事だ。

 

 

 まぁ如何にもWikiから引っ張ってきた御託はさておき、簡潔な事を述べよう。

 

 

 つまり、俺が幾ら足掻いても"崑崙方院による四葉真夜誘拐事件"は発生する可能性があるのだ。

 

 

 それはそうだ。それが発生しなかったら原作がそもそも始まらない。司波達也が生まれる全ての原因が発生する必要は絶対にあるだろう。

 

 一方、某ADVでは"因果性"と言うものが考えられていた。確定事象だとか剪定事象だとかそんな感じの名前だった気もするが触ったのが昔の話しすぎて忘れてしまった。曰くある世界線には確定的に起こる事があると言う事だ。某ADVではこれを仔細に特定し、状況を再現しつつも"世界を騙す"事ですべてのヒロインの死を回避していた。ここら辺は俗に言う"世界の修正力"とも言えるだろう。

 

 

 つまり、世界を騙す事さえできれば全く違った結末を向かえる事が出来ると考えられるのだ。

 

 この場合、四葉真夜が無事に生き延び、司波深夜か四葉真夜のどちらかが司波達也兄弟を生んでくれる可能性。

 

 かつ、俺がそういった事とは無関係であれる可能性。未だ会えぬ愛しの古葉小百合様と最初から最後まで添い遂げる事が出来る可能性だ。

 

 

 

 こういった力を加味すると、"崑崙方院による四葉真夜誘拐事件"は発生しなくてはいけないのだ。

 

 

 

 しかし、自分自身の手でそれは阻止してしまう。

 

 では、どうすれば良いか。これも答えは一つだ。

 

 

 

 自分が犯人になってしまえばいいのだ。

 

 

 

 その為に態々自己暗示まで掛けた。最早自白剤を用いられても某小説が元となったスパイアニメの様に肝心な情報は吐き出す事が無い。

 

 潜伏したウィルスは一旦台湾の空港に着陸した後、間髪おかずに離陸。燃料から予想するに鹿児島県から150km程離れた海上に不時着する様になっている。後は救命ボートに乗っていただき、しばし漂流する事になるだろう。

 

 当然位置情報を知らせるシステムは無効にするよう設定してある。これで誘拐は現実味を帯びる。そして、日本の少年少女魔法師の協力で誘拐されかけた事に気づき自力で脱出したというシナリオになる予定だ。

 

 後は海上保安庁とか国防軍とかそこら辺の人達のお仕事だ。その先に俺が介在する余地は無い。

 

 

 

 無論俺は恐らく有罪判決を食らって色々な事をされるのだろう。しかし正に"因果性"とやらによって俺には恋人が出来る筈だ。多分。

 

 まぁ正直出来なくても良い。童貞のままではあるが偉業を為して死ぬのだ。最低でも自分に自信は持てる。

 

 

 胸を張って言おう。童貞卒業のために生き、少女を救って死んだのだと。

 

 

 神様に告げると「やる事やれって言ったよね?」とか言われそうだけど。

 

 

 さて、現在の状況を説明しよう。

 

 あの後刑事さんは大慌て。急いで魔法師らが乗る便を確認しようとするも時すでに遅し。謎の離陸を果たした飛行機は行き先も不明。崑崙方院は完全に濡れ衣だが、準備には入っているだろうから信憑性は極めて高いと思われるだろう。

 

 

 当然尋問は熾烈を極めた。最早何度も心が折れかけた。

 

 だが、折れる訳には行かない。無事に崑崙方院による誘拐を成功させる為には、とにかく時間を稼がなくてはいけない。

 

 

 原作では四葉真夜が見つかるのは誘拐事件発生から三日後。日時の指定がされてない以上、それまでが正念場。

 

 とは言え、最早誰も俺の口を割ることは出来ない。既に目標は達成された。(おとこ)として死ぬか、もしくは童貞を卒業できるのだ。これ以上の幸福などありはしない。

 

 

 とは言え、最早時間の感覚は愚か意識さえ曖昧だ。

 

 

 5回くらい寝た筈なのに実は一日しか経っていないと知らされたときには気絶した。勿論直ぐに叩き起こされた。尋問は続いた。暴力さえ振るわれた。

 

 

 

 今日は、果たして何日目だったか。何時間経った後だったか。目の前の男はだれだったか。

 

 

 

「・・・刑事さん。・・・まだ、やるんです?」

 

 

 

 虚ろな目でそう述べる。一刻も早く解放されたいが、まだやるべき事が残ってる。

 

「彼が、その犯人か」

 

「はい。以前のものを含めると既に9日は事情聴取を行っていますが、ご息女様の一件を吐いて以降は何も」

 

「・・・私がやる。君達は部屋から出たまえ」

 

 何か、おかしい。男が四人居る。

 今までは三人が尋問に当たっていたはずだ。それなのに、何で今一人増えてるんだ?

 

 そして、何で三人の男が部屋から出ようとしているんだ?

 

 

 もう、目の前の男しかいないじゃないか。

 

 

「・・・若いな、弘一君と同じ年だろう。何故こんな事をしたんだ」

 

「決まっているじゃないですか。俺の魔法師の潜在能力の開花を約束した崑崙方院を手伝う為ですよ」

 

 

 何かおかしな名前が聞こえたような?でも、言うべきことは分かる。

 

 

「辛くは無いか?」

 

「・・・辛い?・・・辛い。もう、時間の感覚が分からない」

 

 不意に優しい声を掛けられ、気が緩む。

 まずい、今は尋問中だ。気を引き締めなければ。

 

 

「普通の尋問では即答するが、関係ない質問には反応が鈍い・・・。これは、自己暗示か」

 

 

 自己暗示?何を言っているんだ?

 

 

「その手のモノだったら、深夜を呼び出すまでも無いな。正に我々がやってきた内の初歩中の初歩だ」

 

 

 初歩中の初歩?深夜?一体何のことだ?

 

 そもそも目の前の男は誰だ?司波深夜・・・四葉深夜と一体何の関係がある?

 

 

 

 

 ・・・"四葉"?

 

 

 

 

「貴様、まさか四葉・・・!」

 

 

 

 

 そこで、意識は暗転した。

 

 

 

 

(気分は、どうだ?)

 

 ――少し、疲れた。

 

(さて、君が何者かを言ってみたまえ)

 

 ――司波龍郎。14歳。

 

(何をしたのか言ってみたまえ)

 

 ――崑崙方院の誘拐幇助。

 

(何のために?)

 

 ――俺の魔法師の潜在能力を開花させる為に。

 

(何時まで黙ると決めた?)

 

 ――事件発生から三日後。

 

(もう三日経ったぞ。さぁ、記憶を戻そう)

 

 ――あぁ、そうしよう。

 

 

 ――"成すべき事は成した"

 

 

(君が何をしたのか言ってみたまえ)

 

 ――少年少女魔法師交流会へと向かう、魔法師を乗せた便のハッキング。

 

(何のために?)

 

 ――崑崙方院の誘拐を、阻止するため。

 

(何故?)

 

 ――四葉真夜と七草弘一の婚約を成立させる為。

 

(君に何の利益がある?)

 

 ――四葉と七草は親密な関係になり、姿勢は軟化する。そうすれば十師族の社会は、平穏な物になる。

 

 ――魔法師である俺にも、災いが降りかかる事がなくなる。

 

 ――魔法師が、個人の幸せを享受できる。

 

(・・・飛行機は、何処に向かった?)

 

 ――来た道を戻り、鹿児島県から凡そ150kmほど離れた海上に不時着した筈だ。そろそろ、海上保安庁辺りが見つけてくれるだろう。

 

(そうか、分かった)

 

 

 

 

("目を覚ませ")

 

 

 

 

 突如、意識がはっきりする。

 

 

 

 

 ここは?俺は尋問を受けていた筈だ。

 

 そして、計画通りの時間が経ったと聞かされて、暗示を・・・。

 

 

 暗示?

 

 

 まず、目の前に居るのは誰だ?

 

 30代中ごろくらいか?少なくとも今まで担当していた刑事とは別人と言う事は分かる。

 

 暗示・・・初歩中の初歩・・・司波・・・四葉・・・。四葉?

 

 

「あぁ・・・・そうか。やられたのか」

 

 

 単純な話だ。

 

 何故その道数十年のプロに中学生が叶う等と思ったのか。

 愛娘の行方が知れず、知ってると思われる人間が逮捕されている。

 

 やる事は一つじゃないか。

 

「・・・四葉家の者か。そりゃ、来るよな」

 

 

 そして、俺が先ほどまで見ていた夢は・・・。

 

 

「全部、言ってしまったのか」

 

「あぁ。全て聞かせてもらった」

 

「事件発生から何日経った?」

 

「まだ二日目の朝だ」

 

 やられた。微妙に期待も持てるが、四葉がこの段階で来ると言う事は未来は決まったかもしれない。

 

「・・・信じるのか」

 

 苦し紛れの一言を出す。が、そんなものは効かなかった。

 

「信じるさ。崑崙方院が誘拐の準備をしてながら失敗したというのは不自然だ。初めから、隠してる事があると思っていたよ」

 

「あぁ・・・そうか」

 

 多分、幸いにだけども目の前の彼の態度は柔らかい。状況からして、目の前の男は英作か元造かの二択だろう。

 

 となると、案外この後も我が人生は続きそうな気がする。

 ちょっと前科者が生きるのには厳しすぎる世界だが、戦時下だし多少は甘く見てもらってもほら。

 

 ・・・少なくとも、あの夢の中で童貞がどうこう言わなかったのは幸い過ぎる。言ってたら今すぐその場で舌を噛み切ってた。

 

 

「・・・後で、乗客全員の様態を教えてください。知らなきゃいけない。俺が、全部やった事なんだから」

 

「分かった。刑事にそう伝えておこう」

 

 

 そう言って、男は部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 かくして、俺の計画は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 事件は「崑崙方院による誘拐未遂、少年少女魔法師らが事前に察知して脱出」と言う形で世に知らされた。一方でどこぞやの闇の力が働いたのか知らないけども、俺が侵入した一件は「最近の事件を知った犯人が名乗っただけの愉快犯」として扱われた。そりゃそうだ。

 

 取り合えず世間の目はマシになったが、結局前科者。親は泣いた。近寄る人間も居なくなった。

 

 ちょっとした小耳に挟んだ程度だが、七草弘一と四葉真夜の婚約は未だ続いているらしい。成人したら結婚するんだろう。やる事やるんでしょう?クソが。

 

 

 

 

 

 まぁ、俺は結局あの後高校には進学しなかった。と言うか出来なかった。

 

 今じゃしがない電気工兼システムエンジニア。仕事にありつけただけ有り難い。しかしこの世知辛い社会で生きるのは辛い。主に彼女が居ないから。

 

 とは言え、愛しの古葉小百合様と会うのはまだ先かもしれない。いやほら、もう18歳だけど若しかしたら職場恋愛かもしれないじゃん?この後スカウトが掛かる流れとかほら、あるかもしれない。

 

 

 

 ともかく、今日の仕事も終わり。生き残った以上金を稼いで自分で食わねばならない。

 

 

 

 未だに実家暮らしの中、家に帰る。

 

 すると、珍しく親父から声が掛かった。

 

「ドラ息子、ちょっとこっちに来なさい」

 

「親不孝者に何の用ですかね・・・」

 

 仕事用のかばんを背負ったままリビングに入る。

 手紙をジッと見つめている親父を訝しみながら対面のソファーに座る。

 

「どうしたのさ、らしくない」

 

「それがな・・・」

 

 渋面していた親父が顔を上げる。

 

「お前に縁談が来てる」

 

「・・・俺に?エイプリルフールは今日じゃないぞ」

 

 即座に殴られる。前科者になって以降は鉄拳制裁だ。

 

「馬鹿野郎。真面目な話をしてるんだ」

 

「はい。でも、俺は前科者だぞ?来る訳無いだろそんなの。第一親父にそんな伝手あったか?」

 

「分からん。でも、とりあえず会ってみろ。見合い写真も送られてきてないが、どうせ前科者を貰ってくれる物好きなんて二度と現れるかどうかなんだ。会わなきゃ失礼だぞ」

 

「・・・まぁ、分かった。それじゃあ会ってみるわ」

 

 

 

 

 そんなこんなで見合い当日。

 

 たかが見合いに袴姿って・・・。どこぞやの財閥じゃないんだし意識しすぎじゃないですかね。そもそもそんな大層な所から声が掛かる訳ないじゃん。

 

 

 そして、案内された部屋に入る。

 

 そこには、四年ほど前に見た気がする顔が居た。

 

 

 

 一瞬で血の気が引いた。

 

 

 

「・・・"四葉"?」

 

 

 

 え、嘘。

 

 

 

「そうだ。一応、仲人と言う形で私が居る。見知った相手ではあるだろう?

 

 名乗っておこう、四葉英作だ。四年前はお世話になったね」

 

「あ、いや、え、その・・・、なんというか」

 

 ちょっとまった。まだ古葉小百合様と会っていない。

 

「前回の礼・・・と言うとおかしな形ではあるが。真夜を結果的には助けてもらったからね。こうして縁談を申し込ませて頂いた」

 

「あっ、はい。・・・え、つまり」

 

「深夜、来ていいぞ」

 

 そう、四葉英作と名乗った男が声を掛ける。

 

 すると、襖が開いて中から女性が現れる。

 

 

 わぁ、知ってる顔だ。原作で腐るほど見たなぁ。

 

 具体的に言うと美女だ。美少女ではないし、可愛いという言葉は当てはまらない。美しい女性と言った方がいいだろう。

 

 もうちょっとメタると「どうせ1回しか出番無いから適当に書いた様な」小百合様とは違って「主人公の母親だから思いっきり美人に書いた」みたいな感じの女性だぁ。

 

 

 まぁ、四年前に薄々感づいてた事だけどさ。

 

 この世界の確定事象は他にも合ったらしい。

 

 たとえ崑崙方院の誘拐事件が起こったとしても、四葉真夜と四葉深夜が仲違いしなかったとしても、四葉一族30人が死亡しなくても。

 

 

 

 

 "司波龍郎は四葉深夜と結婚する"事は確定してたらしい。

 

 

 

 

「四葉深夜と言います。よろしくお願いしますね?」

 

 

 

 




と言う事で短編でやりたかったネタ終了。
この後は見合いしつつハッピーエンドな世界線へと向かうのでしょう。

続きは、もしかしたら書くかもしれない。連載中の作品を全部完結させたら。

と言う事でUP納め、終了です。お付き合いいただきありがとうございます。


・・・今考えたけど、四葉深夜と結婚するとか胃に穴が空きそうでなんかやだな。美人なんだけどさ。原作から見るに少し、怖い。
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