転生提督の下には不思議な艦娘が集まる   作:ダルマ

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 読者の皆様方、作者のダルマです。
 作者は原作を未プレイであり、独自の解釈と設定によって作品が形成されておりますので違和感を覚える部分も多いと思います。
 その点も考慮して本作をお楽しみいただけると幸いです。


プロローグ

 かつて、クロノ・クェイク、時空震と呼ばれる人知を超えた人類史上最悪の災害がこの星を襲った。

 いつ如何なる形であったのかは記憶として残っておらずとも、天災という域を超えたその災害は、人類から『過去』と『未来』を奪っていった。

 

 だが、人類は立ち止まる事はなかった。

 

 現在(いま)を生き延び、命を繋ぎ、再び過去と未来を手に入れんと災害から生き残った人々は、手と手を取り合い共に歩み始める。

 過去の、或いは未来の『遺産』を有効に活用しながら。

 

 

 西暦やイスラム紀元、或いは元号と言ったものが時空震以前は存在していた。

 しかし、時空震により全てがゼロにリセットされた現在の世界では、『ニュー・センチュリー』或いは略称である『N.C.』と呼ばれる紀年法で統一されている。

 

 そして現在、時空震発生の日、リセットデイと呼ばれる日より七九年。N.C.79年を数えていた。

 

 

 過去のいがみ合いを捨て、理想的な未来の政府たる一つの国家。国際地球連合の旗の下、人類は一致団結して傷を癒し、失われたものを取り戻そうと歩み始めた。

 だがその矢先、時空震が産み出した新たなる種なのか。それとも、人類の手から離れた過去と未来の残留思念の集合体なのか。

 

 海の底から、奴等は、いつしか深海棲艦と呼ばれるようになったそれは姿を現したのである。

 

 当初は対話による平和的な接触が行われたものの、深海棲艦側はそんな平和とは無縁の、砲火と言う返事を持って人類にその答えを示したのである。

 こうして、人類は深海棲艦との武力を用いた競争を繰り広げていく事となるのだが。開戦当初の優劣は、まさに人類側の劣勢と言ってよかった。

 時空震の混乱より立ち直って日もない人類には、深海棲艦との戦争は、まさにゼロからのスタートの如く手探りでのものであった。

 

 生き残った人類をそこから更にすり減らしながらも、人類は深海棲艦と戦う術を模索し、そして見つけ出す。

 リセットデイの後、世界各地で見つけ出されるリセットデイ以前の遺産。そして、その中に含まれる戦う為の道具の数々。

 

 開戦から劣勢に追いやられていた人類は、遺産を解析、そして再利用する事により、徐々にではあるが劣勢を盛り返し始める。

 

 だが、遺産を活用してもなお、深海棲艦側はその勢力を衰えさせる事なく。まさに終わりの見えぬ戦いが、未だに続いている。

 

 

 時にN.C.79年。

 人類は、深海棲艦の脅威、更には内包する問題を抱えながらも、遺産と共に現在(いま)を必死に生き抜こうとしていた。

 

 

 

 

 と、その様な時代背景があるようなのだが、自分自身にとっては今一実感が湧かない。

 この混沌たる世界に生きているのに何を言っているのかと、本音を漏らせば言い返す人も出てくるだろうが、それでも自分自身にとっては何処かフィクションの世界に感じてしまう。

 

 何故なのか、それは偏に、自分自身が本来この世界に生を受けるべき筈のない存在だからだろう。

 もっと簡単に言えば、自分は転生者。つまりはそういう事だ。

 

 

 転生させられる前、ここでは前世と呼ぶ事にしよう。

 その前世のとある日の事、いつものように暇が出来たのでスマホでゲームでもしようとアプリを起動した時の事だった。

 運営を名乗る不審なメールが届けられ、その内容は自分がプレゼントの当選者に選ばれたというものだった。

 

 覚えのないプレゼントの件に少し怪しんだものの、タダで貰えるものは貰っておけと、添付されていたアドレスにログインしてみるのであった。

 そして、次の瞬間には突如として意識を失うのだった。

 

 こうして意識を失い、再び意識を回復させると、そこは見覚えのない真っ白な部屋の中で、気づくと一人の神々しい雰囲気を漂わせた老人がいて。

 

「神からの恵み(転生)をありがたく受け取れ!!」

 

 と、集中線でも出てきそうなほど力強い顔と、神々のバックグラウンドミュージックと共にそんな台詞を言われ、受け取らない人が果たしてどれ程入るだろうか。

 

 神と名乗った老人からありがたく恵み(転生)を受け取る旨を伝えると、次いで恵み(転生)の先の世界の情報を直接脳に語りかけてきた。

 こうして転生先の事情をだいたいわかった所で、この世界にやって来たのである。

 

 

 この世界、何やら聞きなれない単語はあるものの、ベースとなっているのは前世でもプレイした事のある『艦隊これくしょん』と呼ばれるブラウザゲームのようだ。

 ただ、聞きなれない単語が追加されている辺りからも分かるように、完全なものではなく。様々なものが混ざり合った、所謂『風』な世界のようだ。

 

 二十世紀かとも思えば二十一世紀だったり、はたまた空想世界の産物もあったり。

 遺産と言う名で、それらはこの世界で存在している。まさに遺産(ご都合主義)万歳だ。

 

 さて、そんな世界で今現在、自分が何をしているのかと言えば、当然ながらこの世界の巨悪とも呼べる深海棲艦と戦うお仕事についている。

 

 当然世界のベースがベースだけに、自分自身で戦うわけではなく、提督と言う指揮官としての立場である。

 そして必然的に、部下にして、最前線で深海棲艦と直接対峙する者達。即ち『艦娘』もまた、存在している。

 

 公式ではハッキリとした設定や定義のようなものはなかったが、この世界ではその辺りは一応ある。

 

 人的資源保全主義。言うなれば安定した供給を見込めない人的資源の中、可能な限り効果を発揮できるだけの戦力を維持するというもので。

 まさに軍隊と言うマンパワーを常に欲する組織と対極を成すかのような戦略である。

 そんな主義の下、省力化、自動化、そして無人化と進化し行き着いたのが、艦娘。

 

 フリート・ガール・システム、或いは艦娘システムと呼ばれる、艦艇無人化構想の実用量産型システムである。

 このシステムの優れている所は、付随するナノマシンが個々のシステムがモデルとしている女性の姿を人工人体として形成し、直接生身の人間と意思疎通を図ることができると言う点だ。

 コンソールやモニター越しでは伝わらない、言葉の強弱や身振り手振り等、些細な部分に至るまで汲み取れる事により、現場で必要な阿吽の呼吸やツーカーの仲というものを獲得しやすくしているのだ。

 

 とまぁ、堅苦しく説明してはいるが。簡単に言えばメンタルモデルのようなものだ。

 

 因みに、何故人工人体のモデルが女性だけなのかと当然疑問に思うだろうが。

 浪漫だから仕方がない。と言うことだけ述べておこう。

 

 

 そうだ、本来ならついでと呼ぶべきではないのだが、ここで自分が所属している組織について話をしよう。

 

 この世界は国際地球連合と言う一つの国家のもとに社会が成り立っていると説明したが、実際には少々語弊がある。

 確かに一応は一つの国家として成り立ってはいるが、その実、連合を形成する各大州ごとに高度な自治権を有し。国際地球連合は、実際には国際連合の権力拡大のようなもので。

 更には、大州の下にある各管区、所謂前世における各国家ごとにも、力関係や格差と言うものが存在し。

 

 もはや国境を捨てた一つの国家と言うには、その内情はあまりに境だとか平等とはかけ離れたものだ。

 

 と、そんな幻想国家を構築する『八大州』の内の一つ、『極東州』の州軍は州海軍に自分は属している。

 

 因みに、極東州を構築しているのは日本管区と台湾管区の二つのみ。八大州の中で、南極を除き大州の中では最も少ない管区数だ。

 なぜこの様な最小の州になってしまったのか、その辺りは定かではないが。

 お隣のアジア州のごたごたを見ていると、その辺りの事情は何となく察することが出来る。

 

 

 最後に、遅ればせながら自分の自己紹介をしておこう。

 自分の名前は飯塚 源(いいづか はじめ)

 前世では二十年と言う短い人生を終え、現世、もといこの世界で現在五年目の人生を謳歌している、二十五歳男性。

 

 容姿については下でもなければ上でもないとだけ言っておこう。因みに身長は、平均より少し上程度と言ったところか。

 

 

 そして何より、自分は提督である。

 因みに階級は中佐だ。二十五で中佐と、前世なら異例中の異例で余程の秀才と嫌でも注目されるのだろうが。生憎とこの世界じゃ人的資源の関係から、二十代での佐官など珍しくもない。

 

 そして、最も重要なことだが、提督の職は五日前に任命されたばかりの成り立てほやほやのである。




いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。

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