転生提督の下には不思議な艦娘が集まる   作:ダルマ

10 / 72
艦隊の日々
第9話 これより本格始動します


 提督としての初日を無事に終えた翌日。

 布団などを片付け、朝の身支度を終え、自分以外は再びのおごりで食堂にて朝食を取り。

 

 提督二日目の本格的な活動がいよいよ始まる。

 

 先ずは、河内達の分のミールカードを基地の総務に赴いて発行してもらう。

 数十分待ち、無事に人数分のミールカードを発行してもらうと、今後の活動計画等を発表する為、全員揃って再び自分の官舎へと舞い戻る。

 

「では、今後の簡単な活動計画を発表していこうと思う」

 

 官舎内に設けられた会議室で、ホワイトボードを背に会議の開催を宣言する。

 

「先ず、我々は今後、ラバウル統合基地所属の『飯塚艦隊』として各種任務に励んでもらう事になる」

 

 艦娘を主軸として編成・運用される艦隊は、基本的には艦隊司令長官の名を持って呼ばれる。

 これは従来型の兵器を運用している艦隊との差別の意味合いもあるが。同様の艦隊が現在多数存在し、事務的な観点から安易に識別可能なようにとの要望が多く寄せられた結果こうなったのだ。

 

 因みに、艦隊は結成当初隷下に第一から第四までの戦隊を有することが出来、提督の階級や戦歴等々によって更に隷下の戦隊を増やす事が出来る。

 

「当然艦隊として行動する以上、旗艦を任命する必要がある訳だが……」

 

 そこで目の前に座る面々を見回して各々の反応を窺う。

 旗艦、艦隊司令官の乗船にして艦隊の顔とも言うべき軍艦(ふね)だ。

 

 当然、相応の重責を担う事になる為、覚悟も必要とされる。

 

「もしやってみたいと意欲がある者がいるなら、喜んで了承するが?」

 

 しかし、駆逐艦の艦娘()達はその重責に耐えられそうにないと感じているのか、皆視線が俯いている。

 一応、原則として艦隊の旗艦に戦艦を据えなければならないなんて文言はないので、駆逐艦でも旗艦を務める事はできる。

 現に、呉鎮にも駆逐艦を自身の艦隊の旗艦に据えていた提督は何人かいた。

 

「はぁ……、提督はん。幾らなんでも、あたしや紀伊がおる手前で旗艦になりたいって(てぇ)あげる艦娘()はおらんと思うで?」

 

「ん、そうか?」

 

「ま、あたしや紀伊の手前、遠慮してるだけかも知らへんけど。……しゃあない! ここは、大和さんが来るまで連合艦隊旗艦を務めとったこのあたしがなったるわ!」

 

「あ、言い忘れてたけど、誰も手を挙げなかったら河内に旗艦をやってもらう事はもう決定事項だったんで」

 

「なんやそれ!」

 

 刹那、会議室内に笑いが起こり少しばかり緩やかな空気が漂う。

 

 履歴書の経歴を見て連合艦隊旗艦の経験があるのは知っていたので、河内を自分の艦隊旗艦に据えるのは半ば決定していた。

 しかし、自発的に旗艦を務めたいと申し出る者がいれば、それを無下にせずにチャレンジさせるつもりでいたのも事実だ。

 

 あ、因みに紀伊も元は第二艦隊の旗艦の経験があるので紀伊でもよかったのだが。うん、イケメン君には潮風と額に輝く汗が良く似合うと思って考えてはいなかった。

 別にイケメンを傍に置いてたら自分の立場がないとか、そんな私怨めいた理由からでは断じてないんだからね。本当だからね。

 

「それじゃ、河内には飯塚艦隊の旗艦として、そして秘書艦として艦娘側から自分を補佐してもらいたい」

 

「ん? 提督はん、なんや秘書艦って」

 

「まぁ、先任伍長みたいなものかな」

 

 秘書艦とは、艦隊の規律及び風紀を維持すべく下の者達に服務の指導を行い。また、艦娘と言う立場から、同じ艦娘達と上官である提督とのパイプ役を担い。艦隊の融和団結を図る役割も担っている。

 その為任命された者には、責任感や協調性、それに知識や技能・統率・指導力等といった高いスキルが求められる。

 

 その他にも、様々な業務や雑務をこなさなければならないなど。文字通り多忙な職務なのである。

 

「でも、元連合艦隊旗艦を務めたことのある河内なら大丈夫だよな」

 

「……せ、せやな」

 

 思った以上の仕事量をこなさなければならないと感じ取った河内は、若干顔を引きつらせている。

 

「安心しろ、幾らなんでも一人でこなせるような仕事量じゃないから、ちゃんと補佐役の人員が本土から送られてくる手筈になってる」

 

「なんや、それ聞いたらちょっとは安心したわ」

 

「それじゃ、改めて、よろしくな河内」

 

「は! 戦艦河内、旗艦及び秘書艦の任、拝命いたします!」

 

 こうして旗艦及び秘書艦が決定すると、次いで戦隊の編成に移る。

 

「と言っても、残りの全員を第一戦隊とすればいいだけだし。……紀伊、第一戦隊の旗艦を頼めるか?」

 

「あぁ、構わない」

 

「よし、では第一戦隊は戦艦紀伊を旗艦とし、駆逐艦の吹雪・叢雲・漣・電・五月雨の計六隻をもって編成する」

 

「戦艦紀伊、任を拝命いたします!」

 

「吹雪、同じく拝命します!」

 

「叢雲了解、拝命するわ」

 

「了解ですご主人様! 漣頑張っちゃいまーす!」

 

「電も頑張るのです」

 

「わ、私も! 五月雨も一生懸命頑張ります!」

 

「うん、皆よろしく!」

 

 こうして艦隊運用に必要な最低限の任命が終わり、とりあえず一端小休止を挟むべくコーヒーブレイクをする運びとなる。

 

「所で提督、この後はどの様な予定を立てているんだ?」

 

「ん~、とりあえず艦隊として初陣を果たさなくちゃならないから、近海の哨戒を考えてる。あ、でもその前に、今日やって来る手筈になってる補佐役の人員達と合流してからだな」

 

「いつ頃こちら(ラバウル統合基地)に到着予定なんだ?」

 

「輸送機で必要な物資と一緒にやって来る筈だから、到着すれば基地司令部の方から連絡が……」

 

 と言っていたそばから、会議室に設けられている電話が鳴り出す。

 

「はい、はい……、分かりました」

 

 受話器を取り伝えられたのは、タイミングを見計らったように、基地に併設されている軍用飛行場に補佐役の人員達を乗せた輸送機が到着したとの連絡であった。

 

「丁度やって来たみたいだ、よし、皆で出迎えるぞ」

 

 日本から遥遥ラバウルへとやって来た者達を出迎えるべく、自分達は会議室を後にすると併設されている軍用飛行場へと足を向けるのであった。

 

 

 軍用飛行場へとやって来た自分達は、エプロンに停まり積荷の積み下ろし作業を行っている、空色に塗装された一機のC-130輸送機へと近づく。

 そして、積み下ろし作業の指示を飛ばす、自分と同じく極東州海軍の幹部用軍服を身に纏った人物に声をかけるのであった。

 

「よ、遠路遥遥お疲れ」

 

「あ、先輩」

 

 声をかけ振り返ったのは、嘗て呉鎮勤務時代同じ参謀部に勤務していた後輩の一人。

 谷川 至恩(たにがわ しおん)、眼鏡がトレードマークの二十三歳男性。階級は大尉だ。

 

 そして、本日より、自分の副官として活躍してもらう事になる人物だ。

 

「副官が付くと書かれてた時は誰が来るかとウキウキしてたが、まさか後輩のお前だったとな」

 

「酷いですよ、先輩。……でも、見ず知らずの方よりも、知り合いの僕で少しは安心したでしょ?」

 

「ま、少しはな……。あ、それから、一応今は職務中だから、自分の事は飯塚中佐と呼べよ」

 

「了解しました、飯塚中佐」

 

 こうして、谷川との会話を楽しみ終えると、次いで谷川に自分の後ろで控えていた河内達を紹介し始める。

 

「あぁ、そうだ大尉。先に紹介しておく、我が飯塚艦隊の旗艦兼秘書艦の戦艦河内」

 

「よろしゅうな!」

 

「で、第一戦隊の旗艦紀伊以下五名だ」

 

 谷川に簡単な紹介をすると、案の定と言うべきか、早速河内と紀伊の事について食いついてきた。

 

「せ、先輩! 河内って、あの弩級のじゃないんですか!? そ、それに、紀伊って、ど、どう見ても男性なんですけど!」

 

「まぁ落ち着け、大尉。自分だって、どうして実在した記録のない軍艦が艦娘として建造されたのか、しかも紀伊は男性としてだ。その見当もついてないんだ。聞かれても困る」

 

「で、でも先輩。実際に、二人はこうして目の前にいるじゃないですか」

 

「って言われてもな。艦娘建造に関する事は専門家じゃないから推測のしようも……」

 

「あ、なら先輩、聞いてみましょうよ、専門家の意見!」

 

「専門家の意見?」

 

「はい、一緒に来た人員の中に技術補佐役の方がいらっしゃいますから」

 

 そう言うと谷川は、積み下ろし作業を手伝っている者の中からピンクの髪をした女性に声をかけると、自分達のもとへと呼び寄せる。

 

「何か御用ですか?」

 

「明石さん、こちら今日から僕達の上官になる飯塚艦隊司令長官の飯塚 源中佐」

 

「よろしく」

 

「はじめまして、飯塚提督。技術関係の補佐、工廠での業務を補佐したり、艦娘達の、人間で言う体調管理をサポートしたりします、工作艦、明石です」

 

 目の前で敬礼したその女性は、どうやら艦娘だったらしく、自らを工作艦の明石と名乗った。

 成る程、艦娘に関する技術的な疑問等は専門知識を得ている艦娘に聞くのが一番か。確かにこれは適材適所だな。

 

 返礼し手を休めたところで、いよいよ明石に疑問をぶつけてみる。

 

「ふむふむ、それは興味深いですね」

 

「明石、君の見解を聞かせて欲しい」

 

「……分かりました、飯塚提督。これは間違いありません!」

 

 生唾を飲んで、明石の言葉に耳を傾ける。

 

「これは、……これは『ときめきゴルゴームクライシス』の仕業に違いありません!」

 

 そして、次の明石の言葉を聞いて、確信した。聞く相手を間違えたと。

 

「よし、要約すると分からんって事だな、わかった。あ、明石、もう作業手伝うのに戻っていいぞ」

 

「それでは、失礼します。……おのれ帝国、ゆ゛る゛さ゛ん゛」

 

 何やら戻り際に謎の言葉を残していった明石。あの艦娘()、大丈夫だろうか。

 

「あ、あれでも職務には忠実と評価されてますから、大丈夫ですよ先輩」

 

「ならいいけどな」

 

 結局、専門家でも河内と紀伊が建造された謎は解明される事なく。真相は当分闇の中を漂っていそうだ。

 一応上には報告書を出しておくので、もしかしたら今後、何かしら糸口がつかめる日が来るかもしれない。

 

 とりあえず今は、有力な戦力が手に入ったことを喜んでおこう。

 

 

 その後積荷の積み下ろし作業を手伝い、積み降ろした物資を官舎の方へと運び込み。

 昨日の安い事務所のような執務室を、立派な家具が並べられたものへと模様替えが完了した所で、再び会議室へと全員を集合させる。

 

「えー、先ずは、遠路遥遥ラバウルへの長旅、ご苦労さま! 今日来て下さった皆のお陰で、昨日とは見違えるほどこの官舎は立派になった」

 

 先ほど会議室を後にした時とは、目の前にいる人数は桁違いに増えている。

 

「そして、必要な人員・物資、そして艦娘達も揃い。晴れて、飯塚艦隊は本格的に始動する事が出来るようになった」

 

 目の前にいる面々の顔を見渡し、少しの間を置いて、締めの言葉を口にする。

 

「これより、飯塚艦隊は本格始動を開始! 暁の水平線に勝利の文字を刻む!!」

 

「飯塚艦隊司令長官に敬礼!!」

 

 河内の号令と共に敬礼する面々の姿を見渡し、彼ら彼女らと共になら、どんな困難も乗り越えていけると思うのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。