無事に昼食を食べ終え、河内も衣服にカレーうどんの汁を付けなかったので、ご希望通り食堂の帰りにPXに寄って甘いものを買って帰り。
再び執務室に戻ると午後からの書類仕事をこなしていく。
そして、ある程度仕事に区切りがついた所で、河内に声をかける。
「河内、工廠行くぞ」
「ん? なんや急に」
「ずっと書類と睨めっこしていると疲れるだろ。だから、息抜きを兼ねて工廠で新しい艦娘を建造しようと思ってな」
「昨日あたしらを建造したとこやのに、もう建造するんかいな」
「第一戦隊分だけだと、色々と出来る選択肢も増えないからな」
「そうか、分かった」
伸びをして共に工廠に向かうことを了承した河内と共に、執務室を後に工廠へと足を運ぶ。
「所で提督はん、狙う艦種とかあるんか?」
「そうだな……。出来れば何かと使い勝手の良い巡洋艦あたりが欲しいな」
「空母とかはええんか?」
「まぁ、今後の事を考えれば航空戦力なんかも整備していかないといけないけど、今は、巡洋艦や駆逐艦中心かな」
河内とやり取りを交しながら工廠へとやって来た自分は、工廠で妖精達と共に汗水流している明石に声をかける。
「はいはい提督、どうしたんですか?」
「建造したいんだ、今出来るか?」
「はい、バッチリ!」
「なら四つ全てで建造する」
「了解です!」
プレハブ事務所へと赴き、慣れた手つきでタブレットに有線を接続しようとする。
すると、それを明石に制止させられる。
「あ、提督。ルーターを追加しておいたので、もう有線接続しなくても大丈夫ですよ。ほら、ここを押していただくと」
「お、本当だ。助かる」
朝の第一印象で多少心配していたが、谷川の言う通り、明石は誠実に職務を果たしてくれるようだ。
「さてと、一番と二番は巡洋艦で、三番と四番は駆逐艦をと……」
モニターにそれぞれの数値を入力すると、建造開始ボタンを押す。
すると、四つのモニター全てに建造時間が表示され、どうやら四つとも無事に建造が開始された様だ。
因みに地域と年代は、河内達の時と同じだ。
こうしてそれぞれに表示された建造時間を見るに、一・二番は一時間と一時間半なので狙い通り巡洋艦。
三・四番も二十分なので駆逐艦だ。
ただ、個別にどれが建造されるかは、完了してからのお楽しみだな。
「提督、高速建造材を使いますか?」
「いや、ちょっとゆっくりしてからだ。駆逐艦のが完了するぐらいに一番と二番を頼む」
「了解です」
「あ、ここの給湯室使うぞ」
「どうぞ」
工廠に来たのは息抜きも兼ねているので、事務所の給湯室でお茶をいれると、三・四番の建造が完了するまで事務所内でゆっくりと過ごす。
「はぁ~、提督はんのいれてくれたお茶、美味しいな」
「褒めても何もでないぞ」
「すいません、私も分まで」
「いいさ」
椅子に座りながら、手にした湯飲みからほっこりする温かさを感じながら、まったりとした時間を過ごす。
ただ、事務所の外では相変わらず工廠らしい、穏やかとは程遠い機械音等が響き渡っている。
こうしてお茶を飲みながら息抜きしていると、妖精の一人が明石に近づき建造完了の報告を行う。
「では、残りの二つに高速建造材を投入します」
明石の報告と共に、高速建造チームが出動する。
何度聞いても、発せられる台詞の数々は、世紀末野郎
と、お約束な光景を眺めながら湯飲みに残っていたお茶を飲み干すと、残りの建造も完了し新たな四人の艦娘との対面時間となる。
「天龍型一番艦、そう、オレの名は天龍だ。フフフ、どうだ、怖いか?」
「ごきげんよう。最上型四番艦、神戸生まれのお洒落な重巡、わたくし熊野ですわ!」
「響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ」
「初めまして! 子日だよぉ! ね・の・ひ、艦名読み間違えないでね!」
新たに建造された面々が各々の自己紹介を終えた所で、自分達の自己紹介を始めていく。
「はじめまして、今後君達の上官になる飯塚艦隊司令長官の飯塚だ。よろしく頼む。……で、隣にいるのが」
「飯塚艦隊旗艦兼秘書艦を務める戦艦河内や! 皆よろしゅうな!」
自分たちの自己紹介を終えた所で新顔四人の反応を窺うと、何やら困惑の様子が見られる。
あぁ、これは昨日河内が吹雪達五人と初めて対面したときの反応にそっくりだ。
「あぁ、因みにだが、河内は君達の……」
「んだよ、この艦隊は随分と古臭い戦艦を旗艦に据えてるんだな」
河内の説明をしようと思った矢先、まるで四人の心情を代表するかのように、天龍が口火を切り始めた。
「いや、違うんだ。彼女は君達の……」
「ったく、同郷出身として恥ずかしいぜ。大勢の前であんな醜態晒してよ」
あぁ、そう言えば天龍が建造されたのって前世の河内と同じ横須賀海軍工廠だったな。
確か前世の河内が爆沈した頃には、既に天龍は進水を果たしてたか。なら知らない仲でもないな、艦違いだけど。
にしても、そこまで辛辣にズバズバと言わなくても。
「あ、あぁ、天龍。ちょっとその前にだな……」
「世界水準を超えようとして、結局超えられなかった奴の下で働くのは、何か気分いいもんじゃねぇな。あ、でもよ、世界水準をかるーく超えてるオレと旗艦の座を交代するって言うんなら、快く引き受けてやるぜ」
結局最後まで言いたい放題言った天龍。
当然、河内はそんな事言われて笑って受け流すような性格じゃない。
恐る恐る横を見てみれば、そこには、戦艦クラス、否、超々々々弩級の眼光をした河内の姿があった。
あ、背中から何か赤黒いオーラのようなものが見える気がする。
「えぇ、やん。ええ度胸やん。……やっぱ天龍は天龍やったわ、この威勢、ええやん」
「か、河内。君は秘書艦なんだから事はもっと穏便に……」
「っしゃおら!!!! ええ度胸やないか、たかが三五○○トン程度の小娘が!!! そんな大口叩くんやったらやったろうやないか! オラッ!!
その河内の威勢に、工廠内の音が一瞬消えたような気がした。
さ、流石は前世の知ってる大和型を越える超大和型。その迫力、まさに超々々々弩級。
あぁ、熊野達三人が寄り集まって尻込みしている。これは完全にトラウマものだろ。
「よ、よ~し、い、いいぜ。や、やってやろうじゃんか……よ」
天龍も負けじと威勢を保ってるが、あれは完全に河内の気迫に飲まれてるな。
目には涙が浮かんでいるし足も震えてるし、もはや虚勢でしかない。
「ほないこか。……提督はん? ちょっとこの聞き分けのない
「ほ、ほどほどでお願いします」
「ほな、
「ひっ! ……あ、お、おぅ」
ドスの利きまくった声と共に天龍を連れて工廠を出て行く河内。おそらく桟橋に行ったのだろう、係留している自身の
「あの提督、止めなくてよかったんですの?」
「ん、あぁ。多分、怒った河内を止められそうなのは
「そんな暢気でいいんですの?」
「河内との付き合いはまだ浅いが、あいつは何だかんだと面倒見のいい奴だと思ってるさ。……あ、そうそう、さっきは言いそびれてたが、河内は君達の認識してる河内とは別の軍艦なんだ」
河内の事に関する簡単な説明を三人に行うと、案の定な反応が三人から返ってくる。
こうして三人に河内の出生の件、序に紀伊の事も含め説明し終えると、次いで事務所に足を運ぶと事務所内に設けられている電話に手を伸ばす。
因みに、事務所内には関わりたくなかったのか、いつの間にか明石が隅の方で縮こまるように隠れていた。
「あぁ、谷川か?」
「どうしたんですか、先輩?」
「急で悪いんだが、基地司令部のほうに訓練海域の使用許可を取ってほしいんだ」
「本当に急ですね。どうしたんですか?」
「いや、まぁ……。河内が今し方建造した新入りに手ほどきをしたいって言い出してな。それと演習弾の積み込みも頼む」
「……分かりました。直ぐ確認します」
何かを察してくれたんだろう、谷川は折り返し電話すると一端電話を切り、使用許可の確認作業を始めてくれた。
それから程なくして、再び谷川から連絡が入り、訓練海域の使用許可が取れたことを報告してくる。
「分かった。それじゃ、河内達に連絡して訓練海域に行くように言っといてくれ。あぁ、それから、訓練開始の合図は自分が司令室から出すともな」
「了解です」
受話器を置いて事務所を後にすると、官舎に戻るべく工廠を後にしようとする。
「あ、あの、提督」
「ん?」
「わたくし達は、どうすればよろしいのですか?」
「あ、しまった。河内に案内とかさせる予定だったんだ。……仕方ない、三人とも付いておいで、司令室に行く」
今から案内などしている時間もないので、三人には自分と共に司令室で河内達の事の成り行きを見守ってもらう事にした。