転生提督の下には不思議な艦娘が集まる   作:ダルマ

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第15話 これより本格始動します その7

 数十分後、自分の姿は官舎地下の司令室ではなく桟橋にあった。

 桟橋には、今し方錨が下ろされた河内の艤装を始め、第一戦隊の艤装が並ぶ。

 

 なお、天龍の艤装に関しては損傷が酷い為、たった数十分前に出たばかりのドックに再び舞い戻ることとなった。

 

 そして、自分の目の前には、そんな艤装を解除し並び立つ河内達の姿があった。

 

「提督はん、何とか無事に帰還したで!」

 

「あぁ、お帰り」

 

 頬に少々煤が付き、衣服も端が少しばかり焼け焦げてはいるが、殆ど訓練にいく前と変わらぬ河内。

 

「天龍も、お帰り」

 

「お、おぅ……」

 

 対して、刀は折れ、ニーソックスは使い物にならない位破れ、頭の謎の装備からは火花が散っている。

 頬や腕など、各所に煤が付き、学生服を思わせる衣服は無残に破れ、手で隠していなければ大事な部分が露になっているであろう。

 

 そんな見ただけでボロボロな状態だと分かる天龍が、河内の横に並び立っている。

 

 何故両者の状態にこれ程の違いが現れているのか、それは、艤装の状態がそれぞれ異なるからである。

 河内は小破程度で、天龍にいたってはもはや大破と言ってもおかしくないほどの損傷具合なのだ。

 

 とここで、何故艤装の損傷具合が彼女達の衣服に反映されているのか、疑問に思う者もいるだろう。

 

 これにはちゃんと理由がある。

 それは、人間以上の大きさを有する艤装では損傷具合を一目で正確に測る事が難しく、素早く適切な対処をしかねない事態になる可能性もある。

 だが、人間と等身大の人工人体であれば、一目で損傷具合を正確に測り適切な対処を行えるのだ。

 

 それに、鉄の塊にしか見えない艤装と、同じ血が通っているように思える人工人体とでは、それが貴重な戦力であると言う重みの感じ方も異なると言うものだ。

 

 と、御託を並べていたが、自分自身も何故艤装と衣服がリンクしているかについては正確な所は分からない。

 だが、思うに。この謎のリンクについては安全に艦娘開発者の趣味だろうと思わざるを得ない。

 

 艦娘には駆逐艦に代表される幼児体形の容姿を持つ者もいれば、片や河内や天龍のようなグラマラスな容姿の持ち主も多い。

 そんな彼女達が戦闘から帰ってきて目のやり場に困るような姿で再び戻ってくるのだ。

 これを開発者の趣味と言わずして何と言う。視覚的に分かりやすく表現する方法など、他にも幾らでもあるだろうに。

 

 だから言いたい、例え伝わらなくても開発者に一言言いたい。物申したい。

 

 

 けしからん、いいぞもっとやれ。どんどんやれ。

 

 と。

 

 

「アホか!!」

 

「って! いてぇ!!」

 

 なんて煩悩を脳内で垂れ流していたら、河内からハリセンでツッコミを入れられてしまった。

 全く、相変わらずベテラン水測員にも引けを取らない反応を見せやがる。

 

「ボロボロになって帰ってきて考えるんがそれか!?」

 

「いいだろ!! 自分だっていたって健全な男の子なんだぞ!!」

 

「うわ! また開き直りおった!」

 

 刹那、桟橋に笑い声が響くと、改めて全員無事に帰還してくれたことに感謝の言葉を述べる。

 

「それじゃ、天龍、君は工廠の入渠室で身体のメンテナンスを……」

 

 そして、本題の後処理へと入る。

 損傷具合の酷い天龍には、入渠室と呼ばれる工廠に設けられた部屋で身体に反映された傷を癒すように指示する。

 

 なお、艤装が本体である為、必ずしも入渠室でメンテナンスを行わなければならない事はないのだが。

 どうも定期的にメンテナンスを行わなければ人工人体内にエラーが蓄積し、艤装装備時に深刻な不具合が生じる可能性があるのだとか。

 なので、入渠室でのメンテナンスは欠かす事は出来ない。

 

 因みに、入渠室内は前世の各種媒体で描かれたお風呂のようなものではなく。

 酸素カプセルのような装置が並べられ、それらを使用している。

 

 ただし、やはり共に命をかけて戦う者同士、信頼関係構築の一環として基地内には健康ランドのような温泉をテーマにした娯楽施設が設けられている。

 同施設は艦娘も利用可能で、基地内の多くの艦娘達が日夜利用している。

 

 なお、公共浴場なので当然の如く混浴なんてものはない。

 

「第一戦隊は報告書を作成し提出、で、河内だが」

 

「ほいな」

 

「と、その前に、はいこれ」

 

「はわー! 間宮亭の羊羹やん!」

 

「約束だからな」

 

「おおきに! 提督はん」

 

「じゃ、甘いものも買ってやったし、河内も頑張って報告書作ってくれよ」

 

「……へ?」

 

「へ、って、お前な、当たり前だろ。今回の騒動の中心は河内、お前なんだから」

 

「えぇぇぇっ!!」

 

 桟橋に来る途中にPXで買っておいた羊羹を手にし笑顔になったかと思えば、次いで報告書の三文字に慌てふためく河内。

 全く、陸にいても海にいても、忙しい奴だな。

 

 ま、嫌いではないが。

 

「あ、あかん、あたしも入渠せなあかんな~、頭がくらくらする~」

 

「……じゃ、羊羹没収な」

 

「うそやん」

 

 こうして指示を出し終えると、ぶつぶつと独り言を漏らす河内を引き連れ、再び官舎へと戻るのであった。




いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。

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