各々がそれぞれに与えられた業務をこなし、特にトラブルらしきものもなく順調に時間は進む。
河内が燃料切れと称して甘いものを強請ってはいたが、もはや慣れたもので、適当にあしらうと頬を膨らませる河内を他所に自身の書類の処理に勤しむのであった。
「なぁ提督はん、ちょっとだけでええからさ~」
「……駄目だ、ほら、手動かせ、手」
「むぅ」
「それに、そんなに間食ばっかりしていると……、
「ぅ! せ、せやけど提督はん! あ、あたしは艦娘やから、普通の女の子とはちゃうし、ちょ! ちょっと位間食多くたって、べべ、別にバルジが増設なんて……」
「そう言えば噂で聞いたんだが。艦娘でもあまり間食し過ぎたり量を食べ過ぎたりすると、ナノマシンが処理しきれずどんどん体内にあまりものが溜まって、人間同様バルジが増設されてくって……」
「……」
さて、河内が静かに自身の仕事に勤しみ始めた所で、自分も区切りのいい所まで頑張って勤しみますか。
執務室内の壁に設けられている時計の針がいい頃合を示しているのを確認し、書類も区切りのいい所まで終わったのを確認すると、河内に声をかける。
「おーい、河内、そっちはどうだ? 一区切りつけたか?」
「うん、ついたで」
余程増設バルジの事が効いているのか、いつにも増して反応が薄い。
「なら会議室に行くか」
「せやな」
そんな河内を引き連れ執務室を後に向かったのは会議室だ。
何故会議室に向かったのかと言えば、残り数時間に迫ったマッケイ少佐との演習に関して、参加メンバー等を決める為である。
「よーし、全員集まってるな」
ホワイトボードを背に、会議室に飯塚艦隊所属の全艦娘、及び艦息紀伊が集まった事を確認すると、会議の開催を宣言する。
「では先ず、皆気になっていると思うが、今回予定されているマッケイ少佐との演習に参加してもらうメンバーを発表する」
演習と言っても全員が参加出来る訳ではない。
そもそも、全員参加となると明らかに数の差で勝敗がついてしまい、演習の意味をなさなくなる。
なので、参加できるのは一個戦隊分のみだ。
当然、参加できない面々には、各々その間別の仕事を与える。
「旗艦を熊野、以下天龍・球磨・漣・響・電の計六隻をもって演習参加の特別戦隊を編成する」
自分の口から参加メンバーが発表されると、選ばれた面々は各々に意気込みを口にし。
選ばれなかった面々は、選ばれた面々に声援を送ったり、安堵したり。その反応は様々だ。
因みに、参加メンバーに選ばれた軽巡洋艦の球磨は、金剛や朝風と共に新たに加わった艦娘だ。
名前のせいなのか、語尾にクマとつくのが特徴であるが、元気で、長女である為かそれでいて面倒見が良かったりもする。
「それじゃ、今回不参加となった面々には午後からそれぞれの仕事を与えるので、河内、プリントを」
「……」
「ん? 河内? おーい、どうした?」
「……でや」
「え? 何か言ったか?」
「なんで、なんであたしが参加できへんのやぁーっ!」
配布するプリントを持ったままうなだれていたかと思えば、次の瞬間には自身が参加できなった事に不満を爆発させる河内。
「折角余分な脂肪をね……、やなかった! 折角戦艦揃えてんねやから、相手に遠慮なんかせんと使ったらええやんか!」
その際、勢い余って本音が漏れてしまったようで。
どうやら演習を適度なダイエットとして考えていたようだ。
「河内のfat-burningは兎も角、どうして私達Battleshipがメンバーに選ばれないんデース! 私と紀伊のThe power of loveがあれば、演習なんてPerfect gameネー!!」
「金剛、俺はお前とそんな関係になった覚えはないぞ」
「今はそうでなくても、何れ私のMy darlingにしてみせマース!」
「あー! 駄目だよ金剛さん! ご主人さまは私や五月雨ちゃんのご主人さまなんだから! 独り占めは駄目、ね、五月雨ちゃん」
「は、はい! 紀伊さんは、皆で分け合うものです!!」
「……俺は小動物でもないんだが」
「ちょ、まってや金剛! あたしは別にダイエットしたいから演習したいなんて言ってないやん!」
なんて観察していたら、次いで金剛まで参加できなかったことに対して不満を漏らし始める。
そして、それに端を発して、話の流れがどんどん別の方向へと向かい始める。
「ほらほら! 全員私語を慎め! 今は午後の演習とその間の割り振りについての会議だ、関係のない話は仕事が終わった後でするように。……それと、紀伊の
なので、渾身の駄洒落と共に場を沈めようとしたのだが。
何だか、思いのほか駄洒落が凄すぎて、皆想像以上に黙りこくってしまった。
「提督はん、提督はん。ハッキリ言って、むっちゃスベッてんで」
「……、えーそれでは、納得できない者もいるようなので、何故今回の演習に戦艦を参加させないのか、その理由を説明していこうと思う」
「あ、話題変えおった」
分かってはいたが、改めて声に出して指摘されると、色々と恥ずかしい。
なので、恥ずかしさを紛らわせる意味合いも込めて、演習に戦艦を参加させない理由を説いていく。
「演習は文字通り、他の提督が指揮する艦隊と実戦を想定して行う訓練だ。だが演習は互いが有する艦娘達の錬度を確かめる意味もあり、その為、演習は実力が拮抗しているであろう相手とのものが常となる」
提督の階級や保有する艦娘の数、及び実力や戦力値等が拮抗、或いは差が少ないもので演習は組まれる事が多い。
「しかし、当然そう都合のいい様に同列の者同士で組めるものではないので、その場合は、事前に参加可能艦種を制限したり、同数や個艦性能の差を同程度に調整したりと、様々な制約を設ける事もある」
「それじゃ、今回の演習もその制約が設けられているんデースか?」
「いや、今回に関しては特に設けられてはいない」
「せやったら、なんであたしら戦艦は外したんや?」
「さっきも言ったように、演習は実戦を想定して艦娘達の錬度を確かめる意味もあるんだ。確かに戦艦は頼もしい存在であるが、だからと言って頼りきりにしていいものでもない。実戦では、いつも戦艦が同行しているとは限らない。だから、戦艦がいなくとも、困難な状況を切り抜ける確かな手応えをこの演習で感じ取って欲しい。その思いから、今回は戦艦をあえて外させてもらった」
自身の説明に、耳を傾けていた面々は納得したような表情を見せる。
「まぁ、後は……、重巡以上を有していない少佐相手に戦艦出すのは大人気ないかなって思ったり、かかる資材の事も考えると、戦艦出さなくてもいいかなって思った次第で……、だって実戦じゃないし」
「本音はそこかいな!」
そして、最後にオチもついて笑いが起こった所で、改めて演習不参加の面々に与える仕事について、河内からプリントを配布してもらう。
「では、これで会議を終了する。昼食を確りとって、皆午後からも頑張って欲しい、以上、解散」
その後は滞りなく進み、会議が終わりを迎える頃には、丁度昼食の頃合となっていた。