転生提督の下には不思議な艦娘が集まる   作:ダルマ

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第18話 演習、始めました その3

 昼食を取り終え、少しばかりの休憩時間を挟み、午後からの業務が開始されると同時に官舎内は慌しくなっていく。

 演習に参加する面々は会議室で演習相手の予習、その他の面々も艤装と共に海に出た者や書類と睨めっこしている者など、各々が与えられた仕事を始めている。

 

 そして、そんな中でただ一人、誰よりも熱心に取り組んでいた者がいた。

 

「ほな提督はん! ちょっと基地内走ってくるわ!」

 

 誰であろう河内だ。

 しかも、業務とは何の関係もない、自身のバルジ増設予防の為にだ。

 

 昼食中、肥満対策にはやはり運動が一番。なんて話をしてしまったものだから、基地内を走りこんでくるといった流れになってしまった。

 実際にはバランスの良い食事や適度な運動適度な睡眠、それらバランスの良い生活習慣を持続する事が肥満対策には一番良いのだが。河内の耳には届いていなかった様だ。

 

 最も、先の肥満対策は人間に当てはまるもので艦娘にも適用されるかは疑問符がつくのだが。

 本人のやる気を削ぎそうなので、口にはしなかった。

 

 にしても、演習観戦に秘書艦の同席は自由となっているからといって、その間自身の為に走りこむって。

 色々と片付けておいて欲しい書類とかもあったんだけどな。

 本当に、河内は色んな意味で芯がしっかりしてるな。涙が出るよ。

 

 

 さて、そんな一幕も経て、いよいよ演習の時は訪れた。

 既に演習参加の面々は艤装と共に演習海域へと赴き、自分とマッケイ少佐は演習観戦の為、基地司令部内に設けられている観戦室へと移動している。

 

 眼前に見える巨大な机の上には演習海域の海図が広げられ、その上には、演習に参加する艦娘各々の艤装のモデルが置かれ。

 それらを現在進行形で動かさせるのは、部屋の端々にいる機材と睨めっこしているオペレーター達だ。

 まさに卓上にてリアルタイムで演習内容が表示されるシステムが、そこには設けられていた。

 

「それでは、演習を開始したします」

 

 演習開始が告げられ、いよいよ自分とマッケイ少佐が自信を持って送り出した艦娘達の演習が幕を上げた。

 

「よっしゃ、切り込み役はオレに任せろ!」

 

「ちょっと待ってください! 相手にはわたくしと同じ重巡がいらっしゃいますのよ、先ずは砲撃による牽制を……」

 

「んなチマチマした事してられっか! 一気に切り込んで必殺の魚雷を叩き込んでやるだけさ!」

 

「球磨は熊野の意見に賛成クマー」

 

「ぁぁ、もう何だよ! ならオレだけでも切り込むぞ! 熊野、砲撃で支援よろしくな!」

 

「ちょ! ちょっとお待ちなさい天龍さん! 勝手な行動は許しませんわ!!」

 

「ハラショー、相手は見事な艦隊運動だね」

 

「響ちゃん、感心している場合じゃないのです!」

 

「はにゃ~、これもうだめぽ……」

 

 のだが、室内に流れる艦娘達のやり取り、そして卓上で動かされるモデルの動きから、もはや熊野達の散々たる結果が嫌でも伝わってくる。

 

 マッケイ少佐の演習組は、旗艦の重巡オーストラリア以下ホバートとアデレードの軽巡二人、そしてアルタン及びアドミラルティW級のヴォイジャーとウォーターヘンの編成で臨んでいた。

 個別のカタログスペック等を抜きにすれば、編成や数など、全体としては拮抗していた。

 なので、勝敗を左右するのは錬度や味方同士の連携など、日々の訓練で培われたものとなるのだが。

 

 ハッキリ言って、今の熊野達には圧倒的にそれらが足りなかった。

 

 初動は互いに水偵を出して相手の位置を特定、そして、ほぼ同時的に相手の位置を特定した所で、いよいよ本格的な戦闘が開始された訳なのだが、その結果は言わずもがな。

 勝手に突出した天龍は見事に相手の集中砲火を受けて早々にリタイア。この時点で既に数的有利を失い。

 更に天龍を囮として残りの五人で相手の後背から襲い掛かろうとするも、艦隊運動が上手くいかず。

 

 結果、早々に天龍をリタイアさせた相手方は、その一糸乱れぬ見事な艦隊運動で残り五人にも白旗を挙げさせたのであった。

 

「……はぁ」

 

 演習終了が告げられ、自分は一番にため息を漏らす。

 まさかここまで不甲斐ない結果になろうとは思わなかったからだ。

 

 相手は自分達よりも艦隊として一日の長がある為、勝てなくても良いとは思ってはいたが、まさか一隻も白旗を挙げさせる事無く一方的な結果になろうとは思わなかった。

 文字通りの完敗だ。

 

「お疲れ様でした、飯塚中佐」

 

「あぁ、お疲れ様。……すまなかったマッケイ少佐、自分達の錬度不足で演習と言うよりもただの射撃訓練みたいになってしまって」

 

「いえ、謝らないで下さい、飯塚中佐。誰だって最初のころはあのような感じで、自分も最初のころは同じでした。ですから、頑張ってください飯塚中佐。今度演習する時、自分を驚かせてくれるほど成長した姿を期待しています」

 

「ありがとう、マッケイ少佐」

 

 マッケイ少佐の嫌味の感じられない言葉を受け、自分の中の肩の荷が少しばかり軽くなった気がした。

 そうだ、これは演習なんだ、不甲斐なくたっていいじゃないか。ここから問題点を見直し、実戦に向けて問題点を訓練で克服していけばいい。

 

「では、失礼します」

 

「ありがとう、マッケイ少佐」

 

 再度礼を言い、一足早く観戦室を後にするマッケイ少佐の背を見送りながら、今後の訓練メニューなどを頭の中で組み立てていく。

 そして、一応問題点克服の為の訓練メニューが組みあがると、自分も観戦室を後に官舎へと戻る。

 

 官舎に戻る途中、マッケイ少佐がベイカー基地司令から何やら感謝されていたが、恐らく自分との演習に完勝した事が誇らしいのだろう。

 

「あ、提督はん? 演習終わったん?」

 

「あぁ、終わったぞ」

 

「で、どやった?」

 

「負けた」

 

「あ~、やっぱりな」

 

 そしてもう一つ、戻る途中で走り終えた河内とも合流し、揃って官舎へと戻るのであった。

 

 

 

 官舎に戻り、演習に参加した熊野達が入渠室から戻ってくるのを書類を処理しながら執務室で待つ。

 

「提督、艦隊帰投いたしましたわ」

 

「帰ってきたクマ~」

 

「入渠室でお肌も心もリフレッシュ! キタコレ!」

 

「体が軽くなったのです」

 

「入渠だよ、ドック入りだよ」

 

「皆お疲れ様」

 

 やがて、入渠室で演習の傷を癒してきた熊野達が戻ってくると、労いの言葉をかけた後、早速彼女達を引き連れて会議室へと向かう。

 会議室には、既に演習に不参加であった面々が一部を除いて集まっていた。

 

「えー、では早速だが発表する。今後一定期間を錬度向上期間とし、厳しい訓練のもと艦隊運動や連携等を向上してもらいたいと思っている」

 

「はきゅー、今日からは訓練の日だ」

 

「何だかしんどそうクマー……」

 

「あら、私達は戦う為にいるのだから、厳しい訓練をこなすのは当然の事よ。特に、不甲斐ない結果を残したのなら尚更ね」

 

「ぐうの音も出ないクマー……」

 

 突然の発表に思い思いの感想を零してはいるようだが、特に反対意見は出ていない。

 

「艦隊運動に連携、対艦及び対空射撃の訓練、それに回避行動等々。明日から錬度向上に向けてみっちりと訓練を行っていくから皆心するように! いいか、『月火水木金土日』の精神で臨むように!!」

 

「……提督、それを言うなら『月月火水木金金』だ」

 

「いや紀伊、そこはもっと淡々とではなく切れ良くツッコミ入れてくれないとだな……」

 

「あら? そう言えば、この手のやり取りの時は必ずツッコミ役でいるはずの河内さんの姿が見当たりませんわ?」

 

「天龍の姿もないデース」

 

「ん、あぁ。天龍は河内とマンツーマンで訓練する事にしたんだ。今回の演習を見ても、天龍には特別メニューが必要と思って」

 

「それで河内さんとマンツーマンですのね。でも大丈夫ですの? 先日の事もありましたし、トラウマの心配など?」

 

「……そこは、大丈夫だろ」

 

 その後詳細な訓練メニューを記載した資料を配布し、翌日からは、まさに身体に覚え込ませるかの如く濃密なスケジュールのもと訓練が行われた。

 弱音を吐きそうな者も中にはいたが、他の者の助けや励ましを受けながら、再び訓練に臨むのであった。

 

 因みに、河内とマンツーマンで訓練に臨んでいた天龍だが。

 ある日途中経過を見に行くと、河内の事を『姐さん』と呼んでいたので、即座に他の面々と一緒のメニューに戻して合流させた。




いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。
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