演習での散々たる結果を機に錬度向上の為の訓練を開始してから幾分かの日数が経過した。
最初はぎこちなさを見せていた艦隊行動も、今では、多少ぎこちなさが残ってはいるものの、滑らかなものへと変化している。
当然、実戦で要求される各種行動も正確でロスの少ない、まさに訓練の賜物と言った所だ。
勿論、ここ何日か頑張っていたのは訓練だけではない。
周辺海域での深海棲艦の脅威を警戒した哨戒活動や地元漁業の護衛活動も、当然行っている。
なお、数日前には日頃の訓練の成果が発揮され、深海棲艦のはぐれ艦隊と思しき小規模艦隊に対し見事勝利を収めている。
この様に、実務や訓練に精力的に取り組んでいる訳だが、問題がない訳ではない。
任務と訓練と休暇のローテーションを組むにはもう少し数が欲しい。
更には、現在保有する艦種ももう少し数を増やし任務や訓練にもっと幅を持たせたい。
特に空母は現在早急に整えたいものと考えている。
と言うのも、先だってはぐれと思しき深海棲艦側の軽空母、しかしどう見てもその外観はガミラス式三段空母、しかも初代。
じゃなかった、連合側命名『軽空母ヌ級』と哨戒行動中の第一戦隊が接敵。相手は何故か単艦行動だった為最悪の事態には至らなかったが、搭載していた艦載機の攻撃により多少の被害を被った。
この事から、やはり艦隊の対空防御策には空母と艦載機による航空戦力が望ましいとの考えに至り。
更には、軽空母が出現したと言う事は将来的に正規空母との接敵も考えられる事から、現在、空母を欲している訳なのだが。
「うーん……」
「またハズレだ。でも気を落とすな」
「またカーン、カーンすればいい」
「ねばぎーぶあーーーっぷ!!」
何故か空母が建造されない。
ここ数日、空母を建造しようと工廠に足を運んでは、空母が建造された筈の数値を打ち込んで建造を行っているのだが。
その結果たるや、もはや目も当てられない悲惨なもので。
正規空母はもとより軽空母、最悪航空戦力整備の為に護衛空母でもいいと思っていたが、全然建造されないのだ。
まさかの建造失敗、全戦全敗。年代・国籍問わず建造したのに全戦全敗。
何故、何故建造されないんだ。幾ら気まぐれとは言えこれはあまりに酷すぎる。
「……はぁ」
「そう落ち込むな、次がある」
「そうそう、継続はPOWWWWWWWEEEEEEERRRRRRR!!!!なり」
「全ての建造はカーン、カーンに通じている、だから、あきらめるな」
「てけてんてんてんてんてーん! never~ give~ up!!」
「えっと、提督、大丈夫ですよ。うん、次があります」
「はは、ありがとう」
妖精達や明石の励ましを背に、今回も建造失敗した悲しみを肩を落として表現しながら、官舎へと戻る。
執務室に戻り、自身の席に深々と腰を下ろすと、再びため息を漏らす。
妖精達や明石には次があるとは言われたが、そう言い続けられてもはや何回目か。ここまで建造されないと何か性質の悪い呪いにでもかかっているのではと疑いたくなる。
「……はぁ」
「なんやなんや提督はん、帰ってきたと思ったらそんな辛気臭い顔して?」
「分かってるだろ、河内。今回も建造失敗したんだよ」
「あぁ~、成る程。って事は、これで通算十回連続の大台突破やな」
「……言うなよ」
十回連続と言っても、毎回建造一つではなく、時には四つ全てで建造した事もあるので。もはや無駄になった資材の量は直ぐに補えるものではない。
「せやけど不思議やな。なんで
「さぁな、そんなのこっちが聞きたいよ」
「せやな」
「あぁ、よし、忘れよ! 兎に角仕事して忘れるぞ!」
溶かした資材はもはや戻ってはこない。ならば、次の為に気持ちを切り替え前を向かねば。
そして、その為には目の前の机の上に積まれた書類を処理する事が一番の方法だ。
「ほなあたし、気分転換になるよう珈琲淹れてきたるわ」
河内が給湯室で淹れてくれた珈琲の香りを楽しみながら、辛いことを忘れるべく、自分は一心不乱に書類の処理に専念するのであった。