転生提督の下には不思議な艦娘が集まる   作:ダルマ

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第21話 空母来る その3

 自己紹介の際に一番艦と付けていて事から、自分の世界では生まれる事のなかった同型艦が存在しているのだろうと予想していたが、まさにその通りだった。

 その生い立ちは、自分の世界の加賀同様軍縮条約によって戦艦から改装されたものであった。

 所が、この空母への改装を施されたのは加賀のみならず。自分の世界では標的艦として自沈処分となった『土佐』に加え、三番艦の『阿波』、四番艦の『讃岐』と言う影も形もなかった筈の二隻まで加えた計四隻に施されているのだ。

 

 まさか河内の世界の加賀さんは四姉妹の長女になっていようとは、驚かずにはいられない。

 しかし、四姉妹の長女。成程、だから河内の世界の加賀さんは気立てが良くて優しい女神のような性格になったんだな。

 ま、世の中には誰とは言わないが長女であってもだらしのない者もいる。だが加賀さんはそんな例には漏れてくれたようだ。

 

 閑話休題。

 

 さて、その他の戦歴に目を通してみるも、もはや自分の世界と似ているのは生い立ちの部分位で、後は河内や紀伊同様にパラレルワールドなものだった。

 開戦時の時点で既に次世代型と言うべき空母群が次々竣工或いは竣工間近であった為、河内の世界におけるMI作戦らしき作戦には参加しておらず、主に南方の方で活躍されていた。

 しかも大戦が進み次々に若く新しい後輩達が出てくるにつれ、次第に活躍の場を失っていった加賀さんは、結局大戦末期には主に訓練用の空母として運用され。

 河内同様終戦まで生き残ったものの、終戦後間もなく除籍され解体されている。

 

 なお、その他の戦歴に関しては、彼女は大戦中大規模な改装工事が行われている。

 これにより、四万トンに迫る基準排水量を誇り、大鳳や隼鷹型のような煙突と艦橋の一体型アイランドを有し。更には大戦中に大型化する艦載機に対応すべくカタパルトまで装備するに至った。

 

 ただカタパルトに関しては、加賀さんが訓練用の空母として運用することが決定していた為に装備されたもので、姉妹艦の土佐と阿波には装備されていない。

 

「成る程ね」

 

 履歴書の戦歴をとりあえず目を通し終え、大体分かったとばかりに加賀さんに履歴書を返す。

 と、河内が何か言いたげな表情で自分の事を見ているのであった。

 

「提督はん、提督はんもあたしらの事言われへんのちゃう?」

 

 河内の言う事が何を意味するのか、もはや語るまい。

 

 さて、小ボケも挟んだところでいよいよ空母が空母たる所以の艦載機についての話をしていこう。

 

「所で加賀さん」

 

「あの、提督様。私の事はさん付けせずに呼んでください」

 

「いや、その。何と言うか、自然とさん付けしたくなってしまって」

 

「なんやそれ、ほなあたしにもさん付けで呼んでや」

 

「……河内『産』」

 

「提督はん、文字にせんでもニュアンスで分かるで」

 

 くそう戦艦の癖にイージス並みの感度しやがって、これが本当のイージス戦艦ってか。

 

「あほか!」

 

 河内のハリセンが炸裂した所で、加賀さんには今後もさん付けで呼ぶことを納得してもらい。

 いよいよ本当に、加賀さんが現在装備している艦載機の話をしていく。

 

「改めて加賀さん。加賀さんはどの様な機種の艦載機を装備しているんですか?」

 

「今装備しているのは、こちらになります」

 

「どれどれ」

 

 加賀さんから手渡されたリストを拝見し、現在装備している艦載機についての情報に目を通していくが。

 案の定と言うべきか、全く名前も知らない艦載機が装備されていた。

 

 何なんだ、九九式艦上戦闘機という名の艦載機とは。

 確か九九式と名が付く艦載機は艦上爆撃機の筈なのだが。やはり世界が異なると、相違も生まれてくる。

 

「あぁ、九九式っちゅうのは、あたしらの世界で使われとった戦闘機で、提督はんの知るとこで言う『零戦』やな。あたしらの世界では提督はんの知るのより早く採用されて、九九式って呼ばれとるんよ」

 

 九九式艦上戦闘機に関して加賀さんに説明を求めようかと思っていたのだが。

 何故か河内が自分の疑問を感じ取ったのか、加賀さんに代わって説明を始める。

 

「派生型としては零戦とほぼ同じの一一型に零戦五二型相当の二一型。それに零戦五四型相当の三三型に水冷エンジン搭載の四四型なんかもあるわ。更に変り種に練習機や水上機、はたまた『クアドラプルナイン』なんて呼ばれとった双胴型もあるで」

 

「す、水冷エンジンに双胴型……。世界は違えど零戦はやはり大日本帝国海軍の象徴の一つなんだな」

 

「いや、いうても九九式が活躍しとったんは大戦の初期から中期初め位までの間で、その後は後継の一式艦上戦闘機『紫電』に取って代わられとるで」

 

「……そ、そうなのか」

 

「まぁでも、日本では大戦が進むにつれ最前線から姿を消したけど、他国に輸出されたもんの中には終戦後も暫く一線で活躍しとったもんもあるし。一つの時代を築いたんわ違いないな」

 

「私も本来の世界では、当初九九式を使用していましたが、後に紫電や『天風』と言った艦上戦闘機を使用していました。それでも、九九式には数え切れないほどの思い入れもあります」

 

 世界や名は違えど、日本が産み出した零戦は日本人とは切っても切れないものなんだな。

 

「成る程ね。……ん、待てよ。そう言えば河内、お前空母じゃないのに戦闘機の事やけに詳しいな」

 

「あたり前やん。あたしは元連合艦隊旗艦やで! 例え空母やのうても運用している戦闘機の情報ぐらい、覚えてるんは基本中の基本や!」

 

「おぉ、流石元連合艦隊旗艦……」

 

「ふふん! もっと褒めてもええんやで!」

 

 胸を張る河内だが、するとどうだろう、基準排水量八万トン越えの無駄に大きなバルジが有無を言わさず強調される。

 本当に、黙っていれば色々な意味で素敵な女性なのが惜しまれてならない。

 

「ってへべ!!」

 

「また下らんこと考えとったやろ!」

 

 なんて頭の中で考えていると、やはり河内のハリセンが炸裂する。

 くそ、やはり河内はニュータイプだったか。(ニュー)(タイプ)(戦艦)だけに。

 

「アホか!」

 

 そしてまた河内のハリセンが炸裂したのは言うまでもない。


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