転生提督の下には不思議な艦娘が集まる   作:ダルマ

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第22話 空母来る その4

 こうして加賀さんの装備している艦載機。初期装備は九九式艦上戦闘機二一型であった、の情報を理解し。

 その他河内の世界での九九式艦上爆撃機である『九八式艦上爆撃機』も併せて初期装備として装備していることを理解する。

 

 と、文字として理解はしたものの、やはり実物を見て視覚的にも理解した。

 そこで、更なる理解を深める為にも、加賀さんの艤装(船体)を見に行く事となった。

 

「明石、加賀さんの艤装はもうドックから出てるか?」

 

「はい、ドックから出して指定のバースに既に係留されています」

 

「分かった、ありがとう」

 

 明石に加賀さんの艤装の所在を確認し終えると、自分は河内と加賀さんを連れ、工廠を後に一路桟橋へと向かった。

 いくつかのバースには、今日も艦娘達の艤装を始め、縁の下の力持ちである支援船達の姿が見られ。そのどれもが南国の太陽に映えていた。

 

 そんな光景を横目に、自分達は加賀さんの艤装が係留されているバースへと足を運ぶ。

 

「おぉ、これが加賀さんの艤装か」

 

 流石に八万トンや十万トンクラスの河内や紀伊の艤装に比べると、艦種の違いもあるだろうが、如何せん力強さというものはやや薄い。

 しかしそれでも四万トンに迫る、しかも元戦艦のそれは圧巻の一言だった。

 

 空母が空母たる最大の特徴である、艦首から艦尾まで伸びる全通形式の巨大な飛行甲板。

 そしてその脇には、斜めに突き出た煙突と一体型となった艦橋を含む構造物が姿を見せている。

 

 空母の中には船体の上甲板と飛行甲板が一体型となっているものもあるが、加賀さんは戦艦からの改装空母故。船体上甲板と飛行甲板の高低差はかなりのものを誇っている。

 それに連動して、船体の上部構造物を備えたその姿は、まさに巨大な壁と言えた。

 

「どうぞ、提督様。改装故、少々入り組んではおりますが」

 

 そんな艤装内部へと足を進めるべく、加賀さん先導のもとタラップを上る。

 

「ようこそ! 提督!」

 

 すると、タラップを上った先で出迎えてくれたのは綺麗に整列し、綺麗な敬礼を見せる女性達であった。

 彼女達は皆、大日本帝国海軍の兵用軍装に身を包んだ、所謂水兵の格好をしている。

 一体彼女達は何者かといえば、彼女達もまた『妖精』と呼ばれる存在なのだ。単に妖精と呼ばれているが、『装備妖精』と呼ばれる事もある。

 

 同じ妖精である工廠の妖精と異なるのは、艤装の大きさもさることながらダメコン等の際の利便性からか。その頭身は子供ではなく、大人の女性そのものであった。

 

 上陸すると人間と勘違いしてしまいそうだが、彼女達は基本的に艤装から出ることはない。

 ずっと艤装内部の閉鎖空間に篭りっぱなしだと、人間ならばおかしくなってしまいそうなものだが。そこは妖精、そんな事はないらしい。

 

「艦長! 乗組員全員! 既に歓迎準備完了しております!」

 

「ご苦労様」

 

 因みに、彼女達装備妖精から見ると、艦娘達は艦長と言う立ち位置だ。

 艦長加賀さんに案内され、水密扉を潜った自分達は加賀さんの艤装内を見学していく。

 

 入り組んでいるとの発言通り、元戦艦から改装し、更に二度の大規模改装工事を行っている為、内部は宛ら迷路にも思える。

 だが、そこは自分自身の体そのもの。加賀さんは迷う事無く各種施設を案内していく。

 

「そして、ここが格納庫となります」

 

 無機質な扉を開いて足を踏み入れた先は、骨組みがむき出しな巨大な空間。

 空母の盾にして矛でもある艦載機を格納しておく施設。格納庫であった。

 

 格納庫内には、加賀さんの初期装備たる艦載機、共に濃緑色に塗装された九九式艦上戦闘機二一型と九八式艦上爆撃機が翼を休めている。

 

「これが九九艦戦二一型と九八艦爆か……」

 

 実物に近づき触れると、その姿を目に焼きつけ始める。

 その姿はまさに自分の知る零戦五二型そのものであった。しかし、その内部は自分の知らない物の塊なのだろう。

 触れながら機体の周りを一周し、その姿を焼き付け終えると、次いで九八式艦上爆撃機へと向かう。

 

 九八式艦上爆撃機も同じように触れながら一周し目に焼き付け終えると、静かに見守っていた加賀さん達のもとへと戻るのであった。

 

「如何でしたか、提督様?」

 

「やっぱり良い機体ですね。あのシルエットは、日本人の心に共鳴してきます」

 

「喜んでいただけて嬉しいです。今はまだ二一型しかございませんが、何れは三三型や紫電等の新型も装備して提督様の目に見せてあげたいです」

 

「ん? 確か四四型も派生型の中にはあった筈じゃ?」

 

「あぁ、因みに四四型はもっぱら防空用として陸上基地や艦隊防空任務を帯びた空母なんかで使われとったんよ。ま、四四型が出てきた頃にはもう九九式の基本設計は古いもんやったし後継の紫電もそこそこ後方なんかに配備され始めた頃やったから、そうやって使われとったんもほんま短い期間だけやったけどな」

 

 自分の疑問に、加賀さんではなくここまで大人しかった河内が自慢げに四四型の用途に関して説明を行う。

 成る程、四四型は他の派生型と異なり征空ではなく防空に重きを置いているのか。勿論、征空に使用できない事はないだろうから、実際の用途としては他の艦上戦闘機同様臨機応変に使い分けていけばいいだろう。

 

「それでは、案内を続けましょう」

 

 こうして格納庫を見学し終えた自分達は、更に加賀さんの艤装内の見学を続ける。

 その後は飛行甲板に立ったり、カタパルトを間近で見たり。高角砲や河内の世界の加賀さん故に装備している40mm機関砲を拝見し。

 更にアイランド内の艦橋に立ったりと、加賀さんの艤装内を隅々まで見学し終え。

 

 無事に見学を終え理解を深めた自分達は、装備妖精達に見送られながらタラップを下り、バースへと降り立つのであった。

 

「如何でしたか、提督様?」

 

「うん、文字や写真で見るよりも理解が深まったよ。ありがとう、加賀さん」

 

「お役に立てて嬉しいです」

 

「今後は飯塚艦隊の正規空母として色々と頑張ってもらおうと思う。だから、改めてよろしくね、加賀さん」

 

「はい、よろしくお願いいたします、提督様!」

 

 固い握手を交わし、こうして加賀さんとの理解を深め終えると、自分達は再び工廠へと戻り、勢いが衰えない内にとばかりに更なる建造を行う。

 

 

 するとどうだろうか。

 この数日間は一体なんだったのかと声に出したくなる程、立て続けに二人の空母型艦娘が建造される。

 一人は、艦娘としては『お艦』の愛称で知られ、オリジナルは大日本帝国海軍初の航空母艦としても知られる航空母艦、鳳翔。

 そしてもう一人は、オリジナルは鳳翔に次いで完成した小型空母、艦娘としては自己紹介の独特なシルエットが艤装的にも体型的にもベストマッチしている、龍驤。

 

 厳密に言えば少し異なるが、それでもまさに一航戦の面々が顔を揃えたのである。

 

「はじめまして、飯塚艦隊司令長官の飯塚です。隣にいるのが飯塚艦隊旗艦兼秘書艦の戦艦河内。そしてその隣が、先任空母の加賀さんです」

 

 とは言え、河内は兎も角、やはり見た目は同じでも性格が異なる加賀さんには少々戸惑わずにはいられない鳳翔さんと龍驤。

 

「お二方の事は工廠の妖精さんが用意してくださった教材で既に覚えております。例え世界は違えど、帝国海軍空母の礎をお築きになったお二方には本当に頭が下がります」

 

「そんな、加賀さん、頭を上げて下さい。今はもう、共に提督の下で働く者同士ですから。先輩後背の関係は隅に置いておきましょう」

 

「ありがとうございます」

 

「なんや、うちが知っとる加賀とはえらい性格ちゃうけど。ま、これはこれでおもろそうやし、ええわ」

 

 しかし、戸惑っていたのも一瞬で。

 言葉を交わすとすぐさま仲を深める三人であった。


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