転生提督の下には不思議な艦娘が集まる   作:ダルマ

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第26話 航空戦隊、出る その3

 眼下に広がる雄大なソロモン海。

 時折眼下を通り過ぎる雲に機体のシルエットを反映させながら、攻撃隊は母艦である加賀さんや龍驤の誘導の元、一目散に敵小規模艦隊を目指して飛行を続ける。

 やがて、眼下に広がるソロモン海の一角に、六つのウェーキを確認する。

 

 先頭を航行するデストリア級航宙重巡洋艦、に瓜二つの連合側命名『重巡リ級』

 その後ろに付いて行くのは、ケルカピア級航宙高速巡洋艦、に瓜二つの連合側命名『軽巡ホ級』

 そして更に後ろを付いて行くのは、クリピテラ級航宙駆逐艦、に瓜二つの連合側命名『駆逐イ級』

 

 モニターに現れたのは、紛れもなく今回の攻撃目標である敵小規模艦隊であった。

 報告通り単縦陣で航行している。

 

 なお、初代並びにリメイクともガミラス軍に明確に軽巡として分離別けされた戦闘艦は存在していない。

 しかしこの世界では、ケルカピア級が軽巡として分類別けされている。

 閑話休題。

 

 目標を発見した攻撃隊は、それぞれ四方に分かれていく。

 迎撃機警戒と艦爆並びに艦攻の進入援護の為、飛行を続ける九九艦戦二一型及び零式艦戦二一型。

 急降下爆撃の為突撃隊形に移行する九八艦爆。

 そして目標を定め、高度を落としながら突撃の号令を待つ九七式艦攻。

 

 攻撃隊が攻撃準備に入ったと同時に、敵小規模艦隊側も攻撃隊を視認したのか、対空射撃を行い始める。

 オリジナルでは対空兵器らしきものは設定されていなかったが、深海棲艦としては、格納式の対空兵器を装備している。

 無論、レーザーではなく実弾。それも艦種ごとに装備している兵器の種類も数も異なっている。

 リ級では高角砲と機銃を装備しているが、イ級ならば機銃のみといった感じだ。

 

 自身に迫り来る攻撃隊を撃墜しようと、各々が装備している対空兵器が火を噴く。

 ソロモン海の空に黒煙の花を咲き乱す中、九八艦爆と九七式艦攻は臆せず対空砲火の只中に突っ込んでいく。

 

 それぞれの長機の合図と共に進入コースにて攻撃を開始する九八艦爆と九七式艦攻の各編隊。

 そして、それを援護するように、一部の九九艦戦二一型及び零式艦戦二一型が先んじて敵小規模艦隊へと機銃攻撃を開始する。

 人間が操る軍艦ならば、対空兵器を操作している人員を機銃で仕留めれば替りの人員が現れるまで無力化できる。だが、深海棲艦にはそれらしい操作人員の姿は見られない。

 故に、機銃攻撃は対空兵器そのものを破壊すべく行われる。

 

 援護を受けて突っ込んでくる九八艦爆と九七式艦攻の編隊に、敵小規模艦隊も精一杯の対空射撃を展開する。

 その甲斐あってか、数機の九八艦爆と九七式艦攻が対空射撃の餌食となる。

 加えて、援護していた九九艦戦二一型及び零式艦戦二一型も、数機が餌食となり海面にその翼を没した。

 

 だがそれでも、襲い来る攻撃隊の全て仕留めきる事は叶わず。

 

 まさに急降下の名の如く、九八艦爆がその機首を重巡リ級へと迫らせる。

 やがて投下高度へと達すると、爆弾投下の誘導アームから投下された二五○キロ爆弾が、吸い込まれるように重巡リ級へと襲い掛かる。

 

 閃光、そして爆音。

 爆弾を投下した機のパイロットは退避する事に精一杯で戦果を確認してはいないだろう。

 だが、上空で迎撃機警戒の役割を担って旋回を続けていた九九艦戦二一型のカメラからは、直撃を受けた重巡リ級の無残な姿がしっかりと確認できた。

 

 しかし、敵小規模艦隊にとっての悲劇はこれで終わりではない。

 

 重巡リ級が急降下爆撃の餌食になっている脇では、同じく急降下爆撃の餌食となった一隻の軽巡ホ級の姿があった。

 爆撃を受けた軽巡ホ級はせめて道連れにと黒煙に包まれる中、生き残った対空兵器が火を噴くも、海面スレスレに思える超低空で離脱する九八艦爆をその砲弾が捉える事は叶わなかった。

 

 一方、もう一隻の軽巡ホ級は、九七式艦攻からの魚雷攻撃の餌食となっていた。

 海中から忍び寄るそれは、未来位置を正確に割り出した三発が命中し。上部構造物を越える高さの水柱にその姿を一瞬隠すと、水柱が消えた次の瞬間には、数十秒前の勇ましい姿は見る影もなくなっていた。

 

 勿論、悲劇は巡洋艦ばかりではない。三隻の駆逐イ級にも、攻撃隊は攻撃の手を緩めることはない。

 

 

 搭載していた爆弾や魚雷を使い果たし、攻撃隊が帰還の途に就く頃には、攻撃以前の敵小規模艦隊の姿は見るも無残なものに成り果てていた。

 直撃を受けたものの、辛うじて大破に踏みとどまり航行は出来ている重巡リ級、そして運よく、それでも全くの無傷ではなく中破程度であろう一隻の駆逐イ級。

 生き残っているのはその二隻のみ、他の四隻は、嘗てそう呼ばれていた残骸を周辺に漂わせている。

 

「第四戦は残敵の掃討を、手負いだからと油断するなよ」

 

「了解だクマ~」

 

 第四戦隊旗艦球磨から復唱が告げられると、モニターに映し出された第四戦隊は単縦陣に移行しその戦速を上昇させていく。

 主目的である敵小規模艦隊の殲滅は、もはや時間の問題だ。

 

 だが、まだ安心していい訳ではない。

 攻撃隊の帰還時を狙って、伏兵が攻撃を仕掛けてこないとも限らないからだ。

 

「第三戦隊は警戒を厳に」

 

「了解ネー」

 

 第三戦隊旗艦金剛からの復唱に、肩の力を少しばかり抜く。

 伏兵が砲火か或いは航空攻撃を仕掛けてきても、被害を最小限に抑える態勢は整っている。

 大丈夫だ、心配ない。

 

「とりあえずは一安心、かな、提督はん?」

 

「今の所は、だがな」

 

 河内と作戦が順調に推移している事を分かち合っていると、オペレーターからの戦況報告が飛び込んでくる。

 

「第四戦隊、戦闘を開始。残敵に向け砲撃戦を開始します」

 

 モニターには、手負いの重巡リ級と駆逐イ級に向けて砲撃を開始する第四戦隊の姿が映し出されていた。

 駆逐イ級は砲撃により完全に沈黙。

 残りの重巡リ級は、やはり手負いとは言え重巡らしい頑丈さを見せ付け、更には残りの力を振り絞り第四戦隊の駆逐艦達に少々の手傷を負わせたものの。

 第四戦隊の至近距離での雷撃戦により、完全にその姿をソロモン海に没した。

 

 こうして残敵にトドメを刺して無事に作戦完了。

 伏兵は杞憂だったかと思った刹那、オペレーターから急を告げる報告がもたらされる。

 

「金剛より緊急電! 警戒中であった加賀搭載機が第三戦隊に接近する敵戦隊を確認との事です!」

 

「っ! 敵の数は!?」

 

「数は四隻、単縦陣にて駆逐艦が四隻のみとの事です」

 

「駆逐艦四隻? 随分敵さんの伏兵もしょぼいもんやな」

 

「河内、油断するなよ。伏兵がこの四隻のみとは限らないからな」

 

 伏兵の内訳に肩透かしとばかりに言葉を漏らす河内。

 思惑通り第四戦隊を加賀さんと龍驤の護衛と誤認し姿を現したとはいえ、その内容が駆逐艦四隻では確かに肩透かしだろう。

 

 しかし、たった駆逐艦四隻とはいえ油断できない。

 慢心し、結果手痛い代償を支払う羽目になる事は、先人達が身を削って教えてくれている。

 

 河内の襟を正させると、加賀さんと龍驤の攻撃隊の収容状況を確認する。

 

「まだ時間がかかるとの事です」

 

「よし、では加賀さんと龍驤は護衛の漣と共に万が一に備えて安全海域に退避。金剛以下残りの二人は、伏兵の駆逐艦四隻の殲滅せよ。第四戦隊も急ぎ金剛達と合流。更なる伏兵の出現に備えよ」

 

 収容状況を確認し終えると、矢継ぎ早に命令を下す。

 命令に従い、第三戦隊は二つに別れ、金剛達は伏兵の向かってくる方向へと艦首を向けた。

 

 数的には金剛・子日・若葉の三人に対して、伏兵の駆逐艦四隻。

 数的にはこちらが不利であるが、こちらには戦艦たる金剛がいる。

 

 河内や紀伊と比べるといかんせ非力に思えるが、それは同じ戦艦として比べた場合だ。

 駆逐艦と比べれば、その力強さは、比べるまでもない。

 

「Target lock-on! 撃ちます! Fireー!」

 

 故に、伏兵との戦闘はほぼ一方的な展開となった。

 

「あうー、子日の出番ない感じだね」

 

「ふ、こういうもの悪くない」

 

「Burning Love!!」

 

 子日と若葉が砲雷撃戦を仕掛けるまでもなく、伏兵の駆逐艦四隻は金剛自慢の45口径35.6cm連装砲の餌食となり果てた。

 

 その後、伏兵も無事に片付け、第四戦隊も金剛達三人と合流を果たすと、退避していた加賀さん達とも無事に合流を果たすと。

 第三戦隊及び第四戦隊は、パーフェクトゲームに近い勝利を収め、その誇りを胸に、基地への帰還の途に就くのであった。


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