転生提督の下には不思議な艦娘が集まる   作:ダルマ

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今回は少し短めとなっております。


第27話 航空戦隊、出る その4

 数十分後。

 司令室から第三戦隊及び第四戦隊の艤装が係留される指定のバースへと足を運んだ自分と河内。

 視線の先には、今まさに凱旋を果たした第三戦隊及び第四戦隊の艤装が曳船に導かれバースへと接舷を果たした。

 

 程なくして錨が下ろされると、今回の勝利の立役者たる艦娘達が艤装から下船してくる。

 

「提督ぅー! 見てくれましたか、まさにPerfect gameネー!!」

 

「ま、うちの実力やったらこんなもんやな」

 

「提督様、本当に良い作戦でした。他の皆様も素晴らしい方々ばかりで、また共に出撃したいものです」

 

 勝利の余韻に浸る艦娘達を出迎え、共にその余韻に暫く浸ると、浸り終えると同時に咳払いを一つ。

 そして、今回の勝利に慢心する事無く、次の作戦も気を引き締めて臨むように訓示を行う。

 それが終わると、この後の指示を出す。

 

「傷を負った者は入渠室で身体のメンテナンス、それ以外の者も念のため明石に検査してもらって、その後報告書を作成してくれ。それから、加賀さんと龍驤は今回の作戦で損失した航空機の報告書も忘れずに」

 

 人間が操作しているのならば、未帰還機が出たということは即ち乗員の死、或いは生死不明と判断され処理される。

 しかし艦娘達が運用する航空機に関して言えば、装備した艦娘の艤装の状態を万全にすると、その乗員は不思議な事に、暫くするとひょっこりまた姿を現すのだ。

 

 一体どういう原理なのか、それは分からない。

 ただ分かっているのは、乗員たる装備妖精は使い捨てが可能、という事だ。

 

 かつて、深海棲艦との戦争が幕を開けた当初、一部の提督達は戦果欲しさに使い捨ての出来る装備妖精達を、乗機の攻撃手段がなくなると帰還させる事無く敵に体当たりさせ、使い捨てていたという。

 今ではそんな事を行う提督は知る限りいない。そして自分も、そんな事をする気は全くない。

 

 装備妖精達だって共に戦う仲間だ。

 だから、決して無下には扱わないし、一時的とはいえいなくなった悲しみをあっさり受け流す事はしない。

 短い黙祷をささげると、再び言葉を続ける。

 

「さて、小規模とは言え敵艦隊に対してパーフェクトゲームを飾ったのに、これだけじゃ、多分味気ないだろ」

 

「なんや司令官、なんかお祝いでもしてくれるんか?」

 

「ささやかだがな。第三戦隊及び第四戦隊の皆には、PX(基地内売店)にて自分のポケットマネーで好きな物を買ってあげよう」

 

 自分の口からそんな言葉が漏れると、刹那、彼女たちの表情は今日一番の笑顔を見せた。

 

「やったー! 奢りキタコレ!!」

 

「球磨は美味しいマカロンの詰め合わせがいいクマ~」

 

「子日はねー、今日はキャラメルチョコの気分の日ーっ!」

 

「うちはな、そやな……」

 

「あ、提督はん、あたしも奢ってもおてええの?」

 

「河内さん、ダメです」

 

「……アホな」

 

 ちゃっかり便乗しようとする河内に、きっぱりとノーを突きつけると、秘書艦としての役割を果たしてもらうべく皆の先導を言い付ける。

 文句を垂れながらもしっかり職務を果たす河内、そんな河内に連れられバースを後にする面々を余所に。

 自分は、加賀さんに声をかけた。

 

「どうしたんですか、提督様?」

 

「加賀さん、もしよければ加賀さんの装備妖精達にも、後で何か差し入れをしてもいいですか? 彼女達も、今回の勝利の立役者ですから」

 

 すると加賀さんは、優しい笑みを浮かべて、答えを返してくれる。

 

「やっぱり提督様はお優しい方ですね。……はい、構いません」

 

「じぁ、後で持っていきますね」

 

「はい」

 

 こうして用件を伝え終えると、揃ってバースを後にするのであった。

 

 

 因みに。

 加賀さんが遅れている事に気が付いた龍驤が、肩を並べて歩いてきた自分に少しばかりちょっかいを出した後。

 ホンマや! のツッコミに関して物申した事を、ここに記載しておく。

 

「なぁ司令官、ちょっとええか?」

 

「お、おう」

 

「あそこであのツッコミはあかんやろ。あれは直に対面してやり取りしてる中で使うから生きるんや。ああいう場面やったら『よっしゃ、なら赤飯炊いといたろ』位にしとかな……」

 

 平手の一発でも貰うものとばかりに身構えていたのだが、それは杞憂であった。

 何故なら、物申した内容はお笑い戦士としてのスキル指導だったからだ。

 

 やはり龍驤、初めて絡んだ時から感じてはいたが。空母のみならず、そちらの方面においても妥協を許さぬプロであったか。




いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。

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