転生提督の下には不思議な艦娘が集まる   作:ダルマ

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幕間 ジュースで深まる親睦

 皆さん始めまして、吹雪です。

 あ、いけないいけない、今日はプロモーションビデオの撮影じゃないから自己紹介しなくても大丈夫だったんだ。てへ。

 

「吹雪ちゃん、何しているの、早く行こうよ?」

 

「そうっぽい」

 

「あ、ごめんね!」

 

 今私達は工廠の入渠室にいます、先ほどまで任務で受けた傷を癒していたからです。

 でも傷自体は大したことなかったので、これから書き上げた報告書を、司令官の執務室に睦月ちゃんと夕立ちゃんの三人で持って行く所です。

 

「そういえば聞いたっぽい? 夕立達が任務に出ている間に、新しい艦娘()がやって来たっぽい」

 

「にゃ、聞いたよ。期待のにゅーふぇいすだって、妖精さん達が言ってたにゃしぃ」

 

「どんな人達なんだろう、早く会いたいね!」

 

 私達は入渠室で傷を癒していた間、妖精さんから私達の艦隊に新しい仲間が加わった事を聞きました。

 妖精さん達はどんな人達が加わったのか詳しくは教えてくれませんでしたけど、どんな人達でも新しい仲間なら大歓迎です。

 

 新しい仲間と出会える事に期待に胸をふくらませながら、三人揃って官舎の出入り口を潜ると、執務室を目指します。

 

「どうぞ」

 

 そして、目的地である司令官の執務室に入室すると、執務机でお仕事に励んでいる司令官に挨拶をした後、報告書を提出します。

 

「うん、記入漏れなし。ご苦労様、三人とも」

 

 司令官からお褒めの言葉を頂き、睦月ちゃんや夕立ちゃん共々顔がほころびます。

 

「そうだ、三人はまだユキ達とは顔合わせしていなかったな。確か今、河内と一緒に艦娘用官舎を見て回ってる筈だから、会いに行っておいで」

 

「了解です」

 

「ぽいっ!」

 

「にゃしぃ!」

 

 司令官に敬礼し退室すると、私達は新しい仲間と顔を合わせるべく、艦娘用官舎へと足を運びます。

 どんな容姿なのか、どんな性格なのかを、三人で想像しながら艦娘用官舎へと到着すると、官舎の前で弥生ちゃんに出会いました。

 

「あ、睦月お姉ちゃん……」

 

「およ? 弥生ちゃん、何やってるの?」

 

「特に何も、ただの、散歩」

 

「そうなんだ。あ、そうだ弥生ちゃん! 新しくやって来た艦娘さんって何処にいるか知らない?」

 

「知ってる。今、駆逐艦用の官舎の共有スペースで他の子達とお喋りしてる」

 

「そっか、教えてくれてありがとう弥生ちゃん」

 

 弥生ちゃんは相変わらず変化が乏しい表情だったけど、お姉ちゃんの睦月ちゃんにお礼を言われて、何となくだけど、目の奥が嬉しそうに感じた。

 

 さて、お散歩を続ける弥生ちゃんと別れると、私達は普段利用している駆逐艦用の官舎へと足を踏み入れます。

 慣れた足取りで共有スペースへと足を運ぶと、確かにそこには、見慣れない四人の艦娘()達の姿がありました。

 

「な、何あれ、ぽぃ……」

 

「にゃしぃ、睦月達と同じ、艦"娘"だよね?」

 

「こ、個性的な、方々、ですね」

 

 四人の内お一人は、キャップを被っている以外は他の提督隷下の潜水艦艦娘同様、一目見て潜水艦の艦娘さんであると分かります。

 ですが残りの三人に関しては、かなり個性的な装いをしており。特に、セーラー服を着た方は、紀伊さんと同じ艦息さんでしょうか。かなり目立つ外見をしています。

 

「あれ? 夕立、それに睦月に吹雪も、そんな所で突っ立って何やってるの!?」

 

 個性的な新し仲間に衝撃を受けて固まっていると、白露ちゃんが私達に気付いて声をかけてきました。

 そのお陰で、それまで気付いていなかった他の艦娘()達も私たちの存在に気付きます。当然、その中には四人の新人さんの姿も含まれていました。

 

「ほらほら、そんな所で突っ立ってないで、さ、おいでおいで!」

 

「ぽ、ぽぃぃ」

 

「睦月姉ぇも、さぁさぁ!」

 

「にゃ、にゃしぃ」

 

「ほら吹雪、あんたも紹介してあげるから、こっちきなさい」

 

「う、うん」

 

 夕立ちゃんはお姉ちゃんの白露ちゃん、睦月ちゃんは妹の水無月ちゃんに、そして私は叢雲ちゃんに手を引かれ。

 四人の新人さんの前に並ばされました。

 

「紹介するね! あたしの妹の夕立!」

 

「睦月姉ぇだよ!」

 

「私の姉の吹雪よ」

 

 四人に紹介される私達を他所に、四人の中で第一印象が最も衝撃的過ぎるあの艦娘、さんと思しき片が、その巨体を私達に歩み寄らせます。

 

(うぬ)達が、皆が話していた姉妹達であるか。(わらわ)は伊六○○型潜水艦、一番艦を務める伊六○○である! だが気軽に、(わらわ)の事はリクトと呼んでくれて構わぬ」

 

 そして、自己紹介を行って手を差し出してくれたのですが、その圧迫される姿を間近にして。私達は肩を寄せ合って怯えてしまいました。

 

「夕立! リクトに失礼だよ!」

 

「睦月姉ぇ、そんなに怯えなくても大丈夫だよ。リクトさんは水無月達と同じ艦娘だから」

 

「はぁ、しょうがないわね。ごめんね、私の姉が怖がっちゃって」

 

「ははは、構わぬ構わぬ。(わらわ)の姿を見て怯えられるのは、もう慣れておる。……御三方、怖がらせるつもりはなかったのだ、どうか顔を上げてくれ」

 

 リクトと名乗った巨漢さんの声に反応し、恐る恐る三人揃って顔を上げると。

 

「どうだ? これで(わらわ)の事、少しは怖くなくなってくれたか?」

 

 そこには、変顔を作っているリクトさんの姿がありました。

 

「ぷふ! お、面白いっぽい!」

 

 リクトさんの変顔を見て吹き出す夕立ちゃん。

 それを切欠に、段々私の中に芽生えていた恐怖心がなくなっていきました。

 

 そして、程なくして完全に恐怖心を払拭した私達は、第一にリクトさんに謝罪しました。外見から艦息であると勘違いした事も含めて。

 すると、リクトさんは白い歯を輝かせて笑って許してくれました。

 本当にリクトさんは、素晴らしい人です。

 

 こうしてリクトさんと打ち解け始めると、次は残っていた三人。

 ユキさんにチサネさんに、ニコさんとも打ち解け始める。

 

 それぞれがお喋りして、お互いの理解をもっと深めていきます。

 私は、ユキさんとニコさんの三人でお喋りします。

 

「それじゃ、ニコさんって凄い偉業を達成したんですね!」

 

「そうだよ、ふふ、凄いでしょ。ま、実際にはのぶっちの力もあっての事なんだけどね」

 

「世界は違えど似たような作戦は行われるものなんですね」

 

「ユキさんも、偉業を?」

 

「はい。と言っても、ユキは爆撃ではなく砲撃で吹き飛ばしただけですけど。あ、すいません。でしゃばり過ぎました」

 

「そ、そんな事ないですよ! ね、ね、ニコさん!」

 

「う、うん! 凄いよ。ニコなんかよりもずっと凄い!」

 

 ニコさんは打ち解けやすい方でしたけど、ユキさんは少し引っ込み思案なようです。

 でも、河内さんと同じ世界の軍艦さんがモデルだけあって、流石のものをお持ちです。

 人口人体の年齢設定で言えば潜水艦の艦娘()も私達駆逐艦と同じくらい設定の筈なんですけど、モデルの世界が違うからでしょうか。

 

 正直、羨ましい。

 

「あ、そうだユキさん! ユキさんが好きなものって何ですか!?」

 

「ユキの好きなもの、ですか? そうですね。……缶詰、ですかね」

 

「缶詰……」

 

 話題を変えてユキさんの好きなものの話題で盛り上がろうと思った矢先。

 ちょっと反応に困る回答が返ってきました。

 

「あ、でも分かるな。ニコも嫌いじゃないよ、缶詰」

 

 やっぱり食糧事情が私達のような水上艦とは異なるからでしょうか、同じ潜水艦のニコさんは共感しています。

 こうなると、缶詰で話題を広げない訳にはいきません。

 

「えっと、その。お勧めの缶詰とかって何ですか?」

 

「牛大和煮にうなぎの蒲焼。後は黒毛和牛のコンビーフもお勧めですね! それに、ユキは食べるのも好きですけど作るのも好きなんです。焼き鳥の缶詰と野菜を混ぜるだけの簡単サラダから、鯖の水煮で作るお味噌汁なんかもあって、もう缶詰レシピは無限の可能性を秘めているんです!!」

 

 ユキさん、本当に缶詰が好きなんですね。先ほどよりも生き生きとしています。それに凄く饒舌です。

 

「ユキさんって缶詰が好きなんですか!? 実は私も大好きなんです、缶詰!!」

 

 と、そんなユキさんの缶詰愛に惹かれて、秋月ちゃんが話に加わりました。

 ユキさんとニコさんと秋月ちゃんで、白熱した缶詰鼎談が始まり。缶詰にそこまで情熱を注げない私は、他の艦娘()とお喋りすべく移動します。

 

 白露ちゃんと水無月ちゃんが、チサネさんと楽しくお喋りしている輪に加わらせて貰います。

 

「あたしはやっぱり白身魚が好きかな。特に白身魚のフライがいっちばーん好き!」

 

「水無月は青魚、特に秋刀魚が好きなんだ。シンプルに焼いて食べるのが好きさ」

 

「いいね、いいね。でも、私はやっぱり鯖の煮つけかな」

 

 どうやら三人は好きなお魚料理の話で盛り上がっているようです。

 私も頑張って話についていかないと。

 

「わ、私は鮭の……」

 

「でもね、私は食べるもの好きだけど捕るのも好きなんだ」

 

「へぇ、いいね」

 

「それってやっぱり、釣り?」

 

 あう、何だか話題が切り替わって話に乗り遅れました。

 

「あー、違う違う、釣りじゃないよ。そもそも釣りって、私の性格からして性に合わないし……」

 

「え、でも釣り以外でどうやって魚を捕るの?」

 

「まさか、網?」

 

「網なんて使わないよ。私、潜水艦でしょ。だから、素潜り! モリ片手に素潜り漁だよ!」

 

 私達水上艦とは違い厳しい環境で過ごしているからでしょうか、チサネさんは凄く逞しい趣味をお持ちみたいです。

 やっぱり、魚を捕れたら声高らかに捕れたぞと叫ぶんでしょうか。

 

 なんて色々と想像していると、三人はもう別の話題で盛り上がっていました。

 あまりに話題の切り替え頻度が早くて、もうついていける気がしません。

 

 ですので、再び他の艦娘()とお喋りすべく輪を抜け出し、移動します。

 

 次に輪に加わらせてもらったのは、睦月ちゃんと夕立ちゃん、そしてリクトさんがお喋りしている輪でした。

 

「ぽぃぃ……それはちょっと、ウケが悪いと思うっぽい」

 

「うむ。そうであるか」

 

「もっと他に、こう、可愛らしい特技とか、趣味とかはないの?」

 

 どうやら睦月ちゃんと夕立ちゃんは、リクトさんの趣味や特技についての話で盛り上がっていたみたいです。

 参考に、先ほどまでの話の内容を睦月ちゃんから伺うと。リクトさん、休日などは鍛錬をして過ごしているそうです。

 やっぱり、見た目通り、なのかな。

 

「可愛い、かどうかは分からぬが。そうだな、海洋生物と戯れたことはあるぞ」

 

「ぽい! それ可愛いと思うっぽい!」

 

「これは異性に受けそうな話題ね」

 

「うん、いいと思う」

 

「それで、どんな海洋生物と戯れたっぽい?」

 

「うむ。(わらわ)を餌と思い襲ってきた獰猛なホオジロザメと水中でダンスを踊り、更には鼻先に熱い接吻をしたものよ」

 

 イルカさんやラッコさん、それにペンギンさん等の可愛い海洋生物さんを想像していたのですが。

 リクトさんの口から語られたのは、可愛さをあまり見出せない海洋生物さんとの、戯れ。というより、生存競争でした。

 

 あぁ、睦月ちゃんと夕立ちゃんも、なんて言葉を返せばいいか困った表情を浮かべています。

 

「そ、それは、その、楽しそうですね」

 

「うむ。少々向こうのふれ合いが激しく数箇所歯で引っ掛かれはしたが、よい経験であった」

 

 あぁ、どうしましょう。

 睦月ちゃんと夕立ちゃんに代わって感想を返せば、更に反応に困る言葉が返ってきました。

 

 もうこうなったら、強引にでも話題を変えなければなりません。

 

「あの、リクトさん! サメさんとの話もいいんですけど。他にもリクトさんの可愛い一面をお聞きしたいんですけど」

 

「ん? そうだな。では、この話題はここまでとしよう」

 

 話題を変える、と決まった瞬間、睦月ちゃんと夕立ちゃんの口から小さなため息が漏れました。

 

「では、他に自身ではこれは可愛いと思うことってありますか?」

 

「そうだな……。うん、手製のジュースを作ることもあるが」

 

「ぽい! それ凄く女子力高そうっぽい!」

 

「およ。なんだ、リクトさんもちゃんとそういう趣味あるんだね」

 

「わぁ、お手製ジュースですか。いいな、飲んでみたいです」

 

「おぉ、そうだ。折角の機会なのだ、今ここで手製のジュースを作って皆にご馳走しよう」

 

 その後はあれよあれよという間に、何処からか調達してきた果物に、人数分の容器が用意され。

 ユキさんにチサネさん、それに私達駆逐艦の面々が見守る中、リクトさんのお手製ジュース作りが始まりました。

 

 あれ、でも材料と容器の他には調理器具の姿が見当たりません。一体どうやって作るんでしょうか。

 

「では始めよう」

 

 そう言うと、リクトさんはおもむろにリンゴを一つ手に取り、その手を容器の上まで移動させます。

 一体何が始まるのかと瞬きせずに見守っていると、次の瞬間。

 

「っ!!」

 

 リンゴを手にしたリクトさんの腕に血管が浮かび上がったかと思うと、手にしてたリンゴが、見事に握りつぶされました。

 握りつぶされ見事に木っ端微塵となり、破片と化したリンゴがテーブルの上に飛び散ります。

 

「おっといかん、久々なものでつい力を入れすぎてしまった」

 

 そのあまりの衝撃映像に、私を含め、駆逐艦の皆さんは口を開いて呆然としています。

 でもユキさんとチサネさんは見慣れているのか、お茶目さんと言っています。

 

「では気を取り直して」

 

 再びリンゴを手にしたリクトさん、再び容器の上までリンゴを持ってくると、再びその手に力を込め始めます。

 すると、今度は加減しているのか粉砕する事無く、音を立てて手の中のリンゴが見る見るうちに変形していきます。

 やがて、変形して出来た亀裂から、その輝く汁液を容器の中へと落としていきます。

 

 凄いです、これこそまさに、"手"作りジュース。百パーセントまじりっけなしの絞りたてです。

 

 その後も、リクトさんは次々に果物を手で搾り果汁を容器の中に落としていき、手作りジュースを作っていきます。

 

「さぁ、出来たぞ。(わらわ)手製のジュースだ」

 

 こうして、人数分の手作りジュースが完成すると、私達は各々容器を手に取りジュースをいただきます。

 

「……美味しい」

 

「そうか、美味いか。それはよかった」

 

 作り方は凄く豪快だけど、その味は、とても美味しいものでした。

 なので、思わず美味しいと感想が漏れてしまうほどです。

 

「また機会があれば、ご馳走しよう」

 

 私達の喜ぶ顔を見て、リクトさんも腕組しながら嬉しそうな表情を浮かべています。

 

「リクトさん、また是非お願いしますね!」

 

「うむ」

 

 白い歯を見せて笑うリクトさんにつられ、私の表情も、自然と笑顔で溢れます。

 

 

 そして、リクトさん手製のジュースを堪能し終えた頃。

 案内役の筈なのに何処かへ行っていた河内さんが戻ってきて、再びユキさん達四人の案内の続きを始めたので、私達駆逐艦とユキさん達四人のちょっとした親睦会はお開きとなりました。

 

 親睦会の後片付けをしながら、私はまた、楽しいお喋りを皆でしたいと思いました。




いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。
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