転生提督の下には不思議な艦娘が集まる   作:ダルマ

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第51話 ミニ観艦式と女王との邂逅

 新たな航空機を装備に加え、第三戦隊の戦力を向上させた三日後。

 哨戒任務を行っていた第六戦隊が任務を無事に終え基地に帰港した。

 

 初めての任務を無事に終えた事や、あの定時報告以降も幾つかの戦果を挙げる等。

 任務中に飾った戦果を称える意味も込めて、帰ってきた彼女達と共に執務室にてちょっとしたパーティーが催される事になった。

 

 しかし、何故かユキのリクエストで缶詰を使ったアレンジ料理がメインを飾り。

 更に、乾杯の音頭で使われたのは、リクトのお手製ジュース。ワイルドにして文字通りのお手製ジュースであったり。

 更に更に、楽しい一時を過ごす中にあって、不意に提出された今回の任務における各種資材の消費量を示した報告書に目を通した際、潜水艦の燃費がいいとは一体なんだったのか。と思わずにはいられなかった等。

 パーティーは、彼女達の新たなる一面を知る切欠ともなった。

 

 

 そんなパーティーを行った翌日。

 いつものように執務室で、時折河内が真面目に向き合っているのかを確かめながら、書類業務を行っていると。

 谷川が落ち着いた様子で執務室へと入室してきた。

 

「先輩、基地司令部より連絡です」

 

「ん? 何だ?」

 

「来週予定されている『ミニ観艦式』に関する打ち合わせを行うとの事ですので、基地司令部の方に出頭せよと」

 

 谷川の口から伝えられたのは、来週開催が予定されているラバウル統合基地主催のイベントに関する打ち合わせへの出頭命令であった。

 

 観艦式、それは軍事パレードの一つにして、文字通り軍艦を用いて壮行する式の事だ。

 前世では国家ごとに祝典の際や、海軍の記念行事の一環として行われていた。

 その目的は、自国民に対して海軍への理解を深めてもらう為だ。

 

 そして現世でも、一応一つの国家である為、連邦海軍の一大記念行事として行われている。

 『連邦観艦式』と名付けられたそれは、ほぼ十年ごとにハワイの周辺海域で盛大に行われる。

 

 各州海軍から選りすぐった通常並びに艦娘混成の各水上・潜水・航空部隊が一同に参加し航走する様は、まさに圧巻の一言に尽きる。

 

 そんな連邦観艦式に次いで規模の大きな観艦式が、州海軍単位で行われる観艦式だ。

 この州海軍単位で行われる観艦式は、国民に対して海軍への理解を深めてもらうとの目的の他、ライバル視する他の州海軍に対して自らの州海軍の威厳を示すとの側面も持ち合わせており。

 その為、交流の為に観艦式を実施する州海軍以外の州海軍から艦艇等を招いていはいるが、その実、招致した者達に間近で見せびらかす為なのだ。

 

 そんな大人気ない側面を持つ州海軍単位の観艦式に次いで規模があるのが、管区単位。

 さらにそれに次ぐのが、定期・不定期に各海軍基地単位で行われるミニ観艦式だ。

 そして、先ほど谷川の口から伝えられたイベントこそ、最後に紹介したミニ観艦式となる。

 

 なお、厳密に言えば海軍基地単位で行われるミニ観艦式は、観艦式と名が付いてはいるものの、実際は訓練展示である。

 しかし、参加する艦艇や航空機の数など、通常の訓練展示と比べると規模が大きい為、便宜上ミニ観艦式と呼ばれている。

 

 因みに、ラバウル統合基地では当然ながら初めてではあるが。呉鎮時代には、一度呉鎮で行われたミニ観艦式に参加した事がある。

 その時は参謀の一人であった為、主に裏方ではあったが。開催当日、透き通るような青空の下、大阪湾を雄大に航走する参加部隊の姿は、今でも瞼の裏に焼きついている。

 

「分かった。それじゃ、ちょっと行ってくる。河内、留守番頼んだぞ」

 

「ん、了解や」

 

 だが、今度は裏方ではなく、参加部隊の司令官の一人として参加する。

 故に、その意気込みも、呉鎮時代の時とは段違いだ。

 

 

 河内に一声かけた後、谷川を引き連れ、ラバウル統合基地の司令部施設へと出頭する。

 案内してくれた司令部員に通された会議室には、既にベイカー基地司令をはじめ、自分と同じく参加するチェザリス中佐やマッケイ少佐の姿があった。

 軽く会釈しながら、自分と谷川は指定の席へと腰を下ろす。

 

「では、全員揃ったところで、早速打ち合わせを開始しよう」

 

 ベイカー基地司令の宣言のもと、打ち合わせが開始される。

 配布された資料に目を通しながら、進行役の参謀の声に耳を傾ける。

 

 予定される来観者の数や当日の警備状況、更には参加部隊の出港から訓練展示、そして帰港するまでのルートの確認等。

 

 打ち合わせは順調に進み、やがて一旦休憩を挟むこととなる。

 司令部員が淹れたての珈琲を各々に配る中、不意に、ベイカー基地司令が口を開いた。

 

「所で、飯塚中佐。君はミニ観艦式に参加するのは初めてかね?」

 

「いえ、前任地である呉鎮守府で一度参加した経験があります。……裏方で、ですが」

 

「おぉ、そうか。それは心強い」

 

 ベイカー中将は、自身に配られた珈琲の淹れられたカップを手に取り一口、口へと含ませると。

 程なくして口内を潤わせると、再び言葉をつむぎ始める。

 

「では飯塚中佐。君の前任地では、どの様な理由でミニ観艦式を行っていたのかね?」

 

「それは、来観者や周辺住民等に海軍への理解を深めてもらう為です」

 

「……まぁ、そうであろうね」

 

「ラバウルでは、違うのですか?」

 

「飯塚中佐、君は……、"ブラック提督"と呼ばれた者達を知っているかね?」

 

 ベイカー中将の口から不意に漏れた『ブラック提督』の単語に、眉をしかめる。

 

「えぇ、実物は見たことはありませんが、前任地において古株の方々等から聞き及んではいます」

 

 ブラック提督、それは嘗て、艦娘が本格的に運用を開始し深海棲艦との生存競争が激戦の様相を呈して程なくの頃。

 その頃は現在のように近海の安全を持続して安定的に確保できず、まさに海の支配権が日夜、人類と深海棲艦とで入れ替わりが激しく行われ。

 一進一退の状況は世界中の各地で繰り広げられていた。

 

「当時、私は本土(オーストラリア管区)に勤務する一介の士官に過ぎなかったが、ここラバウルの地の激戦の様子は本土(オーストラリア管区)にも連日のように伝えられていたよ」

 

 そんな状況の中、まさに必然と言うべくして現れてきたのが、ブラック提督と称される各州海軍の軍人達であった。

 

「同時に、当時共同基地として運用され始めたばかりのラバウル統合基地に巣くっていた、ブラック提督達の悪名もまた、私の耳にも届いていた」

 

 彼ら或いは彼女らは、深海棲艦との生存競争における新たなる主力、艦娘を用いて次々に戦果をあげ、人類側に生存競争の主導権を渡す事に多大な貢献をもたらした。

 だが同時に、彼ら或いは彼女らは、その強引な手法を用い戦果をあげる事も多く。

 損傷した艦娘達を捨て駒のように使い潰したり、装備妖精達をただの航空機の形をしたミサイル程度にしか考えていなかったり。

 

「艦娘に対する性的暴力等、……不謹慎だが、海軍内部で事が片付くものであればまだよかった。だが、当時ラバウルに巣くっていたブラック提督達は、事もあろうに、地元住民に対しても圧制を強いていたんだ」

 

 更には、聞いているだけでも胸糞が悪くなるような悪名の数々も平然と行える。

 ブラック提督とは、人にして人にあらず、そんな異端な存在であった。

 

「当時はまだ配給制だったのだが、ラバウルに巣くうブラック提督達は、自ら私服を肥やす為に、本来配給されるはずの配給品の一部を横流ししていたと言う……」

 

 だが、そんなブラック提督達を、当時の各州海軍上層部は地位を剥奪する事も拘束する事もなく、彼ら或いは彼女らの行為を黙認していた。

 それは、ブラック提督達が多大な戦果をあげ、各州海軍にとって簡単に切り捨てられない存在となっていたからだ。

 一説には、一部のブラック提督達は自らの行為を黙認してもらう見返りとして、多大な賄賂を上層部の人間に渡していたとも言われている。

 

「だが知っての通り。時代が進むにつれ、一進一退の状況から我々人類に戦況が有利に傾きはじめ"余裕"が生まれると、各州海軍内ではブラック提督追放の声が大きくなっていった」

 

 そんなブラック提督達も、状況の変化により、その立場を追われる事となる。

 多くの者は逮捕され、後に裁きを受ける事になったが。一部は事前に動きを察し、逮捕の手を逃れ協力者達と共に何処かへと姿を晦ませた。

 

 なお、その際姿を晦ませた一部の者達は、現在『ブラック海軍』を名乗り、暗躍していると言われている。

 世界各地で地元の過激派或いは反政府組織を支援しているらしいが、現在までにブラック海軍が直接行動を起こしたとの話は聞かない。

 

 一説では共通の敵を持つ深海棲艦と同盟を結んでいるとも言われるが、真相は今だ不明である。

 

「こうしてラバウルの地からブラック提督達は排除されたが、地元住民の海軍に対する不信感は、完全には払拭されることはなかった」

 

 だが、追放したブラック提督達の後始末は、簡単には終わる事はなかった。

 長年黙認してきたツケと言われればそれまでだが、各州海軍は奔走する事になる。

 

「再び信頼を得る為、地道に活動し、その中で生まれたのが、ミニ観艦式だ」

 

 嘗て巣くっていたブラック提督達の二の舞を踏まぬ為、そして地元住民達にブラック提督の影を払拭したことを証明する為。

 この時期に執り行われるようになったのが、ミニ観艦式であると、ベイカー基地司令は告げた。

 

 再びカップを手にし、珈琲で渇いた口を潤すと、ベイカー基地司令は三度語り始めた。

 

「今でもご高齢の方の中には、少なからず不信感を持っている者もいると聞くが。それでも、かなり状況は改善されたよ。……飯塚中佐、この様な背景がある、という事を、どうか心の隅に留めておいていて欲しい」

 

「分かりました」

 

「チェザリス中佐やマッケイ少佐も同様だ」

 

「了解ですよ、基地司令官殿」

 

「先輩方が再び築き上げてきた信頼、ここで途絶えさせないよう、必ず今回のミニ観艦式を成功させてみせます!」

 

 今回のミニ観艦式を必ずや成功させる。

 マッケイ少佐のように口には出さなかったが、内心ではそんな決意を表明していた。

 

 こうして決意表明を行った頃、休憩が終わりを告げ、再び打ち合わせが再開される。

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