調査官、カルデアに赴く   作:あーけろん

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前回ちょっとシリアスだったから今回はギャグ調あり。キャラ崩壊注意です。




調査官と正義の味方 2

……やっぱり、変だ。

 

 

俺には、彼がどうも同類者にしか見えない。仕事に生きるというか、趣味の無い男と言うか…。

 

 

 

とにかく、彼のことが他人に思えないのだ。自分でも不思議なほどに。

 

けれど、どこか女誑しの風格を醸しているのは同調できない。…こいつもさぞやモテるんだろうなぁ…。

 

 

筋肉隆々な上に切れ目のイケメン。おまけに高身長な上に国連関連施設の調理師ときた。

 

 

ここまで揃えば合コンで可愛い女の子も入れ食い状態だろう、心底妬ましい。これで学歴も高かったら3K(高身長・高学歴・高収入)達成てわすね、わかりたくありません。

 

 

…ぐぬぬ!俺にも身長さえあればもっとモテてるはずなのに…!

 

 

 

 

「ところで、君はここに来る前はどこにいたのかね?」

 

 

ーーーー…普通に事務所で働いていましたが?

 

 

「いや、此処に派遣される前は何処に派遣されたのか、と聞いたのだよ。」

 

 

 

だったら初めからそう言えよ…、なんでそう勿体ぶった話し方をするんですかねぇ…。

 

 

あれか、「俺秘密持ってます」雰囲気を出せばカッコイイとでも思ってあるのだろうか?

 

 

ないわー。そんなのがカッコいいのは中学二年生までだよ、割とマジで。

 

 

 

 

ーーーーまぁ、此処に来る前はウクライナに飛ばされましたね。

 

 

「…ウクライナ?特に主要な国連組織があるとは聞かないが…。」

 

 

ーーーーあぁいえ、あれは組織の調査ではなく。…って、なんでそんな事気になるんです?

 

 

 

そういえばそうだ。なんでこいつはこんなに俺のことに興味を持つのだろうか?

 

俺は部外者なんだから放っておけばいい物を。

 

 

…やっぱり面識があるのだろうか?一度見た顔は忘れないようにしてるんだけどなぁ。

 

 

 

「なに、少し興味が湧いただけだ。答えたく無ければ答えなくても構わないが?」

 

 

 

……うっぜぇぇぇぇ!

 

 

なんなの?一体なんなの?なんでこんなに斜に構えた口調なの?

 

 

スレてるの?反抗期なの?

 

 

普通に喋れないのかこんちくしょう。イケメンだから余計腹立つわ。

 

 

 

…ふぅ。落ち着け、クールになれ。

 

 

こう言う時は笑顔だ。少し、いやかなり引きつってるけどそれでも笑顔だ。

 

 

 

ーーーー…話しても構いませんけど、そんなに面白い話でもありませんよ?

 

 

「構わんよ。別に面白い話は期待してないからな。」

 

 

 

あ、無理だこれ。いま堪忍袋の尾が切れた音がしたもん。

 

 

いいぜ、そんなに聞きたきゃ聞かせてやる。俺の人生の中でも結構ハードモードやった仕事の内容をなぁ!

 

 

 

 

ーーーー…俺がウクライナで行ったのは、国際紛争の実態調査です。簡単に言うと、平和維持活動に基づく国連軍派遣が必要か否かを判断しに行ったんですよ。

 

 

 

…あれ?確かこれって守秘義務諸々があった気が…。

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

そう言った彼は至って普通で、まるで只の世間話をしてるかの様な感じだった。

 

 

だが、その口から出た言葉の重さは、計り知れないものがあった。

 

 

現代の紛争、それがどんなに醜く、そして終わらない地獄であるか。

 

 

 

「……そうか。」

 

 

 

これ以上の言葉など、果たして出てくるのものか。いや、出てこないだろう。

 

 

表情は変えてないが、彼の内面が複雑な事は目を見ればわかる。

 

 

彼は地獄を見たのだ、あの地で。

 

 

 

ーーーー…あー、まぁ紛争はしんどいですよね。ほんと。

 

 

「…そうだな、まったく、その通りだ。」

 

 

彼は机に乗せた手を組むと、こちらに視線を向けた。無機質な瞳が私を射抜く。

 

 

 

ーーーー…なら、エミヤさん。あなた、ここに来る前はどこに?

 

 

「…どこ、とは?」

 

 

 

一応白けてみるが、彼は文字通り、調査のプロフェッショナルだ。そんな子供騙しが通用するはずがない。

 

 

 

ーーーー只の調理人が、そんな体型になる訳ないだろ。で?あんたは何をしてたんだ?

 

 

「それを言うなら君こそ何者なんだ?スーツ姿で雪山を登山なんて普通では考えられないがね?」

 

ーーーー…………。

 

 

「……………。」

 

 

 

互いに静寂が包む。だが、視線は外さない。

 

 

ーーーー…よし。互いに過去については詮索しない。これでどうかな?

 

 

「異論はないな。過去の探り合いほど醜いものはない。」

 

 

敬語をやめた調査官が口を開いたと思えば、そこから出て来たのは引き分けを意味する言葉だった。

 

 

それに対して弓兵も概ね同意する。探られて欲しくない過去は、どんな人にも有るものだ。

 

 

ーーーーなら、これでこの話は終わり。…それより、この後時間はあるかい?

 

 

「…少しはあるが、何かあるかね?」

 

 

ーーーーいや、久しぶりに会話を楽しもうと思ってね。どうだろう?暇なら付き合ってくれよ。

 

 

 

そう言う彼の目には純粋な感情しかないように思うが、実際は違う。俺にはこの顔に見覚えがある。

 

俗に言う、イイ笑顔という奴だ。

 

 

…こうなった彼相手に断るのは不可能だ。大人しく受け入れることにしよう。

 

だが、もちろん抵抗はさせて貰う。

 

 

「そうだ、なら何か作ろう。リクエストはあるかね?」

 

 

ーーーー…ならクッキーを。

 

 

「…わかった。少し待っていたまえ。」

 

 

…どうやら、昨日のクッキーが気に入ったらしい。

 

 

 

 

 

 

________________________

 

 

 

 

 

 

「エミヤさん、何処に行ってしまったんでしょう?」

 

 

 

いつもと変わりない廊下を練り歩く。途中であった英霊たちに話を聞いていくが、一向にエミヤさんの所在が分からない。

 

 

調査官の人と話がある、と言ってそのままどこかへ行ってしまったのだ。

 

 

 

 

ちなみに私がエミヤさんを探している理由は、もうすぐ夕食の時間だからである。

 

今日の当番はエミヤさんであり、もし夕食の始まる時間が遅くなったらどんな事が起こるか…

 

 

 

『ご飯は⁈ご飯はまだなのですか⁉︎』

 

『ほぉう?私を待たせるとは良い度胸だ…。』

 

 

 

…主にアルトリアさん達が荒れ始めることは間違いなだろう。そうなったら食堂は大混乱。

 

結果として食堂がまた使い物にならなくなってしまう。そうなったら先輩が悲しむことは間違いない。

 

 

だから早くエミヤさんを探さないといけないのだが…。

 

 

けれど、私は知らなかった。その時エミヤさんに、どんな不運が巻き起こっていたのかを。

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

…これは、何だ?

 

 

俺は、夢でも見ているのか?

 

 

いや、これは現実だ。鼻孔をさす珈琲の匂いが、その証拠だ。

 

 

だがおかしい。こんな事があり得るはずがないのだ。

 

 

 

ーーーーよし。じゃあエミヤさんの女性のタイプから行ってみよう。

 

 

「……なんでさ。」

 

 

 

部屋は先ほどと変わらない調査官の部屋だ。だが、その部屋の雰囲気はもはや別のナニカへと変貌していた。

 

 

そう、恋愛相談室のアレである。

 

 

 

ーーーーまず、先輩系と後輩系のどっちが好み?

 

 

「いや、だから…。」

 

 

ーーーーなるほど、先輩も後輩もどっちもイケルと。ふむふむ。

 

 

「だから…。」

 

 

ーーーー大丈夫大丈夫。俺、口は鋼鉄だし実績あるから。心配すんなって。

 

 

「話を聞いてくれないかな⁉︎」

 

 

 

いけない、このまま行ったら間違いなく彼のペースに持って行かれてしまう。

 

無理矢理にでも抜け出さなければ大変なことになる。

 

 

 

「まず、いつ私がそんな事を頼んだんだ?」

 

 

ーーーーいいか?人間関係ってのは忖度の上に成り立っているんだ。わかるか?

 

 

 

 

だめだ、まるで話が噛み合ってない。まずい、何か対処方法を模索しければ…。

 

 

 

「私は恋愛に興味などない!だからそんな気遣いは不要だ!」

 

 

ーーーー………チッ。

 

 

「さっきから遠慮というものをしてくれないかね⁉︎」

 

 

 

つまらないものを見たかのように舌打ちすると、まあ笑みを浮かべてこちらに向き直る。

 

 

 

ーーーーじゃあ、君には良いなぁと思う子もいないんだな?

 

 

「む。それは……。」

 

 

 

 

…たしかに、私にも気になっている女性はいる。だが、それは、いや、しかし…。

 

 

ーーーー成る程、気になる女性はいる。けど、それが恋愛感情とはわからない。という感じだね。

 

 

「わかるのか⁉︎」

 

 

ーーーーうん。アレは女性の方だったけど…。あれは酷かったなぁ。

 

 

 

遠い目をしてどこか遠くを見る。かなりの苦労をした事が手に取るようにわかるのが悲しいところだ。

 

 

 

ーーーーまぁそれは置いといて。まず、君はその子とどんな関係になりたいの?

 

 

 

「…別に、特に望む関係はない。」

 

 

 

そうだ。俺は彼女に憧れているだけだ。別に、何も見返りを求めているわけではない。

 

だが、俺の考えは彼にとって理解できないものだったらしい。

 

 

ーーーー甘い!そんな考えでどうするんだ‼︎

 

 

「な、何を…。」

 

 

ーーーーお前は、その子がどっかの野良犬に盗られたとしてもお前は何も感じないんだな?

 

 

 

野良犬に彼女が……。

 

 

何故だ、無性に犬の心臓を穿ちたくなってきた。

 

 

 

「そ、それは…。」

 

 

ーーーーな、嫌だろ?

 

 

「…まぁ、不快ではあるな。」

 

 

 

たしかに不快だ。そんな盛った犬は早急に処理するのが一番だろう。

 

 

 

ーーーーお前はどこか自分を下に見ている節がある。もっと自信を持て!お前のプロモーションは世界に通用するから!俺が保証する‼︎

 

 

 

さっきからなぜこいつはこんなに熱いのだろうか?もしかして、ロロとは別人なんだろうか?

 

 

もう、これは早く話を切り上げてほうが良い。

 

 

 

「そ、そうか…。なら、これからはもっと自信を持つ事にしよう。」

 

 

ーーーーそれが良い。自分に自信を持つ男の方がモテるからな。

 

 

 

そう言って彼は目を閉じた。どうやら、話は終わったらしい。

 

 

長い、苦しい戦いだったが、なんとか戦い抜いた。爺さん、あんたの友人は、やっぱり凄い人だったよ。

 

 

 

「じゃあ、私はこれで…。」

 

 

ーーーーじゃあ次はその子にどんなアタックを仕掛けるか検討してみよう‼︎

 

 

「なんでさぁぁぁ⁉︎」

 

 

 

爺さん、助けてくれ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




調査官
スカしたエミヤを弄れてご満悦のご様子。ちなみに恋愛相談の実績はカンストしてるもよう。何を隠そう、両儀と黒桐をくっ付けたのはこいつである。


エミヤ
肉体精神共にズタボロにされて上位性を思い知らされた模様。なお恋愛感情はまだ芽生えてない模様。一朝一夕で治るもんじゃないからね、仕方ないね。


野良犬
アルスター産の名犬。青タイツだったり狩猟服だったり魔術服だったり棘生やしたりと忙しい忠犬。死因の殆どは心臓の模様。


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