誰だよこいつこの教室入れたヤツ   作:パリの民

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なんか書いてて楽しくなってきたぞ。


畑さんは空気が読めない。

人間は平等なのだろうか。それは断じて否である。

 

そもそも平等とは一体何なのだろうか、平等か否かを考える事はまずそこから始まる。例えば、憲法の下での平等というのは学校で習った通り、社会関係上で同じ立場に立つこと。または差別からの自由となっている。まぁ、差別が無ければ平等とは確かになるが、果たして人は差別せずに他人と関われるのだろうか。

 

それの答えはまたしても、否だ。

 

容姿、生まれた環境、生まれた場所、産みの親、行った行為、身体の強弱、成績の善し悪しなどなど、世の中には差別の対象となる物が多数存在する。

 

そして、差別していると認めたくない者は決まってこう言う。それは差別ではなく、区別であると。区別とは両者をはっきりと別ける事だが、その別ける事柄、判断材料が両者の違い、或いは差である。そして、それは結局差別へと結論づけられる。

 

もし本当に世の中に差別しない者がいるとするならば、そいつはもはや人間ではないとすら言えるだろう。現代社会は平等平等と訴えて止まないが、平等な社会は実現不可能である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ことの発端は高校の入学式の日にその高校行きのバスで起こった。

 

バスの中は、丁度通勤や通学に使う時間ということもあり席は埋まり混雑していた。中には、綾小路と同じ制服を着ている生徒も数名見て取れた。そして、座席に座れていない老婆が見て取れたが、別に譲ってやるほどのお人好しではない綾小路は無視する事にした。

 

 

「席を譲ってあげようって思わないの?」

 

 

OL風の女性が優先座席に座っている人に注意しているようだった。真横にはさっきの年老いた老婆がいた。どうやら優先席に座っている高校生とは思えないがっちりとした体格をした、自分と同じ学校の制服に身を包み、場違い感がすごい金髪の髪を染めた男がドッカリと座っていた。どうやら彼女は男が老婆に席を譲ってあげようとしない事に苛立っているようだ。

 

 

「そこの君、お婆さんが困っているのが見えないの?」

 

 

 OL風の女性は、優先席を老婆に譲ってあげて欲しいと思っているようだったのだろうが、静かな車内での声は良く通り、周囲の人たちから自然と注目が集まり、老婆は迷惑そうだった。

 

 

「実にクレイジーな質問だね、レディー?何故この私が、老婆に席を譲らなければならないんだい? どこにも理由はないが」

 

「君が座っている席は優先席よ。お年寄りに譲るのは当然でしょう?」

 

「理解できないねぇ。優先席は優先席であって、法的な義務はどこにも存在しない。この場を動くかどうか、それは今現在この席を有している私が判断することなのだよ。若者だから席を譲る? ははは、実にナンセンスな考え方だ」

 

 

何とも高校生らしからぬ喋り方であった。

 

 

「あの...私は大丈夫だから」

 

「どうやら君よりも老婆の方が物わかりが良いようだ。いやはや、まだまだ日本社会も捨てたものじゃないね。残りの余生を存分に謳歌したまえ」

 

無駄に爽やかな笑顔で彼が言い放つ。どうやら、OLは半ば強引に言いくるめられたみたいだが、彼女は納得していないみたいだ。だが、反論できない。とてもムカつく発言だが、老婆が騒ぎを大きくしないように止めに入ったのが一番の理由だろう。そもそも本当に老婆が座りたかったかどうかもかも分からないし、次のバス亭で降りるかもしれないし、逆に座るとしんどいという人も居るかもしれないのだ。結局は注意した側の優しさの押し売りになる。この出来事はこれで終わりかと綾小路は思っていたが、そうではなかった。

 

 

「あの……私も、お姉さんの言う通りだと思うな」

 

 

思いがけない救いの手を差し伸べたのは、綾小路と同じ制服を着た非常にかわいい女の子だった。

 

「お婆さん、さっきからずっと辛そうにしているみたいなの。席を譲ってあげてもらえないかな? その、余計なお世話かもしれないけれど、社会貢献にもなると思うの」

 

その説得の仕方は悪手だ、と綾小路は思う。彼はどう見たって自分大好き人間だ。ほら見ろ、パチンと指を鳴らして口撃してきたではないか。こうなっては女の子もOLも老婆も彼を説得するのは無理だろう。

 

結局OLと女の子が優先席じゃない所も声をかけ始め、我慢出来なくなった一人の女性が替わってあげた。このバスは暗い雰囲気が漂っていた。なんと言うか、後味が悪い。

 

だが、その空気は一瞬にして一人の女の子に壊された。

 

 

 

 

バスの入口は二枚のドアが左右に開くタイプであるためある程度の大きな物でも簡単に入る。車椅子用に作られたのだろうか。そのドアとほぼ同じ大きさのリュックをしょっている女の子が入ってくる。バスの中にいた者は全員彼女に目が釘付けになった。しかも持ち物はそれだけではない。手にも何かが入ったカバンを持っていて、それもデカく、辛うじて顔と制服が僅か見える程度である。

 

隣で小説を読んでいた女の子も本を読むのを辞めて彼女を見ていた。

 

 

「私をそんなに見つめて...惚れましたか?」

 

「「「「ちげーよ!」」」」

 

 

バスの殆どの人が同じ言葉を発した。

 

 

「おや?入りませんな...ちゃんと計算した筈なのに」

 

「お、入った入った。奥までずっぽりと」

 

 

下ネタには誰も突っ込まなかった。

 

変な手のポーズも全員無視した。一体誰に向けてやったのやら。

 

 

彼女は辺りをキョロキョロする。だが、先程優先席で揉めたようにこのバスには座れる場所は無い。だが、彼女は座れた。何故なら先程優先席に座っていた金髪の男が譲ったからだ。

 

これから起こる事は、バスにいる全員が予想できた。

 

 

「なんで席を譲ったの!」

 

「どうしたんだい?レディー」

 

「さっきあのおばあさんに譲らなくて、なんで今度は譲ったのよ!」

 

「おかしな事を言うね。私は降りる駅が来たから立ち上がっただけに過ぎないのだが?」

 

 

またしてもOLは言い負かされた。

 

 

その男が自分と同じ制服を着ている事からわかっていたけど、やはり同じ学校だったかと思う綾小路だった。彼はバスを降りて、暫く校門を眺めていると、バスで自分の隣に座っていた女性に話しかけられる。

 

 

「ねぇ」

 

「...」

 

「あなたよ」

 

「もしかして俺か?」

 

「あなた以外に誰がいるの?頭おかしくなった?」

 

「なってない、それで、どうした?」

 

 

平静を装ったいるが内心話しかけられた事でめっちゃ綾小路は焦っている。

 

 

「さっきの大きな荷物の子、私たちと同じ制服着ていたわよね」

 

「あぁ、そうだが?」

 

「なんでここで降りてないのかしら」

 

「俺に聞かれても...?降りてない?」

 

「ええ」

 

 

綾小路は去って行くバスを振り返るが、確かに窓から女の子が見えた。いや、彼女の大きなリュックが窓から見えた。

 

 

「...さぁ、俺は無視する事にする」

 

「そうね、その方がいいみたいね」

 

 

その後開かれた始業式に、彼女は来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の名前は畑 ランコ。中学の時は新聞部に入っていて根っからの記者である。ちなみにそんな部活無かった為に自分で立ち上げた。

 

そして、大きな荷物の中身は100kgを優に超えるカメラやマイクなどの様々な機材。もはや並の人間には持てる代物では無く、ましてや女子が持っているのだ。恐らく彼女は化物の類だろう。

 

彼女がバスを降りなかった理由は、校門から学校の寮までは遠すぎる為だ。そもそもこの学校は殆どの物をポイントで買わせる為に基本私物の持ち込みを許していない。小さな物ならばいいが、彼女のは明らかにオーバーである。

 

だから見つからずに入る必要がある。なので学校の敷地内に入ったら真っ先に寮に入って、これらを隠す事になる。そもそも持ってこなければいい話だが、撮った物の画質が悪かったり、機材が不十分で撮れなかったとなると彼女にとっての恥である。

 

よって、退学のリスクを背負ってでも彼女は盗撮用のカメラなどを持ってきた。と言っても、彼女は見つかる訳がないと思っているのだが。

 

 

「これより、秘密の潜入、またの名を!隠れてし〇しこ作戦を開始する!」

 

誰かに言う訳でも無く、彼女の一人言だ。

 

「かさかさかさかっさぁー!」

 

口でかさかさ言う割には、彼女の足元から音はない。彼女が降りた駅は学校前の次であり、バス停から寮までの直接距離で最も近いのはここである。

 

ただし、ここを通ろうとする者はいない。それは校舎をぐるっと囲む壁が原因である。高さは6、7mほどあり早速人が越えれるほどの高さでは無い。また、壁の上には24時間監視体制の監視カメラがついている。おまけに赤外線センサーもあり、まさにネズミ1匹通さない仕様であるが、彼女には関係ない。

 

 

「へっ、ちょろいぜ」

 

さも当たり前のようにバレずに中に侵入できた。赤外線センサー、盗聴、盗撮、特にカメラ関係は彼女の右に出る者はいない。整備から修理、おまけに改造も出来る。部品さえあればだが。

 

そして、その全てが彼女のバッグに詰まっている。

 

 

 

 

ちなみに、彼女の部屋がわからなく、結局適当な部屋のベランダに全てを放置してから始業式に行き、着いた頃には始業式が終わっていた。

 

 

 

 

 

 

綾小路が入った教室はDクラスであり、ホームルームのチャイムが鳴っても先生は来なかった。そこを見計らって、一人のイケメンが立ち上がり、みんなに自己紹介をしようと促す。

 

「みんな!これから同じクラスで過ごすんだし、自己紹介した方がいいと思うんだ。じゃあ、まずは僕くから。僕の名前は平田陽介...」

 

 

そんな感じで自己紹介が進んでいき、綾小路の番がやってきた。

 

 

「次は君だね!」

 

「えー、綾小路清隆です。えー、特技は特に無いです。えー、よろしくお願いします」

 

 

自己紹介する必要がないと言い須藤が机を蹴ったと同時に、一人の美女が入ってくる。

 

 

「お前達、席につけ...ん?一人いないようだな、初日から遅刻か?」

 

 

クラスがいない生徒が誰だか気になり始めた所で、恐らくその生徒であろう女子を殆どが見つけた。

 

大きな胸をした女性の先生の真後ろに。

 

 

「おぉー、これは凄い胸ですなぁー。これは売れるぅ!!」

 

 

そう言いながら先生の胸を揉み出す女生徒。何人かの生徒(男女含め)が顔を赤くしてみている。

 

 

「貴様は一体何をしている」

 

「A〇女優の胸と比べていたんです」

 

 

胸を揉まれているのに一切動じない茶柱。

 

 

「今すぐやめなければ退学にするぞ。いいから席につけ」

 

「はぁーい」

 

 

畑が席に着いたのを確認して、茶柱が話し出す。畑の席はほぼど真ん中である。

 

 

「今から配る学生証カード。それを使い、敷地内にあるすべての施設を利用したり、売店などで商品を購入することが出来るようになっている。クレジットカードのようなものだな。ただし、ポイントを消費することになるので注意が必要だ。学校内においてこのポイントで買えないものはない。学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能だ」

 

この学生証は学校での現金の意味合いを持つ。なるほど。かなり大切な物だと理解する。"買えない物は無い"と言う所に、4人程が気にかける。この言葉はどういった意味を持つのだろうか。今考えても仕方がない事だが、質問しようとも綾小路にはその勇気が無いために黙っていた。他にも気になった者はいて、顔から見るに高円寺、堀北もそうだろう。そして、あの大きなリュックの女の子もだ。

 

 

「先生ぇ!何でも買えるってことは...茶柱先生を買うことも出来るんですか!」

 

 

これにはクラスの全員が呆れる。そんな事が出来る訳が無いと思っていたのだろう。だが、返って来た答えは予想に反する物だった。

 

 

「当たり前だろう。最も、私は高いがな。諦めな。3年間何も成さずに貯めたとしても、足りないぞ」

 

「なるほどなるほどぉ...」

 

「ポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになっている。お前たち全員、平等に10万ポイントが既に支給されているはずだ。なお、1ポイントにつき1円の価値がある」

 

 

教室の中がざわつく。10万。予想外の金額に驚きを隠せない。多くて3万程かと予想していた綾小路だが、軽く超えてきた。さすがに日本政府が関わっているだけある。このクラスだけでも一カ月、数百万。学年では一千万円以上ものお金が支給される事となる。

 

さらに先生が補足説明をする。曰く、この学校は実力で生徒を測り、入学の段階で10万円の価値と可能性がある。ポイントは卒業後には全て学校側が回収。現金化は不可。ポイントの譲渡は可能。いじめ問題には敏感。との事だ。

 

 

「質問は無いようだな。では良い学生ライフを送ってくれたまえ」

 

 

先生が戸惑う生徒を尻目に教室から退出する。淡々と説明だけして居なくなった。

 

先生が出ていくのを見計らって畑の席の横にバスの女の子がやってくる。

 

「10万は驚いたね。高校生に渡す額じゃないよね。高すぎるよ...私は櫛田桔梗って言うんだ!君の名前は?」

 

「新聞部の畑ランコです。別に高く無いですよ。デ〇ヘルの120分コースに4回しか行けません。思春期男子には出し足りないかと...」

 

「え、部活?デリ〇ル?」

 

「貴方...可愛いですね」

 

「そ、そうかな」

 

「いや、間違えました。エロいですね。その胸はわざと出してるんですか?全貧乳女子の憧れの的です。やはりもんで貰える相手がいることが重要なんですね!お若いのになんて破廉恥な!」

 

「お若いって畑さん同い年だよね...」

 

「まぁ、そうですが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾小路がコンビニ(学校敷地内)で買い物していると偶然堀北にあった。

 

「なぁ。お前の名前は?俺は綾小路清隆だ」

 

「言う必要が無いわ」

 

「隣同士で知らないのは居心地悪いんじゃないのか?」

 

「...堀北鈴音よ」

 

 

それを言ったきり、堀北は買い物を始めた。

 

 

「安いの買うんだな。金があるんだし「必要ない」しかし「必要ない」」

 

「でもナ〇キンは買ったほうが「貴方ねぇ...!」」

 

「待て堀北、今のは俺じゃないぞ」

 

 

堀北がコンパスを握ってこちらに針を向けている事に気付き慌てて否定する。

 

 

「これは失礼。ナプ〇ン派では無く、タ〇ポン派でしたか」

 

「...貴方なんなの?」

 

 

睨みながら堀北が綾小路の横で喋った女子に聞く。

 

 

「新聞部の畑です」

 

「はぁ、綾小路君。幾ら友達がいないからって友達料まで払わなくても。おまけに彼女だし」

 

「勘違いだぞ。こいつはいつの間にか俺の隣にいた」

 

「そうです。私はどちらかと言えば百合よりなんで、はい」

 

「聞いてないわ」

 

 

その後、いつの間にか畑はいなくなっていた。

 




畑さんの性格がおかしかったら言ってください。次回から気おつけます。その他は知りません。ちなみに、作者は畑さん大好きです。あと白井黒子も。
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