つぐやんさん。誤字報告ありがとうございました!
「チェルシーさん……まだ日本発ってないよね?」
「はい。まだ空港のロビーですが」
「あぁ〜良かった。これで何とか間に合う」
私を止める為に掛けてきたのでしょうか? 「間に合う」と言ったからにはそうなのでしょうが、今更戻ってもどんな顔で仏さんに会えばいいのか。
「……もしかしてでもなく、仏さんの事ですよね?」
「そうなんだけど。えっと、そのね……驚かないでというか怒らないで聞いてね?」
?……怒らないでとは何ででしょう? 何か嫌な予感がしてきましたよ。
(状況説明中)かくかくしかじかうまうまやっ――「はあぁ!?」
仏さんのマスターさんから全てを聞いて、私は周りも気にせず怒気の籠もった声でその場で叫んでしまった。
「すみません……この後、サプライズでお二人に伝えようと思っていたのですが、まさかこんな形になろうとは……」
「…………( ゚Д゚)」
「チェルシーさん?」
「そんな……そんな…………」
「とりあえず今、ウォルターが仏を連れて空港へ向かってるから」
「……それじゃあ私がしたことは…………」
プツリと通話が切れ、チェルシーさんの声が聞こえなくなる。一応説明はした訳だしこっちは大丈夫だろう。後はこのあと喫茶店に来るセシリアさん達への連絡かな。
体を縛られていた糸を解いてもらいシートベルトを締めた私は、やっとウォルター殿から事の次第を教えてもらいガクリとその場に倒れ込んだ。
「そんな……お三方でそんな話し合いになっていたなんて、聞いてませんよ!」
「申し訳ない。まさかこんな形になるとは私達も予想外の事でしたので」
ウォルター殿から聞いた話を纏めると、私はチェルシーさんへの告白が成功した後、仏の喫茶店を解雇され、オルコット家の執事として雇われる話しになっていたらしい。
喫茶店はウォルター殿がセシリアさんの卒業に合わせ、そろそろ仕事を引退して自分の店を持ちたいという夢を叶える形で引き継ぐ事になっていたらしい。
「その……皆、今日のサプライズで二人に話すつもりだったのでしょう。なのでマスターを、セシリア様を怒らないであげてください」
「そんな……怒るだなんて……」
「しかし、チェルシーもチェルシーです! あれだけ私やエクシアに笑顔で惚気け話を聞かせておいて、最後の最後にこれとは!」
「……笑顔……惚気け話……ポッ」
ウォルター殿の暴露話に少し照れてしまう。
エクシアさん……そういえば同じくメイドとして働く妹さんがいると前に言っていましたね。
「……仏殿も大変ですよ、オルコット家の執事となれば覚える事も多いですし、まぁそこは仏殿なら大丈夫とは思いますが……」
「……が?」
「エクシアが仏殿が『お姉ちゃんに相応しいかどうか私が見極める!』と凄く殺る気になっていましたので」
ん? 一瞬殺気を感じた様な??
「良くも悪くもあの姉妹はお互いにシスコンなので、仏殿が一番に越えなければならぬ壁ですね、ハハハ!」
「えぇぇぇぇぇ!?」
そんな話をしている間に、車は空港へと到着した。
「この時間帯でイギリスに飛ぶ飛行機は三番ゲートから乗るやつです! 私は車を留めてきますので仏殿は先に向かって下さい!」
「ありがとうございます!」
さすがはウォルター殿。そこまで調べてくれているとは助かります。
私は教えられた三番ゲートのある待合所の所へ全力で走って行った。
「あら? マスターさんからだわ」
卒業式が終わり、後輩達から祝福されていると着信音が鳴る。電話に出るとトラブル発生で予定がズレていると聞かされた。
「はぁ……チェルシーったら何でそんなことに?」
「ん? チェルシーさんがどうかしたのか?」
今や私の最愛の人となった一夏さんが隣で声を掛けてきます。私は最後の最後に【一夏争奪戦】を制し、彼をモノにしましたの!
一夏さんに詳細を説明し、私は空港で一人頭を抱えているだろうチェルシーへと電話を掛けた。
待機所に辿り着いた私は急ぎチェルシーさんの姿を探したが……居ない。出航時間は……「イギリス行きジェットストリーム出航致します」……アナウンスの後、一機の飛行機が空へと飛び立った。
「ジェットストリーム号…………間に……合わなかった?」
私は膝を付き、その場で茫然と小さくなっていく飛行機を見つめた。
車を駐車場に留め、直ぐに私も仏殿を追ったが、到着して見たのは膝を付き、茫然と佇む仏殿であった。
「まさか、間に合わなかったのか?」
そう思ったところで少し離れた柱の影から一人の女性が姿を現すのに気づき、向こうも気づいたのか人差し指を唇に添え、こちらに合図を送ってきた。
全く、最後まで迷惑事を掛けてくれるメイドです。私は一歩下がり、二人の成り行きを見守ることにしました。
一時、茫然としてしまったが、このままではいけないと思った私は、とりあえず何か出来る事をと考え、その場を立とうとしたところで……後ろからフワリと私を包むように抱き締められた事に気づく。振り返らなくても分かるこの大好きな香りは……
「チェルシーさんですよね?」
「…………」
返事を返してくれない彼女の手に私の手を合わせ再びこの思いを伝える。
「その……恐らく話はマスターから聞いたでしょうが、これでもう私に迷いはありません。どうか私を大好きなあなたの側に居させて下さい。イギリスでも宇宙でもあなたの側に居れるなら私は何処にでも参りましょう」
「ならまずは、仏の喫茶店に付いて来て貰いましょうか?」
「――って、ここで私の喫茶店ですか!?」
訳が分からず、振り返って見た彼女の表情は真っ赤で泣いていたのでしょうか? 瞳も赤く潤んでいて、でも笑顔で……正直見惚れてしまいました。
「セシリア様に怒られてしまいました。それで『仏さんとウォルターを連れて帰ってこなかったらクビですわっ!』って言われてしまいました」
「それはそれは……(セシリアさんGood Job!)」
「なので一緒に帰ってくれますか?」
「勿論です!」
「それとさっきの返事は……」
フワリと彼女の唇が一瞬だけ私の唇を包み込む。
「勿論OKです!」
満面の笑みで私の手を引っ張りながら進む彼女の笑顔に私は改めて惚れ直したのだった。
「お車はこちらです」
状況を見守っていてくれたウォルター殿の運転で三人、仏の喫茶店へと戻った。
最後にエピローグ的な一話を加え、終わりになります。
まぁISの次作に繋がる部分でもありますね。