マクロスSympathy   作:紅 奈々

4 / 4

どうも、こんにちは。
えーと、早速読んでくれている方がいらっしゃるようで、嬉しく思います。
この小説はちまちまと更新していけたらいいなと思っておりますので、思い出したときに読んでもらえると幸いです。


Mission2 玻璃色ロスタイム
風ノ巫女


〈For ever love 燃え尽きながら

貴方の元へ堕ちていくよ 想いを抱いたまま

抱き止めて 喩え傍に

この身体がなくてもせめて 残った想いだけは

掬い上げてほしい〉

 

〈貴方の蒼穹(そら) 飛びたいよ

僕の鼓動 闇に融けても

またいつか 生まれ変わって

同じ夢を見る……〉

 

「ありがとうございます、巫女様ぁぁぁぁぁぁああ!」

 

琉歌が歌い終わる頃には、死んだと思われていた人達は皆息を吹き返し、琉歌に感謝の声を投げる。

そんな彼らに琉歌は控えめに手を振った。

こうして、琉歌達はヴァールを鎮めていたのだ。

 

―― ――

 

「ちょっと宜しいか?」

 

ピアンタ農村地帯で休んでいた琉歌は、アラドに声を掛けられた。

琉歌は内心で警戒しながら、無表情に言葉を返す。

 

「何でしょう」

「ケイオスラグナ支部デルタ小隊隊長のアラド・メルダースと言う者だ。

先程のライブについて、詳しく話を聞きたい」

「別に構いませんよ。

ここでは何です、ピアンタ農村地帯の僕のアジトで話しましょう」

 

名を名乗ったアラドに琉歌は提案した。

ピアンタ農村地帯。先程、マモンに言われたことをハヤテが思い出した。

 

「でも、そこって今は廃村で自警団が根城にしてるんだろ?

危なくないか?」

「大丈夫ですよ。自警団が根城にしているというのは本当ですが――彼らとはギブアンドテイクで繋がっていますから」

 

琉歌の言葉に半信半疑に、ハヤテが首を捻った。

アラドはそれを気にも留める様子を見せず、頷く。

 

「解った、そのようにしよう」

 

―― ――

「ピアンタ農村地帯は、代々からアリアの直系が管理していまして、それが祖母の時代になって自警団が発足され、その行動を称賛した琉衣様が彼らに廃村となった農村地帯の土地を貸しています。

そのよしみで彼らは僕に協力してくれています」

 

農村地帯へ向かう道中、琉歌からそんな説明を受けているハヤテ達。

道理で、先程からすれ違う軍服のような黒い服を着た人々から敬礼されたりしている訳だ。

 

しかし――。ワルキューレのメンバーは、聞いた事のある琉歌の声に首をかしげる。

今まで、一緒に居た人……。そう、マモンと声が似ているのである。

 

「あのさ、さっきマモンって奴が居たんだけど……」

「それで?」

「その、さっきの暴動の最中にどっか行っちまってよ。見てないか?」

「ふはっ」

 

ハヤテの質問に琉歌は思わず吹き出してしまった。

何か変なことを言ったのだろうか。

ハヤテが首をかしげると、琉歌は徐に腰に巻いていた布を解いて、それを羽織った。

 

「マモンなら、ここに居るじゃないか」

「えぇっ!?」

「なんと」

「えぇ~っ!?」

 

琉歌の言葉に、一同が驚いたような表情を見せた。

琉歌はフードを深く被って言う。

 

「「瑠璃の民(ラピスラッズリ・ヴォルゴ)のマモン」は、僕が動きやすいように作り上げたもう一つの僕の事さ。

玻璃の民(クワルツォ・ヴォルゴ)の琉歌は顔が割れてるからね。

平常時までペコペコされたんじゃ何処に行っても休まらないだろう?」

「な、成程」

 

琉歌の説明にハヤテが頷く。

何で琉歌の時の彼女とマモンの時の彼女でこうもキャラが違うんだ?

そう思ったハヤテは、次の琉歌の言葉に驚愕するのだった。

 

「それは、琉歌とマモンでキャラが同じだったら、正体が割れるじゃないか」

「っ、何でオレの考えてることが?口に出したつもりはなかったんだけどな?」

「風は何でも感じ取るのさ。その人の深層心理、感情、何でもお見通しだよ」

 

琉歌は風に身を任せる様に目を閉じて言った。その刹那、強い風が吹いて琉歌のフードを攫う。

暗い茶色の髪が月明かりに照らされ、赤く輝きながら琉歌の細い肩に落ちた。

 

「さて、着きましたよ。こちらからどうぞ」

 

フードを脱いだ彼女は「マモン」から「琉歌」へと変わっていた。

 

―― ――

 

琉歌はピアンタ農村地帯のアジトに着くと、彼らを地下のブリーフィングルームへ案内した。琉歌のアジトは地下に造られている。

 

「地下にこんな大きな部屋があるんだな」

「驚きです」

 

ハヤテとミラージュがそれぞれ感嘆の声を漏らす。

琉歌は説明した。

 

「ここは、災害があった時にこの地域の全4民族の避難民を受け入れられるように広く造ってあります。

非常用電気は太陽光で得たエネルギーと風のエネルギーを電力へ変換して供給されるので、大きな問題が起きない限りは災害時でも電力は供給されるようになってます。平常時は私のアジトになっていますがね」

「へぇ、すげぇな」

「それより、先程の風ノ儀式についての説明を求めていましたね。

その前に、ヴァルキュリアのパイロットがもうじき来るのでもうしばらくお待ちください」

「ヴァルキュリア……先程の群青色の機体かしら?」

 

琉歌の説明に感服するハヤテに、琉歌は先程のライブ――琉歌曰く風ノ儀式についての説明を少し待って貰えるよう求める。

美雲が琉歌の言葉を補足する。琉歌は頷いた。

 

「えぇ、そうです。O.C.001(オーシーワン)ヴァルキュリア。

アーリア自警団の主力戦闘機です」

「ヴァルキュリちゃん、かぁ~!

もっと近くでゆっくり見てみたいなぁ~!何なら、整備してみたい!」

「それは無理だと思います。彼はとても警戒心が強い方ですから。

――噂をすれば、来ましたよ」

 

「そんなぁ~」と残念そうに肩を落とすマキナの言葉を無視して、琉歌は扉の向こうの気配に目をやりながら言った。

一同が扉に注目するも、まだ、扉は開けられておらず誰もいない。

 

ややあって、スライド式自動ドアが人の気配を察知して開いた。

部屋に入ってきたのは、メッサ―と同じか少し年下くらいの青年。

 

「リオン、先程の人達です」

「あぁ。

俺は風ノ巫女を守護する者(アーリア・パラディーノ)のリオンだ。

先程も軽く挨拶はしたと思うがな」

 

琉歌が自己紹介を促すと、リオンは手を胸元で水平に伸ばしてお辞儀をする敬礼をした。その敬礼は、アーリア自警団特有の敬礼だ。

一瞬だけ頭を下げた後、顔を上げて真っ直ぐに部屋に居る面子を見る。

ワルキューレのメンバー以外は見た事がない為、先程の戦闘に参加していたパイロット達だろう。

 

リオンの顔を見たレイナが「わお、美青年」と零す。

 

「では、お前さんがさっきの機体のパイロットか。

俺は、ケイオスラグナ支部デルタ小隊隊長、アラド・メルダースだ。そして、この人が――」

「戦術音楽ユニット・ワルキューレのリーダー、カナメ・バッカニアです」

 

アラドとカナメが自己紹介をする。

名乗ったリオンは琉歌を一瞥した。それに頷く、琉歌。

 

「改めて、僕はアーリア・カンツォーネ村・玻璃の民(クワルツォ・ボルゴ)の琉歌です。

この風ノ大地で風歌(かざうた)ノ巫女をしています。

まぁ、とりあえず適当なところにお座りください」

 

改めて自己紹介をして、琉歌は何人かが座れる椅子を勧める。勧められた椅子に一同が座ったのを見て、琉歌は口を開いた。

 

「質問には答えます。何なりと訊いてください」

「じゃあ、私から。

貴女の歌声には、フォールド波が出ているような形跡がなかった。それなのに、貴女の歌を聴いた人達が血を吐いて倒れたり、そうかと思ったら突然息を吹き返して元気になっていたわ。

それはどうしてなのかしら?」

 

真っ直ぐと真紅の目を琉歌に向け、美雲が問いかけてきた。琉歌も、美雲の目を見つめ返す。

そして、訊かれることが解っていたのか琉歌は直ぐに答えた。

 

「それは、僕が生まれ付き声に宿している声質の所為です」

「生まれ付き声に宿している声質……? フォールド波ではない声質なんて、存在するの?」

「はい。存在しています。

現にそれを持っている僕の歌を目の当たりにしたでしょう」

 

琉歌の回答に今度はカナメが疑問を口にする。琉歌の言葉に誰もが押し黙った。

確かに、フォールド波なら人が血を吐いて倒れたりするようなことはない。

 

誰もが考えていると、不意に琉歌が歌いだした。

 

「アイモ アイモ ネーデル ルーシェ

ノイナ ミリア エーテル プロテア フォトミ――」

「な、何を!」

 

ミラージュが銃口を向けてきたが、琉歌は構うことなく歌い続ける。

すると、リオンが言った。

 

「今のお前らなら、琉歌の歌声を聞いてもどうともならない筈だ」

「何……?」

 

リオンの言葉にミラージュが銃口を下げる。

確かに、歌を聴いていても何ともない。

それどころか、何処か心地よく聞こえて、とても安心する。

いつの間にか、琉歌の歌声に耳を傾けていた。

 

「ルーレイ ルレイア 空を舞う雲雀は涙

ルーレイ ルレイア お前は優しい 鳥の子――」

 

確かに、琉歌の歌を聴いても誰も何ともない様だ。

それどころか、何人かは歌に聞き入っていて、相当聞き心地が良いのだと思う。

 

「アイモ アイモ ネーデル ルーシェ

ノイナ ミリア エーテル プロテア フォトミ――

ここは暖かい 空だよ――」

 

歌い終わった琉歌は、真っ直ぐにケイオスの面々を見ていた。

そして、口を開く。

 

「僕の歌を聴いて、幾らか緊張がなくなった人が居るみたいで良かったです。

さて、話の続きをしますが、今君たちに歌ったのは“生の歌声(カント・ディ・ヴェータ)”――聴いた者に安心と安らぎを与える歌です」

「安心と安らぎ……」

 

琉歌の説明を聞いた美雲が呟く。確かに、先程の歌によって安心した部分を否めない。

それは、その場にいる全員が思った。

琉歌は頷く。

 

「はい。僕が皆さんに「安心してください」「落ち着いてください」「害は有りません」と言う思いを声に乗せて歌っていたのです。そこで更に皆さんが僕の歌を受け入れたから、それ相応の効果があった」

「なるほど。確かにこりゃフォールド波とは別のものだな。

じゃあ、ライブの時に血を吐いていた連中は何故そうなったんだ?」

「僕が“死の歌声《カント・ディ・モルテ》”を歌ったからです。

ヴァールに罹った人たちはこちらを攻撃目標としていますからね。僕が殺意を持って歌えば、彼らは死なない程度に内臓や細胞にダメージを受けます。

その際、フォールド細菌も攻撃しますので、体内のフォールド細菌は死滅します」

「あのO.C.キャンセラーとか言う装置はその作用を遮断するための物だったんだね?」

「はい。キャンセラーの中に居る間は“死の歌声《カント・ディ・モルテ》”を遮断しますから、無害だった筈です」

 

アラドとマキナの質問に丁寧に答える、琉歌。

しかし、そこでフレイアが不安そうな顔で「あの……」と手を上げた。

 

「私、さっきの歌で何だかぶっちゃ不安になって……そしたら、体中が焼けるみたいに痛くなって……」

「あぁ、それはO.C.波による中毒症状ですね。

O.C.波に感応しやすい人程、酷い中毒症状が現れる事があるようです。

それは最初だけみたいなので、今は何ともなかったでしょう?」

「はっ、そういえば……!」

 

琉歌の説明に、先程の歌を聴いても何ともなく――むしろ、安心してしまったことをフレイアは思い出した。

 

「僕の歌声に宿る性質は、古代よりオンダ・カント――通称、“O.C.波(オーシーは)”と呼ばれています。

その歌声は大きく分けて二つに分かれており、違う作用を人体にもたらします。

いずれも、私の感情と歌を受け釣る側の感情により、その作用は変わってきます」

「まさに、諸刃の剣ね。

貴女が安心させようと歌っても、聞いている人間によっては毒にもなる、って事で良いのかしら?」

「そうなりますね。だから、周りに居たヴァールに罹っていない人は無事だったでしょう?」

「えぇ、そうね」

 

琉歌の話を聞いていた美雲が興味深そうに口をはさんできて、琉歌はそれに答える。

 

O.C.波は、歌っている人間の感情と聴き手の受け取り方によって、その作用は大きく異なる。

例えば、琉歌が癒そうと歌っていても、フレイアが琉歌に対して恐怖を覚えてしまえばその作用は毒になり、琉歌が癒そうと歌っている歌をカナメやリオンの様に心地良いものだと思って聴けばそれは薬になる。

逆に、琉歌が攻撃しようと歌っても、リオンの様に琉歌を受け入れている人間が聴いてもその作用は薬になる、若しくは何の作用もしないが、ヴァールに罹った人々の様に琉歌の歌を受け入れない場合は毒となり、牙を剥く。

まさに、諸刃の剣だ。

 

「貴女自身には何の害もないの?」

「それは……」

 

このカナメの言葉に、琉歌は押し黙る。

この人らを信用するなら話した方が良いだろう。しかし、この人らと行動を共にする気は、今の所ない。

つまり、話すべきことではない。

そう判断した琉歌は、言った。

 

「それはお話しできません。貴方方には関係ない物なので。

どうなれど、僕は歌う。それが運命(さだめ)なのです」

「そうですか……」

 

琉歌の突き放す言葉を聞いたカナメは押し黙った。





@使用した曲
飛翔恋歌―コイノソラ―

歌詞を全部見たいという方が居たら、もしかしたら歌詞を書く……かも?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。