プロのハッカー、デジモンと歩む ~一応、探偵やってます~   作:八雲ネム
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EDEN症候群

 探偵助手として、採用されてから一通りの仕事を杏子さんから教えてもらい、BW(ブロードウェイ)をの挨拶回りを済ませてから事務所に戻ると、そこにはベテランな雰囲気を醸し出している男性刑事が座っていた。

「ただいま戻りましたよ~っと…ご依頼の人ですか?」
「ちょうど良い、紹介しよう。こちらは警視庁電脳犯罪捜査課の又吉警部だ。父の代からの顔見知りで度々、ここを訪れるだろうから顔を覚えておくといい」
「杏ちゃんから話は聞いてるよ。俺は又吉だ、よろしくな探偵助手さん」
「はぁ、どうも…」

 又吉さんから差し伸べられた手をそのまま、俺は握手を交わすと杏子さんからこう言われた。

「なに、又吉警部からEDEN症候群について調べて欲しいと頼まれてね。君も話に聞いたことぐらいあるだろう?」

 EDEN症候群とは、 EDENネットワークに接続しているユーザーが発症すると言われている病気で、発症すると昏睡状態となって意識を戻さないと言われている。
 この病気に対する治療法は今のところ、発見されていない。
 不要な混乱を避けるため、発病者は特殊施設のある病院に隔離されているらしい。

 多分、俺の肉体もこのEDEN症候群に罹っている可能性が高い。
 理由は、半電脳体である俺の意識が元の身体に戻らないからだ。

「おれぁ、EDENを作ったカミシロがなんか隠してんじゃねぇかと睨んでる。だが、俺みたいな警察の立場の奴はそう簡単に、そういった分野に探りを入れることは難しい。そこで杏ちゃんの力を借りようって魂胆さ」
「わかりました。その依頼、お受けしましょう」
「依頼ってほどのもんじゃねぇが、頼んだぜ!杏ちゃん」

 そう言って、事務所を出ようとする又吉さんからこう言われた。

「(杏ちゃんのコーヒーには気をつけろよ?)」
「(コーヒー、ですか?)」

 俺が深く聞こうとする前に、又吉さんが事務所から出てしまったので聞けなかった。
 又吉さんが出て行ってから、すぐに杏子さんがこう言った。

「さて、私達も仕事と行こうか。今からEDEN患者がいるという、セントラル病院へ向かおう」
「あっはい」

 そう言われて、俺はすぐに出発の準備に掛かった。



 セントラル病院


「さて、病院に着いたがまずどうしようか…まぁ、こういう時は正攻法を試みるのが1番だろう。私はEDEN患者がいる特別病棟への立ち入りを許可してもらえるよう、直接的に交渉してみよう」

 杏子さんが真面目なことを言ったので、俺がうんうんと頷くとすぐに悪い企みを考えている顔になった。

「フフフフフ。君には追って指示を出すから、それまで館内で情報を集めておいてくれたまえ」
「は、はぁ…」
(絶対に悪い方向で何か、企んでる顔だ…でも、聞いたら聞いたで何をされるかわからんし、今は自分の仕事しよう)

 そう思い、杏子さんと別行動になって辺りを見回すと、黒髪で物悲しげな瞳をした少女がこちらを見ていることに気が付いた。
 そのため、物は試しと思って話しかけた。

「あ~、ちょっと良いかい?」
「すいません、私急いでいるので…」
「おっと、そいつはすまない」

 少女は、俺の誘いを断わるとエレベーターで上の階に行ってしまった。
 気分を害したかなぁと思いつつ、周囲の聞き込みを開始して特別病棟がどの階にあるのかを聞くことができたので、エレベーターを使って特別病棟の前までやって来た。
 そして、特別病棟の方に顔を向けると警備員の人が2人、門番のように立っていた。

 そのため、俺は普通に特別病棟に入れるかを聞いたところ…

「はい、ここは患者のご家族や病院関係者以外の立ち入りを禁止していますので許可できません」

 と、断られてしまった。
 すんなり入れてくれないよねぇと思って特別病棟前から一旦、離れて杏子さんに連絡を取った。

「あ、杏子さん?今、特別病棟の前にいるんですが警備員さん達に止められましたよ?」
『ふむ…では、ここは色仕掛けと行こうか。できるな?探偵助手よ』
「え、えぇ~、色仕掛けってやったことないから多分、失敗しますよ?」
『構わん、ダメで元々だからな。…とにかく、警備員を誘惑して中には入れるように交渉してほしいのだが?』
「はぁ…わかりました。やってみます」

 俺がそう言うと、通信を切って準備をした。
 最初は、普通の格好で架空の友人をでっち上げて警備員の人に聞いたので、近くのトイレで外見や服装を変えてから聞いてみた。

「警備員さん…」
「む?どうしました?」
「さっき、黒髪ロングの少女が来ましたよね?」
「えぇ、そうですが…」
「実は私、その友人なんです」
「なっ…!?」
「ですから、中に入れてくれませんか?」
「ぐ、ぐぬぬぬぬ…」
「こ、堪えて下さい!先輩!」

 俺は、ちょっと肌けた服装で外見も全くの別人にして、言葉のイントネーションも少し変えた。
 普段の俺が男勝りな感じなら、今はお淑やかなお嬢様といった感じだ。
 特に、上目遣いをしながら顔を赤らめて胸を強調するようなポーズを取ったため、警備員の人は完全にギクシャクしている。
 その後、いくつかのやり取りで警備員の人を陥落させると、まんまと中に入った。
 これをする前に、病院のシステムにハッキングしてこの階だけ、俺の姿を写さなくしてあるので問題にはならないだろう。

(プロのハッカーの力をなめるなよ?)

 俺はそう思いつつ、杏子さんに連絡を取った。

「杏子さん、上手くやりました」
『ほう…予想外ではあるが上出来だ。どんな風にした?』
「能力を使って外見を変えてから、仕草や言葉のイントネーションもそれに合わせて変えました」
『なるほど…案外、探偵稼業に向いているかもな』
「ですが、あまりしたくありません。見抜かれてしまうかもしれないからです」
『そうか。では探索して情報を入手してくれ』
「はい」

 その返事を聞くと、杏子さんは通信を切って俺は探索に入る。
 探索と言っても、奥のドアまで一本道なので両サイドにある患者用のベッドを確認していく。
 そして、俺が探していた患者を発見する。

(本当にEDEN症候群で眠っているんだな、俺の身体は)

 そう思いつつ、奥の部屋に入って監視カメラがないことを確認して元の姿に戻った。
 薄々、予想していたがそれでも動揺するのは人間の性だろうか。
 只でさえ、違法侵入しているのでこれが見つかれば昏睡状態の肉体からは、生命活動に必要な装置を取り外されてしまうだろう。
 そのため、制御室にあるパソコンからEDEN症候群について記されているデータをすぎに入手して、同じ道から出ようと制御室を出た。
 するとそこには、ロビーで会った黒髪の少女がいたのである。

「…っ!どうしてあなたが!?ここは関係者以外、立ち入り禁止のはずです。入り口はひとつで、警備員が厳しくチェックしている……なのに、どうやって入ったんですか?警備員に何かしたんですか?あなたは何者ですか?」
「あんたこそ、何者だい?カミシロの関係者か?」
「質問を質問で返さないでください!何が見つかっちまった、しゃーないと言った顔をしているんですか!」
「おーおー、さっきと打って変わって物凄い剣幕なことで」
「………」
「なぁに、しがない探偵の助手をやらせてもらっているだけさ」
「探偵?…ひょっとしてあなたは…暮海……そう、ですか。いえ、なんでもありません。EDEN症候群について調べているんですよね?何か聞きたいことはありますか?私はカミシロに世話になっている身ですから少しくらいならあなたの疑問に答えられると思います」

 探偵というワードを聞くと、少女は警戒を解いてEDEN症候群について、彼女の知っている情報を話してくれた。

「最後にカミシロがEDEN症候群に関わってるていう"黒いウワサ"についてなんだけど」
「それは違います!カミシロもEDEN症候群を治そうと必死なんです!EDENのせいで誰かが不幸になるなんてあっちゃダメなんです…」

 俺の最後の質問に、少女が熱くなっていると杏子から連絡が入って“招かるざる客”が来たので早くそこから脱出しろ、とのことだった。
 すると、入り口の外から女性の猫撫で声が聞こえてきた。

「こんにちは、警備員さん♪お仕事、お疲れ様~♪今日もいいオトコね♡」
「リエさん…!?今日はこないはずなのに…!」
「警備員さんのたくましい大・胸・筋…リエ…見てるだけでドキドキしちゃう…あ~ん、我慢で・き・な~い……ツンツンツ~ン」
「リエさん、すいませんが今はお仕事中ですのでどうかお辞めになってください」
「え~なんか今日の警備員さんつ・ま・ん・な・い♪」

 岸部リエと呼ばれる人物は、いつも警備員にセクハラまがいのことをやっているようで、今日という言葉を強調しながら残念がっている声が扉越しに聞こえてくる。
 そのことに、俺が不快感を示していると杏子さんがこう言ってきた。

『岸辺リエ……背後のお出ましか。なぜ、カミシロの上役である彼女がここに?まぁいい…必要な情報は手に入ったから長いは無用だ。そこから脱出しなさい。ではロビーで落ち合おう』
「………うっす」

 杏子さんは、岸部リエと呼ばれる女性の存在を知っているのか、早く脱出することを伝えると通話を切ってしまった。
 しかし、脱出しようにも目の前に少女がいるため、そう簡単にコネクトジャンプが使えない状況なので絶対絶命だった。
 どうするか、考えている少女がアミの腕を掴むと強引に制御室に隠してくれた。

 それから数分後、緑色のカールの髪にベージュの女性用スーツを着こなしている女性が入ってきた。

「悠子ちゃ~ん、お元気ぃ~?」
「リエさん…今日はどうしたんですか?入室予定者のリストには無かったと、思いますけど」
「うふふふ~ちょっとねぇ~、だ~い好きな悠子ちゃんの顔が突然見たくなっちゃたんだ~」
「ところで~♪こんなところでな~にしてたのかな~?もしかして、私たちの他にも~誰かいたりして~?」
「…!?」

 そう言いながら、猫撫で声の女性である岸辺リエは足音を消しながら、俺がいる部屋に近づいていくるのを感じ取った。
 そのため、俺はどうにか隠れられる場所はないかと部屋を見回すとさっき、ハッキングをしたパソコンが目に入った。
 例え、外部とのネットワークに繋がっていなくても病院内のネットワークからも、外れている可能性は低いとみた。じゃないと、パソコンの意味がないからな。
 そのため、俺は急いでパソコンに向かってコネクトジャンプした直後に、制御室の扉が開いて笑顔を張り付かせた岸部リエが入ってきた。

「……な~んだ、誰もいないじゃな~い。まったく~、悠子ちゃんったら~」
「カレンさん……一体、どこに……?」

 悠子からすれば、カレンがどうやって脱出したかわからないという驚愕の展開だった。



ブックマークしてくれた皆さん、私は帰ってきた!
とまぁ、厨二病を若干こじらせつつ、始めます。

今回、改めて主人公がEDEN症候群になっていることがわかりました。
EDEN症候群とは何かと言いますと、

・EDENにログインしているユーザーが突如、昏睡状態になること
・実は、EDENがサービス開始してからたまに起きていること
・主人公はイーターによってEDEN症候群になったこと
・EDENを管理しているカミシロが何か、隠しているのではないかと言うこと

と、いった感じになります。
ゲームをやってクリアした人ならわかると思いますが、実際に隠していました。
しかし、この小説でネタバレするようなことをしたくありませんので完結するまで待ってくれると嬉しーなー。

ではまた次回。