GGOで好き勝手書いてみた短編集   作:rockless

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9話

 ラッシュがALOに戻ってきてから2週間。ALOもGGOも、現実でも特に何も起こらない平凡な日々を過ごしていた。そうしてクリスマスが迫ったある日のこと

 

「25日のアップデートでアインクラッドの21層から30層までを実装か・・・」

 

「あぁ、もう20層のフロアボスは討伐済みだから、実装されれば即21層が開放される」

 

 暇つぶしがてらに行った20層の迷宮区での狩りから帰ってきたラッシュに、キリトはアップデートの情報を伝えていた

 

「そんで?それだけをわざわざ言いにくるほど、お前さんもヒマじゃないだろ?」

 

「それでなんだけど・・・アップデートしたその日に、21層のフロアボス討伐をしたいんだ。誰よりも早く、いの一番で。手を貸してくれないか?」

 

「なんだ?ボスからのドロップ品狙いか?って待てよ・・・ハハーン、そういうことか」

 

「うぐっ・・・」

 

 キリトの頼みの理由がわかったラッシュに、キリトは気まずそうに顔を逸らす

 

「OKだ。シノンにもメッセージで要請しておこう。えーっと、タイトルは、『キリアス夫婦の思い出の愛の巣、再ゲットの協力依頼』っと」

 

「ちょ、ま?!」

 

 ラッシュの、聞いてるだけで恥ずかしくなるようなメッセージのタイトルに、キリトが止めようとする。しかし、ラッシュはキリトを片手で抑え、器用にもう片方の手だけでメッセージを打ち込んでいく

 

「ホイ送信っと、残念だったな」

 

 あっという間に入力し終え、送信ボタンが押された

 

「あとは今のをコピペして、風林火山とエギルに、この間知り合ったケットシーの領主のアリシャにも・・・」

 

「お願いします止めてください恥ずか死にます!」

 

「SAOで彼女作ったリア充は爆発しろ!!」

 

 どうやらラッシュの悪役ロールはまだ続いていたようであった・・・

 

 

 

 

 

「周りからの視線が生温かい・・・」

 

 アップデート日の25日、21層の迷宮区のボス部屋の前、現在ボス戦前のローテアウト中。集ったレイドパーティのメンバーからの視線に、キリトが肩身狭そうに呟いた

 

「もう!ラッシュさんが変なタイトルで参加を呼びかけるからですよ!!」

 

「んー?本当に俺のせいかなぁー?」

 

「ま、メッセージのタイトルのセンスはともかく、目的は間違ってないんでしょ?」

 

「そ、それはそうなんだけど・・・」

 

 シノンの返しに、アスナは口篭った

 

「あれ?ひょっとして今俺ディスられた?」

 

「そう?気のせいじゃないかしら?」

 

 初めてのフロアボス攻略に参加するシノンだったが、意外と落ち着いているようで、ラッシュを軽くあしらっている

 

「っつーかラッシュ、GGOでも違和感あったのに、ALOでもスーツ姿なんだな」

 

「別にいーだろ。カッコいいんだから。こういうのはファンタジーな世界だからこそ映えるんだよ。所謂ギャップ萌えってやつだ。リアルじゃ着てるだけで疲れるけど、ゲーム内ならそういうのもないしな」

 

 この2週間でラッシュは一通りの装備を揃えた。刀はオーダーメイドではないが、リズベット作の店頭販売の品。防具扱いのスーツは金にものを言わせ、SAO生還者で腕利きの針子のアシュレイに作らせたものである。GGOでしていたビシッとした着こなしではなく、ネクタイを適度に緩めてワイシャツの上のボタンを開けるという、ラフな着こなしである

 

「スーツに刀。イッツァジャパニーズ●クザスタイルってやつだよ。女のセーラー服に機関銃と並ぶお決まりのスタイルってやつだ」

 

「いや、それなんか違う気がする」

 

「俺は仕事を思い出しちまうぜ」

 

 っとクラインが会話に割って入る。他にも数人の社会人プレイヤーが、ラッシュの姿を見てはウンウンと唸り声を上げていた

 

「相変わらずラッシュは●クザスタイルなのね・・・レンとも話したことあるけど、あなたのカッコいいの基準がイマイチわからないわ」

 

「そう言いつつ、シノンの衣装だって学校の制服風じゃねーか」

 

「あら?私はラッシュが周囲から浮かないように合わせただけよ」

 

 シノンの格好はブレザーの制服で、下はもちろんスカートだが中にスパッツを穿くという、鉄壁のパンチラ対策がされていた。もちろんアシュレイ作である。武器は、なんとか間に合ったリズベット作のオーダーメイドの弓である。残念ながら200メートルの射程はシステム的に実現しなかったようだが、それでも100メートルの射程は確保されている

 

「テーマはアーチェリー部の女子生徒ってところかしら」

 

「こっちもこっちでマイナーなフェティシズムを擽る格好を・・・」

 

「キーリートーくーん?」

 

「ハッ!・・・アッ!ちょ?!耳を引っ張るのは・・・」

 

 シノンの格好を眺めていたキリトがアスナに引っ張られていった。妖精の長い耳を強く触られ、キリトが苦悶の声を上げている。ALOでは現実の人間には無い、妖精の長く大きい耳やケットシーやインプの尻尾などは、触覚が敏感になっているのだ

 

「ありゃ新しい扉開きそうだな」

 

「ラッシュ下品」

 

「すんません」

 

 ククク・・・っと笑うラッシュをシノンが嗜める。そして流れるように謝るラッシュであった

 

「でも、ここだけの話。俺にはわからん感覚なんだけどな」

 

「あぁ、そういえばあなたはリアルでも持ってるものね」

 

 少し声を抑えつつ話す。キャーティア人のラッシュは、現実の体でもケットシーと同じ猫耳と尻尾を持っているので、触覚が敏感になるということは無いのである

 

「ただ、副耳がある位置に何も無いのが違和感だな」

 

「副耳?」

 

「人間の耳のほうのことだ。構造も人間の耳と同じで、主に音の方向を知るために使うものだ」

 

「へぇ。なら耳が4つあるってこと?」

 

「そういうこと。おっ、ローテアウトの最終組も戻り始めてきた。そろそろ始まるな」

 

 

「あ、これアカンやーつや」

 

 ボスが現れて早々に、ラッシュはそんな声を上げた。というのも、ボスがラッシュのようなAGI寄りの刀使いとは相性が最悪に近い岩石ゴーレム系のモンスターだったからである。タダでさえ繊細な刃を持っているので耐久値の低めの刀の、さらに低いAGI寄りのそれは、堅い体を持つ敵は天敵とも言えた

 

「悪い、これ俺戦力外だわ。刀の耐久が持たん」

 

「うぉおおい?!いきなり何言ってんの?!」

 

「文句はこんな刀売ってたリズベットに言え。資金もカツカツだったから予備の刀も無い。俺は終盤まで積極的な攻撃は仕掛けない方針でいく。それまで遊撃でタゲ分散に務める」

 

「ったく、仕方ないか」

 

「アンタらあとで覚えてなさい!!」

 

 ボスに突撃する攻撃部隊。その中にいるラッシュとキリトのやりとりである。もちろん同じ攻撃部隊にいるリズベットには丸聞こえである

 ダメージによるヘイトとは別の、接近状態を保つことによるヘイト上昇を利用し、ボスの攻撃ターゲットを自分に向けるラッシュであった

 

 

 

「もう、ラッシュさん、また危なっかしい戦い方をしてる。SAOでもアレやってたのよ」

 

「へぇ、でも攻撃は喰らってないみたいよ」

 

 後衛の魔法支援ポジションのアスナは、そんなラッシュの戦い方にハラハラとしている。同じく後衛で、弓矢による射撃支援ポジションのシノンは、パーティメンバーであるラッシュのHPが減っていないとアスナに伝える

 

「いやはや、彼はすごいねぇ・・・動きが人間離れしている気がするよ」

 

 ―その人間が、地球人って意味なら、ラッシュは人間ではないことになるわね・・・

 

 アスナと同じウンディーネで、男性プレイヤーのクリスハイトがラッシュの動きを見て呟いていた

 

 ―そういえば、このプレイヤーはあの菊岡って人なのよね・・・政府の人間だけど、ラッシュの正体は知らないのかしら?

 

「ALOがレベル制でもセルフでステータス割り振り制でもないからそう見るだけで、レベル制で自由にステ振りのできるGGOならザラにいるわ」

 

「ゲームが違うだけで、あれも普通の動きになるのか・・・いやはやVRゲームの世界は複雑だ」

 

 シノンはラッシュのフォローをしておいた。菊岡という人物が信用できないからこそ、キャーティアの存在は知られないほうがいいと踏んだからだ

 シノンの言葉に、クリスハイトは疲れたようにため息をつき、戦いに集中しようと頭を振って余計な思考を断ち切った

 

「タンク部隊、30秒後にA隊からB隊への入れ替え!メイジ隊は撤退サポートを!ヒーラー隊は回復準備を!」

 

 攻略の指揮を取っているアスナの指示が飛び、メイジ扱いの長射程アーチャーのシノンも弓に矢を番える

 

 ―アスナの指揮や統率力も、年齢を考えるとありえないくらい堂々としててスゴイと思うわ・・・しかもかつてはSAOで、命がかかった戦闘で周りに指示を出してたって言うのだから・・・

 

 初めてのフロアボス攻略戦で、その激しさを体感しているシノンは、冷静に指示を出しているアスナの胆力に驚かされていた

 

「5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・魔法放て!魔法命中後タンク部隊スイッチ!」

 

 アスナの合図でボスに向かって一斉に魔法が放たれ、それらが命中し一瞬タンクへのヘイトが相対的に下がる。その隙にタンクが交代し、キリトたち攻撃部隊の盾役が復活する。最後に攻撃部隊がボスに攻撃を行い、上昇した後衛へのヘイトを上書きする

 

「・・・うん、今の状態での攻撃パターンは掴めたわ。偵察無しのぶっつけ本番だったけど、今のところ想定外の要素もない・・・ゴーレム系だから防御堅めだけど、その分スピードは遅いから、じっくりやれば勝てるわ」

 

 

「HPがレッドゾーンに入るぞ!攻撃パターンの変化に注意しろ!!」

 

 攻略は進み、前衛でキリトが周囲に警戒を促す

 

「さて、終盤だし、そろそろ俺も積極的に攻めていきますかね」

 

「あぁ、そうしてくれ。できれば一気に片を付けたい」

 

 ボスのHPがレッドゾーンに入り、パターン変化を知らせるかのようにボスが咆哮する。そんなボスを見て、ラッシュが刀の鯉口を切る

 

「パターン変化後の最初の動きを見て、行けそうなら行く」

 

「わかった」

 

 咆哮を終えたボスは拳による薙ぎ払いからの振り下ろしの2連攻撃を繰り出した。タンク部隊が薙ぎ払いで吹っ飛ばされ、振り下ろしの衝撃で攻撃部隊の足が止まり、前衛の隊列が崩れる

 

「クッ!!」

 

「出るぞ!俺が相手してる間に、隊列を組み直して体勢を整えろ!」

 

 ラッシュは刀の柄に手をやり、抜刀術の構えをとる。それをトリガーにデータが読み込まれ、僅かに見える刀身が光り輝く

 

「ソードスキル?!初っ端から放つのか?!」

 

「いや、おかしいぜキリの字よ!刀系スキルに、あんな構えから始まるモーションは存在しねぇ!」

 

「なら考えられるのは・・・OSS?!」

 

 OSS・・・オリジナルソードスキル。独自のモーションを登録することでソードスキルを製作する機能。しかし製作における成功条件が非常に厳しいために、一種の奥義扱いされているものである

 

 データの読み込みが終わり、ポンッとラッシュがボスの顔の前にジャンプした瞬間、ソードスキルのモーションが始まる。抜刀からの右やや上に向かっての横薙ぎに始まり、斬り返しの右上からの袈裟切り、それを右下から左上への斬り上げに繋げ、右やや下向きの横薙ぎに持っていく。一点で交差する4本のダメージエフェクトのラインがボスの顔に刻まれた。そこで刀は鞘に戻された

 

「4連撃か・・・」

 

 誰もがそこでラッシュのOSSが終わったと思った。しかし空中にいるラッシュにソードスキル後の硬直が来る気配がないことに、一部のプレイヤーたちが気付くと同時に、ラッシュの刀は再び鞘から抜き放たれた

 

「まだ行くぞ?!」

 

「ならなんで一旦鞘に戻したし?!」

 

 再び抜かれた刀でラッシュはボスを斬り始める。初めに付けた4本の切り傷を補助線にするかのように、星型八角形(八芒星)を刻む。最後にその中心に突きを放ち、素早く抜き去る

 

「必殺、『なんか適当に図形描いて点打ったらできた13連撃』切り!!」

 

「「「ネーミング悪っ?!」」」

 

「ってか、なんでモーション中に鞘に戻す動作入れたんだよ・・・?13連撃だけど隙だらけだろ・・・」

 

「そういう無駄なところに拘るのはラッシュらしい気がするぜ」

 

 周囲がツッコミを入れるが、そんなことお構いなしにラッシュは納刀してソードスキルを終え、静かに着地する。キリトとクラインは呆れたようにボヤいていた

 13連撃を叩き込まれたボスはというと・・・

 

「うわー・・・微妙に残ったよー・・・この刀がもうちょっと強かったらイケてたぜ?」

 

「なんですって?!」

 

「事実だろ?・・・あ」

 

 数ドットだけHPが残っていた。ソードスキル後の硬直で動けないラッシュは、それを見て刀のせいにした。製作者であるリズベットが文句を言おうとするが、直後にラッシュの刀は壊れて消滅した。SAOからの引継ぎで刀の習熟度は上限に達している。もちろんラッシュは刀に無理な力を掛けたわけでもない。しかし、いくら耐久値の低いAGI寄りの刀で堅い相手を斬ったとはいえ、13連撃で耐久値が全て無くなることは通常ありえない

 

「13連撃を1回やって、耐久値全損・・・なにか言いたいことは、リズベットさん?」

 

「あー、うん、そのー・・・ごめんなさい」

 

 ラッシュのジト目での追及に、流石に自分でも不良品だったと認め、謝罪をしたリズベットであった

 ちなみにボスは、後衛からアスナが特攻仕掛けて倒していた

 

 ともあれ、こうしてキリアス夫婦の思い出の愛の巣への最難関は突破されたのである




 21層フロアボス攻略戦
 この2週間でラッシュがALOでやってたのは、賭け試合による金儲けと、SAOにはなかった魔法防御系のパッシブスキルの経験値稼ぎくらい

 ラッシュの妬み。リア充は爆発すべきなのは宇宙共通
 ケットシーなので、一応アリシャと面識ができた。今後出てくるとかは無い

 攻略戦当日
 シノンのラッシュディスり。変なタイトルのメッセージ送りつけられて、読んでみれば要するに『クリスマスに一緒にALOやろうぜ』という内容。イラッとするのも仕方が無い
 ALOでもラッシュはスーツ。ファンタジー世界でスーツ姿に刀って、違和感の塊。一方のシノンもロングボウに制服。アシュレイ乙
 キャーティアの体の説明。主耳は猫耳でメインの音を聞く機能。骨伝導で音を拾うらしい。たぶん人間の形に進化していく過程で猫耳の可動域が小さくなってしまい、音の方向が判別しにくくなったために、副耳ができたと推測。キャーティアはケモミミでも珍しい、人間の耳の位置がどうなっているかをちゃんと設定している種族

 ボス戦開始
 ラッシュいきなり戦力外。偵察を省いたからね。仕方ないよ。ラッシュのヘイトの稼ぎ方は、要するに『敵の目障りな位置にいる』こと

 視点変わって後衛陣地
 菊岡はキャーティアの存在を知りません。日本で知っているのは、詩乃と香蓮を除くと、交渉準備をしている外務省の一部官僚のみ
 シノンのフォロー。実際GGOならAGI型のプレイヤーはあれくらいザラだろうに。ALOはGGOより現実の運動神経がモノをいうゲームシステムだからすごく感じるだけ
 攻略指揮はアスナ。アニメではユージーン将軍がいるように見えるから、ひょっとしたら領主クラスのプレイヤーもいるかもしれないが、レイドのリーダーはアスナという設定です

 ラッシュ「今から本気出す」
 OSSの設定は適当。鯉口切っただけの鞘にほぼ挿しの状態でスキルが読み込まれるのかとか、モーション中に鞘に戻すことができるのかとか・・・
 ラッシュのOSSは抜刀から、2度目の納刀までのモーションで、ポンッとジャンプして空中にいる間に全てのモーションをこなしたので、長くても5秒くらい?片手剣汎用斬り系OSSってことで。名前はまだこの13連撃OSSができて間もないという感じで、ラッシュも決めてないってことで

 ラッシュの刀は不良品だった?
 習熟度が上がると、システム上の設定で使い方が上手くなってると判断されて、武器の耐久値が減りにくくなる補正が入るというオリ設定。もちろん実際の使い方の良し悪しを逆転させるほどの補正は入らない。SAOで2年間刀使って扱い方をマスターしてるラッシュは当然13連撃でも耐久値を全損させることは無い。普通の刀なら

 ボス撃破
 ちなみに、キリアス夫婦の家で初めに行われたことは、ラッシュの13連撃の命名会議だったり・・・

 次回キャリバー

 ぶっちゃけ作中で時期が被ってるマザーズロザリオまではALOと現実がメイン。じゃなきゃラッシュをキャーティアにした意味がないし
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