GGOで好き勝手書いてみた短編集   作:rockless

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14話

『・・・誰?』

 

「っ!」

 

 ガラス越しの会話用に付けられたスピーカーから、か細い声が発せられた

 

「あ、あのー、母さん?見られてるみたいだけど・・・ハッキングや認識霍乱装置(それ)は?」

 

「切ったわ。ハッキングはまだ継続中で、今この部屋と外は完全に隔離されてるから安心して」

 

『・・・ラッシュ?』

 

「あぁ、そうだ・・・俺がラッシュだ。本名はトスカって言うんだが・・・まぁ好きに呼んでくれ」

 

 スピーカーから発せられる木綿季の声に、トスカが戸惑いながら返す

 

『どうして・・・ここに?』

 

「言っただろ?絶対取り立てるって。お前さんも絶対返すって言ったじゃないか」

 

『アハハ・・・そうだったね・・・でも、ゴメン。フロアボス討伐で得たお金、祝勝会で使っちゃったんだ・・・』

 

「おいマジかよ・・・」

 

『そっちの女の人は?さっきお母さんって・・・』

 

 状況に頭がついていかないトスカに、気を使った木綿季が話を振った

 

「トスカ君の母、ケニーよ」

 

『若いお母さんだね・・・お姉さんにしか見えない』

 

「ありがと。私は医者をしてるのよ。あなたに1つ質問があるのだけど・・・もしも、あなたの病気が治って、生きられるなら、全てを失える?」

 

 ケニーのその質問に、木綿季だけでなくトスカも固まった

 

『どういう、こと?心理テストかなにか・・・?』

 

「そうね、あなたの思想に関するテストと受け取ってくれるかしら?全て・・・あなたの持ってるもの、個人資産はもちろん、思想や戸籍といったアイデンティティーなんかもね。それら全てを失ってでも、病気が治って生きていられるなら、どうする?」

 

『そんな例え話・・・考えるだけ無駄だよ・・・』

 

「それがそうでもないのよ。こっちにしてみれば」

 

 っとケニーがそう言うと、鈴の付いたチョーカーを2つ取り出した

 

「え、えっと、母さん?どういうことコレ?」

 

「いいから」

 

 チョーカーを首に着け、鈴にタッチして地球人からキャーティアの姿に変化する2人

 

『え?え?猫耳・・・?あれ?ケットシー?』

 

「随分と混乱しているわね。モニターにも出てるわ」

 

 キャーティアの姿を見た木綿季のバイタルデータが顕著な変化を見せ、ケニーは笑いを堪えて言う

 

「えっと、紺野木綿季さん。私たちキャーティアは、あなたたちから見て宇宙人であり、あなたの病気を治す技術を持っています」

 

『ホント・・・?』

 

「えぇ、本当よ。しかし、それを行うには1つだけ、あなたが越えなければならないハードルが存在するの。それは、その技術で治療を行ったあなたは、私たちキャーティアと同じ体に遺伝子変換を行わなければならない・・・簡単に言うと、地球人であることを捨てなければならない」

 

「あのー、母さん?医療コミュ()ニケーター()は使えないんじゃ・・・?」

 

 ケニーの突然の提案に、トスカは完全についていけない

 

「法には抜け道が付き物よ。地球人には使用できないなら、対象を地球人じゃなくせばいいのよ」

 

「だからって、キャーティアシップの遺伝子変換機まで、あれは艦長クラスの権限でしか動かせない代物・・・」

 

 外交団が乗ってきた宇宙船であるキャーティアシップには、遺伝子構造を変換して、他種族をキャーティアに、キャーティアを他種族に、体を作り変える装置が存在した。しかし、そんな神をも恐れぬその行為を成す装置を動かすには、外交団のトップであり、キャーティアシップの艦長の許可が必要不可欠であった

 

「話は通してあるわ。向こうも交渉があまりうまく進んでないそうよ。キャーティアシップがあまりにもコッソリとやってきたから、きっと舐められてるのね。派手にドーンと地球の傍に現れたら、いったいどんな反応してたのかしらね?」

 

「力の差を見せ付けたいってか?木綿季を使って・・・」

 

「武力を見せるわけにもいかない。だから逆の技術を見せる。どんな種族も命は惜しいものよ」

 

『あ、あのー・・・』

 

 キャーティアの内情の話に、今度は木綿季がついていけない

 

「さて、今日来たのは、この提案を示しに来ただけ。判断までは求めないわ。そろそろあなたの主治医も来るだろうから、ここらで私たちは退散するわ。私たちが来たことは、先生たちには秘密ね」

 

 ケニーとトスカが再び鈴に触れ、地球人の姿に戻る

 

「私たちの医療を受けるにしろ受けないにしろ、早めの決断を私たちは望むわ。キャーティアのことで何か聞きたいことがあれば、ALOでトスカ君が答えるから」

 

「ただし、コッソリと、だぜ?まぁ、とりあえずALOに戻ってこいよ」

 

『わかりました・・・?』

 

 最後にパネルを操作し、ガラスを不透明に戻した。そして呆気に取られたままの木綿季を残し、2人は臨床試験室から去っていった

 

 

 その日の夜、ALO内、ユウキが決闘を行っていた24層の小島

 

「ユウキ!」

 

「アスナ・・・」

 

 ―お姉ちゃんに抱っこされる感じだ・・・懐かしい。もしもあと1年、あの人たちが早く来てくれていたら・・・

 

 フロアボス攻略戦の以来の再会に、アスナはユウキに抱き付く。ユウキも再会に喜ぶが、頭のどこかにキャーティアのことが引っかかっていた

 

 ―もし、あの人たちの治療を受けたのなら、全てを失う・・・っということは、このアカウントも・・・

 

「・・・ユウキ?」

 

「アスナ・・・アスナに渡したいものがあるんだ」

 

 アスナからそっと離れ、OSSのスクロール製作モードを起動させる。剣を抜き、自身の編み出した11連撃を行い、OSSのスクロールを製作した

 

「アスナ、受け取って」

 

「え・・・?」

 

「技名は『マザーズロザリオ』。ラッシュのOSSには劣っちゃうけど」

 

「どうして・・・?」

 

 アスナから見て、それはユウキ自身を表すものだと思っていた。それをなぜ自分に・・・?っとアスナは戸惑う

 

「アスナ、僕はね・・・いつ、どうなるかわからない。だから、渡せなくなる前に・・・」

 

「ユウキ・・・どうして、そんなこと言うの・・・?」

 

 ユウキの言葉に、アスナは涙を流す

 

「まだ、これからいっぱい、いろんなことして・・・」

 

「うん、そう、だね・・・」

 

「それにラッシュさんへの借金も返さないと」

 

「アハハー、それは忘れたかったなぁー」

 

 ―『絶対取り立てるからな!』って現実の僕のところまで来ちゃうくらいだし・・・

 

 とにかくシリアスな空気を変えたかったアスナが出したラッシュのことが、今のユウキには深く刺さる

 

「忘れられたら、困るんだがな・・・」

 

「「っ!」」

 

 そんな中、突然聞こえてきたラッシュの声に、2人は驚く。豊洲のマンションに戻ってログインしてきたラッシュが、小島にかかる橋からゆっくりと歩いてきていた

 

「・・・ラッシュ」

 

 リアルでされたキャーティアの治療の話の聞こうと思ったユウキだが、アスナが傍にいることで思い直し、言葉が出てこなくなる

 

「ぶっちゃけ俺もあの話には驚いた。俺もあのとき初めて聞いたからな」

 

「・・・どうして?どうして、僕なの?」

 

 ―あのときケニーさんが言ってた理由なら、僕である必要はないはず・・・

 

 ラッシュがその話題を振ったので、ユウキも改めて質問する

 

「理由は聞かないほうがいいぞ?慈悲とかそんな甘いものじゃないからな」

 

「聞かせて」

 

 ラッシュのほうを向き、しっかりと目を見て問いかけるユウキ

 

「・・・お前さんには、もう家族がいない。だから関わる人間が減って、余計な仕事が無くて済む。リアルの居場所が拠点から近い。俺と面識があったから説得がしやすい・・・くらいだろう。最後のは無くてもいいものだからおまけもいいところだ」

 

「そう、だね・・・」

 

 ラッシュの言葉に、ユウキは頷く。説得など必要ない。拒否しても待っているのは、苦痛の日々とその先にある死のみ。キャーティア側としては候補者など、掃いて捨てるほどいるのだ

 

「はっきり言って、不治の病で死にそうだ、というデータが揃ってる都内かその近郊の病院に入院している患者なら、上はある程度誰でもよかったはずだ。真っ先に話が行って、考える時間を与えられた。その点ではユウキは優遇されてるかもな」

 

「ホントはっきり言うなぁ・・・」

 

 あまりにも明け透けに語るラッシュの言葉に、アスナが怒りの表情で口を開きかけるが、当のユウキがそんな言葉を受け入れてしまい、何も言えなくなる

 

「ラッシュは、僕にどうしてほしいの?」

 

「どうって・・・」

 

「口では僕に拒否させようとネガティブなことばっかり言ってる・・・」

 

 だけど・・・っと、言葉を続けながらユウキがラッシュの前までやってくる。すぐ前まで来たユウキは、ラッシュの顔を見上げる

 

「ラッシュの顔には、『治療を受けろ』って書いてあるよ」

 

「ハッ、顔に文字を書いた覚えはねーよ」

 

 ユウキの言葉に、ラッシュは顔を逸らす。しばしの無言の後、ラッシュが折れる

 

「・・・俺だってわかんねーよ。お前の命が政治的な駆け引きで弄ばれるなんて、いい気するわけがない。だが、それを差し引いても命が助かるならって思うと、否定もできん。そもそも俺には否定する権利すら存在しないしな」

 

「どういう、ことですか・・・?治療とか、政治的駆け引きとか・・・」

 

 話の内容が掴めなかったアスナが、話に割って入った

 

「ユウキの病気を、ラッシュさんは治せるんですか・・・?」

 

「そんな感じだ・・・だが、その方法は日本では認められていない。だから日本を離れる必要がある」

 

「そんな・・・あんな状態のユウキを・・・」

 

 ラッシュの言葉にアスナはショックを受ける。アスナがショックを受ける分、そんなアスナの姿を見ているユウキは幾分か落ち着きを取り戻していた

 

「(本当は、治療を受けてから移動するから、死ぬ危険はないから。移動もこっちが完璧にこなすから安心していい)」

 

「(あ、そうなんだ・・・)」

 

 ラッシュはユウキに顔を近づけ、小声で伝えた

 

「(治療自体も一瞬だ。ただ、お前さんの場合は寝たきりだったから、日常生活に戻るにはリハビリは必要だがな)」

 

「(えっと、体を変えられるってのは?)」

 

「(それも一瞬で終わる。大丈夫だ、宇宙人っても、一般的に想像されるようなエイリアンとかじゃない。さっき見せた俺らの姿と同じだ。とりあえずはリアルのお前さんの体に、猫耳と尻尾が生えるだけだ)」

 

「(うわー、それなんてラノベ?)」

 

 ついでに治療後の話も一気に早口で説明していく

 

「(ラッシュのお母さんが言ってた、全て失うってのは?)」

 

「(戸籍上は、紺野木綿季は死亡になる。もちろんキャーティアの戸籍が用意される。お前さんの年齢的に、母さんが養子として引き取る予定だ)」

 

「(じゃあ、ラッシュの義妹になるの?えーウソー・・・)」

 

「(ハハハ、それは諦めろ。もう母さんはその気だったから、俺にはどうすることもできん。あとはやっぱり今使ってるアカウントは、後々の面倒を避けるために破棄してもらう。まぁ、リハビリが終わったら頃には新しく取得もできるだろうから安心しろ)」

 

 早口での説明を終え、『何か質問は?』っとラッシュはユウキに小声で問いかける。ユウキは、今だ呆然としているアスナに視線を向けた

 

「(アスナたちと、また会える?)」

 

「(会えないことはない。ただ、紺野木綿季は死亡したことになるから、アスナたちからすれば、『ユウキに似た別の誰か』だろうな。アスナに対してはちゃんと再会させられなくもないが・・・)」

 

「(どうやって?)」

 

「(実はな、俺らキャーティアには既に一般人の現地協力者がいる。俺としては、キリトとアスナをそれに勧誘したいと思ってる。現地協力者になれば、何の障害もなく会うことができる。リアルでもな)」

 

 ラッシュとしては、和人と菊岡の繋がりを絶ちたい思いもあり、明日奈はそのついでの感じなのだが、ユウキのためになるのなら、それだけで意味のあることだと認識できた

 

「(ぶっちゃけ話を切り出すタイミングを見てる段階なんだよ。お前さんと一緒にアスナをこっちに引き込めたら、キリトも芋蔓式でいけるだろ)」

 

「(僕はエサってわけ・・・?)」

 

 ラッシュを見るユウキの目がジト目になった。ラッシュは目だけを逸らした

 

「(実行には多少根回しがいるから、早くて4,5日後ってところだ。今週末辺りでどうだ?)」

 

「(僕まだ受けるって言ってないけど?)」

 

「(じゃあ死ぬのか?)」

 

「・・・」

 

 ラッシュの直球の問いに、ユウキは答えることができない。ラッシュはこちらから話すことはなくなったと、近づけていた顔を離す

 

「俺の母さんは医者だ。医者ってのは、患者に命よりも大切なものがあったとしても、それを捨てさせてでも命を救う。なぜなら、生きていれば、また別の大切なものができると思ってるからだ。生きてナンボの人生ってやつだよ」

 

「ズルいなぁ・・・」

 

 ユウキは目を閉じ、心に焼き付けた『大切なもの』を思い起こした。両親、姉、スリーピングナイツの仲間、アスナ、それら人々との思い出たち・・・そして

 

「ラッシュは、僕に生きてほしい?」

 

「当たり前だろ」

 

「!」

 

 ユウキの問いに即答で返したラッシュ。そんなラッシュに少しドキリとしたユウキ

 

「・・・ど、どうして?」

 

「そんなの決まってる。お前にいなくなられるとゲームが楽しくなくなるからだ」

 

 ラッシュの言葉に『はぁ?』っという表情になるユウキ

 

「ユウキという強いプレイヤーがいなくなると、ライバルが減る。それはそのままゲームの楽しみが減ることと同じだ。俺たち(・・・)は楽しいのために全てを懸ける・・・」

 

 いいか、よく聞け・・・っとラッシュは言葉に溜めを作る

 

「楽しいは最強で、楽しいは正義で、楽しいは・・・無限大だ」

 

「・・・」

 

 ―一瞬でもときめいた僕がバカみたい・・・

 

 ドーンっと言い切ったラッシュに、ユウキはポカーンと口を開けて呆気にとられていた

 

「プッ、クハハハッ、アハハハハハッ!!」

 

「ゆ、ユウキ?!」

 

 そして、可笑しさが込み上げてきて、笑い声を上げた。そんなユウキの笑い声に、アスナが我に返った

 

「アハハハッ!!最高だよ、ラッシュ!!うん、そうだね。楽しいって大事だよね」

 

 一頻り笑って、落ち着いてきたユウキ

 

「うん、わかった。僕、治療を受ける」

 

「そうか・・・よかった。勇気ある決断に感謝するよ。ユウキだけに」

 

「「あ゛?」」

 

「オウフッ!」

 

 ラッシュの寒いダジャレが、ユウキとアスナの腹パンで制裁される。ALOではAGI型であるラッシュに、同じAGI型のアスナと、そこそこのSTR値を持つユウキのパンチはかなり効いたのだった

 

「・・・と、とりあえず、日本にいるうちに、やりたいことは済ませとけよ・・・協力してほしいことがあれば、ゲーム内のことでもリアルのことでも言ってくれ」

 

「うん・・・」

 

「それと、この件は他言無用で頼む。アスナもな」

 

「はい・・・その、ユウキのこと、お願いします・・・」

 

「アスナ・・・」

 

「もしものことが起こったら、絶対許しませんから」

 

「ア、ハイ」

 

 この日ラッシュは、初めてアスナの殺気を感じ取った




 感動のないユウキ生存ルート
 リリカルなのはの二次で入院中の高町父にケアルだのホイミだの使うレベル。最近はそういう作品が減って悲しい・・・

 遺伝子変換機はあそびにいくヨ!のウィキには無いみたいですが、アニメで出てきた装置。アニメ最終話で男の猫耳姿という誰得なものを生み出した

 ALO内
 あと1年早く・・・は、実はラッシュがSAOに囚われなければ実現してたかもしれない

 ラッシュ登場、そしてアスナは空気に・・・

 原作設定でエイズ発症前のユウキは文学少女。発症後、フルダイブしてる時間が長く、ALOに入っていないときは・・・さて何をしてたのでしょうね?

 アリシゼーション潰し
 とりあえずキリトを菊岡から離してソウルトランスレーターのバイトをさせないところから・・・その裏ではオーシャンタートルの予算を取り消しにかかってたり・・・

 説得の最後の一押し
 色んな作品から台詞を取ってきてる。ドラマのコードブルーだったり、漫画のあまんちゅ!だったり・・・
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