GGOで好き勝手書いてみた短編集   作:rockless

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15話

 ユウキが、キャーティアの治療を受けると決めた日から2日後の木曜日

 

「よう、キリト・・・いや、桐ヶ谷和人」

 

「いい加減リアルでの呼び方を決めろよ・・・別にキリトでも構わないから」

 

 朝、トスカは和人たち10代のSAO生還者が通う学校にやってきていた。ユウキはやりたかったこととして、『学校に通いたい』と言い、明日奈が自身の通っている学校に働きかけ、トスカたちキャーティアがそれに乗っかる形で協力をしたのだ

 

「それで、モノは?明日奈とユウキが使う前に見てみたいんだが・・・」

 

「あぁ、お前さんらが開発してる視聴覚双方向通信プローブ。ウチの会社で作ったモデルだ」

 

 トスカは一応アタッシュケースに入れてきた、キャーティアの技術力で作られた機材を見せる。キャーティアとしては数世代前のモデルであるが、とはいえ和人たちのグループが開発したものとは比べ物にならないほど、高性能で小型軽量であった

 

「すげーな・・・この大きさと重さで、機能を満たしてるのかよ・・・」

 

「俺らの作ったものがおもちゃに感じるよ」

 

「それは違う。お前さんらは学業の一環で、限られた予算や期間、人員でそれを作った。その意味が大きいんだ。ウチの会社はこれを開発して、このレベルにまでするのに、莫大な予算と年単位の長い期間を使ってる。関係者なんかも100人単位だ」

 

 キャーティア製の機材を見て、性能の違いにショックを受ける和人のグループの生徒に、トスカは言葉をかける

 

「今回、こうやってお前さんらに見せたのも、その熱意を買って、後学になればって思ってのことだ。日本人は技術の吸収力が凄いからな。期待してるぜ」

 

「うわ、ラッシュがなんか真面目なこと言ってる・・・」

 

「おい」

 

 トスカの真面目な言葉に、和人は気味悪がる

 

「あと、今はトスカって呼べ。ここには、お前や明日奈以外の攻略組だったヤツもいるんだろ?」

 

「・・・スマン」

 

 トスカの注意に、和人が謝った。このSAO生還者の学校に来るに当たって、トスカはわざわざ伊達メガネをかけ、軽く変装をしていた

 

「さて、そろそろ木綿季のところと通信を接続するか。お前の嫁が来る前にチェックは済ませておきたいだろ?」

 

「あぁ、そうだな」

 

 

 その日の夜。ALOにて

 

「ラッシュ、ありがとう」

 

「気にするな。善意でやってるわけじゃないんだから」

 

 ユウキのお礼に、ラッシュは照れくさそうに言う

 

「またまたー」

 

「なんだよ?」

 

 ニヤニヤしながら言うユウキに、ラッシュは少し構える

 

「学校にいるラッシュたちに通信を繋げる前にケニーさんが来て、機材を使って通信による授業を受けることを先生に説明してくれたんだけど。そのときに、ラッシュが機材をわざわざ用意してくれたって。その・・・母星から転送してもらって」

 

「っ!・・・母さんめ・・・」

 

 最後の部分だけボソッとラッシュの耳元で言ったユウキに、ラッシュは苦々しい表情をする。ケニーが木綿季に伝えた通り、今回の機材はトスカが母星に要請して、地球で使える技術レベルのものを備品として取り寄せたものである

 

「地球の技術レベルの向上も狙ってのことだ。別にキリトたちが開発したものでも性能的には問題なかっただろうからな」

 

「本当に~」

 

「そ、それより、借金を返す当てはできたのか?いい加減リズベットも待ってくれそうにない」

 

「んー、それがさー、全く無いんだよね。11連撃のOSSはアスナにあげちゃったから、賭け試合もできないし」

 

 相変わらず借金を返さないユウキにラッシュはため息をつく

 

「助けてよ、お義兄ちゃーん」

 

「ハハハ、例え兄妹でも借金は有耶無耶にはさせんから安心しろ」

 

「チッ・・・」

 

 兄妹の情に訴えるが、素気無く返され、ユウキが小さく舌打ちした

 っとそのとき、2人の近くでガシャンっとものが落ちた音が・・・

 

「・・・ちょっと目を離した隙に、何やってるのかしら?」

 

「あ・・・し、シノン・・・」

 

 帰省から戻ってきて、学校の始業式などの諸々のリアルの事柄が済み、ようやくALOにログインしたシノンであった。足元には彼女の愛用のロングボウが落ちている。そんなシノンを前に、モロに浮気がバレた彼氏の表情をしているラッシュである

 

「へぇー、そう・・・ラッシュは妹萌えなの・・・ふーん・・・」

 

「あ、あの、これは俺の趣味じゃ・・・」

 

「リアルで香蓮にあんなこと言っておいて、すぐ別の子?流石オス猫ってわけね?」

 

「お、お願いだから説明する時間をくだしあ」

 

 シノンの剣幕に、涙目で弁明しようとするラッシュ

 

「す、すごい・・・口に出した言葉で誤字ってる・・・ん?リアル?オス猫?・・・あ、お姉さんもしかして、ラッシュの言ってた現地協力者の人?」

 

「正解。あなたがユウキね。ジェーンさんから聞いてるわ。私が帰省してる間、どっかのオス猫は一度も連絡してこなかったけどね」

 

「うぐっ・・・」

 

 シノンの、相手を射殺すような視線がラッシュに突き刺さる

 

「い、いやぁ、だって、里帰り中に連絡するのは重いかなーっと・・・」

 

 っと言って視線を逸らすラッシュ。単純にユウキの件で気を揉んでいたために、連絡を疎かになってただけである

 

「私、6日の夜には東京に戻ってきてたわよ?7日から普通に学校行ってるし。まぁ冬休み明けで色々あったから、今日までログインはできなかったけど」

 

「か、帰ってきた途端に、アレコレ聞くのもなんか・・・束縛してる感が・・・」

 

「それが、戻ってきた私への言葉が、『おかえり』の一言だけだったワケってこと?アシストロイドのほうがまだ言葉が多かったわよ」

 

「そ、その・・・今回のユウキの件も含めて俺個人の裁量で言えることが少なくて・・・世間話の話題にできることも特に無くて・・・ごめんなさい」

 

 ―まるで仕事にかまけて放っておかれた彼女に謝罪する彼氏だ・・・

 

 ラッシュとシノンのやり取りを見て、ユウキはそんなことを思う

 

「えっと、その、2人は恋人同士なの?」

 

「いいえ、違うわ・・・でも、妹萌えでデレデレの姿を見せられて、イラッとくるぐらいには好意はあるつもりよ」

 

「うぐぐぐ・・・ネクタイを引っ張るな」

 

 シノンが目の笑ってない笑顔でラッシュのネクタイを引っ張り、首を絞める

 

「SJでは精々後ろに気をつけることね。嫉妬で集中が乱れてフレンドリーファイアするかもだから」

 

「本当にごめんなさい・・・」

 

「えすじぇー?」

 

 ラッシュが涙目で謝罪する中、ユウキはシノンの言葉が気になった

 

「スクワッドジャム・・・私とラッシュは別アカウントでGGOってガンシューティングもやっているの。そこで今度チーム戦バトルロイヤルの大会があって、それに、私やラッシュ、あと向こうの仲間3()人の計5人で出場するの」

 

「ん?人数増えてね?店主とレンと誰だ?」

 

「ジェーンさんが出るって」

 

「おいおい、ユウキのリハビリの経過見たり、養子として引き取る手続きとか、いっぱいやることあるんじゃねーのか・・・」

 

 下っ端の調査員のトスカからしてみれば、医務官のケニーがこなす仕事の量は途方も無く見えるのだ

 

「まぁ、でも、うん、戦力としては申し分無いんだよな・・・そろそろ店主のビルドのプランニングとレベリングをしたり、準備をしていかないとな」

 

「いいなー・・・僕がリハビリやってる間、ラッシュたちはゲームしてるんだ・・・」

 

「そう言うなよ。GGOは公式RMTで現実通貨を稼ぐことだってできるんだから、俺たちにとっては収入源の1つなんだから。それに大会は来月頭だ。流石に2週間じゃリハビリも終わらんし・・・」

 

「でもずっとリハビリってわけじゃないんだしさ・・・」

 

「それは母さんの判断次第だけど、新規アカウント取って、GGOに慣れながらゼロからビルドしていくことを考えると、どうやっても間に合わないだろう」

 

 ラッシュの言葉にシノンも頷いていた。レベル制のGGOでは、対人戦専門のプレイヤーでも初めはMOB狩りをしてレベルを上げる。そうしてステータスやスキルを成長させないと、対人戦では全く歯が立たないからだ。運営が定めたレベル上限までレベリングをして、それの過程でステータスやスキルを自分好みのスタイルに仕上げていくのが、GGOの楽しさでもあり、難しさでもあるのだ

 店主のように商人ロールで戦いを重要視しないプレイヤーでもない限り、それを他人任せで短期間で作業のように済ませるなんてことは、つまらない行為だとラッシュは思っていた

 

「それよりお前は、30万ユルドの返済方法を考えろ」

 

「もう!いい感じで話題を逸らせてたと思ったのにー!!」

 

「何?30万ユルドって?」

 

「俺とユウキが決闘で賭けた金。そのときは手持ちで無かったから借金ってことにした」

 

 事情を知らないシノンに、ユウキとのこれまでの経緯を説明していくラッシュ

 

「ユウキの支払いが滞ると、ラッシュの刀の代金がリズに支払えず・・・でもユウキにお金の当てはない」

 

「お恥ずかしながら・・・」

 

「とりあえず、ユウキへの取り立てとは別に、ラッシュは刀の代金を自分で払えばいいんじゃない?」

 

「ま、それはそうなんだが・・・」

 

 ユウキのリアルの事情が変わった今、ラッシュがユウキの返済金でリズベットへの代金支払いをする必要はなくなっている

 

「仕方が無い・・・じゃあちょっと、血の気の多いって噂のサラマンダー領まで出張してくるか・・・」

 

 その後、1時間ほどで刀の代金分を稼いだラッシュであった

 

 

 

 

 

 それからさらに2日経った土曜日。木綿季の治療と移送が行われる日

 

「すまんな。呼んでおきながら傍にいさせてやれなくて」

 

「いえ・・・呼んでもらえただけで」

 

 木綿季の治療は外交交渉の一環で行われるので、外交団の上層部と医務官のケニーが、それを行うことになっている。下っ端のトスカは病院内に入ることができず、病院の外の駐車場にいた。ここまでの高級セダンではなく、それと同じくらい高級なミニバンであり、トスカは運転手の役目を与えられたのだ

 

「なんで俺も?」

 

「明日奈だけ呼んで、それでお前が安心できるなら別に今からでも帰っていいぜ?」

 

「殴るぞ」

 

「おお、怖い怖い」

 

 この場には、トスカが呼んだ明日奈と和人、それに現地協力者扱いの詩乃と香蓮もいた

 

「そろそろ移送準備が行われてるはずだ。ところでお前さんら、木綿季がこれから具体的にどこに運ばれるか、気にならないか?」

 

 トスカは4人に問いかけているように見せて、実際は和人と明日奈の2人に質問する

 

「えっと・・・ラッシュさんの出身国?あれ?そういえば・・・」

 

「ラッシュ、お前の国ってどこなんだ?」

 

 当然答えを知らない2人はそれがわからない

 

「もし、木綿季の移送先に、一緒に行けるとしたら、どうする?しかも日帰り可能で」

 

「え?ど、どういうことですか・・・?」

 

「海外に行くんじゃないのか?今から一緒についていくなんて不可能だろ?しかも日帰りでなんて・・・」

 

「それが行けるんだよなぁ・・・」

 

 っとトスカがニヤリと笑ったそのとき、トスカのスマホに連絡が入る

 

「はい、トスカ・・・はい、わかりました。こちらも移動を開始します」

 

 トスカは連絡に短く言葉を返し、連絡を終えた

 

「たった今、木綿季の移送が開始された。こちらも移動を始めるぞ。車に乗ってくれ」

 

 

「って、向かってるのは東京・・・でも羽田じゃなかった。成田か?」

 

 高速に乗って東京方面に走る車。和人が車の走行経路から予想を立てていた

 

「キリト、いい加減わかってるくせに無駄な予想をするなよ。この地球上に、アイツの病気を治せる治療法があると思ってんのか?」

 

「なっ!」

 

「じゃ、じゃあ、ユウキをどうするつもりなんですか?!」

 

 トスカの言葉に、和人と明日奈が驚き、トスカを問い詰めた

 

「簡単だ。地球上に無いなら、地球外の治療を受ければいい。宇宙は広いんだ。アイツの病気を治す方法くらいあるんだよ」

 

「ふざけないでください!」

 

「宇宙人がいるとでも言いたいのか?」

 

「いるぜ。お前らの目の前にな。目的地に着いたら、色々見せてやるから、待ってろ」

 

 やがて車は高速を降り、一般道を走って豊洲に・・・拠点のマンションの地下駐車場に止めると、高層階用のエレベーターに乗り、普段は入れない屋上に上がった

 

「さて、キリトに明日奈。今から見るものは全てこの世界の現実だ。そして他人には話してはならない極秘事項だ」

 

 トスカはチョーカーを取り出して装着し、鈴にタッチして地球人からキャーティアの姿に戻った

 

「え?」

 

「は?」

 

 初めてキャーティアを見たときの詩乃や香蓮と同じ反応をした2人。そうなるよねーっと言った表情でそんな2人を見ている詩乃と香蓮だった

 しかし、そんな詩乃と香蓮も、すぐに2人と同じ表情になる

 

「ルーロス、光学迷彩を解除。搭乗口を開けてくれ」

 

 トスカがもう一度鈴に触れて、何かに命令を出す。すると何もなかった屋上に、SF映画に出てくるような小型宇宙船が現れた

 

「それでは4名様、キャーティアシップへご案内~」

 

 

 僅か数分で、トスカたちはキャーティアシップに着いた

 

「もう、何がなんだが・・・」

 

「いっそ夢であってくれと思う・・・」

 

 宇宙空間にあるキャーティアシップに上がるまでの間、トスカから説明されたキャーティアのことに、明日奈と和人が頭を抱えた

 5人は発着ピットから木綿季が移送された医療棟に向かう

 

「キリトと明日奈・・・お前さんらは今日付けでキャーティア外交団の現地協力者として登録された。おめでとう、君らはこれでめでたく、こっち側(・・・)の人間だ」

 

「「えぇー・・・」」

 

「別になったからって、何かあるわけでもないわよ」

 

 現地協力者としての注意事項を言っている間に、5人は医療棟に着いた。そこで木綿季の移送に付き添っていたケニーと合流し、木綿季の病室まで向かう

 

「あの、今ユウキは・・・?」

 

「安心して、もう治療は全て(・・)終わって、安静にしてるわ。これまで寝たきりだったのもあって、体力が無くなっているから、移送の疲れで眠っているけど」

 

「そうですか・・・」

 

「でも顔を見るくらいならできるわよ」

 

 っと、一行は1つの部屋に入る。木綿季が横浜の病院でいたメディキュボイドの試験室とは違い、エアコントロールされていない病室、そこで寝かされている木綿季の体には最低限のバイタルを読み取るセンサーしか付けられていない

 

「ユウキ・・・えっと、本当に治ったんですよね・・・?」

 

「えぇ、この子を蝕んでいた病は全て完治したわ。あとはリハビリで体力を付けていけば、何の支障も無く日常生活を送れるようになるわ」

 

「よかった・・・」

 

 ケニーの言葉に、明日奈が涙を流して喜ぶ。そして木綿季に触れようと手を伸ばして・・・止まる

 

「耳・・・それに尻尾も・・・」

 

「えぇ、この子の体はもうキャーティアになった・・・ここにいるこの子は、日本人の紺野木綿季ではなく、キャーティアのユウキということになるわ。この15年間、地球で生まれ育った人間としてのアイデンティティーは、無くなってしまった・・・これから先、そのことで悩むことがあるかもしれない。そんなときは、あなたたちが頼りよ」

 

「はい」

 

 明日奈がしっかりと返事をし、再び手を伸ばして、ユウキの頭に触れた。長期の臨床試験で艶の無くなった髪の毛を撫でる。そしてキャーティアの主耳である猫耳にも触れた。ユウキの主耳は、触れている異物を外そうとパタンと動く

 

「んっ・・・」

 

 触覚が敏感な耳を触れられ、眠ったままのユウキが小さく艶のある声を出した。そんな反応に、明日奈は『え?』っと固まる

 

「あら、大胆・・・」

 

「地球人でも耳は敏感だろ・・・」

 

 ケニーとトスカの言葉に、明日奈は顔を真っ赤にしたのだった




 ラッシュの貴重な真面目なシーン
 キャーティア製視聴覚双方向通信プローブ。キャーティア7万年の技術は伊達ではない。キャーティア側から日本への数少ない技術提供(非公式)。キリトがメカトロニクスを専攻しているのは、キャリバー編の打ち上げでダイシーカフェにユイを連れてくる(?)作業をしていたのをラッシュは見てたから知っている

 ユウキ「お義兄ちゃん」
 実はユウキ生存ルートは、これ言わせたかっただけだったり・・・

 シノン帰還
 ライオンは一夫多妻だし仕方ないよね。でもサーカスのライオンみたいに調教すれば・・・

 GGOの初心者の行動の流れ
 PKで経験値が入っても、強さにバラつきが大きくて実弾銃で費用がかかって効率悪いだろうから、MOB狩りでレベリングは当然

 ユウキの治療と移送
 本文で触れてませんが、倉橋先生も現地協力者リスト入りです。そしてアスナとキリトも強引にリスト入り

 マザーズロザリオ終了
 何の感動も無く、ユウキ生存ルートへ。本文で触れてない他のことは、全てうまくいってる感じで

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