「ハァー、やっとGGOに戻ってこれたぜ・・・」
「でもケリが付いたかどうかは微妙だけど」
ユウキをキャーティアシップに移送した次の日、約2週間ぶりにGGOにログインしたラッシュとシノン
「ケリは付いたか知らんが、区切りは付いたって感じだな。それで十分だろ」
「そうね」
「それじゃ、本格的に月末のSJに向けて、各々の弱点の対策をしていかんとな」
っということで、ブラックアローのバックヤードに集った、ジェーンを除くSJに出場するチームメンバー4人によるミーティングが行われようとしていた
「まず、俺の使ってるスパス15やデザートイーグルの1マガジン当たりの装弾数の少なさ。それによる長時間戦闘の不利について。ぶっちゃけ、これは銃を変えるしかないな。散弾銃からアサルトライフルにでも変えれば問題ないだろう。習熟度は店主のレベリングと平行してやれば、実戦レベルには間に合うはずだ」
「モノは何を使う?」
「そうだな・・・5.56のアサルトライフルなら特に何でも・・・適当に在庫で残ってるのを見繕ってくれ」
「あいよ」
GGO内にいるのに、割と真面目に意見を言っていくラッシュ。出るからには当然優勝を狙う。ガチになるから楽しいのだ
「次、レンが壊したビームナイフ。店主のレベリングついでに漁りに行ってドロップを狙う。以上」
「早っ?!」
「あと、ハンドグレネードの携行数に関しては、爆破担当のジェーンがいるので、使う機会が少ないと思うのでこのままでいいだろう。AGI型は先人が多いから、情報量も多い。ビルドの欠点の対策法も色々と出揃っているのが利点だな。まぁ結局はプレイヤースキルの一点に尽きるが」
「はーい・・・」
「次、というか最後。シノンの携行弾薬数の少なさと、店主のビルドについて」
「1つにまとめたってことは、やっぱり俺が弾薬を運搬するのか?」
「そうなる。だけど、運ぶのは弾薬だけじゃない。回復キットも運んでもらう。店主のビルドはポーター兼メディックにしようと思う。俺らチーム全体の欠点として、VITや
「確かにな・・・」
ラッシュの指摘に、店主のみならず、レンやシノンも頷いた。レンのAGI型ビルドとシノンのスナイパービルドは、共通の欠点としてVITとDEFの低さが知られている。ラッシュのLUK型も、初期値ではないがVITは低く、DEFもレンやシノンよりは多少マシといった感じである。生産者ビルドのジェーンも、VITやDEFはレンやシノンとほぼ同等とである
本来ならばVITやDEFに長けたタンクがチームには必ず1人はいるが、ラッシュたちにはそれがいないのだ
「ステはSTRとVITの二極上げ。スキルで医療を取って、それによってアンロックされる通常のよりも回復量の多くて即効性のあるキットを使用できるようにする。武装はシノンのサブと同じグロッグ18だな。少しでも弾薬とマガジンを共通にしてストレージを効率的に使いたい」
「なるほどな」
「ポジションとしては、後衛でシノンとの行動が主になるだろう。狙撃をサポートするスポッターなんかも任せるかもしれん。敵とドンパチしない代わりにこなす役割が多くて、そのほとんどが俺らの都合の悪い部分を尻拭いさせる感じになってしまって、申し訳ない気がするが・・・」
「構わんよ。自分でドンパチ苦手だって言っておきながら、お前らと戦いたいって言ったんだ。そういう役回りでしかチームに貢献できそうにないって、前の戦争で身に染みてるよ」
ラッシュの提案した、自身のビルドのプランを聞いた店主。チームの都合重視のビルドであるそれを、店主は受け入れる
「さて、チームの連携確認なんかは店主のレベリングをしながらやっていくが、ジェーンがリアルの仕事で大会までほぼイン不可能なので、5人での戦闘は大会でのぶっつけ本番になる。まぁ、トラップメインの戦い方だから、俺らがドンパチやってる間は目の前の戦ってる相手以外のチームを警戒したり、足止めする役割を任せることになるだろう」
「あのよぉ・・・そのジェーンって誰だ?」
店主が面識のないジェーンについて質問する
「俺のスーツを作った人。生産者ビルドでトラップマスター」
「あとラッシュさんのお母さん」
「リアルを持ち込むのはダメだぜー、レン」
ラッシュが目の笑ってない笑顔で、レンの頭を片手でガシッと掴む
「イタタタタ・・・頭が割れる!」
「ハハハ、安心しろ。俺のSTRによる握力じゃ頭を割ることはできんから」
「その分ギリギリミシミシと痛い痛い!!」
「それじゃ、早速装備を揃えてレベリングに出発!」
無理矢理誤魔化し、ミーティングから狩りの準備に移った4人であった
3日後・・・
「緊急ミーティングってなんだよ?」
「大会について、エントリーしたチームに運営から連絡メールがきた」
再びブラックアローに集った4人に、店主が運営から来たというメールを見せた
「えーっと・・・『開催日等変更のお知らせ』」
代表してラッシュがメールを読み上げる
内容としては、運営の想定を越える参加チームのエントリーに、通常サーバーと回線の容量に不足が予想され、急遽大会用の大容量のサーバーと回線に切り替える対策を行うために、準備期間として1週間開催日を延期する。っとのことである
「さらに土曜日に予選。次の日曜日に本戦と、BoBと同じ流れになるようだな」
「現状エントリーしてるチーム数は60チーム。本戦に進めるのは25チームだ。BoBと違ってチーム戦の分、プレイヤー数が多くなるから、処理リソースの確保のために、本戦のチーム数を絞ってるみたいだな」
「というか、なんでこんなにエントリーが多いのよ?ただの個人スポンサーの小さな大会じゃなかったの?」
「それが、GGOの情報交換やってる掲示板をちょっと覗いてみたら、お前らが原因っぽい」
「えぇ~ウソー」
店主の言葉に、レンが疑いの目を向けた
「そもそもの発端が、前の戦争だ。腕の立つヤツがチームを組み、ザコを一掃する。こういう設定は、物語ではよくあるものだ」
「●パン三世しかり、●グーン商会しかりな」
「なぜそのチョイスなのかしらんが、まぁそうだ。そして、そういう精鋭のチームは憧れの対象でもある。そこでこれまで個人主義の強かったGGOに、スコードロンとは別に少人数でチームを組む流れができた」
「そいつらが腕試しをするのに、SJはもってこいの機会ってことか」
「おまけにその流れを作ったこのチームが参戦するわけだしな。お前らは個人でもBoBのトップスリーなわけだし・・・ホレ、これ見てみろよ」
店主は現在エントリーしているチームの一覧を出して見せる。主にレンに向けて
「あ!闇風さんまで?!」
「うわ、アイツ誰と組んだんだよ・・・」
っと、ラッシュが疑問を持つが、エントリー表にはチーム名とリーダーの名前しか載っていないので、知ることはできない
「しかも今も参加チームは増え続けているときた。BoBと違って予選はある程度まとまったチーム数でのバトルロイヤル。このまま行けば、4,5チームくらいで1枠を争う感じだろうな」
「マークされるだろう俺らは予選からキツそうだな。でも、うん・・・面白くなってきたぜ。準備期間も延びたことだ。バッチリ準備して乗り込もうじゃねーの」
ラッシュがニンマリとイイ笑顔で言った
「とりあえず開催日変更に対しての再エントリーはやっておいていいんだな?リアルの予定は大丈夫か?」
「私は問題ないわ」
「私も」
「俺も問題は無いが、ジェーンには確認を取るから、ちょっと再エントリーは待ってくれ」
・
・
っということで、その日のプレイを終えてログアウトしたラッシュことトスカは、ジェーンことトスカの母のケニーに通信を繋ぐ。ユウキのリハビリに付き添っているケニーは、現在宇宙空間にあるキャーティアシップにいるので、チョーカーに付いている鈴の通信機能を使用する
「母さん、今大丈夫?」
『どうしたの?』
鈴から映し出される空中モニターに、ケニーの姿が現れる
「GGOの大会の件なんだけど、開催日が1週間ズレて、開催期間も2日間になるから、母さんの予定は大丈夫なのかなって・・・?」
『えーっと、1週間ズレて2日間なら、2月7日と8日ね・・・大丈夫よ』
ケニーも特に予定は入っていないということで、トスカはホッと一安心した
『あ、ラッシュ・・・いや、トスカ?』
「どっちでも構わんって」
っと、そこに声が入り込み、ケニーが声の主であるユウキの姿を映した
『じゃあ・・・お義兄ちゃん』
「な、なんでやねん」
ALOのときと違い、真面目に兄と呼ばれたことに、動揺したトスカであった
「調子はどうだ?」
『うん、今まで苦しかったのが、ウソみたいに調子がいいよ』
「そうか・・・」
調子がいい、っという割には表情が曇って見えるユウキに、トスカは話が続かない
―病気が治って、少し時間が経ったから、色々と思うこともあるか・・・
「・・・」
『いいなぁ・・・僕もゲームしたい』
「あ?」
―コイツ、まだ根に持ってやがる・・・ちょっとでも心配した俺がバカだった・・・
メディキュボイドの臨床試験で仮想空間にフルダイブし続けたユウキ。その分普通の15歳よりもVRゲームができる時間が多く取れた彼女。急に病気が治ったからといって、そこでVRゲー絶ちができるほど、彼女は大人ではなかったのである
『あらあら・・・トスカ君、メンバーの追加はまだ可能なのかしら?』
「開催日が変更になって、再エントリーが必要になったから、できるが・・・」
『リハビリの経過次第で、ユウキちゃんにアミュスフィアの使用の許可を出すわ。そうねぇ・・・1週間、様子を見てから判断するわ』
「甘すぎませんか、先生?義娘に甘くしてポイント稼ぎしてるように見えるんだが・・・」
ケニーの判断が医者としてではなく、母親としてのものになっているように見え、トスカはジト目で追及する
『そう・・・なら、SAOからログアウトしてきて、たった4ヶ月でGGOを始める許可を求めてきて、それを認めてあげたあの判断も、息子に対するポイント稼ぎと言えるわね』
「ホントごめんなさい感謝してますお母様」
仕事モードの真面目な顔で、抑揚の無い口調で返すケニーに、トスカは即行で謝罪するのだった
『よろしい』
トスカを言い包めることに成功したケニーは、いい笑顔で通信を切ったのだった
「まったく、あの子ったら・・・最近口答えが多くなってきた気がするわ・・・反抗期かしら?」
「アハハ・・・」
通信を切ったケニーは、トスカの言動を愚痴る。ケニーの親としての一面を見て、ユウキは乾いた笑いを浮かべていた
「でも、本当にいいんですか?まだ、リハビリらしいリハビリは、全然やってないのに・・・」
「今は環境や体の変化に慣れるのが先よ。それに、これからのリハビリを考えると息抜きの1つもあったほうがいいのは確かなのよね」
つい口に出してしまったが、ワガママを言っている自覚があったユウキに、ケニーは医者としての意見を返す
「だけど・・・病気まで治してもらったのに・・・」
「それは私たちキャーティアが、キャーティアの都合で、勝手にしたことよ。むしろこちらがお礼をしなければならないことだから、あなたが恩を感じる必要は無いのよ」
ケニーは優しく微笑み、ユウキの頭を撫でながら語りかける
「私たちが無理矢理治療をしたのだから、命が助かったことを重く考えなくてもいい・・・誰かのためじゃなく、自分のために、自由に生きていいのよ」
「はい・・・」
・
・
「ってことで、ユウキが早ければ来週辺りからGGOに入る件>らっしゅ
シノン<何が」
シノン<ってことでよ?」
「医務官としての母さんの判断だから仕方が無い>らっしゅ
ケニーとのやりとりの結果をトークアプリで詩乃と香蓮に報告するトスカ
レン<SJにも出るの?」
「かもしれん・・・ちょうど1人枠空いてるし>らっしゅ
「でも店主になんて説明すればいいんだよ・・・>らっしゅ
レン<1人だけ何も知らないですもんね」
「ALOで戦った感じだと>らっしゅ
「前のBoBのキリトと同じ戦法でいけば>らっしゅ
「普通にGGO最強レベルになれるだけのセンスはあるがな>らっしゅ
―地球人のみのプレイヤーでALO最強は間違いなくアイツだったろうな・・・
「問題は、ユウキのキャラをSJまでに>らっしゅ
「ゼロからビルドしていかないといけないこと>らっしゅ
「実戦レベルに達してたら店主も納得するだろう・・・>らっしゅ
「っと思いたい>らっしゅ
レン<ガンバ」
シノン<ガンバ」
―こいつら即行諦めやがった
SJ予選日まで、あと20日
SJ編プロローグ的なモノ
個々の問題点とその対策。ほぼ店主がカバー
店主がここまで出番があるとは、BoB編書いてるときは思わなかったな・・・そして名前出すタイミングもなくなったな・・・
開催日変更。ほぼブラックアローのせい
1週間ズレたことで、例のアノ人も出てきます
そして、闇風参戦
親子の通信
口答えが多くなった原因はゲーム内のロールがリアルに滲み出てきてる感じ
ユウキ新アカ取得してSJ参戦。今思うとSJ2からでよかったかなぁ・・・