「射線上に候補になりえる建物が複数あって、狙撃手の位置が特定できないわ」
『そうか・・・仕方が無いな』
「それより前衛も着いたようよ。さっきからチョロチョロと隠れながら動いてるわ」
『何人だ?』
森の際、やや俯瞰してビル街を見ていたシノンは、ビルの合間や廃車の陰で動くプレイヤーを発見する
「1人よ。あのときのイカレ女ね。BoBの予選といい、随分と好かれてるわね」
『勘弁してくれよ・・・』
シノンの言葉に、ラッシュは肩を落とした
「でも、予選の映像だとあのチームは2人組みだから、ここ仕留めれば・・・」
シノンがバレットサークルを使い、ピトフーイの動きを予測して、照準を先回りさせる
―残念だけど、ラッシュの中にあなたの居場所は無いのよ・・・消えなさい
静かに引き金を引いたシノン。12.7ミリの弾丸が、ビルの陰から飛び出したピトフーイの胸を貫く。インパクトダメージで胸から上がゴッソリと削り取られた体が残り、DEADの表示が上がった
「どうよ?」
『カウンター!』
「っ?!」
自慢げにキル報告をしたシノンに、ラッシュの怒鳴り声が飛ぶ。シノンが咄嗟に地面に這い蹲ると、弾丸が後頭部の髪を千切り去り、少し離れた地面に突き刺さった
『大丈夫か?』
「えぇ・・・ギリギリ。ありがとう、助かったわ」
間一髪で助かったことを自覚し、全身から冷や汗が出るシノン
―相手にも味方がいる。これがチーム戦の怖さってことね・・・でも、今ので相手のいる建物は絞れたわ
シノンはヘカートⅡを持ち上げ、自身の位置を少し変えつつ、膝射でその建物に銃口を向け、スコープを覗く。撃ち込まれた弾丸の角度から大凡の高さを逆算し、それに当たる階の窓を鷹眼のスキルを併用して見ていく
『あと1分だ』
『トラップは仕掛け終わったわよ』
『シノン、仕返しは諦めろ。撤退準備に入れ』
「嫌よ!」
『言っただろ、欲をかくなって』
ラッシュの指示にシノンが反対する。しかし、ラッシュは冷静にそれを諌める
―見つけた!
「今見つけたわ・・・1発で決めるから撃たせて」
そんな中、シノンはビルの中にいる敵のスナイパーであるMを発見する。そのまま引き金に指をかけずに狙いを定めていく・・・
―ダメって言っても撃ってやる・・・
『・・・わかった』
『スキャンが始まる』
スキャンが始まる中、シノンは静かに引き金に指をかけると同時に引く。冷静さを欠き、スキャンを確認することなくピトフーイの敵討ちをしようとしていたMは、狙撃銃のスコープごと頭を吹き飛ばされ死亡した
『山岳にいたチーム、残存。やや南の沼地寄りに移動している。沼地のチームは住宅地エリアに移動した模様』
『入れ違いになったな。いい感じに乱戦が回避された。レン、ユウキ、そのまま進め。すぐに追いかける』
『了解』
『わかった』
敵チームの位置を聞き、ラッシュが突撃の指示を出す
『って、ヤバッ・・・たぶん砂漠のチームがこっちに来てる!!近いぞ!!』
『たぶん乗り物で一気に距離を詰めてきてるな・・・だが無視だ。撤退するぞ!』
店主がビルから出てきて、ラッシュと幹線道路を渡り、森の際に着いた。シノンとジェーンに合流し、トラップのないルートを通って森を駆けていった
その1分後、SHINCの乗る軍用トラックが、もぬけの殻になったこの場に到着するのだった
・
・
『今、森に入った。そっちの状況はどうだ?』
「こっちは山岳地帯に入って、敵チームを見つけたよ。敵チームは闇風さんのところだった」
先行したレンとユウキは、森と山岳地帯の境界を少し越え、更新された敵チームの位置情報を頼りに、遠距離から敵チームを目視で確認していた
『闇風んトコかよ・・・いや、でも予選しか情報がない他のチームよりマシなのか?全員見えるのか?』
「うん・・・闇風さん、ミニガンの人、前のBoBにいた銃士Xって人、それぞれのサポートの3人」
レンが目視で確認した敵チームの構成を伝える。闇風のチームは簡単に言えば、2人組みチームを3つ合わせただけの6人チームである。AGI特化型の闇風、ミニガン使いのベヒモス、スナイパーの
『主力は主力、サポートはサポートって完全に割り切ってチームを組んだのは正解だろうな。全員BoBの本戦クラスやソロのプレイヤーじゃ、チームが空中分解して終わりだっただろう』
GGOは殺伐としているため、強いプレイヤーは基本的に我が強い傾向にあり、BoBなどで上位に入るなどの結果を残しているとそれが悪い方向にも出てしまい、他人と組んでの行動に支障が出るケースが多々あるのだ
『スナイパーは位置に着く前にヤっときたいが、ミニガン相手じゃAGI型でも蜂の巣は確実だ。大きく北に回って、相手の北西側まで行ってくれ。俺らと挟撃に持ち込みたい』
「・・・わかった」
ラッシュの指示に、レンは一度ユウキに視線を向け、彼女が頷いたのを確認して返事をした
・
・
「・・・来たか」
一方、山岳地帯を移動中だった敵チームのリーダー闇風は、直感で接敵を悟った。残り2人の主力に合図を送り、2人は周囲を警戒しつつ闇風から距離を取る。それぞれのサポート要員は、各々に現実の警察機動隊が持つような形状の防弾シールドを構え、文字通り主力の盾となり、自分のペアに付いて行く
「っ!」
先手はブラックアローが取った。スポンッと軽い発射音とともに、空に撃ち上がる1発のグレネード弾。それは高く空に上がり、ゆっくりと大きく弧を描いて・・・
「ベヒモス!」
「わかっている!」
重量装備で機動力の低いベヒモスに向かって降る。ベヒモスはミニガンの仰角を上げてグレネード弾を撃って破壊しようとする・・・が、補助具を使用して装備しているため、ミニガンの仰角が飛来するグレネード弾まで届かない
「・・・クッ!頼む!」
迎撃が不可能と判断すると、ベヒモスは鈍重ながらも回避に移る。そして盾を持ったサポートメンバーが、グレネード弾の着弾予想地点とベヒモスの間に割って入り、爆発の衝撃や飛んでくる弾殻を盾で防ぐ。衝撃をモロに受けて2人が吹き飛ばされるが、HP上では大きなダメージになることなく済んだのだった
「グレネード弾・・・LUK型か」
初撃を凌ぎ、闇風は相手のチームがブラックアローであると当たりをつけた
「100メートル先に敵2、グレネードを発射した相手と推測」
「OK」
銃士Xの付いているサポートメンバーが観測手としての役割をこなし、攻撃を仕掛けてきたブラックアローのメンバーを発見し伝える。それを聞いた銃士Xがその方向へライフルを向けた
「フゥー・・・っ!」
サポートメンバーの盾に身を隠しつつ、引き金に指をかけずに狙いを定めて、ラッシュに向かってラインなし狙撃を行う。海外育ちの彼女はリアルでの発砲経験があり、それがゲーム内で活きていた
しかし・・・
「なっ・・・」
軽く体を捻る程度の回避行動で、容易く避けるラッシュに、銃士Xは唖然とする
「アイツに狙撃は無意味だ。スナイパーとはビルドの相性が致命的に悪い。アイツは俺がやる。それよりそろそろ・・・」
っと闇風が言ったところで、闇風の視界に北西に回り込んでいたレンとユウキの姿が映る
「北西に敵影2だ。アイツらの戦法で最初に姿を現すヤツは大抵囮だ。敵の目を囮に向けさせ、別方向から襲撃、最後は乱戦で各個撃破していくのが常套手段。北西はベヒモスだ。弾幕張って接近を許すな」
「わ、わかった!」
体勢を立て直したベヒモスの持つミニガンが北西から接近する2人に指向する。ユウキが同口径のHK417で牽制をするが、彼のサポートメンバーの盾に阻まれる
「私は?」
「まだ見えていないがスナイパーがいる。スナイパーはスナイパー同士で戦ってもらう」
「了解」
そう指示を残し、闇風は彼のサポートメンバーを連れてラッシュに向かっていく。特化したAGIを最大限に発揮しサポートメンバーを置き去りにしてラッシュに突撃する闇風。対するラッシュ、向かってくる闇風に一瞬笑みを浮かべると・・・
「ほう・・・っ!」
メイン武器のステアーAUGA3と、サブのM320グレネードランチャーをその場に落とし、ラッシュ自身から闇風に向かってきた。一見バカな行動に映るその意味を、闇風は一瞬で見破った
「装備を捨てて重量を削減し、STR依存の機動力ブーストか」
異様な速さを見せるラッシュに、闇風はその理屈を呟く
「そういうこった!お前の速度にちょっとでも追いつくためには、多少の無茶もせんとな!!」
ラッシュは闇風の言葉を肯定する。今、ラッシュのストレージは空っぽである。武器はホルスターに収まっているデザートイーグルのみ、その予備マガジンも実体化させて携帯している分だけ・・・他はすべて、ラッシュと一緒にいるジェーンに渡したのだ。彼女のストレージを占めていたトラップは半分近く使用されているため、彼女のストレージには空きができていて、そこに入れたのだ
「攻めてくるじゃねぇのっ!!」
普段ならば、相手と一定の距離を保つ戦い方をする闇風だが、その一定距離よりもさらにラッシュに接近する。動きながらの射撃では集弾率が低くなるので、より接近しなければ、LUK補正に打ち勝つことができないのだ。もしもゼロ距離の格闘戦に持ち込まれた場合、STRやVITに劣る闇風に勝ち目は無い。それは彼自身も認識していることである。しかし勝つために、特化させたAGI値を信じ、高速での接近戦を彼は選んだのだ
しかし、彼は1つ見落としていた。今、彼がやっている戦い方は、すでにラッシュの身近にいる人物がやっていることを・・・そして彼は知らない。このような高速近接戦はラッシュのALOでの戦法であることを・・・
「っ!」
射撃のために距離を詰め、さらに自身の持つ銃を相手に向けたことにより、近づけすぎた銃口がラッシュの左手に掴まれる。ラッシュは9ミリの拳銃弾を手のひらで受けるが、被弾場所や弾種からダメージ量は無視できるレベルであった。ラッシュはLUK型故、STRは決して高くはないが、それでもSTRが初期値の闇風にとってはパワー勝負は絶対に勝てないものであり、銃に引っ張られる形で闇風は動きが止められてしまった
「つーかまーえたっと、オラァッ!!!」
そうして、動きの止まった闇風の頭に、ラッシュの右ストレートが入る。咄嗟に銃を手放し、その場で受け止めずに飛ばされることでダメージの軽減を狙う。AGI特化型故に頭部を守る防具を装備できない闇風。目元を隠すアクセサリーとして着用していたサングラスが壊れて吹っ飛び、空中で消滅する。VITもDEFも低い闇風は、ラッシュのパンチでHPが1割も減ってしまう
「クッ・・・っ?!」
「ハッ!脳震盪判定入ったようだな」
追撃を避けるために殴り飛ばされた後、すぐに立ち上がる闇風だが、足元が覚束ない。頭部への打撃ダメージによって、システム的に『脳震盪になった』という一種の状態異常に陥っていたのだ。平衡感覚が狂い、視界もややボヤけている闇風
ラッシュは闇風の銃を投げ捨て、デザートイーグルを抜いて闇風に向けていた。闇風のボヤけた視界でもそれは認識でき、自身の負けを悟る
「やらせるかよ!!」
しかし、ラッシュの撃った弾丸は間に割り込んだサポートメンバーの盾によって防がれる。片手で盾を支え、空いた手で治療キットをタクティカルベストから取り出して闇風に打つ
「クッ!!」
闇風の回復を待つサポートメンバー。そんな彼の視界の端に、ジェーンがラッシュの置いたステアーAUGを構える姿が入る。盾をそのままに、5.56ミリの弾を体で受けて闇風を守る。習熟度が無いため、ジェーンの撃った弾はバラつきが酷く命中弾は少ない。またサポートメンバーはVITとDEFが高いため、当たっても攻撃を耐えることができていた
「イクスさん援護をください!」
攻撃手段を持たないサポートメンバーは、縋る思いで銃士Xに支援を要請する。数秒後、ジェーンに向かってバレットラインが伸びてきた。そして飛んできた弾を、ジェーンは射撃を止めて横に転がって回避する
「スマン・・・助かった」
時間経過で脳震盪が治り、闇風が復帰する
「クソッ・・・仕方が無いとはいえ、銃を手放してしまった」
「なら、まず拾うところからですか・・・」
闇風の銃は、ラッシュの後方の地面に落ちている。すぐに投げ捨てられたため、特に壊されたような様子は見受けられない
自分の
「第2ラウンドだ・・・協力していくぞ」
「了解です」
ラッシュが戦うと思いきや・・・
シノンの狙撃でピト死亡。原作に比べてピトが弱体化してるわけではなく、初登場から成長してないだけです。原作でもBoBの予選で狙撃されて敗退してますし、SJ2でもシャーリーからの狙撃で死に掛けてますし。狙撃に対しての警戒が甘いんじゃないですかね?
シノンさん危機一髪(再)。部位欠損扱いで後頭部がハゲました
山岳地帯にて
闇風のチームメイトは銃士Xとベヒモスと無名のサポート3名。火力担当のベヒモスと、狙撃担当の銃士X
サポートは、ブラックアローの店主のよりも、非戦闘員として割り切ったビルド
戦闘開始
アニメでフカ次郎が連発式グレランを買うシーンで、バイヤーが『最近追加された連発式グレネードランチャー』って言ってたけど、単発はゼクシードが第2回BoBでアサルトライフルと一体化してるのを使ってたからあるはずなのに、なんで使い手がいないんだろうね?
銃士Xのラインなし狙撃の設定は勝手に追加
ラッシュ対闇風
STR依存の機動力ブーストは、STR極じゃないのでペイルライダーほど大きく発揮されないが、あることにはあるという感じ
闇風は、同じAGI型のレンの距離で戦闘をしたが、この距離での高速での戦いは、ラッシュの得意分野だった
脳震盪判定はオリ設定。軽度の状態異常扱いで、現実よりも短時間で回復する
サポートさん大活躍。闇風は仲間の大切さを知ったのだった・・・めでたしめでたし