GGOで好き勝手書いてみた短編集   作:rockless

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SJ1終了


22話

 荒れ果てた住居が並び、不気味なほど静かな住宅街。その中を堅い靴底の足音を鳴らして走るチームSHINCの3人の女性プレイヤー。住宅地西部にいる敵を目指し、東西に伸びる通りを行く彼女たちは、南北に伸びる通りとの交差点に差し掛かる

 リーダーのエヴァ、アタッカーのターニャが続き、スナイパーのトーマが交差点に入った瞬間、北方向から1発の銃弾が飛んでくる

 

「ウッ?!」

 

「トーマ?!」

 

 銃弾はトーマの足を貫通し、トーマは交差点の中心に倒れる。すぐにターニャが弾が飛んできた方向を警戒し、エヴァがトーマのフォローに入る。しかし、エヴァが差し出した手をトーマが掴もうとした瞬間、エヴァの腕にバレットラインが伸びてくる

 

「っ?!」

 

 咄嗟に手を引っ込めるエヴァ。わざとダメージの低い四肢を狙われ、弄ばれていることに、苛立ちを覚える3人

 

「いた!1ブロック北の交差点、住居の塀のところ!」

 

「当たらなくてもいいから撃て!」

 

 エヴァの指示に、ターニャが短機関銃で応戦する。拳銃弾ではやや遠い50メートルほどの距離だが牽制にはなったようで、狙撃をしたジェーンは弾を回避するために塀に隠れた

 

「なぜ一気に仕掛けてこない・・・?」

 

「私たちが3人で行動してるから、残りの3人が別で動いてると考えているんだろう。私たちを適度に攻撃してそれを炙り出す算段か・・・」

 

「敵はかなり慎重ね」

 

「だからこそ生き残ったんだろう」

 

 エヴァが改めて手を差し出し、それを掴み立ち上がるトーマ。そこに、第2波としてレンが住宅の塀を跳び越えて現れる

 

「っ!ピンクの暴風?!」

 

「最後のチームはブラックアローか!」

 

 ジェーンが隠れた塀のある住居と3人がいる交差点に面した住居、その敷地の境界あたりから跳び出てきたレンは、着地とともにAGI全開のダッシュでターニャの射撃を回避する

 

「クッソ!!速い!!」

 

「トーマ、狙撃手の相手をしろ!」

 

「了解!」

 

 立ち上がらせたトーマの背中を押して送り出し、エヴァが突っ込んでくるレンに向かっていく

 

「ターニャ、2人で掛かるぞ!」

 

「オッケー!!」

 

 BoB優勝者の実力者相手に、2対1で挑む。エヴァの銃はフルオート射撃可能な狙撃銃のVSS。2人の銃から伸びる多数のバレットライン・・・流石にレンも回避がしきれない、っとエヴァが確信する。そんな中、彼女の視界の端、彼女たちのいる交差点の北東側の角地の住居の敷地から、ラッシュが出てくるのが見える

 

「しまっ・・・」

 

 ラッシュはデザートイーグルを構えると、ラインなし狙撃と同じ要領で発砲する。発射された弾は、短機関銃を持つターニャの右肩に当たり、44口径のマグナム弾の衝撃で体勢を崩されて短機関銃の狙いがレンから大きく外れ、エヴァの射撃はレンが自分で回避する

 

「クソッ!LUK型が・・・よりにもよって!」

 

 最悪の相手の登場に、エヴァの表情がより険しくなる。ジェーンからステアーAUG(メイン武器)を返してもらえなかったラッシュは闇風との戦い同様に、ストレージ空っぽ状態の機動力ブーストで、素早い動きで接近していく

 

「バカな・・・こんな速くはなかったはず?!」

 

「ボス!」

 

 機動力ブーストに驚くエヴァ。レンに向かって射撃をしているエヴァを守るため、ラッシュに撃たれたターニャが体勢を崩されながらも、左手で抜いた拳銃でラッシュを狙い、接近を妨害する。しかしレンへの射撃もラッシュへの射撃も、簡単に回避されて牽制にすらならない

 

「っ・・・舐めるなぁっ!!」

 

 VSSのマガジンが空になり、状況からリロードを諦めてそれを手放したエヴァ。突っ込んでくるレンに向かって拳を繰り出す。レンはそれに対し拳の軌道を冷静に見極め、左手で取りやすいように右肩口に納めているビームナイフを掴み、エヴァの拳と腕を縦に切り裂いた

 

「っ?!」

 

「ごめんね」

 

 同性だからか、レンが一言謝り、右手で持ったP90をエヴァの胸部に軽く押し当てて10発ほど撃ち込む。高い貫通力が設定されている5.7×28ミリの銃弾が、タクティカルベストも防弾ベストも貫き、エヴァの体に突き刺さり、エヴァのHPを削り切った

 体から力が抜け、倒れるエヴァ・・・しかし、そこで彼女が執念で行動を起こす

 

「うわっ!」

 

 レンに向かって倒れこむエヴァ。彼女の左手から、戦死した仲間であるローザから取ったハンドグレネードが、スイッチが押された状態で転がる。お土産グレネードである

 

「ちょ、まっ、重?!ヤバイッ?!」

 

 上に乗っかるエヴァの重さで動けないレン。死体となったエヴァの体は破壊不能オブジェクトとなり、ビームナイフで切ることもできない・・・

 

「ひ、ひぃ~!!」

 

 地面とエヴァの死体の間から見えるグレネードに、もうダメかとギュッと目を瞑るレン。そんなレンの耳に、弾が地面に当たる音、そして5.56ミリの発射音が聞こえる。聞こえてきた音にレンが目を開けると、そこにあったグレネードが無い・・・

 

「っと思ったらあるー?!」

 

 しかし、グレネードはエヴァの足のほうへ少し移動しただけで、爆発範囲にレンを捉えたまま存在していた。グレネードは銃弾を受けたことで、タイムリミットよりも早く爆発の前兆であるスパークを発し始める

 

「ったく、世話が焼けるっ!!」

 

 っと、そんなグレネードをラッシュが缶蹴りの缶よろしく思いっきり蹴っ飛ばした。すぐに後ろに跳び、地面に伏せるラッシュ。蹴り飛ばされたグレネードは、レンもラッシュもギリギリで巻き込まず起爆した

 なんとかピンチを脱したレンとラッシュ。しかし相変わらずエヴァの死体に押し潰されているレンはもちろん、地面に伏せたラッシュも、ターニャとトーマからは隙だらけである

 

「ボスの仇!!」

 

「ファッ?!なんで俺?!」

 

「アイツはボスの死体で撃てないからだ、よっ!!」

 

 ターニャが短機関銃をラッシュに向けて発砲。伏せた状態で横に転がって回避するラッシュ

 

『まったく、何遊んでんのよ?』

 

 そこに、シノンからの呆れまじり通信とともに、ターニャの頭を吹き飛ばす1発が届く

 

「レンが敵のボスとやらと熱い抱擁をしててな」

 

「うぅ・・・ちょ、ちょっと油断しただけだし!」

 

 やっとのことでエヴァの死体の下から這い出たレン。立ち上がるラッシュとレンは、2人の狙撃手に狙われて動くに動けないトーマの下へ・・・

 

「ヒィッ・・・」

 

「いや、そんな怯えんでも・・・降伏勧告くらいはするって。警戒していた別動隊はいないみたいだし」

 

 追い詰められた状況に、小さく悲鳴を上げるトーマに、ラッシュが優しく言葉をかける

 

「勝負は決したし、こちとら対MOBが本業だから、撃たなくていい弾は撃ちたくない。だから降参してくれないかな?あとお仲間に伝言ね。『できればフルメンバーの君らと戦ってみたかった』って」

 

「・・・わかった」

 

 ラッシュの説得と伝言を受け取り、トーマが降参のウィンドウを開いた

 

「あ、最後にね、こういうときは悲鳴じゃなくて、『くっ、殺せ!』って・・・」

 

 っと話す途中で、ラッシュの頭にバレットラインが2本伸びてくる

 

「うわっ?!あっぶね!!」

 

「??」

 

 慌ててバク転で回避するラッシュに、トーマは意味がわからないといった表情をする

 

「あ、気にしなくていいよ。私も意味わからなかったけど、どうせロクでもないことだろうから」

 

「そうなの?」

 

「ロクでもなくねーよ!素晴らしき様式美ってヤツだよ!」

 

 レンの言葉に反論するラッシュ。そしてラッシュの頭に再びバレットラインが刺さる。それをラッシュは機動力ブーストを無駄に活かしてアクロバットで回避する

 そんなラッシュを見て、レンは頭痛を堪えるように額に手を当てる

 

「はぁ・・・ごめんね。あの人たちが本気で撃ち合い始めちゃう前に、降参ボタン(それ)押しちゃってくれる?」

 

「あ、はい」

 

 レンのお願いで、トーマに手が降参ボタンに触れた。死亡扱いになり倒れるトーマの体を、レンが受け止めてそっと地面に寝かせた

 

『コングラッチレイション!!第1回スクワッドジャム、優勝はチームGSBA!!総発砲数は59997発でした!!』

 

 なんとも締まらない終わり方であるが、一応ブラックアローの優勝で大会は幕を閉じたのだった

 

 

 

 

 

 次の日・・・

 

「あー・・・眠たい・・・」

 

「あの後、公開された本戦の映像見ながら打ち上げして騒いで、結局0時越えたものね・・・」

 

 朝、香蓮と詩乃は、それぞれの学校に向かうために歩いていた

 

「ホント、最後ラッシュさんに撃ち始めたときはどうしようかと・・・」

 

「だって、用意した弾がかなり余ってたから・・・」

 

 ―そんな、冷蔵庫の消費期限切れそうな食品使っちゃおう的なノリで仲間を撃たないでよ・・・

 

 詩乃の言葉に香蓮は呆れる。店主に大量に持たせた12.7ミリ弾。だが実際に本戦中で使用したのは、ラッシュに向けて撃ったのを含めてもたった2マガジン分である

 

「ジェーンさんも森に仕掛けたトラップに誰も引っかからなかったからって、トラップ無駄にしたって言ってたし」

 

「あれは、たまたま追いかけてきたチーム同士が争ってくれたから、森に入ってこなかっただけなのに・・・」

 

 ―まぁ、部品レベルで自作したトラップだから、もったいないって気持ちもわかるけど・・・

 

 ジェーンが森に仕掛けたトラップは、NPCが売っている基本的なトラップではなく、敵に触れるワイヤーやそこから爆弾に繋がる部分などが手作りで、隠蔽性が高くて繋げる爆弾も選択可能というハイスペックものであった

 

「それに、店主が持ってた高度回復キットも、結局誰も死に掛けるるようなダメージ喰らわないから意味なかったし」

 

「DEFが低い私は、持っててくれるだけで安心して戦えるから、それで意味があるけどなぁ・・・」

 

「あのー・・・」

 

 そんな会話をしている2人に、1人の女子高生が声をかけてきた

 

 ―あれ?この子、うちの大学の付属高の生徒で、道でよく擦違う子・・・

 

 その女子高生に、香蓮は見覚えがあった。彼女は香蓮が大学へ通う道でよく擦違う、大学に併設された高等部の生徒であった。彼女の後ろには、同じく見覚えのある彼女の友人たちが5人・・・

 

「よく擦違うお姉さんですよね?そちらは、12月に学園の高等部のエリアに来たときに一緒にいた同い年くらいの子」

 

「うん、そうだね」

 

「えぇ」

 

 明るい笑顔で話しかけてくるその女子高生に、寝不足の香蓮も詩乃も少し引いた返事をする

 

「御二人が一緒にいるところ見るの、あの時以来だったので、つい声をかけちゃいました」

 

「あ、うん。久しぶりに泊まりに来たからね」

 

「そうだったんですか。あ、自己紹介がまだでした。私、新渡戸咲っていいます」

 

「小比類巻香蓮です」

 

「朝田詩乃です」

 

 っと自己紹介を交わしたところで、1人違う高校の詩乃は通学の時間が迫ってきたので、お話もお開きに・・・

 

「あ、最後に・・・」

 

「「?」」

 

 っと言った咲の表情から笑みが消え、急に真剣なものになる

 

「優勝おめでとう。せめてあなた(レン)だけは道連れにって思ってたけど、それすら阻止されて悔しかったです。伝言通り、私たちも次はフルメンバーでぶつかりたいです。そして勝ちたいです」

 

「あ・・・あなたまさか・・・」

 

「はい、チームSHINCリーダー、ボスことエヴァです」

 

 ―世の中って思ったより狭いんだな・・・

 

 驚きを通り越し、悟りを開いた香蓮であった

 

 

「ってことがありました>レン

 

らっしゅ<身バレm9」

 

シノン<まぁ今思うと」

 

シノン<あれだけゲーム内のことを話してたら」

 

シノン<わかる人には普通にバレるわ」

 

らっしゅ<数少ない女性プレイヤーの中の人だったことが救いだな」

 

 ―うぅ・・・確かに

 

らっしゅ<にしてもこれからは」

 

らっしゅ<こんな個人スポンサーの大会が増えていくのかねぇ?」

 

らっしゅ<GGOも変わっちまうな・・・」

 

シノン<去年までの殺伐さがなくなっていくのは」

 

シノン<賛否あるわね」

 

 ともあれ、GGO初の個人スポンサー大会、スクワッドジャムは終わったのだった・・・




 ブラックアロー対SHINC、戦闘開始
 5.56ミリなので、トーマの足は千切れませんでした
 ウィキ見てたら、なんかVSSってフルオート射撃ができるんだって?ってか、ターニャはなんで短機関銃のPP-19?レンぐらい速いAGI型じゃないと、短機関銃じゃ攻撃力不足じゃない?せめてAK-74とかじゃ?ボスのVSSって選択も理由がわからんし。SJ2で狙撃はしてたけど、狙撃手ならトーマやアンナと同じドラグノフでいいし、フルオートのアサルトライフルがほしいなら、専用弾を使うVSSである必要が・・・

 拳銃でラインなし狙撃と同じ撃ち方・・・ってかラインなし狙撃の原理を知ると、原作ファントムバレット編で出てくるアンタッチャブルゲームと矛盾が出てくる。あのNPCは早撃ちだから、引き金に指をかけてから撃つまでが一瞬なのに、ラインはちゃんと出てる。そもそも、ラインが見える、見えないのシステムが曖昧なんだよね・・・『相手の位置がわかっても、自分が狙われていないと見えない』ってのが・・・

 レンのビームナイフの携帯方法
 バイオ4のレオンと同じ

 エヴァ渾身のお土産グレネード
 死体は破壊不能でも爆風で吹き飛ぶので盾にはならない・・・ってことで
 ジェーンの狙撃でちょっと位置がズレることで、ラッシュが蹴り飛ばすことができて、危機一髪

 西ルート班合流
 これでこの本戦でシノンに頭を吹き飛ばされたのは何人だろうね?

 決着
 降伏勧告をするのは、弾代の節約のため
 ラッシュのネタは、トーマの中の人はロシア人なのでわかりません。あれ?ツッコミ入れてるシノンはネタわかってるってこと・・・?文学少女(意味深)

 総発砲数
 ラッシュが降伏させた(見逃した)プレイヤーの3人に1発ずつ撃って殺していたらちょうど60000発でした・・・意味は無い

 意外と少なかったシノンの発砲数
 たぶん店主のストレージの中には、ヘカートⅡのマガジン10個くらいはあっただろう。でも実際は多めに持っても5マガジンで足りた

 新体操部登場
 原作と違い、本戦の翌日。香蓮は髪を切ってもいない
 ウィキ見て驚いたのが、新体操部の子たちは全員が1年生じゃないってこと、上級生はあれで詩乃の1個上なんだぜ?

 SJ編終了
 個人スポンサーって、いくら払ったんでしょうね?競馬や競艇のレース名付けるのと同じくらいなんでしょうかね?

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