GGOで好き勝手書いてみた短編集   作:rockless

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4話

 予選日の翌日

 

「少し、気分転換しに外に行かない?」

 

「そう、ね・・・」

 

 香蓮も詩乃も、予選決勝の敗戦のショックを引き摺っていた。まるで葬式かのような雰囲気の中で朝食をとり、お互い何かを話すでもなく、昨日の敗戦をグルグルと頭の中で思い返していた。しかし、これではダメだと意を決し、香蓮は詩乃を外出に誘った

 

 

「ここが、私の通ってる大学」

 

 外出に誘った香蓮ではあったが、特に目的地があったわけではなかった。さらに東京に友人がいるわけでもなく、遊ぶ場所にも縁がない。困った挙句に出た場所が、マンションから近い香蓮の通う大学であった

 

「高校1年生でも、卒業後の進路を考えておいて、損はないからね」

 

 と言って大学の中を案内する香蓮。しかしいくら外部入学枠があるとはいえ、エスカレーター式のお嬢様学校の大学部を見ることが、進路の参考になるのか、疑問の余地があるのは否めなかった。香蓮自身も日曜日に大学に来ることはほぼ無く。どこを見学していけばいいかもわからないという始末である

 

「私自身もあまり日曜に来ることが無いから、どこでなにやってるかわからないし、適当に見て回ろっか?」

 

「えぇ」

 

 そんな感じで、いつも講義を受けている教室を見たり、逆に過去の経験からあまり足を踏み入れたくないサークル活動をしている場所などを回ってみたりした

 

「結構奥まで来たな・・・ここら辺はもう高等部なのかな?」

 

 あちこち回っているうちに、いつの間にか併設されている高等部のエリアのほうまでやってきた2人。体育館やグラウンドなどが見え、部活中の運動着姿の高校生がそこかしこにいた

 

「あの、どうかしましたか?」

 

「え?あ、その・・・友達に大学を案内してたら、奥のほうまで来すぎちゃって・・・」

 

 そんな中で場違いの2人に、声をかけた少女が1人。部活中だとわかる運動着姿の女子生徒だった。不意に声をかけられた香蓮は、不審者と間違われたかと勘違いをして、事情を説明する

 

「この辺りは、もう高等部なのかな?」

 

「そうですね。ただ、体育館もグラウンドも大学部のクラブ活動が使ってますので、共有してる感じです」

 

「そうなんだ。ありがとう」

 

「いえいえ~」

 

 女子生徒にお礼を言って、来た道を戻る2人だった

 

「今の子って知り合い?」

 

「ううん、違うけど?ただ、通学中にたまに見かける程度かな?どうして?」

 

「香蓮さんと話せたのが嬉しそうだった気がしたから?」

 

 

 

「みんな、やったよ!さっきあの人と話せた!」

 

「え?あの人って、ボスがすれ違うときに見てる、背の高くて、髪の長い大学部の先輩?」

 

「そう!さっき、そこに来てたの!なんか、友達を案内してたら来ちゃったんだって!私たちと同い年ぐらいの子と一緒にいたよ!」

 

「へぇー、じゃあ面倒見とかよさそうな感じ?ボスも今度大学部を案内してくださいとか言ってみたら?」

 

「って内部生なら1人で自由に行けるでしょ」

 

 

「ホッ・・・」

 

 運動部の活動場所を離れ、香蓮が少し気を緩めた。そんな様子の香蓮を、詩乃は不思議そうな表情で見る

 

「あ、あー・・・実はね。中学高校と運動部にはいい思い出がなくて、この身長でしつこく勧誘されて・・・」

 

「そう、だったんですか。ごめんなさい、私のせいで・・・」

 

「ううん、気にしないで!最近では、ほんの少しだけど吹っ切れてはきてるから。GGOで小さなレンになって、色んな戦いを経験して、少しずつ強くなって・・・」

 

「そう・・・なんだ」

 

 ―弱いままなのは、私だけ、か・・・

 

 苦手意識を克服しつつあるという香蓮に、詩乃は俯き、表情を曇らせた。所在なさげに持ち上げた右手に視線を落とし、中指から小指までの3本を少し曲げて、止まる

 

「・・・」

 

 ―強さって、なんなのかな・・・

 

 そんな詩乃の右手を、香蓮が掴む。ハッと我に返った詩乃は香蓮を見る

 

「お昼ご飯、食べに行こっか?」

 

 詩乃ことを心配しているが、聞けない・・・そんな気持ちを誤魔化す、ぎこちない笑顔で香蓮は言う。近くの時計を見ると、もうお昼時を少し過ぎていた

 

「そうね。そうしましょう・・・っ!」

 

 頷いた詩乃に、香蓮は手を握ったまま歩き出した

 

「実はずっと行きたかったお店があってね。でも1人で行く勇気がなくて行けなかったんだけど、今日なら!」

 

「・・・ありがとう」

 

 グイグイ引っ張っていく香蓮に、詩乃は小さくお礼を言った

 

 

 マンションに戻った2人は、BoBの本戦に向け、早めの夕食をとるための準備をする

 

「聞いてほしいことがあるの・・・」

 

「ん?」

 

 台所に2人で並んで立ち、夕食を作りながら、詩乃は話を始めた

 

「私の昔の話・・・」

 

「うん」

 

「5年前、小学生だった頃、地元の郵便局で強盗事件に巻き込まれた。私の家、母子家庭で、母さんが精神的に危ういところがあって、そんな母さんがパニックになって」

 

 ポツリポツリと、詩乃は自分の過去を語る

 

「犯人が、パニックになった母さんに拳銃を向けて、私は、母さんを守るために、その拳銃を奪って・・・犯人を、撃ち殺した」

 

「っ!」

 

 詩乃の言葉に、香蓮は息を呑んだ

 

「犯人と揉み合いになって、お腹に1発、次は左肩、最後は・・・頭に。私は発砲の反動で手の骨が折れて、肩も脱臼した。正当防衛が成立して、罪には問われず、マスコミにも犯人は暴発によって死亡と発表されたわ」

 

 話の内容に、香蓮の料理の手は止まる。そんな香蓮を、あえて見ないようにして、詩乃は1人、料理をしながら淡々と話を続ける

 

「でも、小さな町で起こった事件だから、噂があっという間に広まって、イジメが始まった。それから逃れるために、進学で東京に来たけど、結局それも無意味だった・・・」

 

「あぁ、あのときの・・・」

 

「あのとき、私が体調が悪くなってたのも、あの事件がきっかけで、私は銃を見ると強い動悸や吐き気が出るようになった。所謂PTSDってヤツ。銃を連想させられたら、発作は起きるの。だから手を銃の形にしただけでも・・・」

 

「そっか・・・じゃ、じゃあどうしてGGOに?発作は大丈夫なの?」

 

 香蓮の疑問に、詩乃は自嘲するように小さく笑う

 

「それが、不思議と仮想空間では発作は起きなくて・・・だからあの世界で戦って、もしも最強になれたなら、トラウマを克服できるんじゃないかって・・・」

 

 待ちの時間で作業の手が空き、そこで初めて詩乃は香蓮のほうを向いた

 

「これが、私がGGOで、BoBで戦う理由」

 

「そう、なんだ・・・でもどうしてそれを私に教えてくれたの?」

 

「知って、ほしかったから・・・その上でこれからの、私との付き合い方を決めてほしいって・・・重いとか、面倒だって思うなら、拒絶して、忘れてくれても・・・」

 

 構わない・・・っと詩乃は続けようとした。しかし、そんな彼女の言葉は、香蓮が彼女を自らの腕の中に引っ張り込んで、抱き締めることで止められた

 

「あの喫茶店で、連絡先を交換したとき、私GGOを止めようと思ってた。その時間使って、あなたの助けになろうって。GGOのレンより、私は詩乃のことのほうが大切だと思った。それは今も同じだよ」

 

「・・・」

 

 香蓮の言葉に、詩乃はゆっくりと香蓮の背中に手を回した。嗚咽する声が漏れ、香蓮はそっと詩乃の頭を撫でながら、空いた手でコンロの火を少し小さくした

 

 

 午後6時、軽めの夕食をとり終え、食べ物が入った消化器官を落ち着かせる時間をとるために、まだGGOにはログインはしない2人

 

「前回のBoBの本戦は2時間くらいだったから、もう少ししたら準備のためにログインしましょう」

 

「わかった」

 

 時間と量を考えて夕食をとったため、本戦が終わってログアウトした後は空腹になっていることを考慮し、作った料理を後で食べられるように小分けにして保存する2人

 

「・・・昨日の予選で、わかったことがある。ラッシュのことで・・・」

 

「ラッシュさんのこと?」

 

「ラッシュは、あのデスゲーム、ソードアートオンラインの、生還者だって・・・」

 

「ラッシュさんが、SAO事件の生還者・・・?」

 

 香蓮はあまり驚いた様子を見せない。薄々、そうではないかと感じ取っていたからだ。当時は深く突っ込まなかったが、思えばBoBのエントリーのときから違和感を持っていたのだ

 

「あの人もきっと、何かを抱えている。私のより、もっと大きくて重い、何かを」

 

「いったい何があったんだろう・・・?」

 

「わからない・・・けど、そんなラッシュのところに、同じくSAO事件の生還者であるキリトが来た。間違いなく、今回のBoBは荒れるわ。出場するのが、怖いくらい。ただのゲーム中の撃ち合いじゃ、終わらない。そんな気がするの」

 

「でも、出るんでしょう?」

 

「昨日の決勝で、キリトに言われたの。中途半端だから、私は弱いって。だから決めたの」

 

 私は、もう逃げない

 

 

 午後7時、2人はGGOにログインした。総督府で本戦出場のエントリー確認をして、予選のとき同様にエレベーターで地下の待機エリアに降りた

 

「あ、あそこ」

 

 レンが指差す方向をシノンが見ると、ボックス席のようなところにラッシュとキリトが座っていて、ウィンドウを開いて何かを話していた

 

「闇風から聞いた情報だからな。確度は高い情報だろ」

 

「そうか・・この3人の誰かが・・・」

 

「奴らにしては安直なネーミングだが、現段階で怪しいのはコイツだろうな。ただ、計画を立ててからアカを作ったのか、逆なのかでそれにも疑問が出る。他の2人もマークするべきだろう」

 

「確かに・・・」

 

 妙に真面目な表情でやり取りを交わしている2人に、レンとシノンは声をかけるのを躊躇った。彼女たちは再び昨日同様に2人にバレないようにコソコソと近付き、会話を盗み聞きし始めた

 

「っで、仮にコイツがデスガンだったら、どうするんだ?倒してそれで終わりってわけにもいかんだろ?殺しの方法を探る必要がある」

 

「そうだな・・・それに、アイツがラフコフの誰かってのも、俺は思い出せていない」

 

「そっちは俺が覚えてる可能性がある・・・が、やっぱ直接見てみないことにはな」

 

「そうか・・・」

 

 ―デスガン?あんなの都市伝説レベルの噂話のはず・・・まさか本当の話なの?本戦にデスガンがいるっていうの?

 

 ログイン前の嫌な予感が当たってしまったことに、シノンは心の中で盛大に舌打ちをした

 

「ねぇ、シノン。デスガンって何?」

 

「そのプレイヤーに撃たれたプレイヤーは、現実でも死ぬって噂のことなんだけど・・・そんなのできるわけがないし、一種の都市伝説のようなものね」

 

 デスガンの噂を知らない様子のレンに、シノンは噂の内容を簡単に教える

 

「でもそれなら、ラッシュさんたちが、本戦前のこの時間に、あんな真面目に話すってことは・・・」

 

「いるってことでしょうね。それで、今回の本戦で誰かを殺すつもりなのよ」

 

「そーいうことだ、お2人さん」

 

「「っ?!」」

 

 会話に気が逸れていた2人は、盗み聞きに気付いていたラッシュの接近に気付かず、驚く

 

「その、今の話って本当なの?」

 

「あぁ、残念だが・・・今回のBoBの本戦で、ヤツは現れる。そして、現実で人が殺される」

 

 いつもは見せない真面目な表情で答えるラッシュ

 

「そこで、2人に相談なんだが・・・本戦、辞退してくれね?」

 

「ふざけてんの?」

 

「デスヨネー」

 

 本戦の出場辞退を勧めたラッシュに、真顔で怒気全開の声のシノン。思わずラッシュがボケに逃げた

 

「でも現状、方法も標的もわかってない。覚悟はしとけよ」

 

「上等よ!」

 

 啖呵を切るシノンの後ろに、マジかーっといった様子のレンがいた

 

「ったく・・・なんかあれば躊躇無く逃げろよ。そういえば母さ・・・ジェーンから2人に渡すように頼まれてたものがあったんだ」

 

 っとラッシュが言って、アイテムウィンドウを操作して2つのアイテムを出現させる

 

 【銀の四葉のクローバーの髪留め】

 純銀製の四葉のクローバーの髪留め LUK+3

 

「え?これ・・・もらっていいの?」

 

「可愛い!」

 

「2人のために作ったアイテムなんだとよ。本当は昨日渡したかったみたいだが、ログインできずで今日の午前にできたらしい」

 

 シノンとレンは髪留めを受け取り、装備欄で装備を行う。+3程度で何が変わるかは不明であるが、初期値よりはマシと言えるだろう

 

 ともあれ、望む望まざるに関わらず、4人はデスガンに立ち向かうことになったのである

 

 

 

 

 

「ところで、どうやって闇風から情報もらったのよ?」

 

「昨日コネクションは作っといたし、その流れで。あのヤロー、情報料だって抜かしてプラグレ集りやがった。あいつが勝手に昨日の決勝で使ったんじゃねーか・・・」

 

「あっ!あのグレネード!」

 

「おっと・・・シノンから聞いてなかったか・・・」

 

「あら?私はそんなこと頼まれた記憶無いのだけれど?」

 

 レンは昨日の決勝を思い出し、ラッシュに詰め寄った。シノンから昨日の件は聞いてるだろうと踏んでいたラッシュだったが、シノンは関係ないといった感じである

 

「あれ?昨日の予選は試合毎に消耗品は補填されるってルールじゃなかったか?」

 

「それな、弾薬と装備の耐久値だけなんだってよ。グレネードや回復キットなんかは、勝つために大量に持ち込んで使いまくるヤツが過去にいたから対象外なんだとよ」

 

 当然BoB初参加のラッシュは、ルールを全て網羅しているわけではない。そこを突いた闇風の意趣返しであった




 バトル無しの繋ぎ回

 敗戦のショックからの切り替えのためのリアルでのアレコレ
 香蓮は詩乃ほどではないものの、負けたのはやっぱりショックを受けてる。ラッシュからアドバイスを色々貰ったのにもかかわらず・・・最後の最後で自分のミスで勝敗が覆ったのが悔しい・・・という感じで

 香蓮と詩乃のお出かけ
 ただ、外での遊びを知らない香蓮には当てがない。ここら辺は行き当たりばったりで書いてる度合いが凄い
 おまけでSJの方々をちょこっと出したり・・・ホラ、あの人たち、シノンと面識あるみたいだし

 香蓮の内面の変化
 原作のSJ1の後ほどではないが、詩乃との出会いで少しは前に進んでる

 詩乃の変化への1歩
 原作と違い、リアルで事件のことを話すことで、GGOのシノンを頼らずに前に進もうとしてる。言葉では突き放してるけど、本音は香蓮と一緒に乗り越えたい
 香蓮側の考えは1話から変わらず、それよりもっと寄り添う方向へ

 詩乃の推測。ほぼ間違ってない。そしてリアルの詩乃で覚悟を決めた

 GGO内
 シノンのログインが原作より遅れているため、情報は闇風から。名前は出してないけどラッシュは犯人の可能性が高いプレイヤーをほぼ絞れてる。シノンとレンにも本戦開始前にある程度の情報共有。その辺はラッシュの優しさ
 シノンは命かけてる覚悟で本戦に出場するが、レンは遊びの中で勝つつもりで命をかける覚悟は無かったり・・・

 ジェーンからのプレゼント
 ラッシュの襟章と数値が違うのは素材の違いによるもの
 LUKのステについてオリ設定・・・他のステは数値が高いほうが必ず勝ちますが(陸上競技の100メートル走でAGIが高いほうが必ず勝ったり、駆け引き無しの純粋な押し合いの腕相撲でSTRが高いほうが必ず勝ったり)、LUKに関しては数値が高ければ必ず勝つとは限りません。LUK10と1000が完全に運の勝負をして、10が勝つこともあるという感じ

 前話の闇風への根回しでのコネクションの利用と仕返し
 まぁ、実際全ての消耗品が補填されるなら、そういう戦い方するヤツは絶対出てくるだろうな、と・・・回復薬打って、常時回復しながらのゾンビアタック。相手から逃げながら試合フィールド全体にグレネードしかけて爆破とか。運よくフィールドに乗り物があれば、乗り物に乗ってれば先に乗り物の耐久値が減って、相手より一瞬でも長く生きてられる。予選ならそれで勝ち上がりも可能そうだから、運営が対処済みってことで。だから前々話のピトさんの大量グレネードは自腹です

 さて、次回から本戦開始です
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