今回はガラリと展開が変わってます。ですのでなるべく早く更新したいですね!そうですね、半年後くらいかな(白目)
春休みから今まで、俺たちは———鬼に襲われ、蟹と対話し、蝸牛と迷い、猿と戦ってきた。しかしそのどれもが、俺を主人公としない物語ばかりだった。別にそれを羨む気持ちはない。面倒ごとは、好きじゃない。今回の蛇も、本来であれば俺なんかより主人公しているあいつの独壇場、のはずだった。
主人公、か。
主人公とはどういう存在のことをいうのだろう。人間皆自分の人生という名の物語で主人公だ!などとは耳にタコができるほど聞くが果たしてそうだろうか?自分が第三者視点の、別の誰かの物語である可能性だって考えられるんじゃないか?俺であれば、最愛の妹を兄視点で書いただけの、そういう物語なのではないか?答えの出ない自問が宏大無辺に湧く。
しかしこれだけは言いたい。
これから語る物語では、少なくともあいつは主人公ではない、ということを。
俺はいつも通り直江津高校へと登校した。そう、いつも通り。何もない。
昨晩小愛に血を吸われるために学習塾跡に行った時、忍野から阿良々木がなにかまた厄介ごとに巻き込まれてるとは聞いたが、いやしかし俺の方には何も聞かされてないため、俺とは関係のないことだ…それもその日のうちに解決することになるらしかった。
いつ忍野がいなくなるかもわからない、その後何が起こるかもわからない俺は忍野からちょいちょい怪異の話を聞いている。血を吸われに行くたびに怪異の知識が増えていく。
「蛇切縄」
それが阿良々木の今回の厄介ごとの対象、つまり彼の知り合いである中学女児に取り憑いている———巻き付いている怪異だったそうだ。
「蛇切縄…ヘビか?」
「すごいねえ、比企谷くん。君には文字が浮いて見えているのかい?」
「察することができた方が物語の進みが早いからな」
まあこの問答でトントンになったかもしれんが。
「今頃阿良々木くん一行は何も問題なく怪異を退治しているだろうよ」
「そうか…それなら、いい。俺が働かないのはいいことだ」
「そうだよ八幡。八幡は働きたくないって言いながら働くんだから…もうもう」
血を吸いながら指で俺をツンツンするのは今後控えてほしい。くすぐったかった。
まあつまるところ、今回については出る幕なしだったわけだ俺は。
教室に入ってもいつも通り阿良々木はいない。あいつはいつもギリギリに来るからな、15分前登校の俺とは違う。恐ろしく早い登校、僕じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「やあ、おはよう。比企谷くん」
羽川は見逃してくれなかったらしい。恥ずかしいじゃんか。あんたバカァ?空気くらい読みなさいよ…。と心の中で謎のツンデレを発動させる。
「ん、羽川か。はよ」
「ふふっ、ようやく挨拶ができるようになってきたね」
そら毎日俺が教室に入った時に席を立ってニコニコ目の前に好きな人が来て挨拶してくれるんだ…うん、挨拶しないわけにはいかんだろ。
こないだまでは恥ずかしくてもっとそっけなくほぼスルーなレベルだったわけだが。やったね八幡!クーデレからツンデレに進化してたよ!は?おい、俺はクーデレ派だぞ。これじゃあ退化だ。
「阿良々木くんは今日も遅刻ギリギリか〜、比企谷くんなんとかできない?」
「出来ないし、する気もない…まあ俺たちは朝弱くなっちまったからな、大目に見てやれ」
「あ、そっか。そんな体質も付随しちゃうんだね」
ああ、と軽く返す。吸血鬼もどきの俺たちはそのせいもあってとてつもなく朝に弱い。ただでさえ弱かったのに更に弱くなってしまって、冬になったらそれこそ冬眠してしまうのでないかと思うまである。しちゃダメかな…実はリザードマンのデミと人間のハーフなんですよハッハッハ、なーんて。
はい、ごめんなさい。
「そういえば比企谷くん。今日の放課後は空いているかな?」
「まあ、空いてるといえば空いてるが———どうした?」
羽川が俺の予定を聞いてくるなんて珍しい。明日は何か起きるぞ。きっと戦場ヶ原が教室で阿良々木とイチャイチャしだすに違いない…それは今に始まったことじゃないか。
「この間比企谷くん、私におすすめの参考書を聞いてきたじゃない?そのお返事がてら、一緒に本屋さんに行ってあげようかなと思って」
なるほどね。
俺もこんなんだが男子高校生、好きな人と大学を合わせたいと思っている。羽川が行くような偏差値高めの大学なら、羽川にフラれた後に専業主夫への道は残されるし。フラれる前提かよ…。だが羽川がどこの大学に行くかわからない以上、こいつの学力に合わせていなければ後々手が届きませんでした、となりかねん。それはいやなのでここで頑張るしかない。
だから、本人にそれは隠しつつ助力を願ったというわけだ。俺を更生させようと謎にやる気になってる羽川にとってその話は棚からぼたもちだったようで、今までにないはしゃぎようだった。目の保養だった、ごちそうさまです。
「ああ、助かる。大丈夫だ」
「りょーかいっ。そしたら放課後、帰らずに昇降口で待っててね」
んともおうとも取れる曖昧な返事で俺は返す。そして羽川は満足したのか自分の席に戻っていった。それを見届け俺も自分の席へ向かう。途中で戦場ヶ原の横を通る。
「あら、おはよう。比企谷くん」
「おう」
「阿良々木くんはまだかしらね」
「そうソワソワするな。あいつが遅刻ギリギリなのはいつものことだろ、彼氏に早く会いたいからと急くな」
割とわかりやすく体をモジモジさせて阿良々木の到着を待ってるように見えるのだが…なぜ阿良々木は戦場ヶ原の感情表現を乏しいと思うか。豊富とは言い難いし人並みかどうかと言われればそうでもないが、すこし少ないだけで結構わかると思うんだがな。案外阿良々木の前だと緊張してしまう、とかなのかもな。だとしたらだいぶかわいいなおい。
「何を言ってるのかしら、私は別に阿良々木くんに会いたくて会いたくて震えてるわけじゃないわ」
「ネタが古いんだよ、あの人もう引退してるだろ」
小町が小さい頃キャーキャー言ってたのが懐かしい。思えばあの頃から俺は捻くれていたなぁ。会いたくて会いたくて震えるとかもう一度聞かせて嘘でもとか元彼側からすればただの恐怖でしかないよね、うん。まあ彼女いたことないからわかんねえけど。
「昨日もまたアレについて動き回ってたらしいからな、許してやれ」
「はあ…またなのね。ほんとうによくもそんなに引き当てるものだわ。正直他の女に手を貸すところを見るのは不愉快だわ、やめてくれないかしら」
「物語の始まりがそれを言ってしまうともうこの作品崩壊するんだけど」
戦場ヶ原を助けるところから物語が始まるんだからそういうこと言うなよ…時系列的には忍たちに出会うところからだけども———あれ、じゃあ別にいいのか。
「私はただの字数稼ぎよ」
「まあ阿良々木の相手だし、基本俺視点だしそうかもしれんが…それにしても発言がアウトすぎる。というか心を読むな」
「いいのよ、これくらいで。私はこの路線で行くわ」
なんかもう、なに言っても無駄な気がしたのでため息を吐いて席に着いた。イヤホンを耳にさして音楽を聞きながらやっているソシャゲの情報をTwitterでかき集める。ブシモッ!クラフトエッグ!!
そうしているうちにHR1分前になった、阿良々木はまだこない。机の上からイヤホンとスマホを片付ける。
一息ついた時に息の上がった阿良々木が教室に滑り込んできた。そしてそのまま息を荒くして俺の方へ来た。思わず息を飲みそうな勢いだことで。
「比企谷、あとで話がある。昼休み、僕に時間をくれ」
「お、おう———まあ、頑張れよ?」
「?なんのことかは分からないが、応援ありがとう。じゃあな」
後ろの方から刺さる視線に冷や汗を流しながら、阿良々木の鈍感さを呪った。いやまあ彼女に先に挨拶しない阿良々木も悪いかもしれんが、俺の座席の場所が前のドアのすぐなのでそこは許してください戦場ヶ原さん睨まないで!怖い!!
不幸だ…と幻想殺しの少年のようにため息をつくのにあわせてチャイムが鳴り響いた。
そして昼休み、俺は阿良々木に呼び出され事の顛末を聞かされることになる…のだがまあ戦場ヶ原も来た。羽川は委員長の仕事らしい。
「で、いったいなんの用だ阿良々木。昨日忍野から聞く限りでは特に問題はなさそうだったが」
「そうか、吸われにいったのか。なら話ははやいな、実は」
「話がはやい、じゃないわよ阿良々木くん。私を差し置いて話を始めるなんて許すと思って?全ての事の一部始終を一部も逃さずはっきりきっかりたっぷり教えてもらうわよ」
「そうは言ってもだな戦場ヶ原、僕が今回やったことはひゃくごじゅういちもないぞ」
別にそれがひゃくごじゅういちである必要はない。何か厄介ごとに阿良々木が巻き込まれている、それだけが戦場ヶ原にとって大事なのだ。苦労する彼氏をとったものだぜ、あわれ戦場ヶ原。
「まあ1人だけ何も知らないというのもアレだ。俺がその立場になることがよくあるから今の戦場ヶ原の気持ちはよくわかる———最初から話せよ。忍野にだって全部話したわけじゃないんだろ?」
「はぁ、まあ僕としても可愛らしい女子中学生との再会の機だったわけだし、話すことに抵抗はないよ。しょうがない、君たちがそこまでいうのならこの阿良々木暦自ら、今回の事の全てを語ろうじゃあないか」
こいつは墓穴を掘るのがすきだなぁ。なぜ女子中学生と再会したとか言うかなぁ、そしてなんでそれにイラついている戦場ヶ原に気づかないのか。もう知らん、強く生きろ。阿良々木、其方は愚からしい。
そこから阿良々木は改めて今回の件について軽く説明を始めた。神原と共に山の奥の廃れた寺院にお札を貼りに行った。その時謎の女児とすれ違い、その寺院についてみれば大木に切り刻まれたへびの死体が突き刺さっていた。その時先ほどの女児が昔の知り合いだったことを思い出す阿良々木。ちなみに名前は千石撫子というらしい。
「ほんっと、なんだかなぁ」
「なんだよ」
「いや、お前ばっかり怪異に好かれてて…契約破棄してやろうかな」
「やめてくれ、やめて、やめてください比企谷さま!」
うるさかったので睨みつけてから続きを促した。
後日またその千石が神社に訪れてないか確かめるために神原とそこに行くと案の定彼女がいたそうだ。とりあえず阿良々木家に連れて帰り事情を聞いて、阿良々木が単身忍野の元へ向かい怪異の正体と対策を教えてもらった。そしてそれをやって、少し望まない結果にはなったが一応解決までは至ったという。
「何が問題なんだ?」
「ここからなんだ、千石が言うには千石がやったものではない蛇もいたって」
「ということは、その千石という少女以外にもその、蛇切縄?の呪いを受けている子がいるかもしれないということ、かしら?」
「まあ、かもしれないっていう話だ。ただの悪戯の可能性もあるけどな」
阿良々木は神妙な顔つきでそうつぶやく。それもそうだ。この街には所々に木々の生えてる場所があるし、わざわざ山奥にまでいかなくとも探せば蛇の一匹や二匹出てきてもおかしくはない。つまりそこでやる意味が怪異関連以外で浮かばないのだ。とても悪戯だとは思えない。
そもそもそんなところに神社があるどころか開けた場所があることなんて、俺や阿良々木も知らなかったのだから、大半の人は知らないと思ってもいいだろう。何か目的があってわざわざ来て千石と同じ行為をしている誰かがいる、これはほぼ確定でいいだろうな。
「というわけで、忍野はこの件について比企谷に手伝ってもらいたいらしい」
「…は?なんでそういう流れになった」
目から鱗だ。
「春休み、借金、チャラ」
「…なる、ほどなぁ」
俺も阿良々木ほどではないとは言え忍野に借金している身だ。受けざるを得ないだろう。
しかたない、今日の夜にでも行くとするか。
この一件が俺にとって、そして小町にとって転機になるとは全く思ってもみなかったのだった。
と、いうわけでなでこスネーク編、終了です!
はい、何やってんだと思われるかと思いますが、ここからちゃんと〇〇〇〇スネークに繋げるつもりなのです。これ、次回普通にサブタイつけるとモロバレルなんだよね、最初の1話だけ???で名前隠そうかな、なんて思ってます。
はい、というわけで半年くらいお待ちください(あほ)