八物語   作:Maverick

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少し短めの、家での様子をお送りします。

あ、あとオリ吸血鬼の真名…本名と肩書きが出ます。一応キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと対比させているつもりですが…文才も想像力も表現力も語彙も何もかも不足しているため、かなりダサい名前かも知れません。

まあ、とりあえずどうぞ。


ひたぎクラブ《其の参》

家に着いたのは、日が暮れて一時間経ったあとだった。

うちの親はただの会社員。社内婚だったらしく、今日も仲睦まじく残業している事でしょう。

俺に対して放任主義という名の放置主義を採用している親は、春休みまるまる俺がいなくとも特に気にすることもなく、というか気にする暇もなく仕事をしていたらしく、ただ毎晩妹に電話するだけで何とかなった。

玄関のドアを開け常識的挨拶を放つ。

 

「ただいまー」

 

「あっ、おかえりー!おっそーい!」

 

一階のリビングからひょこり顔を出す俺の妹。

比企谷小町。

親から受け継がれたアホ毛。

きらり輝く八重歯。

あどけなく可愛い容貌。

まあ間違いなく美少女である。ついでに目も腐ってないためモテる。

阿良々木と違ってオープンシスコンな俺は彼氏なんて許さないが。

あいつ、素直じゃないだけでシスコンだと思うのは俺だけじゃないはず。

 

「悪いな、阿良々木に絡まれた」

 

「…もしかして、また?」

 

部屋から出てこちらへとことこ駆けてきた。不安そうな顔をしている。

 

「大丈夫だ、今回はそこまで危なくなさそうだし」

 

「そうなの?ならいいけど〜」

 

目に見えて安堵する小町。心配かけてごめんな、と面と向かって言えないから心の中だけで言う。

一応小町には俺の現状を話してある…というか話さざるを得なくなってしまったため話してしまった…という方が正しい。まあ、それはおいおい話すとして。

 

「さあさ、お兄ちゃん。ご飯もあとすこしで出来るから、リビングに入ってよ」

 

そう言って俺の持っていた鞄をひったくる。

春休みの一件以来小町のブラコン度は著しい成長を遂げた。

まあ、兄が死ぬかもしれない大事件に巻き込まれたとなって生きて帰ってきたら、そうなるのも頷ける。

本人は頑なに否定してるけども。

小町がとっととキッチンに戻ったのを見送ってからのそのそと靴を脱ぎ、リビングへ入った。

 

「…あいつの名前でも考えて待つか」

 

ソファに寝転がり暫し考える。

確かあいつの本名と肩書きは…。

勝気にして短気にして陽気な吸血鬼。

ディプライア・ハーベスレチクル・ハンドレッドフレグランス。

つまるところただの負けず嫌いで怒りやすくて普段は明るいってだけなんだよな…。

ついでに言ってしまえば、忍の以前の肩書きであるところの、あれ。

鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼。

これだって軍備と激しい意気と温情なしである。訳が分からん。

だから肩書きなんて、かっこよければ良かろうなのだ。

 

「さて、どんな名前にしようかね」

 

忍みたいにつけるのは嫌がるのかね…なら普通に肩書きの陽気から『陽』にするか。

いやでも、『比企谷陽』って語呂悪い。

そもこの漢字は昔の年上の知り合いを思い出すので、あまり使いたくない。

短気も勝気も使えない…結局名前からとることにする。

 

「お兄ちゃん、ご飯できたよ」

 

「ほーい、今行く」

 

一度考えることを辞め食卓に着く。小町にも意見を仰いでみよう。

合掌して数分経ってから小町に聞く。

 

「なあ、小町」

 

「んー?ふぁあに?」

 

「あ、悪い。口の中にものあったのか」

 

小町は横に首を振り、暫くしてものを飲み込んでから再度問いかけた。

 

「それで、どうしたの?」

 

「いやな、春休みの吸血鬼に名前をつけたいなと思ってるんだが…どんなのがいいのと思う?」

 

そういった瞬間に小町の顔が曇った。

…あ、こいつにこの話はタブーだってすっかり忘れてた。

俺はあいつを許さない。

あいつはいつまでも俺に許しを乞う。

俺が許すまでこの関係は変わらない。

そういう盟約になっている。

故に、小町も─俺のことを考えてくれるから─あいつを許せないのだ。

いつかもし、あいつを許す日が来たら…それはきっと、俺が人間に戻る日となるだろう。

 

「悪い、変なこと聞いたな。忘れてくれ」

 

「あ、ううん。ごめんなさい」

 

「仕方ない、俺一人で考えるさ」

 

しょんぼりとした小町にフォローを入れる。下手くそながらも、小町の顔が緩んだのを見て、安堵する。

 

「小町が落ち着いたら、なんでそんなことになったのか聞かせてね?」

 

不安そうな、恐怖を抱く、葛藤している、楽しそうで、嬉しそうで。

何用にも取れる微妙な表情をしながら小町は言った。

 

「ああ…いつ来るんだろうな」

 

「なにおう、スグにくるよ!」

 

茶化して空気を和ませる。

小町は、実際に対面した訳じゃないけれど、怪異を知ってしまった。

怪異を知ると、怪異が視えるようになってしまう。

もしも、小町が、怪異と行き逢う事があれば。

兄として、最愛の妹を守り抜くことを誓おう。

柄じゃないが、こういう兄ってかっこいいだろ?

 

 

 

 

 

晩御飯が食べ終わってから、短針は九十度動いていた。俺はリビングで勉強していた。

まだ、行くには早い。スマホが鳴る。

 

「…阿良々木か」

 

阿良々木からのメールだった、というか遅くない?あいつ今まで何してたんだよ。

中を開けば、ずらっと並べられた文字列が詰まっていた。

読んでみると、やはり戦場ヶ原が出会った怪異はおもし蟹のようだった。

その部分は読み飛ばそうとスクロール。

そのまま底辺へ到着。

 

「んー、マジか」

 

若しかしたら新たな情報があるかなと、一度最上部まで戻って斜め読みするも、特筆すべきことは無かった。

結局具体的にはどんな対処をするのか、阿良々木も知らないらしい。

まあ、後で行けば分かるか。

 

「それよりも、名前だ」

 

そう、俺は今正直戦場ヶ原の事がどうでも良くなっていたりする。なんなら最初からどうでもいいまである。

さて、名前の方だが。

忍みたいに付けるとしたら…と考えてみる。

忍は名前が凄く英語ぽかったからな。と、ここで気づく。

ハンドレッドフレグランスとか、もろ『百香』じゃん。

でもこうして決めると多分忍野と被る。

それはダメだなと、考え直すことにする。

ディープライア・ハーベスレチクル・ハンドレッドフレグランス。

これを適当に分割してネット検索をかけようか。そこで俺はこう分けた。そのへんにあった紙に書き留める。

ディープ

ライア

ハーベス

レチクル

ハンドレッドフレグランス

一番下は、もうね、分けなくていいかなって。だって百香だし。

上から調べていくも、あまり納得出来る文字列がない。

ついに残るはレチクルだけとなった。

有名ブラウザでレチクルと検索する。そこで出てきたwiki先輩は、星座だった。

へえ、星座にもレチクルってあるのか。俺はてっきりスコープとかのあれだけかと思ってた。なんでそんなことを知っているのかは、厨二病という言葉で察していただきたい。

 

「ふーん」

 

何気なしにwikiを見てると、ちょうど良さそうな三文字が。

ふむ、これで行こうか。

しかし、音は決まったものの、漢字があまりいいものとは言えなかった。…いやまあ主観なんで、実際にこの名前にした親を非難するわけではありませんけど。

次は電子辞書を使って漢字を決めた。

よし、これでいいな。

 

「よし、決まったな」

 

もうあの廃墟に行く憂いはない。

下手すればおもし蟹に殺されるかもしれないけどねっ!

忍から聞いた話と、戦場ヶ原の今までから推測するにそこまで好戦的でないのは分かる。よってそこまで危険視はしていない。

だが、誰だって攻撃しかり過干渉されれば抵抗したくなる。そこは人間も怪異も変わらない。ソースはGW。

その体の主は過干渉どころか無干渉だったけど。誰とは言わない。これを読んでる人ほとんど原作既知者だけって信じてるから。

 

「…ぼちぼち行くか」

 

「あ、行くの?」

 

「おう…鍵は持ってくから、寝てていいぞ。というか寝ろ」

 

「はーい」

 

ニヤニヤした顔で小町は答えた。

勉強道具を自室へ持ち込み、適当に財布とスマホを持って家から出る。

財布の中に鍵があるからで、むしろ本来入っているはずの金はそこそこ無い。

今週末、土曜に高収入がある予定。

にしても、めんどくさい。そう思いつつも足は勝手に動く動く。

ため息を一度吐き、前向きに物事を考えるためにも、前を向いて歩き出した。




お読みいただきありがとうございました。

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