八物語   作:Maverick

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みぃぃなさんお久しぶりです。作者のmaverickでええす!!

…はい、すみません。悠木碧さんの真似をする早見沙織さんの真似をしてみたかったんです許してください。

今日の朝北陸の友人の友人のTwitterによると、どうやら休校になるほどの雪が降ってるようですね…まあそれがどのくらいの基準なのかは知りませんが。あと一シーズンで二回目の休校というのも珍しいということで。

そんなわけで雪国に住まわれる方々は足元気をつけてください。

では、まよいマイマイもそろそろ佳境…と言っても派手なシーンは少ないですがそれもまたこの章の魅力。どうぞ。


まよいマイマイ《其の参》

こんな田舎でも、日曜の住宅地となれば人とすれ違うことは多々ある。まして今は既に夕方、近くのスーパーに買い物に出かける主婦や、明日に備えて家に帰る子供たちが沢山いた。

そんな時間で、そこそこ距離もあるというのに事もあろうことか、羽川は歩いていきたいと言い出した。まあ俺は構わんのだが。

しかし今日は何故か小学生とよくすれ違う、その度羽川が少しだけビクッとするのが面白い。

心配しなくとも、みんな人間だ。自信はない。

ちなみにすれ違う小学生の三組に一組の割合で俺と羽川が恋人関係なのか聞いてくる。

釣り合うわけないだろう。

一組目にそう言うと羽川の機嫌が見るからに悪くなったので、二組目からは言葉を選ぶことにした。

 

「なんで比企谷くんは、真宵ちゃんが怪異だって気づけたのかなあ…」

 

羽川が独り言のように呟く。当然独り言だと思ったので聞いてない振りしてたら、ほっぺを抓られた。

痛い痛い、そこの家の玄関で立ち話してるおばさん達からの若いっていいわあって感じの目線がいたい。

 

「聞いてた?比企谷くん」

 

「聞いてたよ…独り言だと思った、正面向いてたし」

 

「あれ?もしかして私のこと見てた?」

 

「ちげーよ、声の向き的に。なんとなく分かるだろ?」

 

「まあね」

 

ようやく羽川は俺の頬を解放した。

少しひりひりするので、気持ち良くなるようにとさすった。そのままあらあらとか言えば遠山さんですね、隣にいるのはコウちゃんじゃないけど。

 

「俺だって小町が見えてないって言わなきゃ気づかなかった」

 

「そっか、そうだよね」

 

なら果たして阿良々木なら気づいたのかと聞かれれば、分からない、と答えるけどな。

俺たちがいた時にはあの二人だけだったが、前話でちょろっと言った憶測通りに戦場ヶ原がいて、であいつが見えたか見えなかったかは知らんがもし見えてなかったとして、であいつが見えなかったことを言ったのか言わなかったのかは知らんがもし言ったとしよう。

それであいつはこの結論まで来れただろうか。

こう言っちゃなんだが、俺はあいつより頭が切れるほうだと思ってる。どちらの頭にもカッターみたいなアホ毛はあるんだが。

そんなこんなでいつもの廃墟につく頃には、太陽は既に日本を照らしてはくれなかった。この時間だと、忍も小愛も既に夢の世界(ネズミーランドではない)に行っちゃったことだろう。ところでサンセットよ、明日は出勤しなくていいですよ、月曜だから。

いつも通りの暗闇の中をいつも通り歩く。いつも通りでないのは、隣に羽川がいることくらいで、でもそれがいつも以上に俺を緊張させる要因でしかなかった。怪我させないようにとか、理性を保て俺とか、やっぱ羽川可愛いなとか、考えているうちに四階へ。

三つある部屋を順に見て、最後の部屋に今日はいた。積み上がった机の上に寝そべっている。どうやら本気で寝ていたらしく、俺達が部屋に入ってきた時の気配で目を覚ましたようだ。

 

「おや、比企谷くんに委員長ちゃん───だよね。どうしたんだい、二人揃って」

 

ふむ、この身なりをしている羽川を羽川と分かるとは。

机に身を起こして座る忍野。

 

「単刀直入に言う、戦場ヶ原に話したことを俺たちにも話してくれないか?」

 

「えっ?」

 

隣の羽川が今日聞きあきるほど聞いた声色を出す。

 

「ん?君たちも今日『あの怪異』と行き遭ったのかい?」

 

俺の言を否定しないということは、つまり戦場ヶ原も来たのだろう。

なんと不憫であろうか、同情を禁じ得ない。

まあもちろん嘘だが。

阿良々木も戦場ヶ原も仲良さそうで、何よりです。ホントホント、こっちは嘘じゃない。

 

「いいや、戦場ヶ原と入れ替わりで阿良々木に会ったんだよ」

 

「ちょっ!ちょーっと待ってよ比企谷くん」

 

「──なに?」

 

おっとつい声に不機嫌さが滲み出してしまった。

しかし羽川はそれを咎めたりはしなかった。きっと俺が言ったことを頭で反芻しながら何を言うべきか考えているのだろう。

 

「なんで、戦場ヶ原さん?」

 

「──どうでもいいだろ、別に。俺たちがあそこに行く前に戦場ヶ原が阿良々木といたってだけだ」

 

「なんでその結論が比企谷くんの頭に浮かんだのか聞きたかったんだけど?」

 

そう言われても、説明できるほど簡素な思考回路が張り巡っているわけじゃないんだよな。

様々な要素が絡み合ってその結論をはじき出したわけだから、説明はインポッシブルだ。

しかしそれではこの少女が納得することは永久に来ないし、そうなると永劫的に聞かれ続けるかもしれない。

ことモノを知ることに関して、この少女には人一倍執念があるのだ。

 

「カンだな」

 

「カンなの?」

 

「ああ、カンだ」

 

それでも結局は適当に誤魔化し、まやかそうとカンを貫き通す。

しばらくヴ〜と唸って教えろオーラを送ってきたが、知らぬ存ぜぬでスルーしていると諦めてくれた。

 

「はあ、いいや。それで比企谷くん、話どこまで進んでたっけ、私が止めちゃったんだよね」

 

「ああ──俺たちと戦場ヶ原は会っていないが、怪異とは遭ったって話だな」

 

「入れ違いになったって事だね、二人とも」

 

厳密に言えば俺の妹であるところの小町もいたが、そこは訂正する必要もないと放置。

 

「それじゃ、時間も時間だし簡単な説明だけに済まそうか。一人の迷える少女の物語ってやつの──さ」

 

そう諭すように俺たちに言った忍野は、虚空を眺めながら積み上がった机の上に未だ座ったまま、ぽとりぽとりと説明をこぼした。

 

 

 

 

 

今や既に、空を見た時に視界の端に人工的な光が一定のリズムしか刻まなくなるくらいに、街は寝静まっていた。

俺たち二人を照らすのは田舎の住宅地に点在する街灯と、それらより眩く照り輝く月。星はあまりにも遠く、きっと俺たちのことなんて見えていない。

簡単な説明と言えども、その時間は長針で百五十度を優に超えた。いまや短針と鉛直線に、それほど距離はなかった。

田舎となれば、その頃にはもう日の香りは一ミリグラムもない。ついでに言えば、人気も微塵もなかった。

時折吹く風の音と二人の足音だけが、空気を支配していた。

その支配に抗うように、羽川が口を開く。

 

「ねえ、比企谷くん」

 

ただの呼び掛けに留めたのは、果たしてどんな意図があったのだろう。言葉にしてもらわなければ、分からない。言葉にしてもらったところで、分かる保証もない。

ただとりあえずは、応えよう。

 

「なんだ」

 

「あの子、さ。私たちに、静かだけど確かに敵意を抱いていたの、気づいてた?」

 

「──気づかなかった」

 

俺はその手の目線に鈍感だ。鈍感になった、なってしまったのだ。

これが花粉だったら花粉症になるほど享受してきたから、感覚が麻痺したのだと思っている。

度々以前の感覚を想起させるほど敏感になる時があるけれど、大抵は相手が本気で殺しにくる程度でなければならない。というか、そんな視線をずっと感じ続けたから生半可なものを無意識的に無視するようになったのかもしれない。

ともかくそんなわけだから、この言葉に偽りはなかった。

そしてその事を知っている羽川は、俺が分かっていないと知っていながら聞いてきたのだ。

 

「そっか──私ね、あの子は実はすっごく優しい子なんじゃないかなって思ってるんだ」

 

「や、優しい?」

 

あまりに予期していないその言葉に、素っ頓狂な声を上げてしまった。そのことを後悔しつつ頬を人差し指で掻くのを、ふふっと笑って見られるのは恥ずかしいのでやめて頂きたい。

ここまで重かった二人の間の空気が、この一連で少し軽くなったように感じた。

 

「優しかったよ、あの子は。どこまでも他人のことを考えて、きっと阿良々木くんに似てる」

 

「俺には、わからん」

 

嘘偽りなく、心当たりはない。

仮に無理やりひとつあげるとすれば、後始末をしっかり自分でやり遂げると宣言した事くらいか。

もはやそれを確認する術はない、阿良々木に聞けば或いは──しかしそれでも、八九寺の本意がそれか分からないのだ。

また会えたら、そう考えても無駄だというのに考えざるを得ない。

 

「うん、私も比企谷くんみたいに推測しただけだから自信そんなにないんだ──本人に、聞いてみたかったな」

 

「まあ、まだ聞きたいことはあったな。けど仕方ない」

 

「うん、だって」

 

羽川は神妙な面持ちと声で寂しそうに続きを紡いだ。

真宵ちゃん、成仏しちゃうらしいしね。

それは専門家でありバランサーである忍野から下された、あまりにも冷徹な判決だった。

つい数刻前の会話の一語一句一挙手一投足余すところなく思い出す。

 

「あの子は迷い牛。比企谷くんは気づいたみたいだけど、あの子が怪異に行き遭ったんじゃなくて、あの子自身が怪異で行き遭ったのは阿良々木くんだ」

 

「やっぱりか」

 

レスポンスしたのは俺だけだった。

羽川には先に話してあったためびっくりはしてないものの、明言されたからか少しばかりショックを受けているようにも見えた。

そんな羽川など露知らずに忍野は続けた。

 

「迷い牛は、他の地域でもよく見るありふれた怪異だ。人の世でも度々『神隠し』として片鱗が見える──もちろん、それらの全てが迷い牛のせいな訳はないけどね」

 

「そうなのか?」

 

「うん、けれどね比企谷くん。まだ迷い牛ならそこまで重大な事態にはならないのさ。なんて言ったって、一言帰りたいと言えば帰れるんだからね」

 

「──すごいな、比企谷くん」

 

小さく呟かれたそれは、ただ愚直に俺を褒めてはくれなかった。

否、確かに羽川には俺を褒めようとしてくれたのだろう。流石だね、私とは違うベクトルの頭の良さだよ。なんて言って。

しかしそれを平然と言えるほど、羽川は強くはなかった。

それでも彼女は、ここで屈するほど弱くもなかった。

 

「それで、あの子はどうなるんですか?」

 

「普通なら放っておくさ、特別害はない。けれどね、今回の件はなかなかに面白くってね──というのも、あの子が死ぬところを目撃するには今から十年ほど遡る必要があるんだよ」

 

忍野がなんだか小説みたいな言い回しをしてきた。

レトリックな言い方をしても、本質的なことは変わりない。

つまるところ、八九寺が死んだのは十年も前のことだということ。それにほかならなかった。

流石にそんなことは予測出来ない、思わず絶句する。そんな俺を見た忍野は楽しそうに笑う。悪趣味なヤツめ…。

 

「なら、お前はどう対処したんだ」

 

「簡単さ、裏技を使ったんだよ。悪手とも言えるかもしれない、汚い手さ」

 

「──それで、阿良々木くんや戦場ヶ原さんに害はないんですよね?」

 

珍しく羽川が忍野を警戒している。

友人やクラスメイトが危険かもしれないと思うとすぐに心構えをつくれるのは長所と言えるだろう。

その羽川を嘲笑うかのように顔を歪める忍野は告げた。

 

「大丈夫だよ、ただ歩く距離がすごく伸びるだけさ」

 

「…遠回りさせた、ということか」

 

「おにただだよ」

 

なぜ忍野がそれを知っているんだ!?

思わず叫びそうになる。なんとか溜飲して解説を聞くことにする。

 

「あの子は俗に言う幽霊だ。地縛霊が一番近いかな。そして幽霊には知識が積もっていかないのさ、例えるなら──そうだね、地面に落ちた落ち葉がすぐ取り払われ土にはなんの養分もいかないって感じ。知らないのなら対処できない」

 

「──なんとなく言いたいことは分かった。だがな忍野、たった十年だぞ?土地利用の観点から見れば数刻でしかない」

 

遠回り、知識が積もらない、知らなければ対処出来ない。これらのワードが導く解は、きっとこうだ。

新しく出来た道、具体的には十年以内に形成された道だけを通って目的地へ向かうということ。それだろう。しかしそんなことをして目的地へ辿り着くには十年というのは短すぎる気がする。

 

「そうだ、でもあそこは再開発されたばかりでね。つまりはだね、十年という月日と、その間に再開発がされたという二つの事象があったからこそ使えた裏技なんだよ」

 

なる……ほど。

忍野は俺と、多分だが羽川が察したことを察し、これ以上は何も言わなかった。

 

「──俺は理解した、羽川は?」

 

「うん…状況は理解出来たよ」

 

寂しげに顔を顰める羽川が零した曖昧にも取れる言葉の本質を、偶然にも閃くかのように把握する。

彼女は納得していないのだ。それが何故かまでは流石にわからなかったがそれだけは言える。そこでどんな事象が履行されたかは把握し理解するもどうしても腑に落ちないところがあったのだろう。

 

「まあ、そういうわけさ。そして、見事目的の座標にたどり着いた少女は未練が消え成仏して、めでたしめでたし」

 

聞き捨てならない言葉が忍野から発せられた気がした。




はい、中途半端なところで切ってしまってすみません。どうしても切るタイミングが見つからなくて、強制的にばすんとハサミというよりペンチで切ったみたいになってしまいました…。

ついにここまで来ました、あとは忍野の解説を少し残して『帰り道』を歩いてオチへと着地するまでです。

読んでいただきありがとうございました。

(作者がこんな時間に投稿してるのは…はい、インフルエンザA型が治ってるけど隔離期間中でとても暇だからです)
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