ただそれだけ。
マリンフォード頂上戦争 。
その戦いは時代の終わりと始まりを告げる戦いだった。
白ひげとエースの死。黒ひげの台頭。モンキー・D・ルフィの存在。
そこで明かされた二つの血統は今後の世界に大きな意味をもたらすのだろう。
ここはグランドライン。新世界のとある冬島。
俺はクルー達と別れ、一人この島を訪れた。
クラスの氷がカランと心地の良い音を響かせる。
いつもはハデに宴会などをして騒ぎながら酒を飲むが、こうやって静かに傾ける酒もたまにはいい。
俺はあの戦争で何も出来なかった。
白ひげとエースは死んだ。
俺に与えられた仕事はエースと麦わらを見守る事だったハズだ。
なのに、何とかなったのは、アイツの後継者が生き延びた事だけだ。
しかし、初めて会ったときよりも似合うようになったもんだな。
「あの麦藁帽子は精悍な男によく似合う、か。」
たとえあれを受け取ったヤツが知らなくとも、受け継いだ遺志は受け取ってるみたいだしな。
「王の被っていた冠だ。ヤツが次代の…。」
いや、それでも…。
「俺の王は…。」
そう呟いて、口を噤む。
あの男にその資格はあれど本人が望まなければ形にはならんか。
「隣、いいか。」
「あぁ。」
そんな俺の隣に一人の男が座る。左目に三本の傷。
そして片腕のない服がヒラヒラと鬱陶しい事この上ない。
「お前の腕を見るたびに居た堪れなくなる。」
「お前のせいじゃないだろ。」
「そうでなくとも、不甲斐ない自分を責めずにはいられないのさ。」
そいつは失った片腕をさする様にして不思議そうな顔を浮かべた。
「悪かった。」
俺は謝る。謝ることしかできなかった。
「何で謝る。」
「与えられた任務を果たせなかったからだ。」
「お前はよくやってくれたさ。悪いのは俺だ。」
あぁ。またお前を苦しめてしまった。
「間に合わなかった。何もかもが遅かった。」
「しょうがないさ。黒ひげの件は…。」
お前に傷をつけた男は再び俺達に傷を残していった。
俺達の心に。かつての船長の息子とその友を殺して。
「これからはお前に世界が負担を求める事になる。」
カイドウ、ビック・マム。そして黒ひげ。
「それに世界政府の内部も荒れそうだ。」
「七武海のことか。」
「あぁ、あの話を受ける。」
頂上戦争の後、俺の元に届いた手紙。
七武海への参列を要請する手紙だった。
「お前はよくやってくれてる。もう、表舞台に出てもいい頃だ。」
「だからこうやって名を上げた。」
「違うだろ。」
憂いを帯びた声が届く。
「船員を裏切り、強さを偽り、弱者と蔑まれる。」
「……。」
「自分を偽って得た偽りの地位でいいのか?」
友の声に改めて決意を新たにする。
「戻って来い。俺にはお前が必要だ。」
お前がそう言ってくれる。だから…。
「だからこそ、俺は政府の犬になる。」
入ってくる情報も桁外れに多くなるだろう。
七武海の地位も使うだけ使い倒してやる。
「今後世界は荒れる。だからこそ、お前に俺が必要なんだろ。」
船員も同盟も全ては偽り。
七武海の地位も上手く使い再び世界を騙して行くさ。
「俺の王はお前だ。だから、俺は俺のやりたいようににやるさ。」
そう悲しそうな顔をするなよ。
全て騙して、友の行く道を照らしていこう。
「情報はお前に流す。上手く使ってくれ。」
「今度は政府だ。危険だぞ。」
「俺を誰だと思ってる。
道化のバギー様だぞ。ってな。
また上手く、道化を演じてやるだけさ。」
バギー。
赤髪海賊団、たった二人の結成メンバー。
しばらくしてエースの存在を知り、遠巻きにエースを見守るため東の海へ。
そののち、ルフィも見守っていた。
ルフィの資質と覚悟を見定めるため、壁として立ちふさがり、エースが投獄されると知るとワザと捕まりインペルダウンへ。
その後、頂上戦争で二人を助けるために暗躍。
赤髪海賊団でも知るのは一部の幹部のみ。
シャンクスの幼馴染であり、実は互角にやり合えるだけの実力の持ち主。
本編の間抜けっぷりは全て演技。
って、妄想。