少女異世界旅行   作:破壊神クルル

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二つの異世界飲食店

此処で時系列は少し過去にさかのぼる。

 

 

「何を言っているのです。まだデザートが終わっていません」

 

「えっ?」

 

いつもの食堂から異世界食堂へと変わった土曜の日に店主の厚意からねこやへとやって来た冬木市の住人、衛宮士郎と士郎の下で厄介になっているセイバーは、ねこやの料理を堪能した。

特にセイバーは、オムライスにお好み焼き、ビフテキ、カレーライス、かつ丼を食べた。しかも全て大盛りで‥‥この上更にデザートも注文すると言うのだから、士郎の目が点になるのも十分頷ける。

 

「すみません」

 

「はい」

 

そんな士郎を尻目にセイバーはウェイトレスを呼ぶ。

 

「追加の注文をしたいのだが」

 

「はい」

 

「チョコレートパフェとクレープ。それにプリンアラモードを頼む」

 

「承知しました。マスター、オーダーです」

 

ねこやのウェイトレスの一人、アレッタがオーダーを伝えに厨房の奥へと向かう。

 

「‥‥」

 

士郎にセイバーを止める事は出来なかった。

デザートを待つセイバーの姿は王でも騎士でもなく、ごく普通の女子に見えたのだから‥‥

 

「お待たせしました。チョコレートパフェです」

 

まず最初にアレッタがセイバーの下に持って来たのはグラスに入ったチョコレートの芸術品、チョコレートパフェ。

ねこやの常連客の一人、チョコレートパフェこと、異世界にある帝国の現皇帝の一人娘、アーデルハイドのお気に入りのメニューであり、チトとユーリがはじめてチョコレートと認識したデザートである。

二人はこの世界に来る前、世界が終わった世界にて、ドックに放置されたままの潜水艦の艦内で非常食のチョコレートを食べた事があったが、本人達はそれがチョコレートだと認識せずに、以前飛行機の中から見つけて食べたチョコレート味のレーションと同じモノだと思っていた為、このねこやのチョコレートパフェが初めて口にした本物のチョコレートだと思っている。

そして今、セイバーの目の前にそのチョコレートパフェが静かに鎮座している。

一点の曇りの内ガラス製の器に盛られているのは、雪山のように白い生クリーム。

そのクリームの上にはチョコレートソースがかけられ、なだらかに流れて優美な模様を描いている。

白と黒で構成された山の縁には色とりどりの果物や焼き菓子。

しっかりと焼かれた小麦色の焼き菓子。

その焼き菓子にもチョコレートが掛けられており、その対比が美しい。

さらに半分に割られた赤いイチゴに黒い粒が散らされた緑のキウイなどスライスされた生成り色の果実が飾り立てられ、山の裾に鮮やかな色を与えている。

そしてその下…山の下は白と茶‥生クリームとアイスクリーム、チョコレート、そして小麦色の層‥シリアルが敷き詰められており、その綺麗に3層に分かれた様子が、透明なグラスを通して見ることが出来る様も良い。

 

「では‥いただきます」

 

良く磨かれた柄の長い銀の匙を手にしてセイバーはパフェを食べ始める。

まず食べるのは、山の頂‥‥チョコレートソースがたっぷりとかけられた生クリームの山へ匙を潜り込ませる。

匙が入れられたパフェは、まるで雲のように抵抗なくすっと切れる。

 

「あむっ」

 

口に入れた瞬間、かすかにほろ苦くて甘いものがすっと口の中で溶けて消える。

甘いが甘すぎない。

生クリームの甘みとチョコレートソースの苦みが交じり合う美味の後に感じるのは、濃厚なクリームの味と‥‥甘み。

一口、食べた後、セイバーの匙は自然と早くなっていく。

甘さが控えられているためか、甘味以外の味もしっかりと感じる。

クリームの甘みを苦みがあるチョコレートソースがほろ苦くてそれがまた甘味を引き立てる。

それが口の中で溶けて消える。

 

「この果実も瑞々しく、甘酸っぱい」

 

匙で掬い上げられるように一口大にカットされたキウイとイチゴ。

色味が美しいこの2種類は、あえて余り熟していないものが使われていた。

甘味はあるが、しっかりと酸味も含んでいる。

だが、それが甘味に慣れた舌を休ませて、生クリームとチョコレートソースの美味しさを引き立てる。

 

「この焼き菓子もサクサクしている」

 

焼き菓子は匙では掬えないので二本の指で摘み、かじりつく。

チョコレートが上に塗られ、更に器の中の生クリームがついた焼き菓子はやはり甘さが抑えられていて、パリッと砕ける香ばしさがある。

そしてパフェはアイスの層へと辿り着く。

アーデルハイドにとっては白い冬の雲を、チトとユーリにとっては甘い雪を連想させるアイスはひんやりと冷たいながらも濃厚な乳の味がした。

そして少し溶けてアイスがついたシリアルも焼き菓子同様、サクっとした歯ごたえがあった。

様々な味を堪能したチョコレートパフェはセイバーに少しの口惜しさと、たっぷりの満足感を与えて終了した。

 

「お待たせしました。クレープです」

 

続いてチトが持って来たクレープ。

この異世界食堂の唯一の団体客であるフェアリー達の大好物のデザート‥‥

布のような柔らかいクレープ生地の中にはイチゴ、キウイ、ミカンなどの瑞々しく果実にたっぷりの白い生クリームを使用したフルーツミックスクレープ。

バナナと生クリームとは異なり、チョコレートを使用した薄茶色のチョコレートクリームを使用したバナナチョコクレープ。

妖精の魔術の加護の前にはどんな毒も意味を成さないフェアリーの女王でさえも自らの腹を破裂させようという恐ろしい毒であったと思わせるねこやのクレープ。

 

「はむっ」

 

そのクレープをセイバーは満面の笑みを浮かべて頬張って食べている。

先程チョコレートパフェを食べたばかりにもかかわらず、甘さなど気にする様子もなく食べている。

 

(女の子が甘いもの好きって本当だったんだな‥‥)

 

コーヒーを飲みながら士郎は幸せそうにクレープを食べているセイバーを見ながらそう思った。

 

(お待たせしました。ご注文のプリンアラモードです)

 

最後にクロがプリンアラモードを運んできた。

細い足と大き目の器を持つ、硝子の杯。

真ん中にはカラメルソースがかかった鮮やかな黄色のプリン。

その周りには小さな生クリームの山々、バニラアイスの小さな山、そしてまるまる一個のイチゴが二つにさくらんぼが一つ。

スライスされたキウイが二切れにミカン、そしてウサギの形に切られたリンゴ。

 

「‥いただきます」

 

セイバーはまず、プリンの周りを固めている生クリーム、アイス、果実を食べていく。

先程から沢山食べている筈の生クリームの筈なのに飽きがこない。

ふわりと甘い、白い乳を使ったクリームを掬い上げて、文字通りの意味でとろけるような儚さを楽しむ。

ウサギの形に切られたリンゴはシャリシャリとした食感と爽やかな甘酸っぱさがある。

クレープにも使用されたシロップ漬けのミカンとチョコレートパフェで食べたバニラアイスはどれも甘みがあり、美味しい。

そして最後は本命とも言える真ん中に鎮座している黄色いプリン。

銀の匙の上に築かれた、茶色カラメルソースと黄色いプリンの丘

セイバーは匙でそっと掬ってプリンを一口、口へと運ぶ。

舌の上に広がるのはプリン独特の滑らかな食感と茶色いカラメルソースの少しだけ苦味を含んだはっきりとした甘さ、そしてプリン自体が持つ、濃厚な卵と乳の風味。

カラメルソースの味をプリン本体が柔らかく受け止め、プリンの味をソースが引き締める。

この、圧倒的な組み合わせはまさに人類が生み出した食べ物の芸術品と言っても過言ではない。

現に衛宮家では、冷蔵庫にプリンがあればそれは弱肉強食な場面を生み出すことがある。

その場に居合わせなかったものは食することが出来ないのは当然のデザート、プリン。

セイバーはは一匙、一匙を味わって食べていく。

慎重に、少しでも長くこのプリンを味わうために‥‥

ただその最中、あることを思い出した。

それは先日、桜と大河が見ていたあるドラマのワンシーンであった場面‥‥

ちょうどその場面と今の現状が似ているシーンだったので、セイバーはそれを実行に移した。

 

「し、士郎」

 

「ん?なんだ?セイバー」

 

「‥‥こ、このプリンは、士郎の学友が言うようにまさに人類が生み出した至高の一品ともいえる品です」

 

「オーバーだな、セイバーは」

 

「で、ですが、この至高の一品をぜひとも士郎にも味わって頂きたい」

 

そういってセイバーはプリンを匙に一掬いした後、士郎に差し出す。

 

「‥‥」

 

士郎は思わずセイバーの行動に固まる。

これはいわゆる「あーん」と言う行為だ。

 

「せ、セイバー‥‥?」

 

セイバーがただ単に自分にプリンの味を見てもらいたいという意図だけではないことは今の彼女を見れば一目瞭然だった。

何しろセイバーは顔を赤らめて匙を差し出しているのだから‥‥

セイバーと士郎の行動を当然、店にいる全員が見ており、士郎の行動に自然と注目が集まる。

 

食べるのか?

 

食べないのか?

 

セイバーの様な女性から「あーん」をしてもらってそれを断ろうものなら、店の男性客を敵に回しかねない。

その反面、食べたら食べたで、男性客からの嫉妬の視線にさらされそうな感じもする。

なんでプリンを食べるだけでこんなにも緊張しなければならないのだろうか?

でも、セイバーも勇気を振りそぼって行動に移したのだ。

男として彼女の行動を無駄には出来ない。

士郎はゆっくりと動き、

 

「あ、あーん」

 

セイバーの差し出した匙に口をつけた。

 

「‥‥ど、どうですか?士郎」

 

セイバーは緊張した面持ちで味を尋ねる。

正直、極度の緊張で味なんかわからない。

それでも士郎は集中して全神経を味覚へと注ぐ。

 

「う、うん‥おいしいよ。セイバー」

 

「そ、そうですか!?それはよかった!!」

 

セイバーは緊張から解放された様子で言葉を発する。

店内も一瞬で緊張がゆるんだ雰囲気となる。

しかし、

 

「で、では‥士郎‥その‥次は私にやってもらえないでしょうか?」

 

なんとセイバーは士郎に次は自分に「あーん」をやってくれと頼む。

しかも上目遣いで‥‥

士郎の心臓がドキッと跳ね上がり、店内は再び緊張した雰囲気に包まれる。

此処で断ったら、ほかの男性客が名乗りを上げるかもしれない。

 

「よ、よし」

 

士郎はセイバーから匙を受け取り、プリンを掬うと、

 

「あ、あーん」

 

「あーん」

 

プリンをセイバーに食べさせた。

士郎とセイバーの行為にアレッタは顔を赤らめ、女性客の一部は羨ましいそうに見て、男性客は士郎に嫉妬の視線を向けていた。

 

そして、帰り間際、お会計の最中にユーリが、

 

「そういえばお客さん、同じスプーンで食べさせあっていたけど、あれってなんだっけ?‥‥えっと‥‥そうだ、なんとかキスってヤツじゃない?」

 

「「っ!?」」

 

ユーリのこの一言で先ほど自分たちが行った行為をますます意識してしまい、顔を赤らめる両者だった。

色々ありながらもセイバーと士郎は家路へとついていった。

まさか、この後、士郎は家で女性らの厳しい尋問が待っているとは知る由もなく‥‥

 

冬木市にある衛宮家に戻り、夕食の準備とそして夕食ののち、士郎はお風呂に入った。

その間、女性陣はリビングでテレビとお茶でくつろいでいた。

そんな中、セイバーは今日食べたねこやの料理が忘れられずに思わずつい顔がにやけてしまう。

 

「あれ?セイバー、今日は随分と機嫌がよさそうじゃない」

 

セイバーの様子に気づいた凛が何か良い事でもあったのかとセイバーに問う。

 

「はい、今日は士郎と一緒に美味な料理を食べに行ってきました」

 

そして、セイバーはつい今日の事を話してしまった。

といっても異世界食堂については深く語らず、ねこやの料理についてのみ言及した。

セイバーのこの一言に、

 

「なんですって!?」

 

「ちょっとセイバー!!それどう言う事よ!?」

 

「詳しく聞かせてください!!」

 

セイバーに凛、桜、イリヤが詰め寄った。

そして話を聞いた三人は、

 

「士郎‥‥」

 

「先輩‥‥」

 

「お兄ちゃん‥‥」

 

士郎に対する怒りのような感情が込み上げてきた。

そこにタイミングよく‥‥いや、本人にとっては最悪なタイミングで士郎が風呂から出てきた。

 

「ふぅ~いいお湯だった~」

 

風呂から出てきてさっぱりとした気分の士郎に、

 

「士郎!!」

 

「先輩!!」

 

「お兄ちゃん!!」

 

三人が詰め寄ったのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

場面は冬木市の衛宮家から本日異世界食堂となっているねこやへと移る。

 

 

異世界食堂最後のお客である『赤』がビーフシチューを食べ終え、食後のコーヒーを飲み終えた時、

 

(赤‥‥)

 

クロが『赤』に脳内で声をかける。

 

(なんじゃ?クロ)

 

(実は今日‥‥)

 

クロは今日、来店した人間なのに自分たちと同じ雰囲気を持つ奇妙な客について話した。

 

(ふむ、確かにそれは気になる客じゃな)

 

(うん‥‥それにその人は私たちの世界とも、この世界とも違う人みたいだった‥‥この世界や私たちの世界以外にもまだ私や赤が知らない世界が存在するのかな?)

 

(ない‥とは言い切れんじゃろう?現にそこの娘二人の元々の世界も妾達が知らぬ世界からきたようじゃし)

 

『赤』が片づけをしているチトとユーリに視線をむけると自然にクロの視線も二人に向かう。

 

(まぁ、いくつ世界が存在しても、此処は妾の縄張りであることは変わらず、お主は妾と共にこの店を守護することに変わらん)

 

(うん)

 

自分達の知らないまだ見ぬ世界‥‥

そんな世界がまだまだあるのだろうか?

そして、その世界にもこのねこやの扉はいずれ出現するのだろうか?

今までそういったことに無頓着なクロがちょっとだけ、興味を抱いた瞬間でもあった。

彼女もこのねこやに働きに来てから彼女自身にも心境の変化があったみたいだ。

 

異世界へ続く扉‥‥

それはこのねこやだけにしか存在しないのだろうか?

 

 

 

ある休日の日、ユーリは唯達とでかけ、チトは図書館へ、そしてねこやの店主も珍しく外出した。

とはいえ、どこか行く当ても予定もなかったので、適当にぶらりと街中をあるいていると、店主は見知った顔を見つけ思わず声をかけた。

 

「あれ?ノブじゃないか?」

 

「ん?もしかして、マコか?」

 

「やっぱり、ノブか!?久しぶりだな」

 

「ああ」

 

ねこやの店主が声をかけたのはかつて自分と同じ、調理学校に通っていた同期の矢澤信之だった。

同じ調理学校の同期がこうして偶然にも街中で出合った。

久しぶりの再会に積もる話もあったのか二人は近くにある喫茶店に入った。

男二人がこうして出会ったのになぜ、居酒屋ではなく、喫茶店なのか?

それは、ねこやの店主が下戸だからだ。

 

「ほんと、久しぶりだな‥学校を卒業してからだからかれこれ十年以上か?」

 

「ああ、そうなるな」

 

コーヒーを前の互いに再会を懐かしむ。

 

「そういえば、お前、卒業した後、京都の老舗料亭に就職したよな?今日はわざわざ東京へ買い出しか?」

 

「買い出しは買い出しだが、『ゆきつな』じゃなくて、俺の店の為の買い出しだ」

 

「俺の店?‥料亭、辞めたのか?」

 

「ああ、京都の老舗料亭とはいえ、時代の波に乗れなくてな、経営が傾いてきて人員整理されるまえにこっちから辞表を出した」

 

「‥‥そうか」

 

「そういうお前はどうなんだ?」

 

「俺か?俺は‥まぁ、変わらない。爺さんの店にそのまま入って、その爺さんが死んだ後も店を継いでいる。そういった点では、お前と同じ、一国一城の主だな」

 

「確かに‥‥」

 

「でも、京都だと近くにライバル店が多くて大変じゃないか?現にお前さんが働いていたその老舗料亭も経営が危なくなったんだろう?」

 

「まぁ、最初の内は閑古鳥が鳴く有様だったが、最近じゃそうでもないさ」

 

「そうか‥‥」

 

「お前さんのところはどうだ?客、入っているのか?」

 

「ああ、それなりにな‥それに最近、弟子も出来た」

 

「弟子?」

 

「ああ、家に住み込みで働いている子なんだけどな、料理に興味が沸いて、今修行中だ。いずれは、俺たちの通っていた料理学校にも通わせようと思っている」

 

「へぇ~そいつは奇遇だな」

 

「ん?」

 

「実は、俺のところにも最近、俺の下で料理修行をしている人が居るんだ」

 

「ほぉ~」

 

「最初は俺の店の常連客だったんだけど、突然、勤めていた仕事を辞めて料理人になるって言って、俺の下で修行の日々を送っている」

 

ねこやの店主と居酒屋のぶの店主である信之。

この二人にはこうした奇妙な共通点があった。

それは、今は互いに料理人であり自分の店を持っている事、

そして互いに弟子が居る事、

この二つならば、普通の料理人と変わらないが、ねこやは土曜の日には地球とは異なる異世界へと続く。

そして、信之の居酒屋のぶはなぜか表の入り口が異世界の古都につながっていた。

だが当然、互いにそんなことを言っても馬鹿にされるだろうと思い口にはしないが、お互いの弟子も異世界人だった。

ねこやでは、世界が終わった世界出身のチト。

のぶは異世界の古都で衛兵を務めていたハンスが信之の下で修業している。

互いに似た環境の二人は、その後学校を卒業した後の思い出話や料理話に花を咲かせた後、ねこやの店主は信之の買い出しを手伝うため、共に市場へと向かった。

 

 

 

 

ねこやの店主がかつての調理学校の同期と偶然にも再会している頃、唯達桜が丘女子高校のけいおん部のメンバーと共に出かけたユーリは、千葉県の津田沼に来ていた。

今日は音楽のイベントをやりにきたのではなく、音楽のイベントにて演奏を見に来たユーリ達。

イベント終了後、会場を後にするユーリ達。

 

「いやぁ~面白かったなぁ~」

 

うーんと背伸びをしながらイベントについての感想を述べる律。

 

「うん、あのバンドのメンバーの演奏なんて独創的だったよねぇ~」

 

唯も見学したバンドの演奏についての感想を言う。

 

「歌詞つくりや作曲にも大変参考になりましたしね」

 

梓もバンドが歌った歌詞や曲についての感想を言う。

 

「うむ、充実した日だった」

 

軽音部にとって充実した日になった様で澪も満足そうだ。

 

「それより少しお腹が空かない?」

 

「そうね、お昼時間もずっとバンドの演奏を聴いていたし‥‥」

 

お昼ご飯抜きでぶっ通しで音楽イベントを見学していた為、イベントが終わり、興奮が冷めるとけいおん部のメンバーとユーリは空腹を覚える。

 

「おっし、どこかで食べていこうぜ!!」

 

「賛成!!ご~は~ん~!!」

 

地元に帰る前に此処で食事をして行こうと言う律の提案に皆は賛成し、ちょっと遅い昼ご飯を食べに行くことにした。

そして、とある喫茶店を見つけ、そこに入った。

メニュー表を見る限りごく普通の喫茶店なのだが、デザートのページを見ると、そこにデカデカと貼られている写真に思わず釘付けになるユーリ。

そこにあったのは‥‥

 

『超無謀パフェ、制限時間内に食べきれば無料』

 

と書かれていた。

 

「うわぁ、何?このパフェ‥‥」

 

「流石の私でもちょっと無理かも‥‥」

 

「私やってみようかな?」

 

「やめとけ、律」

 

「そうですよ」

 

けいおん部のメンバーがこの超無謀パフェへのチャレンジに難色を示す中、

 

「ぬーん‥‥じゃあ、私やってみる」

 

と、ユーリがチャレンジすると言う。

 

「「「「「えええーっ!!」」」」」

 

「マジか!?」

 

「うん」

 

「大丈夫なんですか?写真を見る限り、結構なボリュームっぽいですよ」

 

「そ、そうだよぉ~」

 

「うーん、多分大丈夫だから問題なし」

 

そう言ってユーリはメインの食事はサンドイッチのセットと軽めに頼み、デザートに超無謀パフェを注文した。

けいおん部のメンバーとユーリが食事をしていると、

 

「また超無謀パフェに挑戦だ!」

 

「また?」

 

「今度こそ勝つ!」

 

「おお、ヨーコが燃えてマース!」

 

「そもそも勝つって誰によ?」

 

「勿論、私自身に!」

 

「張り切っていますねー」

 

「こう言うの天丼っていうんだっけ?」

 

「おい!」

 

 

「向こう側の人もこの超無謀パフェ、頼むみたいだな」

 

そこには自分らと同い年ぐらいの少女達が居た。

彼女らの中で茶髪のショートヘアの少女がユーリが頼んだ超無謀パフェに挑戦するみたいだ。

ただ、その中のある少女をみたユーリは、

 

(あれ?なんで、此処にリゼがいるんだろう?)

 

と、以前チトと一緒にヘルプで働いたお店のバイトの子が居た事にちょっと驚いた。

 

「挑戦するのはいいけど、お金はちゃんとあるんでしょうね?」

 

「ない!」

 

「‥‥」

 

超無謀パフェに挑戦する女子高生の返答に絡まるリゼ?だった。

 

 

やがて、食事が終わり、ユーリの目の前に、

 

「お待たせしました。超無謀パフェです」

 

例の超無謀パフェが置かれた。

 

「こ、これは‥‥」

 

「写真と現物とじゃ、やっぱり迫力が違うな‥‥」

 

「見ているだけで辛いです」

 

「本当に食べられる?」

 

「無理しないでね」

 

けいおん部のメンバーが不安そうにユーリに声をかける。

超無謀パフェはねこやで提供しているパフェの五倍以上の大きさの器にクリームやアイス、果物、焼き菓子をこれでもかっていうぐらい盛り付けている。

 

「まぁ、何とかなるでしょう」

 

ユーリは恐れる様子もなく、普段と変わらない様子で匙を手にする。

 

「では、このタイマーが鳴る前までに食べきればチャレンジ成功です。準備はいいですか?」

 

「いつでもいいよ」

 

「それでは‥‥スタート」

 

お店のウェイトレスがタイマーのスイッチを押すとカウントダウンが始まり、ユーリは超無謀パフェへと挑んだ。

 

「あっ、あの金髪の人もチャレンジしてマース」

 

「金髪!?」

 

リゼ?がいる席に居た片言の日本語をしゃべる金髪少女が超無謀パフェに挑戦しているユーリに気づくと、彼女の言う『金髪』と言う単語にこけしのような少女が物凄い反応を示した。

 

「えっ?ホントに?」

 

「あっ、ホントね」

 

「凄いなー」

 

超無謀パフェに挑戦しているユーリに自分らとあまり変わらない年で超無謀パフェに挑戦しているその姿を見て、思わず感嘆の声を漏らす女子高生達。

そんな女子高生達の前に、

 

「お待たせしました」

 

ユーリが挑戦しているモノと同じ、超無謀パフェが置かれた。

 

「おっ、来た来た」

 

「相変わらずすごいわね‥‥」

 

「うぅ~やっぱり見ているだけでお腹いっぱいだよぉ~」

 

「では、いざ勝負!!」

 

超無謀パフェを注文した女子高生はユーリに少し遅れて超無謀パフェに挑戦した。

しかし、それから数分後‥‥

 

「うっ‥‥」

 

順調に進んでいたかと思われていた女子高生のスプーンの動きが次第に鈍くなり、そして等々止まってしまった。

 

「やっぱり‥‥」

 

リゼ?は内心分かっていた結果に呆れた様子。

一方、同じ超無謀パフェに挑戦したユーリは、

 

「御馳走さま」

 

「た、食べちゃった‥‥」

 

「すげぇ、ユーリ、すげぇ!!」

 

「罰金払わずに済む」

 

「アッチの人は完食したみたいデース」

 

「凄いなー」

 

「流石金髪です」

 

「いや、金髪は関係ないと思うが‥‥」

 

「はぁ~‥‥今日も罰金かぁ~‥‥」

 

「もう陽子ったら、まぁ仕方ないわね。私が立て替えてあげるわ」

 

「サンキュー!」

 

「ちょ、調子に乗らないでよ」

 

「アヤヤ照れてマース!」

 

「仲良しですねー」

 

「そうだねー」

 

超無謀パフェに挑戦した茶髪の少女は友人の助けもあり、無銭飲食にはならなかったみたいだ。

 

けいおん部のメンバーとユーリは超無謀パフェに敗北した女子高生達よりも先に食事が終わったので、

 

「よしっ、腹ごしらえも終わったし、そろそろ帰ろうぜ!!」

 

と律が声をかけ、帰ることにした。

律の声を聞いた少女達は、

 

「あれ?今、烏丸先生の声がしなかった?」

 

「確かに聞えました。あれは確かに烏丸先生の声デース」

 

「でも、いないよ」

 

律の声は彼女らの先生の声に似ているようだ。

そして、こけしのような少女はお店を出ていくユーリと紬に声をかけたかったように手を伸ばして「あぁぁ~」と残念そうに唸っていたが、席の両脇を金髪の少女二人に固められていた為、動けなかった。

そんな少女の視線や仕草に気づくことなく、けいおん部のメンバーとユーリは帰っていった。

なお、その日の夜、ユーリはリゼに電話を入れて今日千葉の津田沼に行かなかったかを尋ねると、リゼからの返答は当然、行っていないと言う返答がきた。

 

 

一方、図書館へ行ったチトは、ライトノベルのコーナーにて気になる題名のライトノベルを見つけ、手に取った。

そのタイトルは‥‥

 

「オオカミと調味料?」

 

オオカミは兎も角、調味料と言う事は料理系の内容なのだろうか?

読んでみると内容は、旅の青年行商人が商取引のために訪れた村を後にした夜、荷馬車の覆いの下に眠る一人の密行者を見付ける。その密行者は賢狼と呼ばれる狼の化身である少女だった。

彼女を旅の供に迎えた青年行商人は、行商の途中で、様々な騒動に巻き込まれながら、彼女の故郷を目指して旅をすることになると言う内容だった。

 

(二人っきりで旅か‥‥)

 

あの終末世界をユーリと二人で旅をしていた頃を思い出したチトはその本を借りた。

その他にコーヒーの名前みたいなペンネームの小説家が書いた作品‥「少女終末旅行」 「異世界食堂」 の内容が自分とユーリが旅をしてきたあの世界の内容に似ている事や、異世界食堂の内容‥週に一回とある食堂が地球とは異なる異世界に繋がり、その異世界の住人達が食事をしに来るなど、まさにねこやの状況そのままの内容だった。

 

「一体、この小説家はどこで‥‥」

 

偶然と言えるレベルを超えている内容に驚愕するチト。

まさか、自分の相棒が以前、この小説家にネタを提供していたとは知る由もないチトだった。

 

 

後日、チトが借りたライトノベルがアニメ化していた事を知りユーリと一緒に見てみると、

 

「ねぇ、ちーちゃん」

 

「なんだ?」

 

「この桃のはちみつ漬けってヤツを作って!!」

 

とユーリがアニメの話の中に出てきた桃のはちみつ漬けを作ってくれと頼んできた。

 

「いや、アニメの中の話だけじゃ情報が少なすぎるし、第一材料がない」

 

「がーん」

 

とこの時チトは無理だと言った。

後日、ユーリは桃のはちみつ漬けが諦めきれないのか、ねこやにやって来たけいおん部のメンバーに桃のはちみつ漬けについて何か知っているか尋ねた。

 

「「「「「桃のはちみつ漬け?」」」」」

 

「うん。アニメで見たんだけど、作り方とか知っている?」

 

「うーん‥レモンのはちみつ漬けとかなら聞いた事が有るが桃は‥‥」

 

「ムギ先輩は知っていますか?」

 

「ああ、ムギなら知っていそうだな、金持ちだし、いろんなお菓子を貰っているし」

 

「ムギちゃん、教えて!!」

 

皆の注目が紬に集まる。

 

「うーん‥‥ごめんなさい、私も桃のはちみつ漬けは食べた事が無いわ」

 

「そっか、ムギも知らないか‥‥」

 

「桃のはちみつ漬け‥‥食べてみたかった~」

 

「私もだよ」

 

「まだ、言っているのか?」

 

余程桃のはちみつ漬けが食べたかったのか、情報が無かった事に落胆する唯とユーリ。

そんな二人を呆れた感じで見るチト。

 

「まぁ、私もあれから桃のはちみつ漬けについて調べて、作り方は見つけたけど‥‥」

 

「ホント!?」

 

「ちーちゃん、作って!!」

 

「でも、材料がない。それに桃の季節は過ぎているからどの道作れない」

 

「「えぇぇぇぇ~」」

 

材料が手に入らないので、チトはどの道無理だと言う。

 

「それなら任せて、私が何とかするから」

 

と紬が材料を用意すると言う。

 

「まぁ、それなら‥‥」

 

と、チトが紬に桃のはちみつ漬けに必要な材料を伝える。

材料は紬が用意してくれるので、あとはその材料が来るのを待って作るだけだ。

ただ、はちみつとはいえ、漬物なので、

 

「出来上がるまで少し時間がかかるけど、それでもいい?」

 

「うーん、まぁ仕方ないか」

 

「桃のはちみつ漬けまでの道のりは遠い~」

 

後日、紬が手配した桃のはちみつ漬けに必要な材料がねこやに届いたのだが‥‥

 

「ぬー‥‥」

 

「おぉぉぉー」

 

チトは精々、自分らとけいおん部のメンバーの量ぐらいかと思ったら、箱で送って来た。

 

「紬‥一体、何人分用意させるつもりだったんだ?金持ちは加減を知らないのか?」

 

「まぁ、沢山食べられるからいいじゃない」

 

「お前ってヤツは‥‥これだけの量なんだ。お前も手伝えよ」

 

「OK」

 

こうしてチトとユーリはこの大量の桃に挑んだ。

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