少女異世界旅行   作:破壊神クルル

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少女異世界旅行 ユーリの助っ人活動

~ユーリside~

 

ちーちゃんと一緒にこの二ホンと呼ばれる別の世界に来てから何日かが経った。

この世界には本当にいろんなモノがある。

人も一杯、人以外の生き物も一杯、そして食べ物も一杯ある。

クリスマスという日に食べたケーキとチキン‥‥

年越しと呼ばれる日に食べたソバ。

そして、お正月に食べたお餅‥‥あれは、手触りがモチモチしていて色もヌコと同じ真っ白な色だった。

食べ方もたくさんあったけど、どれも美味しかった。

もしや、ヌコも食べたらあんな味だったのではないだろうか?

ちーちゃんは火薬とオイルの味しかしないだろうなんて言っていたけど‥‥

あっ、火薬と言えばライスを使った料理で『カヤクゴハン』と言うものがあった。

初めて名前を聞いたとき、ちーちゃんは「本当に火薬を食べるのか!?」と驚いていた。

私も驚いた。

でも、カヤクと言っても私達の知る火薬ではなかったことで、ちーちゃんは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。

勿論、そのカヤクゴハンも美味しかった。

 

そして、モノが溢れていると言っても魚が居た所に居たあのデカいヤツや魚を飼っていた小さいヤツ、ヌコみたいな生き物はいなかった。

あのビームやロケットを出す人型の凄いヤツも‥‥

でも、食べ物が沢山あるので、私としてはそれでいい。

しかも毎日、お風呂が入れる。

本当にあの世界とは大違いだ‥‥

食べ物を求め、寒い世界をちーちゃんと一緒に彷徨い、ただひたすら上を目指す‥‥

あの世界では毎日やる事がなかった。

あの日、ちーちゃんと一緒にねこやに来た時、ちーちゃんが言っていた事が間違いでない事にも気づいていた。

確かにちーちゃんよりも頭の悪い私でも自分達が置かれていた状況は分かっていた。

上に行っても人が居るのか?

そこに食べ物があるのか?

ちーちゃんが抱いていた疑問は私にも分かっていた。

私だって薄々そう思っていたから‥‥

でも、上を目指している時‥‥私達を乗せていたあの乗り物(ケッテンクラート)が壊れた時、それを口にするのが怖かった。

上に行く‥‥その目標があったから私達はひたすら歩けた。

でも、それを否定してしまったら、私達は目標を無くしてしまう。

だから私はそれを口にすることなく、ちーちゃんと自分自身が壊れないように明るく振る舞ってきた。

だけど、寝る時や暗い所に行く時はちーちゃんには言わなかっただけど、怖かった‥‥

あの時、穴に入ってみようと言ったのは、いつまでも暗い所を怖がっていちゃダメだと思い、暗い所に慣れようとして、ちーちゃんと一緒に入った。

でも、やっぱり怖かった。

だからあの時、私は怖さを誤魔化す為に「くらーい」を連呼してしたけど、ちーちゃんからは「うるせぇ」と言われてしまった。

次にランタンつけていいかと聞くと、それも燃料節約の為、ダメ出しをくらった。

仕方がないので、私は寝ることで、この暗闇から逃れることにした。

あの時はまだあの乗り物(ケッテンクラート)があったし、運転はちーちゃんがやっていたから安心して眠れた。

ただ、その後殴られて強制的に起こされたけどね‥‥

でも、あの後で飲んだスープは美味しかった。

勿論この世界のスープも美味しいけど‥‥

 

そして雪解けの季節‥私はある運命的出会いをした。

雪解け水の中に一匹の生き物を見つけた。

と言ってもソイツは死んでいたけどね‥‥

ちーちゃんが言うにはソイツは魚と言う生き物だった。

その時は火で焼いて食べたけど、ソイツの味はこれまで食べてきたレーションとは全然違う味だった。

焼いた事でパリパリとした表面とふんわりとした肉質‥‥

あの時は、こんなにも美味い生き物がこの世界に居たのかと感じた。

ちーちゃんと一緒に食べたのであっという間になくなってしまったけど‥‥

魚の味が忘れられない中、もう地球には人間以外の生き物が居ないと思って居た時、水槽の中で生きた魚が居た。

生きた魚を見た時、あの時食べた魚の味を思い出して食べたかったが、結局食べる事は出来なかった。

あの時、私は水槽の中の魚と小さいヤツを助ける為、デカいヤツを殺した。

以前、武器が沢山捨てられていた所で見つけた飛行機の中でちーちゃんと戦争について話した。

その後でレーションを巡って私とちーちゃんで戦争をした。

結果は、レーションは私がもらったけど、その後でちーちゃんにボコボコにされた。

あの時と同じように生き残る為‥魚と小さい奴を助ける為にはデカいヤツを殺さなければならなかった。

その後、缶詰だけど、魚を食べる機会が増えた。

魚の缶詰があったり、カナザワやイシイと出会ったことで上に行けば人や食べ物があるかもしれないと言う希望はこの時にはまだあった。

でも、ヌコの話を聞いてその希望が少し薄れた。

そして、私達を乗せていたあの乗り物(ケッテンクラート)が壊れた時、ちーちゃんは声を上げて泣いた。

あんな姿のちーちゃんは初めて見た。

イシイと会った時は、近くに修理できる部品やイシイが居たから直ったけど、あの時は近くにあったのは雪と石と使えそうにない鉄屑‥‥

人も私とちーちゃんしかいなかった。

あの乗り物(ケッテンクラート)について全然分からなかった私にはただ見ているだけしか出来なかった。

何かできる事はないかと思いちーちゃんのやる気を出そうと思って歌と言うヤツを歌ったが、ちーちゃんから、

 

「歌ってんじゃねぇ!!」

 

と怒られスパナを投げつけられた。

それ以外に何かできる事はないかと思って近くのガラクタから明かりを持って来た。

でも、あの乗り物(ケッテンクラート)は直らなかった。

ちーちゃんは寿命だと言った。

寿命‥つまり、あの乗り物(ケッテンクラート)も死んだと言う事だった。

それから私達は歩いて上を目指した。

持てるモノは必要最低限のモノと言って上を目指す途中、私は今まで一緒に旅を共にしてきた銃を捨てた。

ちーちゃんだって、大切なモノ‥あの乗り物(ケッテンクラート)を無くしたんだ‥‥

私だって‥‥

その場に置いていたらつい拾いたくなる。

だから私はあの銃を投げ捨てた。

拾いに戻りたくならないように‥‥

ちーちゃんはその後も大事な本や日記を火の中に入れて私とちーちゃん自身を生き長らえるようにした。

日記や本を火の中に入れているちーちゃんはなんだか自分の身体の一部を切り捨てているように見えた。

そんな日を続けていき、ちーちゃんの本や日記はどんどん減り、ついでに食べ物も減っていき、日が経つにつれ口に出来る食べ物の量も減っていった。

ちーちゃんは口数が減り、私自身も減った。

あまり体力を使わず、空腹を抑える為だと本能が無意識の内にそうさせた。

そんな中、螺旋階段のある建物の中であのお月様のようなものを見つけた。

びうを初めて飲んだ時に、ちーちゃんと一緒に見たお月様はとても綺麗だった。

あの時は、一緒にお月様へ行こうと言ったり、びうで性格がかわったちーちゃんが意外にも可愛かった。

この金色で丸い金属を見ているとあの日を思い出す。

ちーちゃんが言うには昔の人はこれで食べ物や生活に必要な物を交換していたらしい。

でも、今ではゴミ同然だと言う。

それでも、私はこのお月様の様な金属を捨てたくはなかった。

あの日の楽しい思い出を忘れたくはなかったから‥‥

そして、一緒に寝た時、私はちーちゃんに暗い所が苦手だと言う事実を話した。

ちーちゃんは私が暗い所が苦手だと言う事を初めて聞いたと言う。

あれ?ちーちゃんに話していなかったっけ?

その日はちーちゃんと手を繋いで眠った。

こうして手を繋いでいれば互いに生きている事が分かる気がしたからだ。

 

そのからどのぐらい寝たのか分からなかったけど、何処からかいい匂いがしてきた。

ちーちゃんを起こして、ランタンの明かりを点けると、寝る前には無かった扉がそこにあった。

近づいてみるとそこからいい匂いがする。

もしかしてこの扉の向こう側には食べ物があるのかもしれない。

でも、ちーちゃんは何だか怖がっている様子だ。

それでも、私達にはもう、食べ物がない‥‥ちーちゃんの言う通り、危険があるかもしれないけど、このまま何もしなければ、何も食べられない。

何もしないで死ぬよりは何かをして死ぬ。

そっちの方がマシだった。

思えば、この決断が私達の未来を変える最初の分岐点だったのかもしれない。

扉を開けると其処は料理屋さんだった。

其処には、カナザワと同じ男の人、頭に角を着けた人、耳の長い人が居た。

ヌコはもう、この下層には私達以外の人は居ないと言っていたけど、こうして私達の目の前に人が居る事にちょっと驚いた。

そして、昨日拾った金貨で食べ物を交換できるって事で私とちーちゃんはそこで今まで食べた事の無い料理を食べた。

生の魚の料理を食べる事も出来た。

レーションも美味しいけど、やっぱり魚が一番美味しいと思う。

びうは飲めなかったけど、びうと違ったシュワシュワする水も飲んだ。

以前、飛行機の中で見つけて、ちーちゃんとの戦争の上で勝ち取ったチョコレートを使ったデザートも食べた。

久しぶりにお腹一杯食べる事が出来た気がする。

御飯が終わり、ちーちゃんに戻ろうと言うと、ちーちゃんの様子が変だった。

ちーちゃんは『帰りたくない』と言う。

怒っているのか悲しんでいるのか分からない顔で私を見てきた。

これまで、ちーちゃんが怒った事やあの乗り物(ケッテンクラート)が壊れて大泣きした所は見たことがあるけど、こんなちーちゃんは初めて見た。

帰りたくないと言っても私達にはそれ以外の選択肢はないじゃないか。

私自身も帰りたくはない。

でも、それ以外どこに行けばいいのか?

ちーちゃんとそんなやり取りをしていると、料理屋の人が此処に住まないか?と言って、ちーちゃんは即決した。

私はあの世界の上がどうなっているのかちょっと気にはなったが、一人であの世界に戻りたくはないので、ちーちゃんと同じく、この世界に残る事を決めた。

そして、このお店でアレッタやクロのようにお店の人としてちーちゃんと一緒に働いている。

お店で働き始めた頃、ちーちゃんが私に、

 

「いいか、ユー。絶対にお客さんに出す料理を食べるなよ」

 

と、言ってきた。

失礼だな。

流石に私だってそこまで食い意地は張っていない。

私がそう言うと、ちーちゃんは‥‥

 

「お前は最後の一本のレーションを横からかっさらっただろう。それに水槽の魚をしつこく狙っていたし、ヌコだって初めは焼いて食おうとしたじゃないか」

 

と、言ってきた。

ちーちゃんって結構根に持つ性格だった。

でも、魚やヌコに関しては折角の食べ物があったのだから、食べないと損じゃないかと思っていた。

二ホンに住んでから食べ物に困らなくなってからはそんな事はしないのになぁ‥‥

食べ物よりも私はこの世界の文字を覚えるのに苦労した。

あの世界の文字さえもまともに覚えていないのだから、覚えられるのかという不安はあった。

でも、このお店のメニューを見ている内に自然と覚えてきた。

そして、この世界には音楽が溢れている。

人が居るから当然なのだろうけど、色んな国、色んな楽器、そして、沢山の人が歌う音楽は私には新鮮でたまらなかった。

自分もこんな歌を歌いたいと思う一心からお店のメニュー同様、歌詞と呼ばれる歌の文字の羅列も自然に頭の中に入ってきた。

そして、楽譜‥‥楽器で音楽を奏でる時に必要な記号‥‥

始めは何かの暗号か?と思う程、分からなかったが、今ではある程度は読める。

お店にあるピアノと呼ばれる楽器を弾きながら、歌を歌うと、テンチョーやアレッタは褒めてくれる。

その他にもハーモニカと呼ばれる楽器も最近やり始めた。

お店に来るあの鳥の様な人も一緒に歌おうとすると、何故かクロに取り押さえられている。

あの人(?)らも歌を歌いたいように見えるのに何故、歌えないのか不思議に思った。

ある日、テンチョーがテンチョーの友達と魚釣りに行くと言うので、私もついていった。

ちーちゃんは料理の研究をしたいので、残ると言った。

魚を釣る場所‥海と言う場所へ初めて来た私の海の印象は、物凄く大きな水溜まりだった。

こんなに広い水溜まりは初めて見た。

でも、なんか変な臭いも漂っていた。

テンチョーが言うにはこの臭いは潮の匂いらしい。

調味料で使うあの塩は海から取れるモノらしい。

海へ釣りに行くには船と言う乗り物に乗って海の上を走るらしい。

テンチョーが、

 

「揺れるけど大丈夫か?」

 

と、聞いてきた。

この世界に来る前はちーちゃんが運転するあの乗り物(ケッテンクラート)に乗って移動・生活をしていたので、揺れる事には慣れていたので平気だった。

釣り針と言う針の先にエサをつけ、それを海に垂らし、魚が食いつくのを待つのだと言う。

あまり、待つのは好きじゃないんだけどな‥‥

そう思っていたけど、釣り糸を海へ放り投げたら、意外と魚は直ぐに食いついてきた。

その後も面白い程に魚が釣れた。

釣れた魚をテンチョーの友達のお店で捌いて料理する。

魚は煮ても焼いても美味しい食べ物だったが、テンチョーのお店‥ねこやで初めて食べた生の魚の料理‥カルパッチョ。

あれは衝撃的な味だった。

昔は生で食べていた魚をこうして生で食べられたのだから‥‥

その後も刺身と呼ばれるただ、魚を切っただけのシンプルな料理を食べた時はまさに命の味がした。

そんな刺身を今回は白いライスの上にのせて食べる、『カイセン丼』と呼ばれる方法で食べた。

大きなお茶碗‥丼に盛られる刺身にキラキラと赤く光るイクラと言われる魚の卵‥‥カイセン丼‥それはまるで食べ物というよりも丼に盛られた宝石の様だった。

味は勿論‥‥滅茶苦茶うまかった!!

今度はちーちゃんも連れて海へ行きたいな。

そして、食べきれなかった魚は持ち帰った。

この世界には食べ物を保存できる冷蔵庫と呼ばれる大きな銀色の箱があるので、其処に入れて様々な料理にして食べることにした。

 

ちーちゃんの待つねこやに戻ると、

厨房からカレーの匂いがした。

 

「おかえり」

 

「ただいま!!」

 

「戻ったぞ」

 

「それで、成果はどうだった?」

 

「いや~もう、大漁大漁」

 

「そう‥‥あっ、今日の夕食はカレーでいいかな?昼間に作ったんだ」

 

「うんいいよ」

 

ちーちゃんは昼間にカレーを作ったみたいだ。

夕食前に今日釣ってきた魚を冷蔵庫に入れる為、ちーちゃんはテンチョーに教えられながら包丁で切っている。

この世界に来てちーちゃんは変わった。

あの世界では本しか興味がなかったちーちゃんがこうして料理をしているのだから‥‥

テンチョーの言う、この世界で新しくやりたい事がちーちゃんにとって料理なのだろう。

ちーちゃんはこの世界で新しくやりたい事を見つけた。

私にはやりたい事が見つかるのかな?

夕食にちーちゃんが作ったカレーを食べ、お風呂に入りながら私はこの世界に来てなにかやりたい事が見つかったのかと自分に尋ねる。

お風呂から出た後、日記を書いているちーちゃんを見つつ、私は未だにお風呂で思った自分への質問に答えが出ないまま布団の中に入り、目を閉じた。

 

 

ねこやがお休みのある日、ちーちゃんは図書館に出かけた。

新しく料理に興味があるちーちゃんもやはり本だけは未だに興味の対象みたいだ。

私は以前、テンチョーと一緒に買い物に行ったショッピングモールへと出かけた。

此処にはCDと言う音楽を聴ける丸いヤツが沢山売っているお店がある。

音楽を聴いていると不思議に元気になったりする。

楽器を弾いたり、歌を歌っていると、何だか気持ち良くなる。

それはまるで月の光を浴びている時のように‥‥

お店の壁に『スクールアイドル』と呼ばれるアイドル達の絵が沢山あった。

テレビでもよくスクールアイドルの事を話しているのを聞いた事が有る。

学生と呼ばれる勉強をしながら、歌ったり踊ったりしている人達だ。

勉強をしながら、歌ったり踊ったりなんて大変だと思う。

その中で、石鹸と同じ名前の人達の中に居る小泉花陽‥あの子はなんだか私と声が似ている。

最初は私も気が付かなかったが、テレビでμ'sの人達が歌っている時、ちーちゃんが、

 

「この子(小泉花陽)の声、なんかユーの声に似ていない?」

 

と言ってきた。

最初私は、

 

「まさか、そんな事ある訳ないじゃん」

 

と言って信じなかったが、その子の声を意識して聞いてみると、確かにちーちゃんの言う通り、この子(小泉花陽)の声は私に似ていた。

今度機会があれば、会いに行きたいな。

そう思いつつ私は発売したばかりの音楽を視聴する為、視聴用のCDプレイヤーのヘッドホンを耳に着けた。

 

 

~とある高校のけいおん部に所属する女子高生達side~

 

今日、このショッピングモールで行われる音楽イベントの為にやって来たけいおん部に所属する女子部員達。

しかし‥‥

 

「唯の奴、おっせぇなぁ~」

 

「まぁ、唯先輩の遅刻は何時もの事ですから」

 

「まったく、アイツは成長と言う事を知らないのか?」

 

どうやらメンバーの一人が遅刻をしている様で、他のメンバーは愚痴りながら遅刻しているメンバーを待っている。

すると、

 

「みんなー!!」

 

遅刻しているメンバーがやって来た様だ。

 

「来た‥おせぇぞ!!唯!!」

 

「ごめん、ごめん」

 

唯と呼ばれたギターケースを背負った栗毛色の少女が後頭部を掻きながら、他のメンバーに謝る。

 

「これでみんな揃ったか?」

 

黒い髪をストレートにした子がメンバー全員揃ったかを確認する。

すると、

 

「あれ?ムギ先輩もいませんよ」

 

黒髪でツインテールの子が唯の他にまだもう一人、メンバーが来ていない事を指摘する。

 

「そう言えばそうだな‥‥どうしたんだ?ムギの奴。道にでも迷っているのかな?」

 

頭にカチューシャをつけ、おでこが特徴的な子がポケットから携帯を取り出し、唯の他にまだ来ていないメンバーと連絡を取ろうとする。

そして、携帯にメールが着ている事に気づき、早速メールボックスを開く。

 

「おっ、ムギからメールが着ていた」

 

メールはまだ来ていないメンバーからのメールだった。

おでこが特徴的な子がメールを開くと、

 

「っ!?」

 

彼女はメールを見て、顔を青くする。

 

「ん?どうした?律」

 

「メール、ムギ先輩からなんですよね?」

 

「ムギちゃん、なんて言ってきたの?」

 

「‥‥」

 

おでこが特徴的な子が無言のまま他のメンバーに分かる様に携帯の画面を皆に見せる。

 

「「「っ!?」」」

 

すると、他のメンバーも携帯の画面を見て思わず目を見開く。

そこには、今日高熱を出してしまった為、音楽イベントに行けない旨を書いた内容のメール文章があった。

ドラムやキーボードは既に会場に搬入されているが、肝心の弾く人が来れない。

 

待合わせ場所をこのショッピングモールの現地にした事、

ムギと呼ばれるメンバーが電話ではなくメールで突然の体調不良を知らせた事、

そして、他のメンバーが今の今まで誰も携帯をチェックしなかった事、

この奇跡の様な不運が重なって今の状況となった。

 

「ムギちゃんが熱!?」

 

「ど、どうします!?」

 

「この後のイベントはどうするんだ!?キーボードのムギ無しで出来るのか!?」

 

突然メンバーが欠けた事で動揺が広がる。

 

「誰かキーボードが出来る奴に心当たりは無いか?」

 

おでこが特徴的な子‥律が他にメンバーの知り合いでキーボードが出来る奴がいないかを問う。

 

「そうだ、唯、憂ちゃんを急いで呼んで、キーボードをやってもらおう」

 

黒髪ストレートの子が唯にキーボードが出来そうな人物‥憂を呼んでくれと言う。

しかし、

 

「それが、今日は憂、中学時代の友達と映画に行っていて‥‥」

 

どうやら、その憂と言う子は出かけており、今から此処へ来る事が出来ない様だ。

 

「それなら、さわちゃん先生はどうですか?一応、音楽の先生でピアノが弾けましたし‥‥」

 

黒髪ツインテールの子が新たに提案するが、

 

「さわちゃん、確か今日は休日出勤で、学校で仕事をしている筈だよ。昨日、愚痴っていたし‥‥」

 

唯はそのさわちゃん先生も今日は仕事あり、その先生も今日は此処には来れない事を教える。

 

「くっ、さわちゃん、肝心な時に使えねぇ‥‥」

 

律はさりげなく、そのさわちゃん先生とやらに毒を吐く。

 

「どうする?今から運営さんに言ってキャンセルするか?」

 

黒髪ストレートの子が今日のイベントをキャンセルするかと提案するが、

 

「いや、ドタキャンなんてしたら放課後ティータイムの名が廃るぜ」

 

律はドタキャン何てしたくは無いと言う。

 

「じゃあ、どうするんだ?」

 

「こうなりゃ、キーボードが出来そうな奴を今ここで探す!!」

 

「「「えええーっ!!」」」

 

律の提案に思わず声を上げる他のメンバー。

 

「それで、見つからなかったらどうするんだよ!?律!!」

 

「その時はその時だ!!兎に角、探すぞ!!」

 

そう言ってけいおん部の子らはキーボードが出来そうな人を探しにショッピングモール内を散策し始めた。

 

 

~ユーリside~

 

幾つかのCDを視聴し、気に入ったCDを買った後、私は次に楽器店へと入った。

今はピアノとハーモニカだけど、いずれは色んな楽器を弾いてみたいな。

テレビで見たけど、ギターは何かカッコイイし、ヴァイオリンは何となくだが弾いている人のフォルムが綺麗だ。

そんな私の目の前にある楽器が置いてあった。

おっ、これは‥‥エレクトーンってヤツだ‥‥

一見ピアノっぽい形だけど、設定次第では色んな楽器の音を出せるらしい。

 

「すみませーん」

 

「はい?」

 

「このエレクトーン、試し弾きしてもいいですか?」

 

「いいですよ」

 

お店の人の許可をもらったので、早速エレクトーンを弾いてみる。

ピアノと同じようでやっぱり違う。

でも、鍵盤のある楽器には変わらないので、違和感なく弾ける。

エレクトーンを弾いていると、

 

「なんだ?ムギ、やっぱりきていたんじゃないか」

 

「ムギちゃーん!!」

 

と声をかけられて肩を叩かれる。

振り向くとそこには見知らぬ人らが居て、私の顔を見てなんか固まっていた。

そもそも私の名前はユーリであって、ムギではない。

この人達は私と誰かを間違えたのだろうか?

 

 

~とある高校のけいおん部に所属する女子高生達side~

 

ムギの突然の体調不良により、律の提案でこのショッピングモールにいる人の中からキーボードが出来そうな人を探す事になったけいおん部のメンバー。

確かにショッピングモールの中には人が溢れているので、一人くらいキーボードが出来そうな人が居ても可笑しくはないかもしれないが、大勢いる人達一人一人、「あなた、キーボードが出来ますか?」と聞いている時間もない。

本番前にリハーサルはしておかなければならないからだ。

 

「ねぇ、りっちゃん、本当に見つかるのかな?」

 

唯が心配そうな声で律に尋ねる。

 

「こんだけ、人が沢山いるんだ、一人くらいいるだろう」

 

「でも、どうやってその沢山の人の中から見つけるんだ?」

 

「てっとり早く放送でも流してみるか?」

 

「放送?」

 

「そう、飛行機とかよくあるじゃん、『お客様の中でお医者様はいらっしゃいませんか?』って」

 

「そんな放送で見つかるとは思えませんけど‥‥」

 

「じゃあ、梓はなにか方法はないのか?」

 

律は梓と読んだ黒髪ツインテールの子に何かキーボードを弾ける人を見つける方法はあるのかと問う。

 

「うっ、そ、それは‥‥」

 

梓は目を泳がせる。

すると、唯が、

 

「ねぇねぇ、此処に楽器屋さんがあるよ。楽器屋さんならキーボードが出来る人がいるかもしれないよ」

 

ショッピングモールの案内板を指さしながらそう言ってきた。

藁にも縋る思いでけいおん部のメンバーは楽器屋さんへと向かった。

すると、楽器屋さんの中で誰かがエレクトーンを試し弾きしていた。

その後ろ姿は自分達が知っているメンバーの後ろ姿そっくりだった。

 

「なんだ?ムギ、やっぱりきていたんじゃないか」

 

「ムギ先輩、たまに変なドッキリをしますからね」

 

「まったく人騒がせな」

 

「ムギちゃーん!!」

 

けいおん部のメンバーはエレクトーンを引いているムギと思われる人物に声をかけ、唯がその人の肩をトントンと叩く。

しかし、振り返った人の顔を見て、一同は固まった。

エレクトーンを引いていたのは別人だった。

 

(((人違いだった!!)))

 

(外国人か!?)

 

(日本語通じるでしょうか?)

 

(此処はやっぱり英語で謝った方がいいのかな?)

 

けいおん部のメンバーが小声で話していると、

 

「だれ?」

 

唯は思わず声に出した。

 

 

~ユーリside~

 

「だれ?」

 

突然、声をかけられ、いきなり「誰?」と質問された。

私の方こそ、『あんた達こそ誰だよ?』と聞きたかった。

 

「え、えっと‥‥す、すみません。その後ろ姿が友達に似ていたので‥‥」

 

おでこが大きな子が私と友達を間違えた事を言ってきた。

なるほど、人違いか‥‥

 

「ねぇねぇ、それよりもエレクトーン弾くの上手いねぇ」

 

茶髪の子がなんか知らないが絡んできた。

私が言うのもなんだけど、ちょっと馴れ馴れしいな‥‥この子‥‥

 

「ゆ、唯先輩失礼ですよ」

 

黒い髪を二つにしている子が私から茶髪の子を引きはがす。

この子、髪の色や形‥身長から少しちーちゃんに似ているな。

 

「ど、どうも‥色々迷惑をかけました」

 

長い黒髪で‥顔はクロに似ているけど、声はあのエルフのお客さんに似ている子が頭を下げてきた。

 

「大丈夫‥気にしなくてもいいよ」

 

とりあえず何かされたわけではないからそう言っておいた。

すると、この人達が意外そうな顔をする。

どうしたんだろう?

 

「あっ、日本語喋れたんだ」

 

茶髪の子は私がこの国の言葉を話せたことが意外だったようだ。

むっ、失礼だな、いくら私でも喋ることぐらいは出来る。

人違いだったし、もう私には用はないだろうと思って、再びエレクトーンを弾こうとすると、

 

「あ、あの!?」

 

おでこが大きな子がまた私に声をかけてきた。

 

「ん?」

 

「実は私達今、キーボードを弾ける人を探しているんですけど、手伝ってくれませんか?」

 

「えっ?」

 

おでこが大きな子が言うにはこの後、この人達は音楽のイベントに参加する筈だったんだけど、メンバーが一人来れなくなってしまって、キーボードを弾ける人を探していたみたいだ。

そんな時、私とそのメンバーを間違えたみたいだ。

私は最初、断ろうかと思ったんだけど、意外と茶髪の子とおでこが大きな子がしつこかったので、手伝うことにした。

手伝うからには、名前で呼ばないといけないので、名前を教えてもらった。

茶髪の子が唯

おでこが大きな子が律

声がエルフのお客さんに似ている子が澪

ちーちゃんに似ている子が梓 

 

「これが今日演奏する曲の楽譜なんだが、できるか?」

 

澪が楽譜を渡してきたので、早速目を通す。

 

「‥‥大丈夫‥なんとかできる」

 

「そうか‥その‥‥すまなかったな、私達の我儘に巻き込んでしまって‥‥」

 

「まぁ、私も音楽は好きだから構わないよ」

 

「それじゃあ、早速リハ、やろうぜ」

 

本番前の練習をした時、今まで一人で楽器を弾いていた時とは違う何かを私は感じた。

そして、本番‥‥

 

『では、次の発表は桜が丘高校軽音部、放課後ティータイムの皆さんです』

 

司会者の言葉でステージに上がる。

これまで私はねこやでピアノ演奏をしたりしてきたので、今回も何ら変わらないと思っていた。

でも、目の前に居る沢山の人達を見て身体が固まってしまう。

手も小さく震えていた。

 

この時、ユーリは沢山の観客に対して呑まれてしまったのだ。

 

震える私の手を唯が、

 

「大丈夫だよ、ユーリ」

 

「えっ?」

 

「失敗しても私達がカバーするから」

 

「唯の言う通り‥元々は私達が頼んだ事だ。ユーリは音楽を楽しめ」

 

澪が音楽を楽しめと言う。

 

「音楽を‥‥楽しむ?」

 

「音楽と言う字は、音を楽しむと書きます。楽しみましょう」

 

梓も澪と同じように音楽を楽しもうと言う。

 

「では、一曲目!!『ふわふわ時間(タイム)』!!」

 

「ワン、ツー、スリー!!」

 

~♪~♪~♪

 

そして、音楽が始める。

皆でこうして音楽を奏でていると、何だかまだ知り合って間もない皆と一体になった感じがした。

最後の方では私達の演奏を見ている大勢の人とも一体になれた気がした。

私自身も気分が身体の内から燃えるような気分になった。

それはあの時、月の光を浴びた時のような気分だった。

アイドルやスクールアイドルの人達がなんで輝いて見えるのが少し分かった気がした。

 

 

「いやぁ~一時はどうなるかと思ったけど、ユーリが居て安心したぜ~」

 

音楽イベントが終わり、律が私の肩に手を回してきて今日のイベントを乗り切ったことに安堵する。

 

「はぁ~演奏したらお腹すいちゃったぁ~」

 

唯がギターを杖の様にしてしがみついている。

 

「そういえばそうですね」

 

梓も演奏してお腹が空いているみたいだ。

 

(ふむ、それなら‥‥)

 

「ねぇ、律」

 

「ん?なんだ?」

 

「ちょっと携帯貸して」

 

「えっ?」

 

私は律から携帯を借りて、ねこやに電話する。

今日はねこやは休みだけど、テンチョーはお店に居たはずだ。

事情を話すとテンチョーはねこやを開けてくれるという。

そこで、私は律達をねこやに案内した。

 

「凄い!!店一軒貸し切りだ!!」

 

「おぉー今日は飲むぞー!!」

 

「こ、こら、律、唯!!」

 

「やれやれです」

 

律と唯はテンションが物凄く高い。

 

「今日は、ウチのユーリが世話になったな、さっ、遠慮なく、食ってくれ」

 

「は、はぁ~」

 

「恐縮です」

 

テンチョーも私に知り合いが出来て嬉しそうだった。

宴会が進んで行くと、

 

「チトちゃん、ちっちゃくて可愛いねぇ~」

 

予想していた通り、ちーちゃんは唯に絡まれていた。

 

「お、お客さん、困ります」

 

唯達はお客さんなので、あまり強気な態度をとれないちーちゃん。

そんなちーちゃんと唯の姿を複雑そうな顔で見ている梓が居た。

 

「そう言えば、ユーリは鍵盤楽器の他に得意な楽器はあるのか?」

 

澪が私にピアノ以外に得意な楽器があるのかを尋ねてきた。

そこで、私は、

 

「ハーモニカ」

 

と、答えた。

すると、律と澪が私の肩にポンと手を置いて、

 

「ユーリ、無理をする事は無いぞ」

 

「強がるなって」

 

そんな事を言ってきた。

 

「いや、マジなのだが‥‥」

 

「それじゃあ、吹いてみて」

 

そう言って律はポケットからハーモニカを取り出す。

何でポケットにハーモニカが入っているのか?

律もハーモニカが得意なのだろうか?

まぁ、吹いてくれと言われたので私は律からハーモニカを受け取り、吹いてみた。

実際、ピアノの他にお客さんからリクエストがあればハーモニカも吹いているし‥‥

私はスコットランドと呼ばれる海の向こうにある国の歌‥‥『故郷の空』って題名の曲を吹いた。

その他に二ホンの曲で『赤とんぼ』と言う曲を吹いた。

吹き終わると、唯達は唖然としていた。

 

「ほ、本当に吹けたんだな‥‥」

 

「?」

 

私は何故、唯達が唖然としているのか分からなかった。

宴会が終わる頃、

 

「お嬢ちゃん達、今日はありがとうな、またいつでも来てくれ」

 

テンチョーが唯達にまたの来店をと言う。

 

「勿論来ます!!」

 

「うん、此処のメニューどれも美味しかったし!!」

 

「ああ、それと、コレ‥‥今日来れなかった友達に渡してくれ」

 

テンチョーは今日体調不良で休んだムギと言うメンバーの為にお見舞いの品を唯達に手渡した。

 

「いいんですか?」

 

澪が恐る恐る尋ねる。

 

「ああ、今度はその友達と一緒に来てくれ」

 

「はい」

 

「絶対にまた来ます」

 

「それじゃあ」

 

「チトちゃん、またね」

 

「‥‥ぬー」

 

唯達は満足そうな様子で帰って行った。

ただ、ちーちゃんだけは微妙そうな顔をしていた。

 

 

 

 

後日、唯達から受け取ったねこやのお見舞いの品を食べたムギこと、紬はねこやの料理をいたく気に入り、ねこやには琴吹家が経営する牧場から良質の良い最高級クラスの牛乳、チーズ、バター、ヨーグルトなどの乳製品や肉などが納品される事になり、平日の放課後には、放課後ティータイムのメンバーの姿をねこやで見る事が増え、休日、ユーリは彼女らと共に音楽活動をする事が増えた。

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