少女異世界旅行   作:破壊神クルル

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ご注文は異世界少女ですか? 中編

ラビットハウスは、昼間は喫茶店であるが、夜はバーへと変わる。

バーテンダーはチノの父親のタカヒロが務めており、その横にはチノの頭の上に居たティッピーが居る。

 

「それにしても今日来たチトとか言う娘には驚いたわい」

 

「ああ、チノの声に物凄く似ていたな」

 

「うむ、儂もチノとチト‥どちらが話しているのか判断がしにくかったぞ」

 

タカヒロはグラスを磨きながらティッピーと会話をしている。

彼自身も夕食時にチトと対面して彼女が自分の娘とそっくりな事に驚いていた。

ティッピーはチノとチトの声がそっくりな事を言っているが、実はティッピーの声もねこやの常連の一人、ロースカツこと、アルトリウス、そしてチトとユーリがお世話になっていた『おじいさん』と声が似ていた。

 

「まさか、あのチトとか言う子‥‥お前さんが余所の女に産ませた子じゃないだろうな?」

 

ティッピーは、チトはタカヒロが妻以外の女の人‥‥つまり、愛人との間で生まれた子なのではないか?と勘繰る。

 

「俺にそんな甲斐性があると思うか?親父?」

 

「ふむ、そう言われればそうだな」

 

自分の息子の甲斐性からチトがタカヒロと愛人との子でない事をあっさりと納得するティッピーだった。

 

 

 

 

「うっ‥‥うーん‥‥」

 

チトは目を擦り、身体を揺すって目を覚ます。

彼女の朝は大抵早い。

普段は朝食の準備とその日の料理の仕込みの準備の手伝いなどがあるからだ。

この日もその習慣から普段起きている時間に目が覚めた。

ふと、隣を見るとチノがスースーと寝息を立てている。

しかし、もう片方を見ると、其処には何故か昨夜は一緒に寝た筈のココアの姿が無かった。

 

「‥‥」

 

「スピー‥‥」

 

ココアは何故か布団から出て、扉の近くの床で寝ていた。

 

(な、何であんな所で‥‥?)

 

チトは何故、ココアが布団から出て床で寝ているのか不思議に思った。

 

(あの一晩で一体何があったんだろう?)

 

ココアの状態を不思議に思いつつもチトは今日の朝食と厨房の仕込みの為、チノとココアはまだ寝ているので、二人を起こさないようにそっと布団から出た。

布団から出たチトは洗面と着替えをして厨房へと向かう。

エプロンをつけて頭に三角巾をして冷蔵庫の扉を開く。

そこから昨夜に仕込んでおいたコーンポタージュが入った鍋と卵とベーコンの切れ端、そして料理に使う調味料を取り出し、コーンポタージュが入った鍋と黒光りするフライパンをコンロの上に置き、火にかける。

ベーコンの切れ端を手早く薄切りにしたものをフライパンにかけて、炒め物用の油を出させる。

 

(卵は‥‥塩、胡椒にミルクとチーズを少し入れてっと‥‥)

 

ボールに入れた卵を溶きながら、味付けの調味料を入れて卵液を作る。

次にフライパンの上でジュ~と音を立てているベーコンを取り出し、ベーコンの油が乗っているフライパンへと卵液を流し込む。

手早くかき混ぜて空気を含ませ、半生の状態で火を止めて蓋をしめる。

その間に冷蔵庫の野菜室から野菜を取り出し、慣れた手つきで生野菜を小鉢に盛って、ドレッシングを一振りかける。

そんな調子でチトは黙々と朝食の準備を進めていった。

 

 

「‥‥うーん」

 

チトが起きてから次に目を覚ましたのはココアだった。

流石に床で寝ていれば外気と寝苦しさで目も覚めるだろう。

 

「あれ?私なんでこんな所で‥‥」

 

ココア自身も何故、自分が布団から出て床に寝ているのか分からなかった。

 

「あれ?チトちゃんが居ない‥‥」

 

ココアが布団の中を見ると、そこにはチノだけでチトの姿は居なかった。

 

「おトイレかな?‥‥あっ、そうだ!!」

 

ココアは何かを思いついた様で、チノを起こさないようにそっと部屋を出た。

 

「朝ご飯を作って、チトちゃんをびっくりさせちゃおう!!」

 

ココアは朝ご飯を作ってチトをびっくりさせようとしたのだ。

しかし、

 

ジュ~

 

トントントントン‥‥

 

厨房には既にチトがおり、料理を作っていた。

 

「がはぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「っ!?」

 

チトが料理をしていたら、厨房に突如、ココアの絶叫が響いた。

その声を聞いて料理を作っていたチトはビクッと身体を震わせた。

 

「な、何っ!?」

 

「うぐぅ‥‥奪われる‥‥姉としての威厳も‥‥仕事も‥‥プライドも‥‥」

 

ココアは厨房の床にorzの姿勢をとり、がっくりと項垂れる。

 

「ココア‥‥まだ寝ぼけているのか?」

 

ココアの行動にチトは彼女がまだ寝ぼけているのかと思う。

 

 

「そんな事で騒いだのか?」

 

調理しながら、チトはココアが何故、大声をあげたのかその理由を聞いて呆れた。

ココアは朝食用のパンを焼いている。

 

「ご、ゴメン」

 

「まぁ、今はこうして手伝っているから別にいいじゃないか」

 

「うん‥そうだね‥‥」

 

チラッとココアを見て、その後はひたすら手元に集中するチト。

 

「‥‥」

 

ジュ~

 

トントントントン‥‥

 

「‥‥チトちゃん手際がいいね」

 

「まぁ、普段からやっているから」

 

「ふぅ~ん‥‥ねぇ、チトちゃん」

 

「なに?」

 

「チトちゃんはコックさんを目指しているの?」

 

「えっ?」

 

ココアに言われて、チトは自分の将来についてちょっと考えてみた。

料理にこうして興味を持ったのは、元々あの絶望した世界から自分を救ってくれたねこやの店主とその店主が作った料理がきっかけだった。

そもそも今回のラビットハウスのヘルプも自分の料理の腕を上げる為の一環だった。

それなら自分は料理の腕を高めて何をしたいのか?

チトはそこまで考えた事がなかった。

ただ、自分を絶望から救ってくれたねこやの店主のような料理を作れる人になりたい。

そう思いながら、これまで自分は店主から料理を教わってきた。

それが、将来コックになりたいと言う自分の夢なのだろうか?

ココアの一言でチトは将来について考えてみたが、頭を振ってあっさりとその考えを振り切る。

今はそれよりも自分にはやるべき事がある。

将来について考えるのはこの仕事を終えてからだ。

今は集中して料理を作る事だ。

そして、出来上がった朝食を並べて行く。

 

「さあ、完成だ」

 

「わぁー凄い!!」

 

「ココアはチノ達を起こしに行って‥‥その間に配膳をしておくから」

 

「りょーかい!!」

 

ココアは一応、パンを焼いただけであるが、ちゃんと朝食作りに貢献できた事が嬉しかったのか、ルンルン気分で厨房から出てチノ達を起こしに行った。

タカヒロは夜遅かったので、まだ眠って居り、ココアはチノを連れてリビングへと降りてきた。

 

「わぁー!!凄い!!厨房で見たけど、こうして並べてみるとどれも美味しそう!!」

 

ココアはテーブルに配膳された朝食の数々に思わず声をあげる。

 

「ホント‥凄い‥です‥‥」

 

チノもホテルのレストランで出していそうな朝食のメニューに思わず声を漏らす。

 

「あれ?チノのお父さんは?」

 

「父は昨日の夜、遅かったみたいでまだ寝ています」

 

「そうか‥‥それじゃあ、弁当を作っておいて後で食べてもらおう」

 

チトはタカヒロの為、弁当を作っておくと言う。

 

「それじゃあ‥‥」

 

「「「いただきます!!」」」

 

「はむっ‥‥」

 

チトはパンを一口食べる。

パンは柔らかく、かすかに甘い。

口の中一杯に広がる、小麦の香ばしい香り。

 

(ふむ、流石は実家がパン屋であるだけあって、なかなか美味しい‥‥)

 

チトはココアが焼いたパンの味を確かめるかのようにゆっくりと味わう。

朝食を作っている時、ココアが「私の家はパン屋なんだ。だから、パンに関しては自信があるんだよ」と言っていた。

その言葉通り、パンは美味しかった。

一方でココアとチノはチトが作ったベーコンと卵を食べる。

ベーコンは程よく油が抜けしっかりと肉の旨みがする。

塩もしっかり効いており、その肉の旨みがまたパンとよくあう。

そして卵の方は、フライパンで炒める時に使用したベーコンの油をたっぷりと含んでいた。

それだけでも十分美味しいのに、さらに味付けに塩と胡椒、その上さらにミルクとチーズまで入れることでそれらが混ざり合い、優しい味を感じさせた。

 

「このベーコン、すっごく美味しい!!」

 

「卵も絶品です」

 

「あっ、うん‥ありがとう」

 

やはり、こうして自分が作った料理を『おいしい』と言って食べてもらえると嬉しいものである。

朝食が終わり、皆で片づけをしている間にチトは手早くタカヒロの為の弁当を作りそれを冷蔵庫へと入れる。

 

「それじゃあ、チノのお父さんの朝ご飯、冷蔵庫に入れておくから」

 

「分かりました」

 

そして、開店時間前にリゼがラビットハウスにやって来た。

更衣室で着替えをしていると、チトはリゼのロッカー中にホルスターの中に入った銃(モデルガン)があるのを見つけた。

 

「えっ?銃‥‥」

 

「ああ、これか?」

 

「リゼは銃が好きなのか?」

 

「あっ、いや‥私は父が軍人で幼い時に護身術とかいろいろ仕込まれているだけで‥‥で、でも普通の女子高生だから信じろ!」

 

「なんか、こんなやり取り前にあったような気が‥‥」

 

ココアはリゼとチトのやり取りにデジャヴを感じていた。

 

「で、チトは銃に興味があるのか?」

 

「いや、私はあまり得意じゃなくて、私の‥‥友達(?)が、銃が結構上手でね。10発中、8~9発ぐらいは命中させていた」

 

チトはユーリの銃の腕前をリゼに教える。

 

「ほぉ~それはなかなかの腕前だな」

 

「私はどうも銃の反動で倒れてしまうから、弾が当たらないんだよね」

 

「えっ?反動?」

 

リゼはチトの言う銃はてっきり自分と同じモデルガンだと思っていたのだが、モデルガンは撃っても反動はない。

と言う事は‥‥

 

「なぁ、もしかしてチトの言う銃ってモデルガンじゃないのか‥‥?」

 

「えっ?銃にモデルなんてあるのか?」

 

これまでオモチャの銃なんて接した事が無いチトにとって銃に偽物なんてあるのかと疑問に思った。

 

「「「‥‥」」」

 

「チトは何処から来たんだ?」

 

「本物の銃を撃ってもいい所なんて、海外なの?」

 

「‥‥誰も居ない世界」

 

「「「えっ?」」」

 

チトの発言におもわず絶句するココア達。

しかし、

 

「もう、チトちゃんそれ、全然面白くないジョークだね」

 

「なんだ、ジョークか」

 

「変なジョーク言わないでください」

 

ココアはチトの言う誰も居ない世界をギャグだと思っていた。

普通はチトとユーリの二人が、世界が終わった世界から来た異世界人だと分かる筈が無い。

 

「マジなのだが‥‥まぁ、いいか」

 

チトはボソッと呟くが、その呟きはココア達には聞こえなかった。

 

「それで、チトちゃんの友達ってどんな人なの?」

 

ココアはチトにユーリの事を聞いてきた。

 

「ユーについてか?うーん‥‥」

 

「友達ってユーって言うの?」

 

「あっ、いや、名前はユーリってヤツで髪の毛は金髪で‥‥」

 

(((シャロ≪ちゃん≫みたいな子なのかな?)))

 

金髪と言われてココア達が真っ先に思い浮かべたのが、知り合いの貧乏娘だった。

 

「それとかなり食い意地が張っている」

 

チトの言うユーリのイメージがココア達には湧かない。

 

「機会があれば、いずれユーを紹介するよ」

 

ユーリを分かってもらえるには直接ココア達にユーリを会わせる方が手っ取り早い。

 

皆が私服からラビットハウスの制服へ着替えて行く中、チトはリュックの中に入っていた風呂敷包みをジッと見つめる。

 

「あれ?チトちゃん、着替えないの?」

 

「あっ、いや‥‥ちょっと、思う所があって‥‥」

 

チトは風呂敷包みを更衣室のテーブルの上に置き、風呂敷包みを開く。

その中には店主がチトの為に用意した白いコック帽、白いコック服、茶色いサロンエプロン、赤いスカーフが入っていた。

仮とはいえ、この服を纏った瞬間から自分はウェイトレスからコックへと変わる。

そして料理人の腕次第で店の運命が決まると言っても過言ではない。

此処は自分がお世話になっている店では無いとはいえ、ラビットハウスの今後の運命は自分の肩に‥‥自分の料理の腕にかかっているのだ。

自分の提供した料理のせいでこのラビットハウスの評判を落したり、最悪閉店に追い込んだりしてしまうのではないか?

緊張によって、変に追い詰められすぎて、マイナス思考に陥るチト。

 

「大丈夫?チトちゃん」

 

ココアがチトに声をかけるが、チトは小刻みに震えている。

 

「そ、その‥‥私の料理で、お客さんを満足させることが出来るか不安で‥‥」

 

「大丈夫だよ!!チトちゃん!!」

 

「そうですよ。朝ご飯のベーコンも卵もスープもとっても美味しかったですから」

 

チトの料理を食べたココアとチノは大丈夫だと言うが、不安は拭いきれない。

そこへ、

 

「大丈夫だ、チト」

 

リゼがチトの頭に手を乗せる。

 

「お客が多くなったら、私も厨房のヘルプに回る。それにラビットハウスはチト一人だけではないぞ!私やチノ、ココア、皆が居る」

 

「そうだよ!!チトちゃん!!私達は皆で一つのチームなんだから!!」

 

「リゼさんとココアさんの言う通りです。チトさん、一人で悩まないでください」

 

ココア達から励まされてチトも何だか背負っていたプレッシャーが少し軽くなった気がした。

 

「う、うん」

 

チトは着ている私服を脱ぎ、ズボンを履き、白い上着を着て、サロンエプロンを腰に着け、首元に赤いスカーフを巻き、そして最後にコック帽を被り、

 

デェェェェェェェェェェン

 

コックチトが降臨した。

 

「さあ、行くぞ!!今日のお店は戦場だ!!」

 

「「「おおおおおおー!!」」」

 

リゼの掛け声と共にチト達は戦場へと降り立った。

 

 

 

 

~とある輸入雑貨の貿易商side~

 

今日は、仕事がオフだが、この街で大きな祭り‥骨董市があると言うのでやって来た。

木組みの家と石畳の街と言うだけあって、街並みはヨーロッパみたいだ。

此処‥‥本当に日本なのだろうか‥‥?

流石、洋風な街並みなだけあって、出品されている骨董品も海外製のモノが多い‥‥

目の保養になるし、いい勉強にもなる。

おっ?ちょいといい店発見。

見学してみよう。

 

とある輸入雑貨の貿易商は木組みの家と石畳の街の中にある食器屋に入った。

 

おぉぉぉ~

何故だか、ホッとしちゃう雰囲気‥‥

これ全部‥現地に行って仕入れてきているのか?

結構‥本格的じゃないか‥‥

 

 

とある輸入雑貨の貿易商は食器屋の商品を十分堪能した後、店を出て木組みの家と石畳の街を歩く。

 

俺も店を一軒ぐらい開いてみてもいいかと思って参考に見に来たが‥‥

それにやっぱり、俺には店の主は似合わない。

結婚同様、店なんか下手に持つと、守るモノが増えそうで、人生が重たくなる。

男は基本的に身体一つで居たい‥‥

でも、個人で商売をしていると人間関係のわずらわしさは無いが、その分、仕入れから営業、納品まで全てを一人でやらなければならない。

だから毎日、いろんなところに出向く必要がある。

そこら辺がネックなんだよなぁ~

 

とある輸入雑貨の貿易商がそう思いながら木組みの家と石畳の街を歩いていると、一軒の甘味処を発見する。

 

ん?お茶の香り‥‥

‥‥‥

入って見るか‥‥

 

とある輸入雑貨の貿易商は甘兎庵と看板に書かれた甘味処へと入る。

 

たのも~

 

「いらっしゃいませ~」

 

すると、お店の中では長い黒髪に緑の着物、フリルの付いたエプロンを着た女性の店員さんが出迎えた。

 

‥‥ありがたき幸せ

 

 

時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき、つかのま、彼は自分勝手になり、自由になる。

誰にも邪魔されず、気を遣わずものを食べるという孤高の行為。

この行為こそが、現代人に平等に与えられた、最高の癒しと言えるのである。

 

 

店員さんの案内で席に着くとある輸入雑貨の貿易商。

 

ほ~ら、こんな店を見つけちゃった‥‥

今日は、なんか、いい流れかもしれないぞ。

 

「すみません、メニューを‥‥」

 

「はい」

 

店員さんからメニューを受け取り、開いてみると、其処に書かれていたお品書きは、

 

煌めく三宝珠

ユキ腹の赤宝石

海に映る月と星々

花の都三つ子の宝石

黄金の鯱スペシャル

姫君の宝石箱

フローズン・エバーグリーン

 

など、中二病がかった名前のメニューだった。

 

なんじゃこりゃ‥‥

ダメだ、俺の許容範囲を超えている。

よし、此処は正攻法で様子を見よう‥‥

 

「すみません。クリームあんみつを下さい」

 

「はい」

 

無事に注文を終えたとある輸入雑貨の貿易商は、

 

勝った!!

 

心の中で喜びガッツポーズをとった。

そして、お茶を一口啜る。

 

ズズズズズ‥‥

 

ほぉ~‥‥ほうじ茶‥‥ほぉ~

 

ほうじ茶を呑み、リラックスしていると、

 

「お待たせしました」

 

注文したクリームあんみつが届く。

その大きさを見て、とある輸入雑貨の貿易商は、

 

ありゃ~本当にメガだ‥‥

 

「どうぞ」

 

注文したクリームあんみつは丼に果物、寒天、あんこ、クリームがもっさりと盛り付けられ、『あまうさ』と書かれた旗がいくつも刺さっていた。

 

ごめんなさい‥‥

 

【兵どもが夢の跡】‥‥甘兎庵のオリジナルあんみつ。とにかくボリュームがすごい!

 

すごいことするなぁ‥‥

 

丼に盛られたクリームあんみつを見ながら、とある輸入雑貨の貿易商はそのボリュームに驚くが、

 

まぁ、いいか‥‥

 

と、納得して早速注文したクリームあんみつを食べ始める。

 

豆と寒天‥これが美味い甘味処は信用できる。

焼肉屋で言えば、キムチの様な、店の試金石だ。

食べ進むにつれて、具が混じって味が変わる。

それが嬉しくてたまらない。

間違いない。

こんな店こそが、近所にほしい店なんだよ。

あぁ~美味かった。

 

「ごちそうさまでした」

 

甘兎庵のクリームあんみつを堪能したとある輸入雑貨の貿易商は再び木組みの家と石畳の街を散策し始めた。

 

 

とある輸入雑貨の貿易商が木組みの家と石畳の街を散策している頃、ラビットハウスでは‥‥

 

「3番テーブルのふわとろオムレツあがりました!!」

 

「つづいて4番テーブルのBLTもあがったぞ!!」

 

「オーダーです。2番テーブル、ホットケーキのセットを一つ」

 

「りょうかい」

 

「1番テーブルのベーコンエッグ、出来たぞ!!」

 

「はい」

 

厨房は文字通り戦場となっており、チト一人では回らなくなり、リゼがチトのアシストに回った。

フロアにはチノとココアがオーダーをとったり、注文の品をテーブルへと運ぶ。

チノの場合、さらにそこからコーヒーも淹れているので、かなりてんてこ舞いだ。

チトも厨房のコンロと調理台、冷蔵庫を行ったり来たりしている。

 

(緊張していた割にはちゃんとできているじゃないか)

 

リゼは厨房を忙しそうに駆け回るチトの姿を見て、開店前の緊張していた姿はまるで嘘のように見えた。

多少、荒削りな所はあるが、チトはねこやの主人の様にオーダーされた料理を捌いていた。

厨房から出来た料理をフロアのお客が待つテーブルに運んでいたココアが一人のお客さんから呼び止められ、料理について聞かれた。

 

「あっ、すみません」

 

「な、なんでしょう?」

 

「ラビットハウスに誰か新しい人でも入ったの?」

 

「い、いえ‥‥でも、どうしてですか?」

 

「料理の味が少し、違ったから‥‥」

 

「えええーっ!!それってもしかしてお口に合いませんでしたか?」

 

「ううん、とっても美味しいから気になったの」

 

「そ、そうですか、よかった~実は今日だけ、厨房のヘルプさんが来ていてその子が料理を作っているんです」

 

「それじゃあ、その子に伝えて、『美味しかった』って‥‥」

 

「はい」

 

やがて、昼時をすぎると、お客の波もひと段落した。

 

「チトちゃん、お客さん、チトちゃんのお料理『美味しかった』って」

 

「私も厨房の人に伝えてくれって言われました」

 

「よかったね、チトちゃん!!」

 

「う、うん‥‥なんだか‥とっても嬉しい‥‥」

 

沢山の人から自分の料理を褒めてもらい、思わず嬉し涙が出るチトであった。

チト達が引き続き、ラビットハウスで仕事をしている頃、街中を散策していたとある輸入雑貨の貿易商は‥‥

 

街中を歩きまわって‥‥

腹が‥‥

減った‥‥

よし、店を探そう!!

 

とある輸入雑貨の貿易商は自らの胃袋を満足させる為に唸る胃袋を抱えつつ、食事が出来そうな店を探す。

 

腹が物凄い勢いで絞まっていく‥‥

さっさと飯を食えと俺に催促している。

ん?

 

そんな店を探しているとある輸入雑貨の貿易商の目の前にウサギをかたどったレリーフのお店が姿を現す。

 

見た目は喫茶店のようだが、ラビットハウス‥‥ラビット‥‥ウサギ料理でも出す店なのだろうか?

流石にこの洋風の見た目でウサギ鍋というわけはあるまい。

ウサギの肉の料理と言う事は、フランス料理か何かだろうか?

この見事な木組みの家と石畳の街で昼飯を食うなら、そういうのもアリかもしれない。

よしっ、入ってみるか。

 

とある輸入雑貨の貿易商はラビットハウスの扉を開けた。

 

「‥‥いらっしゃいませ」

 

扉をあけたとある輸入雑貨の貿易商を迎えたのは、青髪で小柄な店員の少女だった。

 

随分と小さな店員さんだなぁ‥‥

 

自分を出迎えた店員にそう思いつつ席に座る輸入雑貨の貿易商。

 

「こちらがメニューになります」

 

「どうも」

 

早速メニューを開いてみると、其処にはウサギを使った料理は書かれていなかった。

 

「あれ?ウサギが居ない」

 

(誰かと同じことを言っている気がします。でもこのお客さんの場合、その意味合いが明らかに違う様な気もします)

 

なんだ、ウサギ料理はないのか‥‥

いや、もしそうならばどうしてラビットハウスなどという名前なのだろう?

メニューにもないし、見たところ、店内にはウサギの姿も見当たらないし‥‥

一応聞いてみるか。

 

「あの、すみません」

 

「はい」

 

「ウサギは取り扱ってないんですか?」

 

「ウサギ‥ですか? 一応、この子がうちの看板ウサギですが‥‥」

 

青髪の小柄な店員は自分の頭の上に鎮座している白い毛玉を指さす。

 

「それ、ウサギなんですか?」

 

白い毛玉はどう見てもウサギには見えないが、店員がウサギだと主張しているので、多分、ウサギなのだろう。

 

「はい」

 

「あの、一応聞きますけどそれは‥‥」

 

「非売品です」

 

青髪の小柄な店員はこのウサギは非売品‥つまり売り物ではないと言う。

 

やっぱり食用ってわけじゃないのか‥‥

さて、そうなると何を注文すればいいのやら‥‥

 

ウサギ料理を諦めて、別の料理を注文することにした輸入雑貨の貿易商。

すると、メニューの中にナポリタンがある事を発見する。

 

ナポリタン‥‥

そうだ、こういう所のナポリタンって、案外良いんだよ‥‥ケチャップで真っ赤で‥‥

よし、ナポリタンにしよう。

一件落着だ。

良い所に着地したじゃないか。

 

「すみません」

 

輸入雑貨の貿易商は声と手を上げて、店員を呼ぶ。

 

「はい。ご注文はお決まりですか?」

 

青髪の小柄な店員はトテトテと輸入雑貨の貿易商が座るテーブルへと駆け寄る。

 

「ホットコーヒーを下さい。それとナポリタンを」

 

「はい」

 

注文を終えて、輸入雑貨の貿易商は店内を見渡す。

その間に、青髪の小柄な店員は厨房へと行き、オーダーを伝える。

 

「オーダーです。5番テーブルのお客さん、ナポリタンです」

 

「了解」

 

オーダーを受け、チトは早速ナポリタンを作り始める。

大鍋にパスタを茹でる為の水を入れ、火にかける。

水が沸騰する間、具材を用意する。

玉ねぎ、ピーマンを食べやすい大きさに切り、ウィンナーは斜めに切る。

ナポリタンソースはケチャップ、ウスターソース、塩、胡椒を入れて、隠し味として牛乳と砂糖を入れ、それらをよく混ぜる。

フライパンを中火に熱し、バターとオリーブ油を入れて玉ねぎを炒める。

玉ねぎが透き通ってしんなりしたら、ピーマン、ウィンナーを加えて更に炒め、軽く塩胡椒をふる。

火が通ったら一度取り出す。

そして、具材を炒めたフライパンにナポリタンソースを入れ、混ぜながら中火で煮立てる。

やがて、ソースが泡立ち、色が赤くやや透明になるまでしっかりと煮立てる。

ソースを焦がさないように休まずにかき混ぜる。

そして、具材とソースを一つにし、軽く混ぜ合わせナポリタンソースの完成。

やがて、鍋のお湯が沸騰したら、お湯に塩とオリーブオイルを少し加え、パスタをいれる。

パスタの麺は通常の1.7mmよりも少し太い麺を使用する。

茹で時間も明記されている時間よりも一分、はやく茹でる。

茹で汁も全部は捨てずに少し残しておく。

パスタが茹ったら、ナポリタンソースと麺、茹で汁を入れて手早く混ぜる。

煮詰めたソースを茹で汁でのばしつつ、全体に絡める。

麺に十分、ナポリタンソースが絡んだら、お皿に盛りつけ、

 

「5番テーブル、ナポリタンあがりました」

 

「はい」

 

チトがオーダー品のナポリタンが出来た事を知らせると、チノがそれを運んだ。

 

コーヒー豆のいい香りがする中、輸入雑貨の貿易商が注文をした品を待っていると、

 

「お待たせしました。ご注文のナポリタンです」

 

輸入雑貨の貿易商の目の前に白い皿に盛られた赤々とした山が運ばれて来た。

白い皿に盛られたそれは、鮮やかな色をしていた。

トマトを使ったソースであるケチャップにより、赤みを帯びた橙色に染め上げられた麺に、時折混じる鮮やかな緑色をしたピーマン。

ほのかに歯ごたえを残した玉ねぎ。

斜めにスライスされ、油により、橙色の輝きを放つウィンナー。

 

 

【ナポリタン】‥‥昔ながらのケチャップ味。具も、ピーマン、玉ねぎ、ウィンナー・ソーセージの揃い踏み。

 

「いただきます」

 

ケチャップが織り成す、胃袋を直撃する香りを胃袋に流し込みながら輸入雑貨の貿易商は早速ナポリタンをフォークに絡め、口へと運ぶ。

まずは一口。

 

これこれ、懐かしい味だ。

時々無性に食べたくなるケチャップ味だ。

麺が太い‥‥いいじゃないか‥‥

パスタじゃなくてスパゲッティ‥‥いいぞ、これは‥‥

 

歯ごたえとほのかな苦味を残した、細切りにされたピーマンや、甘みと歯ごたえがある玉ねぎ、ソースと自身の油と肉汁の旨みを持つウィンナー。

それらの具材は量が少ない。

だが、たっぷりの麺にほのかに添える程度の具材というバランス。

それこそが正解なのだ。

具材が多すぎては、麺の味を楽しむのには不適である。

よくよく味わって見れば、それらの具材にはもう一つ、麺に対する味付けという役割がある。

具材は麺と共に口に運ぶときに自身の旨みを麺に分け与える。

それがわずかな味わいの違いとなり、麺に別の風味を与えている。

具材は麺と言う主役を引き立てる脇役かもしれないが、脇役たる役目を十分に果たしている。

麺と言う主役と具材と言う脇役が一体となった舞台料理‥それがナポリタンなのだ。

輸入雑貨の貿易商はある程度の量を食べた後、

 

ちょっと冒険してみるか‥‥

 

輸入雑貨の貿易商はテーブルに置いてあるタバスコに手を伸ばす。

タバスコソースをナポリタンに振り落とし、味付けを変えて、一口。

舌を襲うのは、激烈な辛味。

先ほどまでのナポリタンには無かった味だが、それがアクセントとなって輸入雑貨の貿易商の胃袋を刺激し、その手に持つフォークを突き進める。

輸入雑貨の貿易商はあっという間にナポリタンを食べきり、気がつけば、皿には橙色の残滓を残すのみとなっていた。

食後にホットコーヒーを飲み、一息ついて、

 

「ごちそうさまでした」

 

食事を終え、再び店内を見渡す輸入雑貨の貿易商。

店内は昼を過ぎて、お客さんの波が一段落ついているのか、ウェイトレス同士で会話をしている余裕がある。

 

なんか、自由だよなぁ~

店はどこも、独立国だ。

此処はこういう国(店)なんだなぁ‥‥

心が寒くなったら、そっと尋ねてみよう‥‥

 

「お勘定、お願いします」

 

「はい」

 

とある輸入雑貨の貿易商は満足そうにお勘定を払ってラビットハウスを後にした。

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