「んー、もうちょっと強度欲しいな。才能ねーんじゃないか、綱重」
「ひどっ!?」
「まあ学校守れてんのは及第点与えとくか」
やけに判定が厳しいなあ、イーフェさん。
イーフェさんから力の解放をしてもらい説明を受けたお陰で、どうにか力は使いこなせている。今はまだ集中しながらじゃないと無理だけどな。
学校を守るために形成したバリアの一部にミサイルが着弾、即爆破した。ぽっかりと開いてしまった穴に蓋をするため、オレは指輪に集中を向ける。するとふわりと鉛白色の炎がオレの指輪から溢れだし、そのまま穴付近に流れていき固まっていく。修復完了!
オレが思い出した力は、炎だった。今までちょっと考えていたことがあった。なんで死ぬ気になるとツナは額に炎が灯るんだろうって。実を言うとオレも何回か死ぬ気になったことがあるのだが、額に炎は灯らなかったのだ。だから、気になって仕方がなかった。今なら分かる、オレの炎はそんなところには留まらないんだ。
オレの力は自らの炎を形として形成することができると言うものだ。学校を守っているバリアもこれを用いて作っている。弱点があるとするなら、これは一度形成したものは別の形には成れない。違う形を形成したいなら新しく炎を使う必要がある。もうひとつは見て分かる通り、エラい量の炎を使用する。……要するに今のオレに長期戦は無理だ。
「伸ばせば伸びるだろーが、さっき目覚めたばっかだしな……。喜べ、オレ様が少しだけ誉めてやろう!」
「はいはい」
頭を乱暴に撫でられるが気にしないことにする。オレ、成人してるんだけど……。
「役割終わったんならさっさと帰りなよ、イーフェー」
「酷いぞメイ! オレ様はメイのことを思ってだな」
「変態駄神」
「へ、変態!? 駄神!? 煩いぞ根暗!!」
なんの会話だこれ……。
ムカついたのかメイちゃんが幻覚でイーフェさんに攻撃するが、イーフェさんに触れそうになったところで何かに弾かれるように逸れた。
「神に危害を加えることは何人たりともできない。絶対領域バリア、てな」
「違うよイーフェ! 絶対領域は女の子に使うんだよ!」
「何っ!? ……し、知ってたし。オレ様知ってたし!」
「子供の言い訳か!」
「煩いお前は集中しろ!」
べしっとイーフェさんに頭を叩かれた。何故オレは怒られたのだ。解せぬ。
ま、神様と冥王の会話に気を取られて学校壊すわけにもいかないしな。これで学校にダメージが与えられたらオレが恭弥に怒られる。オレは怒られるのは嫌いなんです。それに恭弥怒らせたら恐ろしいことになるだろうから逆鱗には触れたくない。
幸いなことに、たった今愛しの弟がこの場に到着したようであるし、もう流れ弾を防ぐだけで済みそうだ。炎を使ったのは久しぶりなのにいきなりこんなデカイ物守らされてるんだ、オレはもうくたくたである。今すぐ帰りたいくらいだ。
左腕の裾で額の汗を拭い取ってからツナを見やると、丁度ざっくりとゴーラ・モスカを真っ二つにしたところである。おー、普段と違って随分大胆なことをするもんだ。本気って書いてマジってやつだな!
「――は、」
間抜けにも程があるだろうとツッコみたくなる声が口から零れた。集中が別のところに向いたせいで形成し切れなくなったバリアはそのまま空へと融けていく。オレの後ろに立っていたイーフェさんが忌々しそうに舌打ちをした。
ゴーラ・モスカから出てきたのは、ボンゴレ九代目その人であった。
「……ちょっと待て。これは、何の冗談だ」
「冗談じゃないよ、綱重君! これは現実なんだよー」
「っ、なんでそんないつもと同じように振る舞えるんだよお前!!」
一瞬のうちにオレの肩に移動したらしいメイちゃんがいつもと変わらない口調で告げた。それに苛立ち、思わず大声を上げてから気付く。関係ない、メイちゃんは関係ないじゃないか。当たってどうする。自分の気持ちをその場の感情のままにぶつけてしまったのが申し訳なくなる。
「……ごめん」
「その反応は正しいと思うよ。私が冷たすぎるんだ。九代目は知らない仲じゃないのにね」
ちょっぴり寂しそうに聞こえたその声は、次に聞こえたXANXUSの声に消えていった。
再びふつふつと怒りが腹の底で煮えくり返っているのを感じる。こんなにキレそうになったのはいつぶりだろうか。それでも力を足に込めてどうにか自分を制した。今ここでXANXUSを殴ったって何も変わりゃしないのだ。
勿論、オレはボンゴレに所属しているわけではないし、CEDEF的立ち位置にいるわけでもない。オレの仕事はあくまでマフィアの観察であり、要するにオレの立場だけ見れば他人同然だ。
でもオレという一個人は違う。九代目はオレが小さい頃家族のように接してもらった恩もあり、それなりに親しい関係だ。仕事以外でも時々訪ねに行くくらいには仲がいい。立場を気にしなければ九代目はオレのおじいちゃん的存在なのだ。
だからオレは宇宙の守護者という立場ではなく、沢田綱重としてキレている。
「メイちゃん……、どうしよう。オレ、人殺しに目覚めそう……」
「お、落ち着いて、綱重」
「綱重君、いつからそんなに血の気が多くなっちゃったの?」
「よし、いけ、綱重。オレ様がフォローしてやろう」
「イーフェはさっさと帰りなよー」
メイちゃんに校庭に移動させてもらったオレの周りは結構カオスだった。空気読めよ。……いや、オレを落ち着かせようとしてくれているのか? よし、落ち着け、クールになろう。
深呼吸で気持ちを整えてから、何故か喋り出したXANXUSとチェルベッロの話を聞いて、状況を統合。要するに弔い合戦(まだ死んじゃいない、これ大事)と称して大空戦を執り行うそうだ。なんですそれオレも混ぜてくれませんか、いやむしろ混ぜさせろ。
オレだって無理を言っているのは分かってるさ。たまたま今回リング争奪戦があったから一緒にやっちゃおうぜ的なノリで宇宙戦もやったっていうのは理解している。でも黙って見ているとか、オレちょっとできそうにないんだが。
「綱重君は黙って見てなよー。ちゃんと見届けないと」
「分かってるけどさ……!!」
「なんならまた監禁しようか?」
「それはそれで嫌だ」
「おー、綱重って意外と我儘なのか。オレ様と一緒だな!」
「黙って駄神」
「……酷いぞ、メイ。オレ様ショボーンしちゃうぞ」
眉を八の字にして顔文字のショボーンのように悲しそうにするイーフェさん。メイちゃんはそれをスルーした。イーフェさんはガチ凹みで帰って行った。一応神様なのに扱いが酷い。
結局、オレは参戦できないようだ。必死にチェルベッロと交渉してみたんだけど、取り合ってくれなかった。ショボーンしたいのはオレのほうである。
大空戦は明日の夜、ということになり解散となった。本当にオレ参加できないの、ねえねえ。
「仕方ないわよ、綱重」
「まあ宇宙の守護者は次期ボスを見届けるっていう名目を使えば参加できそうだったけど」
「それだ」
「それだと綱重が一方的にツナマヨ君を支持しちゃうでしょ」
「それにまだこれだけの状況じゃ、私たちはどちらにもつけないよー」
「だああああ、面倒くさい!」
もうちょっとマシなルール作ってくれてもよかったのに初代!
ツナが九代目に怪我をさせたのは事実だし、それを仕組んだのがXANXUSって証拠がないといけないんだよな。……あっ、メイちゃんなら確実に証拠掴んでるんじゃないか!?
「私は今回の件に関わる気がないから、情報なら出さないよ?」
「ちくしょう!」
メイちゃんの意地悪。
ここまできてようやくメイちゃんがオレを監禁した理由が分かった。この光景をオレに見せたくなかったって事か。後から聞かされてもオレはさっきと同じようにキレただろうけど。
それにしても今になって思うように動けないとは……宇宙の守護者ってのが面倒くさいって久々に感じたな。こんな肩書き殴り捨ててやりたいけど、オレの指に嵌まっているリングが取れない以上どうしようもないしな……。
「落ち込まないで、綱重。ツナマヨ君がなんとかしてくれるわよ」
「九代目の治療にはバトラーも派遣したし、問題ないよ」
「そう、か」
「それでも私たちが蚊帳の外同然なのは変わりようのない事実だけどね!」
「なんでオレにそれを再確認させたんだよ、鬼か」
むう、せめてオレもツナの守護者だったらよかったんだけどな。でもオレはどれにもなれないらしいから、やっぱり無理なんだろうけど。変わらない事実を今更ぐだぐだ言ったって仕方ない、か。
「なんなら……そうだね。情報庫、来る?」
「初耳な単語ね。それって何?」
「私たちが収拾したマフィアの情報を集めた倉庫だよー」
「あー、冥界にあるあれか。連れてってもらったことないけど聞いたことある」
「初代から現代までズラリ! トップシークレットまでなんでもござれ!」
「それって絶対盗聴と同等よね」
それは言っちゃいけないんです。
今まではその時必要な情報はメイちゃんに言えば取り出してもらえたし、作成した情報書もメイちゃんに預ければ勝手にしまってくれたから、オレ自身がそこに出向いたことはない。そもそも冥界に連れて行ってもらったのはこの前が初めてだしな。
話によると、情報庫はオレがいた、あの城の地下部分にあるそうだ。
「情報によっては他言厳禁なものもあるから気を付けてね!」
「……でも、なんでこのタイミングなわけ? 綱重の気を紛らわせるため?」
「んー? それもあるけど、XANXUSのことも記録してあるからー」
「XANXUS? あいつの昔のことが、今回のこととなんか関係してるのかよ」
「それは自分の目で確かめて!」
ぽっかりとオレたちの目の前に現れる黒い穴。最近冥界によく出入りしている気がする。
好奇心によるものか、ぱあっと顔を輝かせたリモーネがすぐに穴へと飛び込んでいく。苦笑いしながらオレも足を踏み入れれば、目の前に赤い大きな扉があった。……折角だからオレはこの赤い扉を選ぶぜ! あ、いや、扉はこれしかないな、うん。オレは何を言っているんだ。
リモーネがメイちゃんの了承もなくそのまま扉を開けば、下へ降りるための階段がある。普通階段が手前にあって、その先に扉があるもんじゃないだろうか。これってかなり危ない気がする。
暫く階段を下り続けて、次の扉に辿り着く。今度は木材で作られたような平凡な扉だ。誰かの家に繋がっているんじゃないかと疑いたくなるが、それはリモーネに開かれることにより現れた光景によって打ち消された。
「うわあ……」
そんな感嘆の声を漏らしたのはオレとリモーネ、どっちだっただろうか。
そこには永遠に続いているのではないかと疑いたくなる程、本棚がずらりと並んでいた。
最高にテンションが高い私である。
何故なら! 綱重君の挿絵を描いてもらったのです!
Twitterで呟いたら瑞樹さんというお方に描いていただけました。ハーメルン内で活動中のお方ですよ! まさかあの人に描いていただけるとは……。
【挿絵表示】
瑞樹さん、ありがとうございました!