どうも、はじめまして、オレの名前は
沢田家長男ですけど普通にいろんなところブラブラしてます。……や、ニートじゃないよ?
一応これでも仕事はしてるんです。割とパシリ系多いけどな。
「んっ……くー……。よく寝た」
「おはよう、綱重君!」
上半身を起こして伸びをしているとひょこっとメイちゃんが現れた。
最近ずっと思ってるんだけどメイちゃんってどこで寝てるんだ? オレの部屋じゃないのか?
オレの部屋じゃないってことはあそこしか思い当たらないんだが……。
「おはよう、メイちゃん」
「もー、最悪だよ! バトっちが仕事しろ仕事しろ煩いの!」
「あー、バトラーさんな。仕事サボるメイちゃんが悪い」
「綱重君酷い!」
煩い、やるべきことはちゃんとやるべきだ。
第一メイちゃんはそれなりの地位にいるんだからそんなことばっかりしていたら部下に嫌われるだろうに。
何回か会っているけど本当にバトラーさん可哀想すぎるな。そんなことを思っているとオレの目の前に黒い穴が現れた。
「メイ様! 困りますよ、仕事を放棄されては!」
「煩いなー、今日は大事な日なの!」
「ではなぜ前日に片付けようとなさらないのですか!?」
黒い穴から二メートルほどの背丈のひょろい男が現れた。涙で顔がグショグショである。
そんな男に対してメイちゃんはまったく変わらない様子で応える。こいつひでえ。
灰色に近い水色の髪、真紅の瞳、黄土色の肌、青紫の唇。病院行けと言いたくなるこの容姿の人こそバトラーさんだ。瞳だけはどこか力強く感じるから不思議だ。
バトラーさんはメイちゃんの執事をやっていて、こっちにいることが多いメイちゃんの仕事を時々肩代わりしてくれているそうだ。
雇った当初は容姿もその働きぶりに似合う頼もしい容姿だったらしいけど、メイちゃんの奔放具合が凄まじすぎてこんなことになったらしい。この上司誰か引きずりおろせ。
「バトっちやっておいて。重要な書類だけ私がやるから」
「……もうこの上司やだ……」
更に涙を大量に零したバトラーさんはまだ残っていた黒い穴と共に消えて行った。あの人大丈夫かな……倒れたりすることがあるらしいんだけど。
今度バトラーさんが来たらご飯でも振る舞ってやるかと心に決めた。「嫌々言ってもやってくれるバトっちってMだなー」メイちゃんの発言は聞かなかったことにしておく。
オレは寝間着から普段着に着替えて貴重品などが入った腰に着けるタイプのポーチを持って下に降りた。ご飯を食べたらそのまま外に出る予定だからだ。
下に降りてリビングに入ると母さんの姿が目に入った。ちょうど二人分の食事にラップをかけようとしているところ……って、ん?
「母さん、おはよう」
「おはよう、しーくん!」
「止めてくれよそれは恥ずいから!!」
その呼び名止めてええええ、オレはもう成人してるんだよ!
そりゃ小さい頃は抵抗なかったけどさ……さすがに二十にもなるとそれはちょっとね。
「ところで母さん、そのご飯……」
「しーくんとメイちゃんのよ。起こしに行っても起きなかったから仕舞っちゃおうかと思ってたの」
「起きなかったって……え? 今、何時?」
「九時過ぎよ」
「……マジか」
いつも六時半起きのオレが九時!? オレの身に何があったっていうんだ。
原因があるとしたら昨日の鍛錬か? 昨日は……、メイちゃんに精神集中してみてって言われて三時間放置されたな。リングから炎出てビビった覚えがある。
そう、リング。こいつがいまいちよく分からない。オレが高校卒業した翌日、起きてみたらいつのまにか右の人差し指にはまってたんだよな。そして枕元にメイちゃんがいた。絶叫したわ。
メイちゃんは初対面の人があったら失神すると思うんだ。リボーンは失神しなかったけどツナは失神してたっけ。
「あ、そうだ、ツナは? 今日は日曜日だよな?」
「ツナは補習で学校に行っちゃったのよ」
「補習かあ……」
中学の範囲ならオレが教えてあげてもいいのにな。まあ仕方ないか。
母さんのご飯をメイちゃんと一緒に食べながらこれからの予定を頭の中で構築する。
今日は特に夜鍛錬するくらいでやることはないから……。そうだな、ちょっと掘り出し物とか探しに店ぶらついてみるか。あと今日こそメイちゃんに髪切ってもらおう。
絶対メイちゃんは可愛いはずだから髪切ったほうが良いに決まってる。
「オレ、食べ終わったら出掛けてくる。あと、父さんも今日帰るらしいから」
「あら本当!? じゃあお夕飯楽しみにしててね!」
「うん、楽しみにしとく」
昨日父さんから届いたメールの内容を伝えておく。途端に母さんの目が輝いたのが見えた。ラブラブだな、家の親は。
ルンルンと鼻歌を歌いながら母さんは台所に歩いて行った。今朝のも結構なご馳走だったんだけどな。朝食べるような料理じゃないのもあったぞ。
「行ってきまーす」
オレは台所に食器を片づけて家を出て行った。
なんかいい物が見つかるといいんだけど……、そう簡単に見つかるかな。
――――――――――
突然だけど、最近までメイちゃんは外出時にオレの肩の上なんかに乗って姿を消していた。メイちゃんは幻覚を使うのが得意だから、それくらいは朝飯前だそうだ。有幻覚とやらもできるらしい。
まあ裏の人がいる場では普通にしてたけどな。なんせ裏の世界には最強の赤ん坊って呼ばれている赤ん坊がいるわけだし、姿を隠す必要がない。
この並盛町ではその最強の赤ん坊の一人、リボーンが先に来てたから赤ん坊が歩いてても当たり前になってるらしい。それって絶対当たり前になっちゃいけないことだと思うんだけどな。
そういうわけで、メイちゃんは姿を消さないで普通にオレの肩の上に乗ってます。ちょっと重い。
「でー、どこ行くの? 私地理知らないよ?」
「メイちゃんはやろうと思えばできるだろ」
「うん、まあ、すぐに分かるけど」
「できるのかよ。ま、商店街でも行こうかと……」
ドカン! と気のせいか遠くから爆発音がした気がした。
気のせいじゃないんだろうな、どうせ。面倒くさいなあ……。
というか街中でそんな爆発、普通は有り得ないよな。マフィア関連か。
メイちゃんに目配らせするとにっこりと笑顔で頷かれる。
「間違いなくマフィアだよ。……というか、ヴァリアーのスクアーロだねー」
「嘘だろ……。あぁー、面倒くせえ!」
「綱吉君が襲われてるみたいだよ?」
「待ってろ、ツナ! 今助けに行ってやる!」
「ブラコンめー」
ッハ! ブラコンで何が悪いっていうんだ。
ただ単に可愛い弟を守ろうとしているだけだろうが、それの何が悪い。
「ひいいいっ、なんなのー!?」
「色々破壊されまくりだな……、どうすんだよこれ」
おー、なんか爆発したところに向かって走っていたらツナと遭遇したよ! やったね、オレ!
とりあえずなんとか間に合ったかな。怪我人はいるけど死亡者はいないみたいだし。
「う゛お゛ぉい!! 邪魔すんじゃねぇ!」
「そりゃ無理な相談だな。兄としてこれ以上ツナが傷付くのは見てらんねえ」
さて……この後はどうすればいいかな。
山本と獄寺の二名が気絶、ツナもバジルもボロボロとはさすがスクアーロ。
まあツナも山本も獄寺もこれからの成長に期待ってとこか。才能はありそうだしな。
って、そんなことを考えている場合じゃないんだって。どうやってツナたち避難させようか。
「沢田……。なるほど、聞き覚えがあると思ったらてめえらの身内かぁ!!」
その「ら」にはひょっとして親父も含まれてるんだろうか。含まれてるんだろうな、恐らくは。
とりあえずメイちゃんにはバジルのところへ行ってもらいサポートを頼んでおく。多少の応急手当てくらいならメイちゃんでもできるだろうし。
山本と獄寺は……。タフだからすぐ起きるだろう、うん。
「てめえらもボンゴレリングの件かぁ!?」
「オレとメイちゃんは違うよ、休日」
「にっ、兄さん!? 知り合いなの!?」
「うん、知り合い」
仕事の疲れを癒すために帰ってきたのに、仕事があるなんてな。……絶対メイちゃんこうなること知ってたよね。いっつも大事なことは俺に言わないんだから。
オレを見て戸惑うツナと訝しげな視線を送るスクアーロの両方にオレは笑顔を返した。
メイちゃんの執事……偶然とはいえあれを思い出してしまう。