「子供相手にムキになって恥ずかしくねーのか?」
「ディーノさんまで!?」
この後どうしようかな、と悩んでいるとディーノが部下を連れて登場した。あれ、ディーノが日本に来るなんて話聞いてないな。でもなんかこれもメイちゃんは知ってた気がする……、絶対笑顔だぞ今のあいつ。
まあでもディーノがいればスクアーロも撃退できるな!
「おぉ、綱重。本当に来てたのか」
「おう、帰郷ってやつだな。オレとしてはのんびりしてたかったが」
それにしてもこの状況はいただけないなー。子供たちがボロボロだなー。
ツナもすごいボロボロだなー。よし、絶対許さない決定。ボッコボコにしてやんよ!!
「宇宙に冥王に跳ね馬……、う゛ぉ゛ぉい! すげえやつが揃ってんじゃねえかぁ」
「煩いから少し静かにしろって」
「あっはー、その異名久々に聞いたなー」
「メイちゃんは相変わらず楽観すぎないか?」
「やだなあ、ディーノ君。これが私だよ?」
そうだな、それでこそメイちゃんだな。でももうちょっと焦ろうか?
その後色々とあってスクアーロはハーフボンゴレリングを奪って去って行った。
一発殴れなかったのが残念で仕方がない。今度会ったらあの長髪バッサリ切ってやろう。
ところであのハーフボンゴレリング、なんかおかしいような……。気のせいか?
「というか、宇宙って? 冥王って? え? なんなの?」
「あー、その件についてはこれから説明するよ」
「ツナ君のこれからにも関わってくるだろうしね!」
「え? どういうことメイちゃん……」
「ともかく怪我人を運ぶぞ。話はそれからだ」
ディーノがバジルを担いで歩いていく。廃病院を手配したらしいけど……そんなのあったっけ?
山本と獄寺はリボーンから辛辣な言葉を当てられて、そのままオレたちとは別行動になった。あんな言葉くらいでヘコむ様な二人には見えないしな、相当スクアーロに負けたのが悔しかったか。
でも暗殺部隊のスクアーロに初戦で中学生が勝ったってのは、それはそれで恐ろしい話なんだけどな。
今は勝てなくても構わないだろう、“今は”。
――――――――――
ということで場所は変わって廃病院。中山外科医院っていうらしいけど……、二年前は機能してたかな? 此処には来たことないからまったく覚えてないんだけど。
今ここにいるのはオレ、メイちゃん、リボーン、ツナ、ディーノ、ロマーリオさん他部下の方々。さすがに狭い病室に全員は収まりきらないってことでロマーリオさん以外の部下の方々は外だけどな。
ロマーリオさんによればバジルは命に別状はないらしい。父さんの鍛え方が良かったんだろうとロマーリオさんが褒めていた。さすが父さんだなあ。
「彼、何者なの? それに兄さんたちも……。やっぱりボンゴレのマフィアなの?」
「いいや? バジルもオレもメイちゃんも、ボンゴレではない」
「でもツナくんの味方だってことは確かだよー」
「オレとメイちゃんは大分複雑なとこだけどな……」
まあバジルはちゃんとしたとこに所属しているのと違って、オレとメイちゃんは平等な立場からいろいろ見なきゃいけないしな。どこにも所属しちゃいないし、色々面倒くさいし……。
その面倒くさいのも含めてツナには説明しなくちゃいけないんだよな? うーん、話せば長くなりそうなもんだけども、やっぱり面倒くさいで片づけちゃ駄目だよな。
「ボンゴレリングの前にオレたちの話をしちゃっていい? リボーン」
「構わねーぞ。綱重もそのほうが今後動きやすいだろうしな」
「サンキュー。んー、そうだな。まずオレはマフィアの世界では宇宙の守護者って大層な名前で呼ばれてる」
「……宇宙?」
「そう、宇宙。ちなみにメイちゃんは冥王な」
「私は自分から名乗ったんだけどねー」
メイちゃんはよく名乗ろうとしたよな……。オレなんかまだ今でもそれで名乗ろうとしたらかなり恥ずかしいんだけど。メイちゃんは俺と初めて会った時からその異名を使っていたんだよね。
というかこの宇宙の守護者って割とコネクションが増えるから恐ろしい。勧誘とかされても入りませんから! うちのほうが戦闘力高いとか知りませんからー! ……っは、変な記憶思い出しちまった。
「冥王って……え?」
「そのままの意味だよ、綱吉君。私は冥王なのですっ!」
「……ふざけてるわけじゃ」
「ありませーん」
いやいやいや、ないないない、と言う様にツナがぽかんと口を開けている。
ふざけているように見えるだろ? 事実なんだぜ……。でも最初のリアクションとしてはそれが正しいよな。オレは口開きすぎて顎外れそうになった。ツナは……そうでもないか。
メイちゃんは冥王。なんだか馬鹿げているような話かもしれないけど本当の話だ。彼女には名前がないらしく、しかし名乗る時には必要不可欠なので自らの称号から取り
「驚きすぎだぜ、ツナ。メイちゃんの存在は裏の組織の奴ならみんな知ってる」
「いやん、私ってば有名人!」
「有名人どころじゃねーぞ。メイはもっと昔から存在してるって噂だ」
「え? メイちゃん……おばあさんなの?」
「違うよ綱吉君! 私は永遠の一歳だよっ」
「それはそれでキモイわ」
実のところオレもメイちゃんが何年生きているのか知らない。そこらへんはメイちゃんが今みたいにぼかしちゃって教えてくれないんだ。女子って年齢教えるのが嫌いなんだろうか。
えっとメイちゃんの件で少し話が逸れちゃったけど……、そろそろ戻すか。
「宇宙の守護者の役割は、簡単に言えばマフィアの観察だな。それを資料にまとめてる」
「言わばマフィアの歴史書作りだね! 私たち以外見れないのもあるけどね」
「やっぱりマフィアが絡んでくるのねー!?」
「絡むよー、盛大に絡むよー、絡みまくりだよー」
「メイちゃんはオレの補佐をしてくれてるんだ」
さらりと言ってくれたな……。結構これ大変なんだからな。オレの目は何百もあるわけじゃないからいっぺんに見ることは不可能だし、だからメイちゃんに手伝ってもらわないといけない部分が山ほどある。
オレが分身できたらいいんだけど、残念なことにオレはそんな人間離れしたことはできないのでメイちゃんに頼み続けるしかないわけだ。オレには所謂部下という存在がいないわけでメイちゃんがいろんな情報を拾ってきてくれる。
それを簡単に箇条書き(残念ながらそれほど文章力がないため)にして本に記し、保管しているんだが……。保管場所はメイちゃんの勤め先、という言い方もおかしいが、冥界だ。必要なときにすぐ取り出してくれるメイちゃんの姿はどこぞの青い狸にしか見えない。
「大体こんなとこか?」
「そうだね。それじゃボンゴレリングの話に戻ろうか!」
「正式名称はハーフボンゴレリングって言うんだけどな」
オレたちの話が終わったところでボンゴレリングの歴史をリボーンがばっさりと端折って語った。うわあ、ツナがすごい怯えてるよ……。ところであのリングっていくらくらいの値打ちがあるんだろうな。一回鑑定士に見てもらって明確な値段を提示してもらいたいもんだ。
それほど重要な物を「持っていってくれてよかった」の一言で片せるツナもすごいよ。ツナってある意味大物になれるんじゃないかな……。
「それがなあ、ツナ。ここにあるんだ」
「え゛え゛ー!?」
「あはは」
あれ? 箱の装飾とかもろ資料通りじゃないか? 思わず目が点になる中、病室にツナの驚愕の声が響きメイちゃんの場違いな笑い声が後から耳に入ってきた。
目に見ても明らかな動揺を示したツナは勉強というらしくない理由をつけてさっさと帰宅してしまった。逃げ足速いなー。そんなに嫌なのかな、ボンゴレを継ぐことが。確かに大変だろうけど、ツナだったら大丈夫な気もするんだが。
「バジルは囮だったんだな……」
「父さんにとっては苦渋の決断だろうな」
「家光君、部下想いだもんねー」
「つーかこれ直接ツナに渡せばいいのにな。あの人、オレと一緒に日本来たんだぜ?」
父さん、もう日本にいるんだ。ここにいないってことは、今頃家にいるんだろうか。というか日本に着いたら連絡してって言ったのに。
じゃあツナは二年ぶりの会話を楽しんでいるのかな。……あ、まだ帰ってる途中か。
それにしても父さんもせっかく帰ってきたのが仕事絡みなんて大変だよな。
「あ、ディーノ君。今度パスタ奢ってよ!」
「え゛っ。……メイちゃんってかなり大食いだった記憶があるんだが」
「嫌だな、冗談だよ。あと私大食いじゃないってばー」
「そんじゃオレたち帰るな、ディーノ。今度奢ってくれ」
「……お前らは……」
ディーノが呆れ顔になる。え、いいじゃないか別に。この前奢っ……てないけど、たまにはいいじゃないか!
ところでリボーンも一緒に帰るらしいけどやっぱり普通に歩くのかな。と思ったらリボーンがオレの右肩に乗った。あ、そこなんだ……。どさくさに紛れてメイちゃんが左肩に乗った。それなりに重いから勘弁してくれ。
病院を出て空を見上げるとまだ青い空が見えた。そうか、考えてみたら俺が外に出てからそれほど経ってないんだよな。頭の後ろで手を組もうとして二人が両肩に乗っていることを思いだしてやめた。いろいろと行動制限されるから邪魔だな、二人とも。
「家光から何か聞いてねーのか?」
「オレは全く何も聞かされてないな」
「私もだよー」
「え? メイちゃんは知っててオレを日本に戻したんじゃないの?」
「まあ大体そうだね」
聞かされてないのに知ってるメイちゃんはなんなんだよ。もうメイちゃん一人いれば世界は平和になるんじゃないかな。……面倒くさがりな性格じゃないければ良かったのにな。オレの補佐はしてくれても肝心なところはオレがやらなきゃならないし。メイちゃんには感謝してるけどね。
それにしても今日は大して動いてないはずなのに少し疲れたな。スクアーロの姿を見たからかな。日本に帰ってきてから騒動を直接見たのは骸の件以来だし……。ましてプロを見たのは久しぶりだしな。
……変に理由つけたって駄目か。ちょっと夜に走り込みしてこようかな。
「ん? ……綱重君、綱重君」
「なんだよ、メイちゃん。拾い食いはするなよ」
「さすがの私もそんなことしないよ。それよりも、リング、光ってない?」
「リング? ……ああ、本当だ。なんでだろ」
メイちゃんに言われて右手の人差し指に嵌まっているリングに視線を向けると、確かに仄かではあるがチカチカと光を灯していた。リングが光っているんじゃなくて、リングに埋め込まれている宝石が光っているのが正解なんだけどね。
オレは自分の持ち物であるのにも拘らずこのリングについて知らないことが多い。メイちゃんに何回か聞いたこともあるけど帰ってきた答えは「自分で探してね」ということだった。
そもそもリングの宝石自体がおかしいんだ。宝石辞典を見ても見つからないんだよな。真っ黒に塗りつぶされている変哲もない宝石かと思えば時折小さな白の粒が瞬いていることがある。その瞬間がすごい綺麗なんだけど……今はどうでもいいな。
でもリングが光るなんてこと、これまで一回もなかったんだけどな。
「……ふふ、面白くなってきたねー」
「何がだよ、さっぱり分からねえよ」
「今は教えてあげなーい」
「これだからメイちゃんは……」
一体これから何が起こるっていうんだよ……。
意味深にニマニマと笑うメイちゃんと切実に距離を置きたいと願った瞬間だった。
メイちゃんの名前には意味があったよって話。
以下、簡単な人物紹介。
〇沢田綱重 (20)
宇宙の守護者であり、沢田綱吉の実兄。
ツナのことを心配しつつも、基本は見守ろうと頑張っている。
高校卒業の翌日にメイとエンカウントを果たし、そのまま宇宙の守護者となる。メイに振り回されることが多く苦労が絶えない。
戦闘能力はそこそこであり、まだまだ修行が必要。
ちなみにボンゴレ次期ボスの資格がないため、リング戦においてはほぼ部外者同然の立場である。
〇メイ (?)
自称一歳の冥王。別に面白がって冥王を名乗っているわけではない。
初代の頃から宇宙の守護者を支えていると公言しているが、実際のところそれが事実であるかどうかを確かめる術はない。
尚、本人は最強の赤ん坊たる証であるおしゃぶり(黒色で、中に白っぽい光が瞬いている)を身に着けているが、これは本人が自作したレプリカであり、リボーンたちとの関わりはない。赤ん坊の姿をしている理由は本人曰く「なんとなく」
冥王の能力として今のところ明かされているのは「黒球」と「冥界越え」。
黒球は人物・未来(原作)を見ることができたり、「冥界越え」は冥界とこの世を自由に行き来することができる。
〇バトラー (?)
メイを支える執事。働き者な性格が災いしてメイによる心労が絶えない。
メイと同じように時々宇宙の守護者を手伝う仕事もしているが、ほんの微力である。バトラーが生まれたのは初代の時代が終了してすぐであるらしく、初代については何も知らない。