提督をみつけたら 大惨事創作 八戒のイルカ   作:AAAAAAAAS

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本作は『提督をみつけたら』の三次創作作品ですが、本家のパラレルワールドです。
そのため、設定や世界観について本家とは異なる場合があります。
予め、ご留意ください。


今回、実在する一族がでてきますが誹謗中傷する意図はありません。
あくまで事実をもとにした創作としてお楽しみ下さい。


血は濃くなるものだよ

「君は聞きたくないだろうが、聞いてもらうぞ?

 私の研究の結果と結論を」

「これ以上っ…まだっ!何かあるんですか?」

 

 恨みがましい目つきで富都は彼に噛みつくように吐き捨て、

歯を食いしばる。

 

「学校の歴史で習ってると思うが…

 この世界は一度滅びかけたことがあるらしい。 

 そして、その戦争は半世紀も続いた」

 

 ある怪物の出現によって。

 

「その怪物の名前はわかるね?」

 

 馬鹿にしてる風でもないのだが、自分を苦しめる彼の言葉。

その言葉がすべて腹立たしかった。

 

「深海棲艦ですよっ、馬鹿にするのも大概にっ…」

「そうだ、もうそろそろ一世紀になる、その戦いが済んでからね。

 ちなみに歴史博物館に剥製が残ってる、そうだね?」

 

 そうだ。

世界を滅ぼそうとした化け物の証明として、

それぞれの種類の深海棲艦が全国に散らばっている。

 

「まぁ、君の町の市長たちは『何か都合の悪いこと』があるのか渋っていたが、

 かろうじてそれはある。最も人型はどこにもないが」

 

「いちいち回りくどいんですよっ!!

 結局何がっ!!」

 

「私は順序だって物事を説明してるつもりだよ。

 君がどれだけヤバいことをやろうとしているか、

 その罪を認めさせるためにね」

 

 そのためには面倒だが、この流れを話すしかないのだ。

 

「で、だ。君に聞くが、艦娘は種族として何種類に分けられると思う?」

 

 何種類だって?

この男は馬鹿にしてるのか?

駆逐艦、軽巡、重巡、戦艦、正規空母、軽空母、装甲空母…

知ってるだけでもこれだけある。

 

 少なくとも、7種類以上はあるだろう。

 

「艦種で知ってる範囲なら、7つ位でしょう!?

 それが何だっていうんですか!そんなのが一体っなn」

 

「やっぱり、そこら辺を勘違いしてるんだね、

 周りは。なぁ、君…それは艦種として、だろう?」

 

 私は人種としての意味で数を訊いたんだ。

 

「白色、黒色、黄色人種といった、ね…。

 さて、改めて聞くよ。艦娘の種族は…何人だろうか?」

 

「ぇ…それ、は…」

 

 人間として?そんなの知るわけがない?

艦種はともかく、彼女たちにそう言った括りはあるのか?

あるとしたら…やはり人間と同じなのではないか?

 

 明らかに海外艦もいるのなら、三種類くらいが妥当ではないか?

そして口を開こうとするが…

 

「答えは一種類だよ、人間から生まれたものを含めてね。

 彼女たちは一種類の一つの一族だ」

 

「なっ!?あり得ないでしょう!?

 姉さんたちは人間から生まれたんですよ!そんなのっ!」

 

「まぁ、そういう意味では2種類とも言えなくないが…

 そもそも君はそんな親族的な要素を彼女たちが持ってないからこそ、

 惚れたんではないのか?姉として愛してるわけでもあるまい?」

 

「そっ、それは!」

「それに人間から生まれた艦娘の細胞…

 親の細胞を全くと言っていいほど継いでいないよ。

 そもそも人と構造…いや、質が違う。だから実質一つだ。

 そういう意味では君たちは他人なのだろう」

 

 困惑したものの、だったら何の問題があるというのか?

 

「それで問題はここから、だ。

 不思議に思わなかったか?姉妹艦でもないに、別の姉妹艦に似てる奴、

 艦種が違うのに姉妹のように性格や外観が似てる艦娘もいる」

 

 彼女たちの生まれは謎に包まれているが、

彼女たちは実質、全員が血のつながった姉妹ではないのか?

 

「人間の理と違いすぎる血脈とルーツを持った、ね。

 かなり信憑性の高い結論と思うがね。

 全員に共通する細胞もあった」

 

 

 私はこれをドルフィンゲノムと名付けた。

 

 

 息を整えて溜息を吐き、丈二は富都を見る。

 

「かなり嫌なことを言うが、

 君の両親は出産のとき看護婦や医師に何かされたのではないか?」

 

 例えば、艦娘の元となる細胞を母体に注入された。

 

「そんなことがあるわけっ!!」

「ぶっちゃけ、親に全然似てないよね?人種違うよね?

 どこかの天空の城の人だよね?」

 

 やや焦れたように丈二は言った。

もう、他人の要素強すぎるだろ、と。

独自に彼の過程を調べた結果だ。

 

 どこのラピュタの空族だよ、と。

 

 それに関して富都は何も言えなかた。

引きつった笑みを浮かべるだけだ。

彼の母親がいたら大いに嘆いたことだろう。

 

「失礼、取り乱した。

 話を変えて続けるが、

 艦娘から生まれた艦娘は艦娘や提督を生む率は高い。

 これは納得できるだろう?」

 

 そもそも艦娘は提督としか結ばれないのだから、

提督の才を引き継ぐ子がいるのは当然の帰結だ。

 

「だからその子が兄か弟が提督で妹か姉が艦娘として生まれる率は高いよね?

 これも納得できるはずだ」

 

 丈二は噛みしめるように言う。

確かに理屈はそうなりやすいだろう。これも分かる。

 

「これを君に当て嵌めてみてくれ、そのうえで聞く。

 もし、君たちの息子に適性があり、

 君たちの娘が艦娘として息子に引き寄せられた場合を」

 

 その言葉に絶句した。

自分と由良たちはともかく、自分の子供たちがそうなったとしたら…

それはもう…

 

「畜生道まっしぐらだな、だが、ここまではいい。

 むしろ、違う可能性もある。本題はここからだ」

 

「まだ、何かあるっていうんですか…!」

 

「言ったはずだ。艦娘はそれぞれの血がつながった姉妹の集合体だ、と。

 ともかく、艦娘たちは近親婚を繰り返すしかないのだ」

 

 艦娘の細胞は人間のそれよりはるかに優れている。

彼女たちのスペックを見れば分るだろう?

 

「そして、艦娘から生まれた提督も限りなく艦娘に近い細胞と血、

 それらを持って生まれてくる。

 そうなってしまえば、もう人の姿をしても人の要素がないデザインベイビーだ」

 

 何より、仮定だが…その提督はすべての艦種の提督になれるだろうな。

 

 その言葉の意味する狂気を感じ取り、富都は項垂れてしまった。

その富都を横目で見つつも、追撃するように説明する。

 

 ここからが自分が止める理由なのだから。

 

「ここである一族の話をしよう…実在するファゲイト一族と呼ばれるのだが」

「…ふぁ、げいと…?」

 

 溜息を吐いて丈二は懐からある写真を取り出した。

それを見て富都は固まってしまった。

 

 西洋人系の顔をした男の一人が映っていた。

しかし、その男には強烈な違和感があった。

 

 肌が真っ青だったのだ。

比喩でもなんでもなく青く、青白い肌をしていた。

 

「この一族は近親婚を繰り返していた。その結果だよ。

 だが、君はこの肌を持つものを知ってるはずだ。

 いや、義務教育を受けた者なら…歴史で学んだことがあるなら、知ってるはずだ」

 

 その言葉を意味したとき、富都はボロボロと大粒の涙をこぼした。

自分たちの町にはいなかった剥製のそれ、だが、教科書にはのっていたそれ。

 

 

「深海棲艦…になるっていうのか…よ」

 

 

「只、肌が青くなるだけならいいのだがな…。

 君も知ってるはずだ、提督を思うが余り攻撃的になる一面…

 そして代替えしていくことに、その遺伝子も本能も強まり…」

 

「もう、やめてくれ!!!やめて、ください…!!俺は…」

 

 丈二はあえて言葉をつづける。

 

「かつての戦争はまだ終わっていない、この平和は次の戦いの下準備なのだ」

 

 項垂れる富都を見て強く丈二は言葉を吐き出す。

 

「深海棲艦と艦娘、提督は互いに子孫でもあり先祖でもある存在…

 私はそう、結論付けた」

 

 

 おそらく始まりの艦娘は提督と深海棲艦の間に生まれたのではないか、と

 

 

 その化け物は世界を滅ぼそうとしたのではなく、

提督という存在を求めたのではないか、と。

 

 

 今の、艦娘たちと同じように、な

 

 

 

 

 

 

 だから、私は提督適正を…提督という概念を消すことにした。

 

「私はこう思う、かつての戦争が始まる前は…

 艦娘法が今と同じようにあった。

 しかし、その結果、海の化け物を作り上げた」

 

 そして倒し、私たちはまた生み出そうとしている。

 

「この世界はこれを繰り返してるんじゃないだろうか、と」

 

 

 そして、あの人は戦争が終わってもたった一人で戦っていたのだ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 20年前 彼の住んでいた町にて。

 

 彼の父親を難なく締め上げて、

警察に突き出した後、五十鈴はなし崩し的に彼と住むことになった。

預金だけは潤沢にあり、彼の家にタンスやテーブルといった調度品を提供した。

 

 そして伝手を使い学校に通わせ、

大きな声で言えない伝手では人間の戸籍を取得した。

行政を脅したともいえる。

 

 そんな彼女との生活も三か月が過ぎていた。

 

 

 五十鈴は幼い彼に組み手を行っていた。

家の近くにある公園で、だ。

 

 

 彼の出したひじ打ちを掌底で弾く。

まだ幼く小さい彼は吹っ飛ぶが、

その勢いを利用して距離を空けて構える。

 

 右手を突き出し左手を腰だめに添え、膝をわずかに曲げて状態を斜めにする。

 

「前よりは機敏で隙はないわね、ふふっ、上等よ」

 

 くすりと五十鈴は微笑む。

隙だらけに見えるが実質全くスキはなく、

隙だとしてもそれを突く技量がない彼は攻めることができない。

 

(う~…突っ込んでもよけられちゃうしっ!この距離なら届かないしっ!)

 

 焦れたような思考は何もいい手は残っていない。

そうこうしているうちに五十鈴はにやりと笑って近づき、

 

「はいっ、捕まえた~っ♪」

 

 ぎゅーっと豊かな胸に子供の彼の頭を押し付けた。

男にとっては羨ましいシチュエーションだが、当時子供の彼は苦しそうにもがいた。

 

「はいっ、終わりっ♪」

「ぷはっ!く、苦しいよっ、師匠っ~」

 

 呼吸困難にされたことに恨めし気にみながら、丈二は見上げて呟く。

 

「弱い丈二が悪いのっ、悔しかったら強くなりなさいなっ、

 そうね…」

 

 全ての艦娘と戦うつもりで頑張りなさいな。

 

 にこりと鬼畜なことを笑顔で五十鈴は言った。

丈二は思う、あのときのあの人は冗談ではなく本気で言っていたのだろうと。

 

 

 

 

 

 

 彼女はあの大戦の直後、全ての艦娘を轟沈(しず)めようとした大罪人なのだから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<続く>

 

 

 

 

 

 

 




 源治さんの話を見て、基本的に思ったのはこういうことですね。
たまたま青い肌の一族にぶち当たって、深海棲艦が思い浮かんで…
ひょっとしたら、というところから話を膨らませました。

 不謹慎かもしれませんが、書いてみたかったのです。
前書きにも書いてあるように、誹謗の意図はありません。

 只、艦娘たちと提督のそういった営みによる血の濃さが…
深海棲艦を誕生させたのでは?と考えてこんな話になりました。

 しかし、回想で五十鈴を入れないと艦これ要素が全くない話ですね、これ…。
次回当たり、由良提督編の決着がつけられたらいいなあ…

 描写がくどくなるので入れませんでしたが、
丈二は掛け合わせまくった艦娘と提督の細胞をラットに
注入して実験してます。

駆逐イ級に変異して襲いかかったようです(爆)

 それでは。

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