流血の錬金術師   作:蕎麦饂飩
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今回は短いです。すみません。


臆病な私達

シルヴィオがメイに告げた言葉は、また別の少女にも届いていた。

 

「人間の味方…? だったらどうしてそんなに容赦なく撃てるの…?」

 

ウィンリィは恐る恐る先程までに、静かすぎる殺意をスカーに向けていた両親と同じ様な白衣を着た青年に聞いた。

生真面目そうな青年は、生真面目ななりに親切そうな声色で少女に答えた。

 

「簡単な事ですよ。彼らは――――イシュヴァールは、人間ではありませんから。

ああ、お嬢さん膝から少し血が滲んでいますよ。座り込んだ時に石の破片で切ったようですね」

 

シルヴィオはそう言うと、ウィンリィの前に座り込んでその膝に手を触れた。

先程まで躊躇なく人を殺そうとしていた男に触れられて、ウィンリィは一瞬逃げようとしたが、

先程スカーに殺されかけた時の恐怖で、足に力が入らなかった。

 

その硬直の間に、温かさと柔らかさが足に訪れたかと思うと、傷口が無くなっていた。

 

 

「美しいお嬢さんの御足に傷がついては大変ですからね。

所でお嬢さん、貴方のお名前は?」

 

先程までスカーに容赦が無かった人物と同一だとはとても思えない程、

丁寧で親切そうな、美しい青年は優しくそう問いかけた。

ウィンリィにはこの青年が全く良く解らなかったが、治療された事とスカーを撃退した事で救ってくれたことは事実なので、

自身の名前を告げた。

 

「ウィンリィ。ウィンリィ・ロックベル」

 

 

「成程、貴方が美少女と噂のウィンリィさんでしたか。ええ、納得の可愛らしさです」

 

そう意味深にエドたちの方を見るシルヴィオに嫌そうな顔をするエド。

だが、エドたちから見ても、その姿に先程のスカーを殺そうとしていた人物を見出す事は出来なかった。

 

 

そこに、今更になってエドたちが探していたホムンクルス――――エンヴィーがやって来た。

 

 

「よう、…あの男はいなくなったみたいだな」

 

「態々、救けに来て下さったのですね。ありがとうございます。

ところで、お一人ですか?」

 

 

 

「…言いたいことは何となくわかるが、ラストはいないぞ。

さっきまで一緒に居たが、調子が悪い様だ」

 

ホムンクルスが現れたというのに、普通の人間の知り合いと出会ったかのように平常に話すシルヴィオ。

そしてラストがいなくなったという事を聞いて、若干テンションが落ちているかのように傍目にも解った。

エンヴィー的にはラストで無い方のホムンクルス扱いされるのは少し癪だったが。

 

因みに、ラストは本当に先程までエンヴィーと一緒にシルヴィオとスカーを観戦、

というか銃を撃ち放つシルヴィオをじっと眺めていたが、

勝敗が付きそうになり、いざ接触しようとエンヴィーが提案したところで、

「整理が出来ていないし、私はまた今度にしておこうかしら」と逃げ出した。

 

(それでも『色欲』かよ)

エンヴィーは心の中で姉の様な存在のヘタレっぷりに呆れつつ、一人で接触する事にしたのだ。

かつて、恋愛初心者などこかの大総統に、女心やデートプランを、

経験豊富な女性代表の様な顔でレクチャーしていたのは何だったのか?

その皮肉を心の中で押さえながら。

 

だが、その皮肉を感じる自分に、どこか満足の様な良く解らない何かを感じていた。




大総統って恋愛下手どころでは無かったと思うんですよね。





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