太陽とひまわりの仲間達との暗殺教室   作:籠野球

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皆さんどうも籠野球です。

今回は太陽の過去に少し触れます。
生まれてすぐ「ひまわり」で育ってきた太陽の過去とは・・・

それでは、どうぞ!!



十八時間目 雨中の記憶の時間

渚side

 

雨の季節。梅雨の6月、暗殺期限まで残り9か月のなったこのE組で、僕達は新たな疑問にぶち当たっていた。

 

((((何か大きいぞ))))

「殺せんせー、33%ほど巨大化した頭部についてご説明を」

「ああご心配なく、律さん。湿度が高いせいで水分を吸ってふやけただけです」

「「「「生米か!?」」」」

 

クラス全員がツッコむ中、殺せんせーは顔を絞った。

 

「雨粒は全部避けて登校したんですが、湿気ばかりはどうにもなりませんからねぇ・・・」

「・・・ま、E組のボロ校舎じゃしゃあねえわな」

 

威月が天井を見上げて恨めしげに呟く間も、雨漏りはずっと続いていた。エアコンでベスト湿度の本校舎が羨ましいな・・・

 

そう考えていたその時、倉橋さんは何かに気づいた様子で声を上げた。

 

「先生帽子どうしたの?ちょっと浮いてるよ」

「よくぞ聞いてくれました。先生ついに生えてきたんです」

 

殺せんせーは嬉しそうにそう言いながら帽子を取った。

 

「髪が」

「「「キノコだよ!!」」」

ムシャムシャ 「湿気にも恩恵があるもんですねぇ。暗くならずに明るくじめじめ過ごしましょう」

 

まあ、殺せんせーの言う通りだよね。早く梅雨過ぎないかなぁ。

 

「・・・にゅや?太陽君どうかしましたか?」

「・・・えっ?」

 

その時、殺せんせーが頬杖を突きながら窓の外をボンヤリと見ている太陽に声をかけた。

 

「何やら顔色がよくないので。気分が悪いですか?」

「・・・いえ、大丈夫です。体調が悪いわけじゃないんで」

 

笑いながらそう言った太陽だが、いつもに比べその笑顔には影が差していた。

 

「そうですか・・・何かあったら先生にすぐ声をかけて下さい」

「はい、ありがとうございます」

(どうしたんだろう、太陽・・・)

 

普段と違う太陽に疑問に思ったが、殺せんせーが授業を再開したので僕も黒板に集中した。

 

 

 

「渚、コンビニ寄って帰ろう。苺パフェ食べたいんだ~」

「いいよ、茅野」

 

 帰りのHR終了後・・・茅野にそう誘われ、僕はそう言いながら頷いた。茅野はスイーツが好きだな。

 

「太陽くん、帰ろう」

「陽菜乃」

 

すると、倉橋さんがそう言いながら太陽に近づいていった。仲いいな、あの2人も。

 

「あー・・・悪い、俺今日さっさと帰るわ」

「えっ?う、うん分かった」

「ゴメンな。じゃあ、また明日」

 

そう言うと太陽は本当に1人で帰っていった。珍しいな・・・太陽が1人で帰るなんて。

 

「・・・どうしたんだろ?太陽くん、まだ左手痛いのかな・・・」

 

そんな太陽を見ながら倉橋さんはそう呟いた。太陽の手の包帯は日曜日に取れたらしく、本人は大丈夫って言ってたんだけどな・・・

 

「わりいな、倉橋。手が痛いんじゃねえよ」

「? 水守君、どういう事?」

 

そう聞き返した倉橋さんに、威月は窓の外に目を向け、

 

「アイツ、雨が嫌いなんだよ」

「えっ、雨が?」

「ああ、たまにだけど雨が降る日はいつも決まった夢を見るらしい」

「夢・・・?」

「んで、その夢が太陽は苦手なんだ。だから、雨が苦手なんだって」

 

悪夢みたいな物って事なのかな・・・

 

「両親と死別した時、雨が降ってたらしくてな」

「でも、生まれてすぐに「ひまわり」で暮らしてるんじゃ・・・」

「実徳さんに聞かせてもらったらしい」

 

威月はそう言いながら視線を戻し、

 

「アイツは夢の内容を俺らにすら言わないしな」

「え、3人にも!?」

 

ビックリした。4人には隠し事なんて一切ないと思っていたからだ。

 

「アイツにも思い出したくない記憶はあるって事さ。下手に気を遣わずにいつも通り振る舞ってやればいいさ。明日には元に戻ってるだろうしな」

 

威月はそう言って話を打ち切った―――――

 

 

 

威月side

 

「ごちそうさまー!!」

 

午後七時半。皆のそんな声で晩ご飯は終わった。今日も美味かった、流石大賀だな。

 

「威月兄ちゃん、将棋やろう」

「ああ、いいよ」

 

全員で食器を運んだ後に裕樹がそう言ってきて、俺はそう返した。裕樹はたまに俺に勝負を挑んでくる。

 

「今日こそ飛車と角がない兄ちゃんには勝ってみせるからな!!」

「ああ、臨むところだ」

 

そう裕樹に返す中、台所にいた大賀が入ってきて太陽に声をかけた。

 

「太陽。風呂入ってるからもう入ってこいよ」

「えっ?」

「もう寝ちまえよ。悪夢見るかは分かんねえから、すぐ寝ちまうしかねえだろ」

「・・・わりい、じゃあそうするわ」

 

そう言いながら太陽は立ち上がると、居間を出る直前に俺らの方へと振り向くと、

 

「おやすみ、皆」

 

その声に全員がそれぞれ挨拶を返した。

 

その後、太陽は居間に入っては来なかった。

 

 

 

太陽side

 

サアァァァ

 

(雨・・・?)

 

突然聞こえてきたそんな音に俺はそう思いながら目を開けた。

 

そこは何やら瓦礫の山に囲まれた、異様な空間だった。

 

(熱い・・・何だ、手足も動かねえ?)

 

突然感じたとてつもない熱さに俺は体を起こそうとしたが、何故か俺の体は動かなかった。

 

「・・・い、大丈夫か?」

(?・・・実徳さん?)

 

突然声が聞こえおもわずその方向を向くと、そこには若い頃の実徳さんが立っていた。

 

「しゅ、主人は・・・?」

「・・・いや、もう手遅れだ。」

(! 誰だ、この人は?)

 

その声に反応して前をよく見ると、そこには茶髪の女性がいた。

 

しかし、その人の顔はぼやけてよく分からなかった。

 

「こ、この子を・・・頼みます・・・」

 

そう言いながら俺を実徳さんに差し出したのを見て、ようやく俺はこの女の人に抱きかかえられていたのが分かった。

 

実徳さんは俺をその人から受け取ると、その女の人に話しかけた。

 

「待ちたまえ、君も一緒に・・・」

「私はもう無理です・・・だから、私とあの人の生きた証であるこの子だけは生きていてほしい・・・」

(! この人、まさか・・・)

 

その言葉に俺はこの女の人が誰か、分かったかもしれなかった。

 

「私達はいつまでも遠くから見守っていると、その子が大きくなったら伝えて下さい・・・大切な人の力になってあげられるような優しい子になってほしい・・・そんな願いを込めた名前です・・・」

 

そう言うと女の人は小さい声で、しかしはっきりと聞こえる声でこう言った。

 

「その子の名は―――()()

 

 

 

「母さん!!」

 

俺はそう言いながら飛び起きた。しかし、目の前の光景は十年以上住んでいる自分の部屋だった。

 

「ハァ・・・ハァ・・・またあの夢か・・・」

 

呼吸を整えながら俺はそう呟いた。何年経っても薄れない記憶に俺はおもわず自虐的な笑みを浮かべた。

 

「(ま、忘れても困るけどな・・・)まだ3時か・・・」

 

そう思いながら時計を見ると3時を指していた。雨はとっくの昔に上がったらしい。

 

のどが渇いた俺はとりあえず台所へと向かった。

 

「えーと、麦茶あんのかな・・・「扉の所にあるぞ」!?」

 

冷蔵庫の中を探していた俺は、独り言に返事が返ってきたことに驚いて入口を見た。

 

そこには威月や大賀、それに威月が立っていた。

 

「お前ら、何で・・・?」

「ふわぁ、そりゃあんな叫び声上げたら目ぇ覚めるっての」

「そ、そうだよな・・・悪い」

 

威月の返しに俺はおもわず苦笑いを浮かべながらそう言った。

 

「また、()の夢か?」

「・・・(コクッ)」

 

威月の問いに俺は頷くだけだった。そんな俺を見て威月は頭を掻きながら、

 

「別に言いたくねえなら言わなくていい。でも、何かあったら、遠慮無く頼ればいいからな」

「うん、僕達は()()なんだからね」

「俺はそうだな・・・何でも好きなもん作ってやるよ」

「お前ら・・・」

 

笑いながらそう言ってくれる3人に、俺は思わず呟いた。大事な事すら教えてないってのにそう言ってくれる3人は、俺にとって本当に大切な家族だ。

 

「とりあえず、寝ようぜ。まだ早いしな」

「そうだね、もう寝よう」

「じゃあな、太陽」

「おう、ありがとな、お前ら」

 

部屋へと戻っていく3人にそう返すと、俺は麦茶をコップに入れると一気に飲み干した。今ならちゃんと寝られそうだ。

 

そうして、俺も再び眠りについた。今度は夢は見なかった―――――

 

 

 

 余談だが、翌日登校すると陽菜乃を含めて10人以上が正座して烏間先生にお説教されていた。殺せんせーもいるし、何したんだアイツら・・・




いかがだったでしょうか。

太陽というより4人の過去は少し重いです(基本的に人死が関わってきます)
どんな過去かはこれから明らかになっていきます。

次回はビッチ先生の師匠の話です。これもあまりオリジナル要素は入れないつもりです。

それでは、また次回お会いしましょう!!

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