太陽とひまわりの仲間達との暗殺教室   作:籠野球

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皆さんどうも籠野球です。

フー・・・何とかここまでは休まずにここまでは投稿出来ました!!

只、書きすぎて(恐らくは)過去最長です(8000字超えました(笑))

それでは、どうぞ!!


六十一時間目 花火と夏の終わりの時間

威月side

 

「コイツら、俺のクラスメイトでな。悪いが他当たってくれや」

「なっ・・・いきなり出てきてふざけんじゃ「あぁ?」・・・わ、分かった」

 

 俺の威圧にビビったのか、そう言い残して男達は去って行った。けっ、雑魚共が。

 

「大丈夫か?おめえら」

「うん。ありがとう、水守君」

 

ま、掴まれる前に防いだし、大丈夫か。

 

「威月、そんな格好して何してんの?」

「ん?」

 

その時、莉桜(浴衣を着てなかったのが少しだけ残念だったのは内緒だ)が俺の格好に疑問を持ったみたいだった。確かに普通ならこんな法被着ねえわな。

 

「実は俺達4人、毎年この祭の手伝いしてんだ。1日限りのバイトって訳だ」

「・・・あ!!じゃあ、たーくん達の用事って・・・」

「そ、これの事。今年は俺と登志だけでいいから彼女と行ってこいって言ったんだが・・・アイツらクソ真面目だからよ」

「まあ・・・そんな優しい2人だから好きになったんだけどね」

 

ま、神崎の言う通りか。

 

「んで、あの3人は屋台の手伝い。俺は右手がまだ心配だからパトロール兼お出迎え」

「? 誰を?」

「俺らのアイドルだよ」

「あ、いつきおにいちゃんだー!!」

 

皆が頭に?を浮かべたその時、少し離れた場所からそんな声が聞こえたと思ったら、

 

タタタッ「いつきおにいちゃーん!!」 ピョーン!!

ぼふっ 「おっと。よく来たな、華」

「えへへ~」

 

小さな浴衣を着た華が、全速力で俺に飛び込んできた。そのまま頭を撫でてやると、華は嬉しそうに笑っていた。

 

「華ちゃん!!久しぶり~!!」

「あ!!なぎさおにいちゃんにかやのおねえちゃん!!それにひなのおねえちゃんも!!」

「か、可愛い・・・威月、何この可愛い生き物・・・?」

「生き物って・・・まあ、小動物みたいな気がしなくも無いが」

 

莉桜にそう突っ込みながら、俺は華を下ろした。そのまま華の頭に手をやりながら、

 

「「ひまわり」で暮らす子供の1人だ。華、名前言えるか?」

「うん!!えっと、かみき はなです。こんばんは!!」

「よし、良い子」 くしゃくしゃ

「華ちゃんって言うんだ~!!可愛い~!!」

「よろしくね、華ちゃん!!」

 

華の可愛いさに、早くも女子達はメロメロだった。まあ、気持ちは分かるがな。

 

「・・・ふむ、将来性ありだな。これからの成長が楽しみだ」

「ほう、危険人物がいるみたいだな」 ゴキッ

「ジョ、ジョークだって!!指を鳴らしながら近づくな!!」

 

ったく、この女たらしは・・・

 

「華、岬さんや裕樹達は?」

「えっとね、はなだけはしってきたの。だからもうすぐ!!」

「あ、いた!!威月兄ちゃんも一緒だ!!」

 

お、裕樹の声だな。隣には彩子もいるな。2人も浴衣で来たのか。

 

「こら、華。威月兄さんはお仕事中なんだから、邪魔しちゃダメだよ」

「悪いな、裕樹、彩子。岬さんは?」

「いますよ、威月君」

「うわ~、綺麗・・・」

 

そう言いながら最後に現れた岬さんを見て、女子達はそんな声を上げた。岬さんは綺麗だし、性格も優しいからな。

 

「お姉さん、この後俺と一緒に祭を回りませんか?」

「は、はい?」

「だから人ん家の家族ナンパしてんじゃねーよ、前原・・・」

「やだ!!はな、おにいちゃんたちといっしょにおまつりいく!!」

 

そう言うと、華は再び俺にしがみついてきた。うーん、どうすっかな・・・

 

「威月、華ちゃん達も私達と一緒に回ればいいんじゃない?んで、アンタもパトロールついでに一緒に来なよ」

「いいんじゃないですか?威月君。私の事は気にしなくてもいいですよ」

「そっすか?まあ、岬さんがいいなら「いこうよ、おにいちゃん!!」(グイッ!!)おわっ!?引っ張んなって、華!!」

「お気をつけて、皆さん」

 

手を振る岬さんを残し、俺達は歩き出した。まあ、たまには岬さんもノンビリしたいだろうし、いいか。

 

 

 

「うわ~!!すごいすごい!!」

「元気だね~華ちゃん」

「恐らく、祭なんて初めてだろうからな」

 

 女子の皆に囲まれながら、大はしゃぎの華に莉桜は笑いながらそう言った。普段見れない物ばっかりだろうしな、華には。

 

「威月兄ちゃん、太陽兄ちゃん達はどこの屋台にいるの?」

「ん?ああ、何か小麦粉運んでたから、粉物だと思う「いらっしゃいませー!!」と、噂をすれば」

 

裕樹にそう返してたその時、前から大賀の声が聞こえてきた。見てみると、お好み焼きと書かれた屋台の中で焼く大賀や、客引きをしてる太陽の姿があった。

 

「たいようおにいちゃーん!!たいがおにいちゃーん!!」

「ん?・・・!! おー、華に裕樹に彩子。おまけに陽菜乃達まで」

「うん。さっきそこで一緒になったんだ~!!」

「そっか、せっかく誘ってくれたのにゴメンな」

「ううん、気にしないで」

 

太陽と倉橋がそう話す中、大賀がヘラを両手に持ち、

 

「よっと(クルン ジュウ・・・)せっかく来たんだし、皆どうだ?安くするぜ」

「へー・・・やっぱり大賀って料理上手いんだな」

 

磯貝が大賀の手元を覗き込みながらそう言った。見てみると、全てのお好み焼きが綺麗に焼かれて、かなり美味そうだ。

 

「磯貝の家って確か母子家庭だったよな?」

「まあな。でも、俺は弟妹いるから大変だけど、寂しくはねえよ」

「そうか、お互い大変だな。んじゃ、磯貝は1枚三百円でいいぜ」

「えっ、嬉しいけどそんなの勝手に決めていいのか・・・?」

「平気平気、ちょっと待ってな」

 

太陽は心配そうな磯貝をよそにお好み焼きを詰め始めたが、

 

「おい太陽!!」

ビクッ!! 「お、おい太陽・・・やっぱりマズかったんじゃ?

「何すか?おっちゃん」

 

いきなり現れたガタイの良い親父さんが出した大声に全員が思わずビクッとなる中、太陽は平然とそう聞いていた。

 

「お前、何ケチケチしてんだよ」

「「「「・・・えっ?」」」」

「せっかくクラスメイト来てくれたんだ、3枚三百円にしとけ」

「へーい」

「い、良いんですか!?そんな安くしちゃって」

 

磯貝の驚き混じりの質問に、親父さんは笑いながら、

 

「小学生の頃から面倒見てっからな。コイツらは俺の息子みたいなもんだ。息子が友達連れてきたなら、サービスしてやらんとな」

「はいよ、磯貝」

「ありがとうございます!!」

 

こうやって俺達を息子だと思ってくれる人がいるのは本当にありがてえな。

 

「それと、ほらお前ら」 スッ

「? 何すか?コレ」

 

その時、親父さんが太陽や大賀に封筒を差し出した。思わず聞き返した太陽に、親父さんは笑みを浮かべながらこう言った。

 

「バイト代だよ。もういいから彼女さん達と祭、行ってこい」

「えっ・・・」

「真面目なのもいいが、せっかく出来た彼女さんを寂しがらせちゃ男が廃るぞ。毎年手伝ってくれてんだ。1年くらい構わねえよ」

「おっちゃん・・・」

「おら、邪魔だ!!さっさと行ってこいや!!」 ポイッ

 

そう言いながら、親父さんは大賀と太陽の首根っこ掴んで俺達の方へと放った。

 

 

 

登志side

 

(あんな外見なのに、優しいんだよね。おじさんは)

 

多分、ずっと見てたんだろうな。不器用な優しさなんだよね。

 

ドンッ 「よいしょっと・・・おじさん、次は?」

「・・・あ?登志、お前は行かなくていいのか?」

「はい、僕は別に誰かとお付き合いしてるわけじゃ無いですし」

「ん?そうなのか?」

 

確かにクラスメイトの皆や裕樹達とお祭りを回るのは魅力的だけど、太陽達がいなくなった分、僕が頑張らないとね。

 

「でも、そこの嬢ちゃんはお前と行きたそうだぞ?」

「へっ・・・っ」

 

僕はおじさんの指差した方を向き・・・息を飲んだ。

 

そこには、青色に白い花が散りばめられた浴衣を着た矢田さんが何かを言いたげな表情で立っていた。

 

(凄い・・・こんな綺麗な人がいるんだ・・・)

「えっと・・・よかったら伊勢くんも一緒に行かない?」

「あ、えっと・・・(ガシッ)・・・え?」

 

思わず見とれて、言葉に詰まった僕の首根っこをおじさんは掴んできた。そのまま僕のポケットに封筒を突っ込むと、

 

「その顔見りゃあ充分だっての。とっとと行ってこいや!!」 ブンッ!!

「うわっ!!」 

 

そのまま僕を放り投げ、僕は矢田さんの近くに落ちた。

 

ドテッ!! 「痛て・・・」

「だ、大丈夫?伊勢くん」

「はい・・・何とか」

(おじさん、優しいけど乱暴なんだよな・・・)

「よかった・・・立てる?」 スッ

「は、はい・・・」

 

安心した表情で僕に差し出してくれた手を僕はしどろもどろになりながらも受け取った。

 

(うぅ、やっぱり綺麗だな・・・)

「桃花ちゃーん、華ちゃん達が金魚すくいやりたいって~!!早く行こうよ~!!」

「あ、うん。行こ?伊勢くん」

 

僕に笑いながらそう言ってくれた矢田さんにドキリとなりながらも頷いた。

 

カランコロン・・・ 「フー、緊張したー・・・」

 

矢田さんの下駄の音が遠ざかっていくのを確認してから、僕は思わず息を吐きながら呟いた。元々、矢田さんは綺麗なのに、今日は浴衣着てるからなー・・・

 

「へー・・・」

「・・・その笑みは何だよ、威月」

「いや、別に」

 

普段、頼りになる威月だが、こういう笑みを浮かべる時は要注意なんだよな・・・

 

「しかしまあ、こんだけ綺麗どころがいると目の保養だよな」

「? うん、そうだね」

 

いきなり話題を変えてきた威月に疑問を抱きながらも僕は頷いた。やっぱり女の子には浴衣が似合うよな。

 

「ん~・・・でも、矢田はイマイチかな」

「・・・えっ?」

「なーんか、無理してる感じがあるな」

「そ、そんな事、無いんじゃないかな?」

 

僕はムッとなりながら、威月に反論した。しかし、威月は・・・

 

「そうかー?あんまり似合ってない気がすんだよなー。正直微妙「そんな事、無いって!!」 ん?」

 

僕の声に威月が少しだけ笑った気がしたが、僕はそのまま続けた。

 

「矢田さん凄く似合ってるし、凄く綺麗だよ!!こんなに綺麗な人、僕は見た事無いよ!!・・・・・ハッ!?」

 

そこまで言って、僕は思わず大声で反論してる事にようやく気づいた。

 

「ア、アハハ・・・ありがとう、伊勢くん///」

「う、うん」

(威月め・・・これを言わせようと・・・)

 

恐る恐る皆を見てみたが、バッチリ聞かれてたみたいで、矢田さんは照れた様に笑いながらそう言ってくれて、皆は温かい目で僕をみてきた。は、恥ずかしい・・・

 

僕の文句交じりの恨めしそうな視線に気づいた威月はほんの少しだけ笑うと、

 

「言ってやらんと気づいて貰えん事だってあるんだぜ?登志」

「うう・・・」

「とうしおにいちゃん!!いつきおにいちゃん!!はやく~!!」

「はいはい、行くぞ登志」

「・・・うん」

 

とりあえず僕も楽しも・・・

 

 

 

桃花side

 

ポイポイ 「何かナイフで斬る感覚に近いな」

「あいかわらずそつなくこなすな、磯貝」

 

連続で金魚を掬い続ける磯貝君に前原君がそう言った。何でも出来るな、磯貝君は。

 

「こんなもんかな、お好み焼きと合わせて2食分が四百円で済むのはありがたいな」

((((・・・えっ、食べるの!?))))

 

袋一杯の金魚を掲げながらの磯貝君の言葉に、全員が心の中でツッコんだ。味が想像できない・・・

 

「ほう・・・磯貝、是非作り方を(ガシッ)「俺の小遣い無くていいから、それだけは止めてくれ、大賀」えー・・・しょうがないな」

 

何か太陽君の気持ちが分かるなー・・・

 

「うー・・・えいっ!!」 バシャッ!!

「お、凄い!!」

 

そう考えていたその時、華ちゃんがそんな声を上げながら、1匹の金魚を掬った。

 

ビリッ パチャン!! 「あーーーっ!?」

「あー、惜しいー・・・」

 

しかし、器に入れるよりも先にポイが破れ、金魚は水槽の中に戻ってしまった。華ちゃんみたいな小さい子が掬うのって難しいんだよね・・・

 

「ふえっ・・・うぅ・・・」

「あ!?華ちゃん、えっと・・・」

 

目に涙が溜まっていく華ちゃんに私達は慌てた。ど、どうしよう!?

 

ひょい 「ほら、泣かないで華」

「!! 伊勢くん」

 

その時、伊勢君がそう言いながら華ちゃんを抱っこしてあげていた。

 

「じゃあ、華が泣き止んだら、お兄ちゃんが捕れる方法、教えてあげる」

「えっ!!ほんとう?」

「うん。だから涙拭いて、もっかい頑張ろう?」

「うん!!」

 

伊勢君は慣れた手つきでそう言いながら華ちゃんを泣き止ませると、おじさんからポイを1本受け取って華ちゃんに持たせると、

 

「いい、華。まずはポイをそーっと水の中に入れてみな」

「うん」 ぽちゃん

「そしたら、真っ直ぐ水槽の隅っこに動かして」

「うん」 スーッ

 

華ちゃんは伊勢君に言われた通りに隅っこに近づいた。

 

「後は、水から顔を出してる金魚を掬って、素早く器に入れるんだ」

「うん。そーっと・・・えいっ!!」 ぱしゃっ!!

 

次の瞬間、華ちゃんは1匹の金魚を掬って・・・

 

チャポン!! 「やった~、とれた!!」

「うん、上手」

(お兄ちゃんなんだな・・・伊勢くん)

 

嬉しそうに笑う華ちゃんの頭を撫でてあげてる伊勢君に、私はそう思った。とても血が繋がってないとは思えないな。

 

 

 

「えへへ~」

「よかったな、華」

「うん!!とうしおにいちゃん、ありがとう!!」

 

 結局、1匹掬った後ポイはすぐ破けてしまったが、華ちゃんはご機嫌だった。右手に持った袋の中には、金魚が1匹泳いでいた。

 

「明日、帰りに金魚鉢、買ってきてあげるな、華」

「ありがとう!!たいようおにいちゃん!!」

「・・・あ、後10分くらいで花火だよ。華ちゃん、たーくん」

 

その時、陽菜ちゃんが広場の時計を見ながらそう言った。

 

「どうせだし、高台に行かねえか?そこのが花火がよく見えるんだ」

「そうなんだ、じゃあそこに行こうよ」

(花火なんて久しぶりだな~凄い楽しみ・・・)

ブチッ!! 「えっ」

 

九澄君と有希子ちゃんのやりとりにそう考えていたその時だった。私の足元から突然そんな音がして、私は前のめりに倒れそうになった。

 

ぼふっ 「大丈夫ですか!?矢田さん」

「あ、ありがとう。伊勢くん」

 

そんな私を、伊勢君が受け止めてくれた。お礼を言いながら 足元を見てみると下駄の鼻緒が切れていた。

 

「あちゃ~・・・」

「鼻緒、切れちゃってますね」

「慣れない物、履いてくるんじゃ無かったかな・・・」

 

これじゃあ歩けないな・・・どうしよう。

 

「僕が直しますよ」

「えっ、伊勢くんそんな事出来るの?」

「僕、草鞋履いてますから。たまにあるんですよ」

 

確かに、伊勢君は今も草鞋を履いていた。それなら出来るかな。

 

「じゃあ、お願いできるかな?」

「はい・・・とりあえず、あそこのベンチに座りましょうか。立ったままだと大変ですし」

「ああ、うん。じゃあ伊勢くん、悪いけど・・・」

 

 

「肩を貸してくれる?」と言おうとした私の言葉は、

 

ひょい 「よいしょっと」

「!? い、伊勢くん!?///」

 

伊勢君がお姫様抱っこしてきた事で遮られた。恥ずかしさから、思わず赤くなりながら尋ねると、

 

「あ、すいません。こっちの方が早いんで、少し我慢して下さい」

「う、うん///」

 

私を抱え上げながら、平然と話す伊勢君にドキドキしながらも私は頷いた。

 

スタスタ 「お、重くないかな?伊勢くん」

「矢田さんが重かったら、大体の物が重いですよ。それに、これでも剣士ですから、鍛えてるんです」

 

私を見下ろしながら笑う伊勢君に、ドキリとなった。

 

「よいしょっと(ストン)じゃあ、見せて下さい」

「あ・・・うん」

 

ベンチに下ろされた事を少しだけ残念に思いながら、私は下駄を差し出した。

 

「んー(ごそごそ・・・)あった。はむっ」 ビリイィィ!!

「!!  伊勢くん、手拭いを・・・」

「大丈夫です、所詮は安物ですから」

 

いきなり懐から取り出した手拭いを引き裂いた伊勢君に驚いたが、伊勢君は平然とそう返すだけだった。

 

クルクル スッ 「・・・」

(・・・あんまり意識した事、無かったけど、伊勢くんって結構格好いいんだな・・・)

 

私の前にしゃがみ込み、無言で私の下駄を直す伊勢君の真剣な表情に、私は思わずそう思った。

 

(それに、すっごく優しいしな・・・)

「・・・よし、出来た!!どうですか?」

「わあ・・・凄い」 スッ

 

伊勢君が差し出してきた下駄を履いてみると、ちぎれる前と殆ど変わりなかった。

 

カタン 「ありがとう、伊勢くん」

「どういたしまして。じゃあ、行きましょうか。皆はもう行っちゃいましたし」 スッ

「あ・・・」

ギュッ・・・ 「・・・へ?」

 

あ・・・思わず手を掴んじゃった。ど、どうしよう。

 

「・・・矢田さん?」

「その・・・直ったばっかりの下駄で歩くの怖いし、よかったら・・・・私とここで花火見ない?」

「へ・・・僕とですか?」

「う、うん。伊勢くんが良かったら・・・だけど」

 

淀みながらも反射的に口から出た私の言葉に、

 

「・・・僕で良ければ、喜んで」

 

あの時と同じように、笑いながらそう言ってくれた。

 

 

 

「・・・うん。だから、伊勢くんと一緒にいるから心配しないでって伝えといてくれる?陽菜ちゃん」

「うん、たーくん達に伝えとくね。ばいばい~」 ピッ

 

 陽菜ちゃんへと連絡して、私は電話を切った。太陽君達に心配かけてなければいいけど。

 

「殺せんせー・・・皆が稼いで早じまいしちゃった店のスペースで小遣い稼ぎ・・・教師がバイトしていいのかな・・・」

「あ、おかえり、伊勢くん」

 

その時、伊勢君がかき氷を持ちながら帰ってきた。ってか、姿見えないと思ったら、そんな事してたんだ殺せんせー・・・

 

「矢田さん、イチゴでしたよね?」

「うん、ありがとう。」

 

私に片方の器を渡すと、伊勢君はもう片方を持ちながらベンチに座った。

 

シャクッ 「ん~!!冷たくて美味しい!!」

「かき氷なんて久しぶりだな~」

パクッ 「「ひまわり」でかき氷は食べないの?」

「かき氷機が去年壊れたんですよ。このバイト代で買おうかなって思ってるんです」

パクパク 「へ~そうなんだ(ズキッ!!) うっ!?」

 

私の言葉は、いきなりの頭痛で遮られた。

 

「うう、頭痛い・・・」

「大丈夫ですか?」

「アハハ、慌てて食べ過ぎちゃ(ぴとっ) っ、冷た!?」

 

すると伊勢君は、自分のかき氷を私のおでこに当ててきた。

 

「そういう時は、頭を冷やしてあげるとすぐ直るんですよ」

「へ~・・・そうなんだ」

 

そのままの体勢でいると、確かに痛みが引いてきた。

 

「・・・もう大丈夫だよ、ありがとう」

「すいません、勝手にこんな事しちゃって」

「ううん、気にしないで。・・・でも、伊勢くんって優しいし、ホントに良いお兄ちゃんだね」

「・・・全部、兄貴がやってくれた事なんです」

「!! 龍志さんが?」

「はい。金魚の捕り方、鼻緒の直し方、頭が痛くなった時の対処・・・全部、兄貴が僕にやってくれたんですよ」

 

「だから、」と伊勢君は照れた様に笑いながら、

 

「僕を良いお兄ちゃんって思われる事が、僕は何よりも嬉しいです。兄貴を褒められてる気がして」

「そっか・・・伊勢くんはホントに龍志さんを尊敬してるんだね」

「はい、誰よりも」

 

そこまで言ってから、伊勢君は一瞬だけ真剣な表情になりながら言い切った。

 

「だからこそ・・・止めたいんです」

「伊勢くん・・・(ヒュウゥゥゥ・・・)あっ」

 

その時、そんな音と共に光の玉が空に飛んでいき・・・

 

ドーン!! パラパラ・・・

「・・・始まりましたね」

「綺麗ー・・・」

 

1発目の開始を告げる花火に、私達はそれぞれそう言った。夏といえば、やっぱり花火だよね。

 

ドーン・・・ドーン・・・

「・・・今日で終わりなんだね、夏休み・・・」

「今年の夏休みは何か疲れました」

「アハハ、確かにね」

 

南の島で殺せんせーを暗殺したり、その後も大変だったもんなー・・・

 

「・・・でも、二学期からはもっと大変になるかもね」

「はい・・・この先、鷹岡さんみたいに僕らを巻き込んででも殺せんせーを殺そうとする人が来るかもしれません」

「怖いな・・・」

 

悪鬼さんの時みたいに、また助かるとは限らないからな・・・

 

「・・・大丈夫ですよ」

「えっ?」

「太陽達も、僕もいます。必ず守ってみせますよ、E組の皆は」

「っ・・・ありがとう」

 

誰よりも真剣な表情で私にそう言い切った伊勢君に、ドキッとしながら私は笑顔で返した。夏休み最後の夜は、夜空を鮮やかに彩る花火とそんな伊勢君の決意と共に過ぎていった―――




いかがだったでしょうか。

というわけで、夏休み終了です。

あえて登志と矢田さんに注目しましたが・・・登志イケメンかよ!?って書いてて思いました(笑)

作中の2人の心境からも分かると思いますが、少しずつお互いを意識し始めてます。

これが、恋に変わる瞬間はいつになりますかねー(笑)

それと、重要な話ですが、しばらくの間、投稿を休憩します。

一応活動報告に書かせて貰うので、良ければ見て下さい。

いつになるかは分かりませんが、必ず戻ってくるので気長に待っていて下さい!!

それでは、また次回お会いしましょう!!

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