太陽とひまわりの仲間達との暗殺教室   作:籠野球

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皆さんどうも籠野球です。

いや、もう本当に遅れて申し訳ありません・・・

年末の忙しさをそのまま年始に持ち込んだ形で滅茶苦茶仕事が忙しかったり、家族2人がほぼ同時にインフルエンザにかかって看病したりとばたばたした1か月でした。

作者はメンタル的に疲れた場合はゲームに逃げてしまうので、その小説を書くのが遅れたというのが1番の理由です。

ノンビリとした小説ですが、これからもノンビリとお待ち頂けたら嬉しいです。

それでは、どうぞ!!


六十五時間目 ケイドロの時間

太陽side

 

「・・・二学期最初に言った通り、これからは新しい技術も暗殺に取り込んでいく。今日からは新たにフリーランニングの技術を教えていこう」

「フリーランニング?」

 

 体育の時間、烏間先生が俺らに言ったのは、聞き慣れない単語だった。

 

「例えばそうだな・・・三村君、もし君があの崖下の一本松まで行くとしたら、どれくらいかかる?」

「・・・んー、まずこの崖這い下りて、途中の小川は狭い所通って、茂みを迂回した後、最後に岩をよじ登る・・・1分で行ければ上出来ですかね」

 

ま、そんなもんだわな。俺や大賀が月歩を使うなら話は別だけど、普通に行ったらそれくらいは掛かるだろう。

 

「では、タイムを計っておいてくれるか?」

「え?あ、はい・・・」

 

三村にストップウォッチを渡した後、烏間先生は崖の方へと歩き、

 

「フリーランニングに必要なのは、身体能力の把握、受け身の技術、目の前の足場の距離や危険度を正確に見極める事だ」

(・・・崖に背を向けた・・・って、まさか!?)

「これが出来れば、全てのフィールドで暗殺可能になる。必ず、暗殺の力になる筈だ」

 

俺がそう考えるのと、烏間先生が崖に身を投げたのは同時だった。

 

バババババッ!! 「すげ・・・」

 

焦った俺達を余所に、烏間先生は空中で1回転してから後ろ回りで衝撃を殺してみせた。そのまま烏間先生は小川の横の岩を三角跳びで跳んで小川を超えると、木に2歩でよじ登り岩場を凄まじい速度で駆け上がり一本松の枝を掴んでいた。その早業に、俺は思わずそう呟いていた。

 

「タイムは?」

「じゅ・・・10秒です」

「ふむ、まあ、そんなものだろうな」 

 

てか、革靴にスーツ着た状態であの速度は異常だろ・・・やっぱあの人、人類トップクラスだよな・・・

 

「見ての通りだ。道無き道を進む体術、これをマスターすれば、ビルからビルへと自由自在に飛び回る事が可能だ」

「凄い・・・」

「あんなん出来たら超カッケエじゃん!!」

 

皆もやる気だな、まあ俺もうきうきしてるしな。

 

「ただし、これも火薬同様に扱いを間違えたら危険な物だ。この裏山なら地面も柔らかいからトレーニングに向いている。危険な場所や裏山以外では使用しない事、いいな!」

「「「「はい!!」」」」

(いやー、楽しみだな「んー・・・(スタスタ)」大賀?)

 

その時、大賀が崖に近づきながら指を手に当てていた。何か、崖の高さを確かめてる様な・・・

 

「太陽・・・何か俺、嫌な予感がするんだが」

「奇遇だな、威月。俺もだ」

「む?どうしたんだ、大賀く」

 

烏間先生が大賀に不思議そうに声をかけたその時だった。

 

「とうっ(ピョン)」

「「「「なっ!?」」」」

「大賀君!!」

 

そんな声と共に、大賀は崖下へと飛び降りた。その突拍子もない行動に全員が驚く中・・・

 

「よっと(クルン)」 タッタッタ!!

「なっ・・・」

 

空中で一回転し、絶妙な前転での受け身で衝撃を殺した後、大賀は烏間先生とほぼ一緒のコースで一本松へと辿り着いてみせた。

 

「ハァ・・・ハァ・・・出来た!!」

「約30秒・・・烏間先生よりは当然遅いが、やろうと思って簡単に出来る芸当じゃねえってのに・・・」

「何で大賀って経験も無いのに完璧な受け身が取れるんだろうな・・・」

 

無邪気に笑う大賀を見ながら呟いた威月に、俺は苦笑いで返した。あんなの出来るのは大賀だけだろうな・・・

 

「でも、危険なのにいきなりやっちゃったら・・・」

「大賀君?」 ゴゴゴゴゴ・・・

「あ!?えっと・・・す、すいません」

 

登志がそう言いかけたのと同時に、烏間先生が大賀に凄んでいた。額に青筋を浮かべているし、かなり怒っているだろう。

 

「ふぅ・・・君の身体能力の高さは分かっているが、いきなりは止めてくれ。さっきも言ったが、これはかなり危険だからな」

「はーい、もうしません」

「よし!!じゃあ早速始めよう。まずは基本の受け身からだ!!」

「「「「はい!!」」」」

(大賀みたいな動きは無理だが、頑張ってみっか!!)

 

そんな決意と共に、俺達E組は新たな訓練を始めた。

 

 

 

スタタタッ!! 「はー・・・はー・・・ギリギリだな」

 

 フリーランニングの訓練を始めてから数日後の朝、俺はE組校舎への山道を全力疾走で駆け上がっていた。

 

(俺とした事が・・・散歩中に可愛らしい犬ちゃんに目を奪われたせいで遅刻だなんて)

「・・・やっと見えてきた(タタタ)ん?」

 

校舎が見えてきて息を整えていたら、後ろから不破が走ってくるのが見えた。

 

「せ、セーフ・・・あれ?太陽君もギリギリ?」

「おう、お前もか?」

「いやー、いつものコンビニでジャンプ売り切れててさ。それで遠回りしたんだ」

「なるほど・・・って、ノンビリしてる場合じゃねえな。とっとと行くぞ!!」

「う、うん!!」

 

後、1分くらいだからな・・・間に合うか!?

 

ガラッ!! 「(キーンコーンカーンコーン・・・)あ、危ね・・・ギリギリ(ガチャン)・・・えっ?」

「遅刻ですねえ、2人共。逮捕します」

 

チャイムと共に教室に駆け込んだ俺達に、警官の格好をした殺せんせーが手錠をかけてきた。何かムカつくし、嵐脚撃とうかな・・・いや、躱されて終わりか。

 

「おっせえぞ、太陽。だから学校前に羽目外し過ぎんなよって言ったんだ」

「ワリいな、威月。んで、殺せんせーのその格好は何すか?」

「ヌルフフフ。何やら最近、面白そうな訓練してますねぇ皆さん。どうでしょう、今日はそれを使った遊びをしませんか?」

 

面白い遊びって・・・フリーランニングの事か。

 

「ズバリ"ケイドロ"!!裏山全部を使った鬼ごっこです!!」

「ケイドロを裏山で?」

「ルールは簡単、泥棒役の皆さんは身につけた技術を使用して裏山を逃げて下さい。それを警官役の殺せんせーと烏間先生が捕まえます」

「おい!!何で俺まで!?」

 

巻き込まれて噛みついた烏間先生をスルーしながら、殺せんせーは話を続けた。

 

「制限時間は1時間。制限時間以内に君達全員を逮捕(タッチ)出来なければ烏間先生の奢りでケーキを買ってきましょう」

「貴様、勝手に・・・」

「ただし、全員が捕まったら宿題を2倍にします」

 

そんな宣言に、全員がブーイングをかました。そんな皆を代表して威月が口を開いた。

 

「冗談じゃねえ、殺せんせーから1時間も逃げれっかよ」

「その点はご安心を。最初は烏間先生だけが追いかけます。先生は牢屋スペースで待機して、残り1分で動きます」

「・・・それなら何とかなるんじゃねえ?」

「そうだな、やってみようぜ皆!!」

(・・・)

 

大賀の言葉に、磯貝が声をかける中、俺は1人考えていた。一見簡単そうだが・・・追いかけるのが烏間先生じゃなぁ・・・

 

(・・・ま、足りねえ能力は頭使ってナンボだな!!)

「何で俺が、全く・・・まあ、彼らがレベルアップ出来るなら仕方ないが・・・」

 

・・・にしても、この2人って息合ってんのかないのか分かんねえな。

 

 

 

大賀side

 

ガシッ 「ひゃっほう!!」 スタッ

 

 木から木へとそんな声を上げながら俺は飛び移った。風が気持ちいいなぁ。

 

「本当に凄い身体能力ですね、大賀君って」

「うん、僕達じゃまだ半分の距離も飛び移れないよ」

 

そんな俺を見上げながら、奥田さんと渚はそれぞれそう言った。ちなみに俺は4班の皆と行動している。

 

「しっかしケイドロって懐かしいよなー。しかもこんな広いフィールドでやれるなんてワクワクしちまうな!!」

「うん、烏間先生は私達が飽きないように訓練を工夫してくれるし、殺せんせーはそれを利用した遊びにしてくれる。ああ見えて、良いコンビなのかもね」

 

友人や有希子の言う通りだな。まあ、実際は敵同士だけどな。

 

「・・・! 始まったよ、皆」

 

その時、携帯を見ていた茅野さんがそう言った。いよいよか・・・

 

「つってもよ、警官役はたった2人だし、殺せんせーは残り1分まで動かない以上、実質今鬼は烏間先生1人だろ?余裕じゃん」

「それまで隠れて、殺せんせーが追いかけてくる残り1分に備えるのが理想的ですね!!」

「それなんだが太陽から伝言を預かってんだ」

「何?大賀くん」

 

有希子が聞き返すのと同時に全員が俺の方を向いてくる中、俺は口を開いた。

 

「"烏間先生を甘く見るな"だって「(デデーン!!)岡島君、速水さん、千葉君、不破さん、アウトー」」

「「「「・・・はっ(えっ)!?」」」」

 

突然、茅野さんの携帯から聞こえてきた警告音と律の声に、全員が固まった。

 

(嘘だろ!?まだ開始して1分も経ってねえぞ!?)

「(デデーン!!)菅谷君、アウトー、ビッチ先生、アウトー」

「ヤバい・・・どんどん殺られてく。殺戮の裏山だ」

「逮捕じゃなかったっけ」

「つーか何でビッチ先生が参加してんだ?」

 

太陽の言った通りだな・・・桁違い過ぎる。

 

(てか、そもそもこれケイドロじゃ・・・ん?)

「・・・そうだよ!!ケイドロなんだし牢屋の泥棒タッチすりゃ助けられんじゃん!!」 ダンッ!!

「さっさと助けて、また振り出しに戻してやる!!」 ババッ!!

「・・・バカだね~2人共」

 

牢屋へと向かう俺と友人の後ろから、カルマがそう呟いた気がするが、今は速度重視だ!!

 

 

 

 

 

「「・・・」」

 

 牢屋近くの草むらへと辿り着いた俺達だったが、そこから微動だに出来ずにいた。何故なら・・・

 

ザザッ 「やっぱり・・・ラスト1分まで動かないって言ってたじゃん。誰があの音速タコの目を盗んで救出(タッチ)出来んのさ?やれるならとっくの昔に殺せてるって」

「ヌルフフフ」 ぱしっ・・・ぱしっ・・・

 

牢屋スペースのど真ん中で警棒を弄ぶ殺せんせーを見ながら、追いついてきた4班の皆の先頭にいたカルマがそう呟いた。このコンビ無敵すぎんだろ!?

 

「ハァ・・・ハァ・・・どうする、大賀くん。救出は諦めて隠れる?」

「「竹林君、原さん、アウトー」いや・・・このままじゃ30分も持たねえよ。何としても助けねえと」

「・・・!」

(! 岡島の奴、俺達に気づいたな。殺せんせーを何とか出来ねえか!?) サササッ!!

 

そうサインを送ってみると岡島は何かを思いついた様子でポンと手を叩いた後、懐に手を入れると、

 

スッ 「にゅや?・・・・・(スッ)」 ちょいちょい

「な、何だ!?殺せんせーに何かを渡した途端に許可が出たぞ!?何、渡したんだ!?」

「分かんねえけど、行くぞ大賀!!」 

「おう!!」

 

そのまま俺達は牢屋にいた全員を救出して、素早くその場を後にした。

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・す、すまん。助かったぜ」

「気にすんなよ。

・・・ところで、さっきは何を渡したんだ?」

「ふっふっふ・・・俺、秘蔵の水着グラビア写真だ!!

「・・・カッコつけたつもりだろうが、普通にダサいぞ」

 

ていうか、警官があっさり買収されるなよ・・・

 

 

 

登志side

 

「ハァ、油断しちゃったなぁ」 カリカリ

 

ケイドロが始まってから30分くらい経った今、僕は牢屋で警務作業(という名のドリル)を行っていた。警戒していたのにアッサリ捕まえられるなんて、烏間先生速すぎるよ。

 

おい、タコ!!お前、今度は物なんかに釣られるなよ!!

「分かってますって・・・ぬっひょお!!何て素晴らしい乳!!」

刺身にするぞ、あほタコが!!

 

さっきから電話の先では烏間先生が岡島君の賄賂で逃がした殺せんせーを怒鳴っていた。そりゃあ普通警察が牢屋にいたら逃げられる筈ないもんなぁ。

 

(僕も岡島君みたいにエッチな写真持ってたら逃げれたのに・・・)

「どうしたの?伊勢くん」

「矢田さん」

 

そう考えていたその時、横でドリルをしていた矢田さんが声をかけてきた。そのまま僕の考えを話してみると、

 

「ちょっと任せてくれない?私も1つ思いついたんだ」

「え?あ、分かりました」

 

何をするんだ?と思っていると、矢田さんはいきなり悲痛な表情を浮かべ、

 

「・・・グス」

「にゅや?ど、どうしました?矢田さん」

「・・・実はね、殺せんせー。私の弟、重い病気で寝込んでるの。さっきケイドロやるって言ったら「絶対に勝ってね!!」って・・・捕まったなんて知っちゃったら、あの子きっとショックを・・・」

 

そう言いながら矢田さんは涙を浮かべた。そんな弟さんが・・・

 

「行け」

「(えっ)」

「本官は泥棒なんて見ていない、さっさと行け」

 

僕達に背を向ける前に一瞬見えた顔からは涙が流れていた。殺せんせー、ドラマ見過ぎじゃ・・・

 

「ありがとう・・・行こう伊勢くん、皆」

「あ、はい」

 

矢田さんに促され、僕を含めた牢屋の全員がその場を離れた。そのまま近くの木々の中に僕と矢田さんは飛び込むと、

 

「・・・ふー、上手くいってよかったぁ」

「・・・え!?まさかと思ってましたけど、本当に嘘泣きだったんですか!?」

「アハハ、殺せんせーってああいうのに弱そうだからね。効くと思ったんだ」

 

お、女の人って恐ろしいなぁ・・・彩子や華もこんな風になるのかな・・・?

 

「まあ、弟の所はそこまで嘘じゃないけどね」

「え・・・病気なんですか?」

「うーん、そこまでじゃないけど、昔から身体が弱くてね。実はE組になったのは、テスト日に熱が出て看病してたからなんだ」

「・・・優しいですね、矢田さんは」

 

いくら弟の為とはいえ、自分が損をする事が出来る人なんてそうはいないと思うな。

 

「そんな事ないよ、伊勢くんだって充分優しい「おい!!何でまた泥棒が逃げてんだ!?」・・・!!」

こっち、矢田さん!!」

 

当然聞こえてきた大声に、僕達は慌てて草むらに隠れた。そのまま覗いてみると、烏間先生が電話に怒鳴っているのが見えた。幸い僕達は気づかれてはいないらしい。

 

「聞こえますか、烏間さん!!どうして牢屋から犯人が逃げ出すんだ!?」

「それはこっちの台詞だ、無能警官!!」

 

烏間先生・・・お気の毒に。

 

 

 

 その後・・・僕達は何回か捕まったけど、賄賂を渡して大賀達が助けるか、殺せんせーが居眠り等をしている間に逃げ出すのを交互に繰り返し、制限時間は残り15分位になっていた。

 

「あのアホタコはどこだぁ!?出てこい!!」

「さっき長野県に信州蕎麦食べに行きました」

 

牢屋から逃げて行く僕達に目もくれずに、額に青筋を浮かべながら完全武装の烏間先生は声を張り上げた。何か見た事ある格好だな・・・

 

「あの2人、やっぱ噛み合ってねえな」

「性格的に合ってないんだろうね」

 

助けに来てくれた大賀の呟きに僕はそう返した。殺せんせー(いい加減)烏間先生(堅物)の塊の2人だもんなぁ。

 

「・・・それにしても、1回も捕まってねえな。あの3人は」

「それどころか、誰も見てないって言ってるね」

 

再び林の中へと入りながら杉野君や神崎さんが話していたのは、他でもない太陽の事だった。ケイドロが始まってから45分、全員が最低1度は捕まっている中、太陽、威月、倉橋さんの3人は捕まる所か、姿を見せすらしていなかった。よっぽど上手に潜伏してるのかな?

 

「でもよ、烏間先生って凄えよな。上手に隠れたつもりだってのに俺達の事、すぐに見つけてくるしよ」

「確かに・・・烏間先生には何か特別な能力があるのかも「んな訳あるか」・・・えっ?」

 

大賀にそう返している渚の言葉を呆れた様子で遮ったのは、間違いなく威月の声だった。

 

「威月!!それに太陽に倉橋さんも!!」

「まさか3人共ずっとそこに?」

「うん、たーくん達が引っ張り上げてくれたんだ~」

 

3人がいたのは、高さ10メートル以上の高さの太い枝の上だった。確かにあれ位高ければ烏間先生も簡単には気づけなかっただろうな。

 

「渚、烏間先生は恐らくお前らが残した痕跡を追ってるんだぜ」

「僕達の?」

「ああ、例えば今もお前らがくっきりと付けてきた足跡とかな」

 

後ろを振り返ってみると、確かに僕達の足跡が付いていた。これはバレて当然だなぁ・・・

 

「ここにも、もういれねえな。流石にバレちまう」

「あ、僕達のせいでゴメン・・・」

「気にすんな、もうそろそろ作戦準備を始めようとしてた所だからな」 スタッ

(作戦・・・?)

「ほら、陽菜乃」

「うん(ぼすっ)ありがとう、たーくん!!」

 

飛び降りてきた倉橋さんを受け止めた後、太陽は僕達の方へと振り返り、

 

「皆、この勝負はどうすれば勝ちだと思う?」

「え?んー・・・そりゃあ烏間先生に見つからないようにやり過ごして殺せんせーに備えるんじゃないの?」

「いや、いくら何でも殺せんせー相手じゃまともに逃げても無駄だ。1分ありゃあ、この裏山何十周するか分かんねえ」

 

言われてみれば確かに・・・

 

「この勝負に勝つ為には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が重要なんだよ」

(連携を取らせない・・・?)

「その為に俺は今まで烏間先生を観察してたんだ。これまで見てきた烏間先生の身体能力の高さや走力を考えると・・・・・大体2、300メートルって所か」

 

その時、威月がおもむろに倉橋さんの方を向き、

 

「倉橋、悪いが携帯で太陽が今から言う事を皆に伝えてくれるか?この為にお前には俺達と一緒にいてもらったんだ」

「うん、任せて!!」

「それと大賀、お前にはやってもらう事がある」

「俺?」

 

いきなり名指しで呼ばれた大賀は首をかしげた。

 

「大賀の役割はかなり重要な役だから、頼んだぜ」

「フーン・・・ま、何やんのかは知らねえけど、分かったぜ!!」

「よし、皆。今から話す作戦通りに動いてくれないか?」

 

・・・どうやら太陽には作戦があるみたいだな。一か八か、やってみるか!!

 

 

 

烏間side

 

タタタ・・・ 「・・・どういう事だ?」

 

 さっきからどうも生徒達の気配を感じ取るのが難しくなってきているのに気づき、俺はそう呟いた。

 

(先程、あのタコが「これからは簡単には捕まりませんよ」と言っていたが・・・なるほど、彼らに何か吹き込んだな)

 

木の折れた後や、足跡が極端に減っているからな。俺の索敵の仕方を教えたな。

 

だが、それにしてもさっきまでみたいに1人で行動している子が全くいなくなっていた。何故だ?

 

「(ザッ!)むっ!!」

「!! いたぞ、太陽の指示通りに!!」

「「「おう!!」」」 ババッ!!

(! なるほど・・・4方向を4人で見張り、俺を発見したら4方に散る・・・これをやられては、俺はかなり時間をかけなければならないだろう)

 

流石は恐神の教えを1番受けているだけの事はある。彼の作戦はかなり実用的な物が多い。

 

「・・・こういった作戦を生徒に自主的に思いつかせて実行させるのも奴の狙い通りという事か」

タンッ 「ちくしょー!!やられた!!」」

 

4人の最後の1人の中村さんをタッチしながら俺は独りごちた。俺と奴は教え方は違う、だからこそ別の観点から教えられるという事か。

 

(まあ、だからといって奴と組む気もないがな)

「(ガサッ) ん?」

 

そう考えていた俺の目の前に現れたのは、大賀君、木村君、片岡君、前原君、岡野君の5人だった。

 

「E組最速の5人っす、言いたい事分かりますよね?烏間先生」

「フッ・・・真剣勝負と言う訳か。いいだろう、ただし左前方の崖は危ないから入るなよ」

「「「「「はい!!」」」」」 ババッ!!

 

俺の言葉に、5人は一斉にバラバラの方向へと散っていった。

 

(流石はE組最速・・・全員かなりのスピードだな)

「だが・・・」 ぐっ・・・ドンッ!!

 

いくら一学期から訓練を続けている彼らとはいえ、中学生に遅れを取る気はない!!

 

シュバババッ 「(タンッ) うおっ!?」 

サササッ!! ビビッ!! 「うっ!?」「速っ!?」

ダダダッ!! 「(スタッ) なっ・・・」

 

追いかけて始めてから3分、大賀君以外の4人を捕まえる事に成功した。そんな俺の姿を大賀君は少し離れた木の上に立って見ていた。

 

「大賀君は遠く逃げなかったのだな」

「直線で逃げても勝てない以上、立体的に逃げるしかないでしょ。ここら辺は障害物も多いんで!!」 タンッ!!

「いい読みだ、いくぞ!!」 ドンッ!!

 

大賀君が別の木に飛び移ると同時に、俺は地面を蹴った。

 

バババッ!! スタタッ!!

「凄えな、大賀・・・烏間先生に食らいついてるよ」

「大賀君の動きは参考になるね、よく見とこっと」

「いけえ、大賀!!」

 

彼は即席で俺の動きを再現してみせた程だからか、やはり他の皆とは頭1つ抜けてるな。

 

(俺も少し、本気を出そう) ドドンッ!!

「!!」

「貰った!!」

 

木に着地しようとしてる瞬間の空中では身動きは出来ないだろう!!

 

「甘いっすよ!!」 ぐるん!!

スカッ 「何っ!?」

 

すると大賀君は着地せずに、枝をぶら下がって俺の手を躱した。

 

タッ 「くっ・・・何て機動力だ。あのタコからもかなり脅威になるだろうな」

「ハァ・・・ハァ・・・後1分だな

 

・・・? 時計を気にしてるな。制限時間までは・・・後2分か。

 

スタタタッ 「ぜぇ・・・ぜぇ・・・キツいけど負けるかあぁ!!」

「!! ここまで体力が持つのか・・・」

 

マズいな、彼1人に時間をかけ過ぎる訳には・・・

 

タタタッ 「ハァ・・・ハァ・・・ !!」 ピタッ!!

(何だ?大賀君の動きが急に止まって・・・!!なるほど・・・)

 

大賀君が止まった先には、さっき入るなと言った崖が広がっていた。

 

「・・・よく堪えたくれたな、大賀君」

「ハァ・・・ハァ・・・どんな時でも、約束だけは守りますよ。俺は」

「フッ・・・君はまだまだ成長できる。これからもビシバシ行くから覚悟しておけ」

「はい!!」

(・・・この素直さが、彼の成長速度を底上げしてくれているのかもしれないな)

 

そう思いながら、俺は彼の肩に触れた。

 

 

 

「・・・しかし、随分かかってしまったな。もう残り1分か」

 

 大賀君と4人の前に戻りながら、俺は携帯を見た。まあ、今からは奴も捕まえだす。もうほぼ勝ちは決まりだろう。

 

その時、息を切らしながら大賀君が口を開いた。

 

「ハァ・・・ハァ・・・へへ、俺達5人の勝ちっすよ、烏間先生」

「何?」

「だって烏間先生、殺せんせーの上に乗って空飛んだりしませんよね?」

「当たり前だ。そんなチャンスあったら殺してる」

 

岡野君の問いに即答した。というか、奴の協力するなんて死んでもゴメンだ。

 

すると、片岡君が笑みを浮かべながら、

 

「じゃあ、烏間先生が()()()()1()()()()()()()()()()()、流石に無理ですよね?」

「・・・!! まさか、君達は・・・」

 

しまった!!その可能性を忘れていた!!

 

 

 

太陽side

 

(今頃、烏間先生も気づいてんだろうな。もう遅いがな)

 

 プールサイドで呆然とする殺せんせーを見ながら、俺はそう考えていた。

 

プールの底には、渚、杉野、カルマ、登志の4人が武器を持って沈んでいた。訓練してきた俺達なら、1分潜る位どうってこたぁない。

 

(もし時間稼ぎが上手くいかなかったら烏間先生が戻ってきちまったが、よく持ちこたえてくれたな、大賀達)

「どうする?殺せんせー。烏間先生が戻ってこれない以上、渚達を捕まえる為には先生自らプールに入るしかない。だが、水を含んだ触手を登志がぶった斬れるのは知ってる筈だし、渚達もいる」

「そして俺達も、そんなチャンスを逃す気は当然ねえよ」

「ヌルフフフ、見事な作戦です。完敗ですねぇ」

 

銃を突きつけながらの俺や威月の言葉に、殺せんせーは楽しそうに負けを認めた。

 

 

 

「時間切れにより、泥棒側の勝利です!!」

「よっしゃあぁ!!」

「ケーキいただきぃ!!」

 

 律の言葉に全員が歓声を上げた。フゥ・・・作戦通りいってよかった。

 

「見事な作戦だ、太陽君。完全におびき出された」

「烏間先生」

 

その時、烏間先生が笑みを浮かべながら声をかけてきた。

 

「俺は何もしてませんよ。烏間先生をおびき出してくれたのは大賀達ですし、登志の戦闘力あっての作戦です」

「確かにそうだが、彼らに小隊を組ませてなるべく俺が時間がかかる逃げ方に切り替えさせたりする能力は、流石恐神の教えを受けていると言わざるをえないさ」

「あれ?実徳さんと話したんですか?」

「ああ、夏休みにな。君達のその戦闘力、その作戦立案力、指揮能力の高さはやはり貴重な存在だな」

 

うーむ、そんな真っ直ぐに褒められると少し照れるな。

 

「奴を殺すのには君達のその力が必要不可欠だ。これからも頼むぞ」

「はい!!」

 

俺の返事を聞くと、烏間先生は再び皆の元へと戻っていった。これからも頑張らねえとな!!

 

「でもふしぎ~2人共、全く逆なのに教える時は息ピッタリなんだね~」

「ヌルフフフ、当然ですよ倉橋さん。目の前に生徒がいたら育てたくなる、それが教師の務めですから」

「ふーん、でも岡島秘蔵の水着写真に買収されてるしなぁ」

「ホントに泥棒に向いてんのテメエなんじゃねーのか?」

「にゅやっ!?何を言うんですか威月君に寺坂君!!先生がそんな事する訳・・・」

 

―――冗談交じりにそう言った2人の言葉が波乱を招く事になるのは、これから数日後の事だった。




いかがだったでしょうか。

このケイドロかドロケイかの議論はかなりありそうですね(ちなみに作者は引っ越す前はドロケイで引っ越した後はケイドロで困惑しました(笑))

殺せんせーの台詞の本家を聞いた事はないですが、かなり笑いました(笑)

それでは、また次回お会いしましょう!!

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