今回は太陽の噂についてです。
椚ヶ丘中学でも危険人物との噂の太陽ですが、本当にそうなのかと倉橋が疑問に思う話です。
果たして彼は本当に危ない人物なのか?それともただの噂なのか?
それではどうぞ!!
陽菜乃side
私は帰り道を通りながら考え事をしていた。太陽君の噂についてだ。
今日の暗殺、結果的には失敗しちゃったけど、今までで一番惜しい暗殺だった。
私を含めてクラスのほぼ全員が太陽君達4人を歓迎しているはずだ。
だからこそ忘れてたんだけど、
(太陽くんは危険人物って噂なんだよね・・・)
暴力事件を何度か起こしているというのは、私が謝った時も太陽君自身が気にしてなかった事からも多分、本当なんだと思う。
でもあの時、渚君の元へと誰よりも早く駆け寄って無事を確認した時の表情や、威月君が言っていた太陽君の言葉を思い出すと、どうしてもそんな怖い人だとは思えなかった。
(どっちが本当の太陽くんなんだろう・・・)
そんな事を考えていると、ある曲がり角にたどり着き私は思わず足を止めた。
「あ、ここは・・・」
ここは太陽君と初めて出会った場所だ。この角を左に曲がれば家に帰れる、しかし私はなんとなく右に行ってみることにしてみた。
暗殺が終わった後全員プリントを再開したが、カルマ君と同時に一番乗りで終わらせた太陽君は、九澄君に買い物を頼まれていたからだ。学校から直接商店街に行くにはこの道が一番近い。
(もう一ヶ月も前の事なんだな・・・)
道を歩きながら、私はあの日の事を思い出していた。
子猫を守る為に不良達の前に出たが何も出来ずに突き飛ばされた私を受け止めてくれて、
一人で四人を倒した後私に笑いかけてくれて、
大勢に囲まれても私に指一本触れさせずに家へと帰してくれた。
(うん、やっぱりただの噂だよね)
そう思い直していると突き当たりの大きな用水路を挟んだ道に出ようとしていた。
この用水路は深さが二メートル以上あるから、絶対にこの近くで遊んではいけないと昔から言われてきた場所だった。
その道に出ようとしたまさにその瞬間、
「きゃあ!?」
文字通り横から吹っ飛んできたこの人に、私は思わず声を上げて驚いてしまった。急いで倒れているこの人に声を掛けようとして、
「えっ、この人・・・」
殴られた痕があるこの人は、確か一ヶ月前に私を突き飛ばした人だった。
「たく、あんたらも懲りないな」
聞き覚えのあるそんな声が私の耳に届き、恐る恐る飛んできた方向を向いた。
そこには10人近くが倒れており、唯一太陽君だけがポケットに手を入れながら呆れたような眼差しで立っていた。
倒れている人達は明らかに殴られて気絶しており、太陽君は傷一つなかった。
そんな異常な状況に私は思わず恐怖を感じてしまった。
(やっぱり太陽くんは・・・)
そんな風に考えていると太陽君はおもむろに横を見ると、
「大丈夫?怪我はない?」
しゃがみ込みながらそう言った。私もその方向を見てみると、小学校低学年くらいの男の子がしゃがみ込んでいた。
「うん。ありがとうお兄ちゃん!!」
あの子を助けたという事が2人の会話ですぐに分かった。自分から仕掛けた訳じゃなかった事が分かり、少しだけ安心した。
「あれ、コロがいない・・・」
「あそこにいるよ」
太陽君はそう言いながらある方向を指差した。そこには、茶色の豆柴が1人の男の近くに1匹いた。話を聞く限りあの男の子のペットだろう。
安心した顔をした男の子が太陽君の手を借りて起き上がろうとしたその時、
「てめえなめてんじゃねえぞ!!」
突然この前私と太陽達に怒鳴ってきた男が立ち上がると、豆柴を用水路の中に放り込んだ。
「!!」 ダッ!! ガシャッ!!
太陽君はそれを見た瞬間走り出し、フェンスを乗り越えると、
「とりゃあ!!」 ザバーン!!
そんな叫び声とともに、
「コロ!!お兄ちゃん!!」
「太陽くん!!」
男の子はそう叫びながらフェンスに駆け寄り、私は思わず太陽君の名前を叫んだ。
「へっ、ざまあみやがれ!!」
男はそう吐き捨てながら、私の方へと逃げようと走ってきた。
「てめえ逃げれると思ってんのか?」
ボカッ!! 「ぐあっ!?」
しかしそんな声と同時に繰り出されたパンチに男は吹っ飛んでいった。
後ろを振り返ると、そこには威月君が拳を振り抜いた状態で止まっていた。
「大丈夫か?倉橋」
「う、うん。大丈夫」
そう聞いてきた威月君に、私は何とかそう答えた。
「太陽!!大丈夫か!?」
「! そうだ威月くん、太陽くんが!!」
大賀君のそんな声に私は太陽君が飛び込んだことを思い出し、慌ててフェンスに駆け寄った。ここは深さが二メートル以上あるんだった。
「どこにいるの、太陽くん!?聞こえたら返事して!?」
しかしそんな私の声にも何も反応が無かった。飛び込んでからもうすぐ三十秒くらい経つはずだ。
「そんな・・・」
私が思わずそんな不吉な事を考えてしまったその時、
ザバッ!! 「プハァ!!」
「「太陽(くん)!!」」
「あー、死ぬかと思った・・・。」
姿を見せた太陽君に私と九澄君は同時に彼の名前を呼んだ。よく見るとその手にはさっきの子犬が抱きかかえられていた。
(良かった、無事で・・・)
私は太陽君のその姿に本当に安心できた。するといつの間にか横に歩いてきていた威月君は、
「太陽、そこに梯子がある。上がってこれるか?」
「ん、おおホントだ。大丈夫だ、いけるよ」
威月君が指差した方向を見てみると、確かに梯子があった。
太陽君がその方向に泳ぎだしたのを確認しながら、私達は近くの橋を渡って反対側の梯子の近くに着いた。
「大賀、この子を頼む」
「おお、任せろ」
梯子での途中で、太陽君はフェンスを乗り越えた九澄君に豆柴を預けてから梯子を登りきった。
そのままフェンスを乗り越えて戻ってきてからその子を受け取ると、
「濡れちゃってるけど、大丈夫だよ」
「コロ!!良かったぁ・・・」
泣きそうになっていた男の子に笑いながら手渡した。
「コロっていう名前なのか、いい名前だね」
「うん、本当にありがとうお兄ちゃん!!」
そのまましゃがみ込んで男の子と話し始めた。
(あ、あの顔は・・・)
私はそんな太陽君の顔に、私は見覚えがあった。その顔はあの時私に笑いかけてくれた時や、暗殺後の渚君の無事を確認した時の顔にそっくりだった。
そう考えていると威月君が、
「一応アイツの弁明の為に言っておくけどな、倉橋」
「えっ?」
「アイツが暴力を振るう時は、ああやって誰かがいじめられた時や、俺達「ひまわり」の誰かが馬鹿にされた時だけで、自分から喧嘩をした事は一度も無いんだよ」
「そうなんだ・・・」
「ま、だからって殴っちまうのは良くないけどな」
笑いながらそう言うと威月君は九澄君と共に太陽君の近くに歩いて行った。
(やっぱり、噂通りの人じゃ無かったんだね、太陽くん)
普通なら暴力は威月君の言ったとおり良くない事だろう。
でも全く知らない人の為に、自分の身の危険を顧みずに助けにいける太陽君は、
誰よりも優しい人なんだと思った。
いかがだったでしょうか。
太陽は弱い者いじめや、意味も無く暴力を振るったりをするような人物ではないとそう思ってくれたら幸いです。
今回で4人の暗殺はこれで終了です。次回は集会を書くつもりです。
本来ならビッチ先生ですが、書かなくても大丈夫だと思って書きません(ごめんなさい、ビッチ先生m(_ _)m)。
それではまた次回お会いしましょう!!