太陽とひまわりの仲間達との暗殺教室   作:籠野球

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皆さんどうも籠野球です。

申し訳ありません・・・色々あって完全にスランプに陥ってました・・・

ようやくスランプ脱出・・・って訳ではありませんが(笑)読んでくれる方々の為にも頑張っていきたいと思います!!

それでは、どうぞ!!


七十二時間目 体育祭の時間

有希子side

 

 磯貝君の一件で男子の皆が1つになってから1週間経った今日、本校舎のグラウンドでは体育祭が予定通り行われていた。

 

「100メートル走は、A組・B組・C組・D組がリードを許す苦しい展開となっています!!我が校のエリート、頑張れ!!」

「うーむ、相変わらずのアウェイ感」

「E組を素直に応援する気持ちは無いのかねー」

 

2位以下の他の選手達に大差をつけている木村君に対してのそんな実況に、杉野君や中村さんがそれぞれ苦笑いをしながらそう言った。私達には本当に厳しいな、この学校は。

 

「ふぉおぉぉぉ!!格好いいですよ、木村君!!もっと笑いながら走って下さい!!」 パシャパシャ!!

「・・・ここに保護者以上に熱狂的に応援してくれている人がいますけどね」

 

木村君に対して夢中でシャッターを切り続ける殺せんせーを指差しながら、伊勢君は呟いた。でも、こんなに一生懸命応援してくれる人がいてくれるのは嬉しいな。

・・・親バカじゃなくて、先生バカだけど。

 

「ヌルフフフ、この学校の体育祭は観客席が近くていいですねぇ。目立つ事なく、生徒の晴れ舞台をカメラに収める事が出来ます」

「あ、うん。目立ってないかどうかで言えば、ギリギリだけどね」

 

渚君の言う通り、さっきから結構他のクラスの生徒や保護者の人達にチラチラ見られてるからな・・・今の所は何とか熱狂的な親だと思われてるんだろうけど。

 

「でもさ~烏間先生。木村君以外、今んとこトラック競技勝ててないね。桃花ちゃんも2位だったし、訓練でそれなりに自身ついてたんだけどな~」

 

そんな中、今まさにゴールした矢田さんを見ながら、陽菜乃ちゃんが呟いた。確かに、陸上部の人達には全く勝ててないなぁ。

 

「当然だ、訓練した所で100メートルが速くなる訳ではない。山道を100メートル走るならともかく、平坦な道を走るのには、やはり筋力と技術がものを言うからな」

 

なるほど・・・訓練も完璧じゃないって事かぁ。

 

「だが、しかし、訓練はどんな時に生きてくるかは分からないからな。思いがけない所で生きてくる事もあるだろう」

「フッ!!(バクゥ!!)」

「おぉ、凄え原!!足の遅さをカバーする正確無比なパン食いだ!!」

「・・・まあ、あんな風にな」

 

別のトラックで行われていたパン食い競争で、他が苦戦するパンを一発で取って見せた原さんに岡島君が興奮した様子でそう言った。・・・烏間先生はもの凄く不本意そうだけど。

 

「でも、まだパンを咥えたままだ!!あれじゃあ、ゴール出来ねえ「(シュッ!!ゴクン!!)飲み物よ、パンは」丸飲みしやがった!?」

「フゥ・・・訓練してるからか最近どれだけ食べてもお腹が空いて、パンなんて飲み物に等しいわ」

 

悠々とゴールテープを切る原さんの後ろ姿から、貫禄が滲み出てる・・・

 

「おい、あのチビやべえぞ!!」

「えっ?」

 

その時、そんな大声が聞こえてきて思わずそっちを見てみると・・・

 

「何でかアイツ、網抜けが滅茶苦茶速えぞ!!」

「身体に凹凸が少ないからだ!!」

「・・・」 スルスル・・・

 

障害物競走の網抜けを桁違いの速度で匍匐前進をしている茅野ちゃんに、別のクラスの生徒が驚愕の表情を浮かべながらそう言っていた。茅野ちゃん、もしE組の誰かが言ってたら許してなかっただろうな・・・

 

「あのような意外性は殺し屋ならです。各自の個性という武器を棒倒しにどう生かすかは、君次第ですよ。磯貝君」

「・・・はい!!」

 

殺せんせーにそう言われ、磯貝君は緊張した面持ちでそう言った。頑張ってね・・・皆。

 

「んー・・・あ!!次、大賀が走る番だよ!!」

「!!」

 

伊勢君のそんな声で、私も100メートル走のスタート地点に見てみると、大賀君が腕を軽く伸ばしてストレッチをしていた。

 

「グー・・・グー・・・」

「ほら、威月ー。起きてよ、大賀走るよ?」

「・・・あぁ?言ったろ、俺は棒倒しまで寝てるって」

 

伊勢君に起こされて、不機嫌になりながら水守君はそう返していた。

 

「てか、何で威月寝てんの?大賀や伊勢が出るんだったらアンタ応援しそうなのに」

「興味ねえよ」

 

中村さんの問いにも、水守君はバッサリそう言い捨てた。その様子に少しだけ全員が薄情と感じていると、

 

「ああ、悪い。言葉が足らなかったな。正確に言うなら、勝ちが決まってる勝負なんぞに興味はねえ」

「へ?」

「冷静に考えてみろよ。いくら相手が陸上部の連中だからって、大賀が負けると思うか?」

「「「「・・・」」」」

 

中学生離れした身体能力を持ち、スピード勝負で殺し屋に勝ってみせた大賀君・・・あれ?確かに負けると思えない・・・

 

「納得したろ?てわけで、応援はお前らに任すわ。俺は棒倒しの為に体力温存しとく」

「・・・ま、威月はE組の要だし、いいか。

・・・頑張れよー、大賀!!」

「そだね、私達だけで大賀達は応援しよっか。

・・・1位で帰ってきなー!!」

「・・・おー、任せろ!!」

 

そう言って再び寝始めた水守君に、前原君や中村さんは苦笑いを浮かべながらも納得して大賀君に声を張り上げ、大賀君は笑顔で手を振りながらそう返してきた。

 

「有希子も見ててくれよー!!俺、頑張るからさー!!」

「!! うん、頑張って!!」

 

満面の笑顔で私にそう言ってくれた大賀君に私も笑顔で返していると、その場にいたE組の皆や保護者の人達が微笑ましい物を見る目でそんな私達を見ていた。ちょっと恥ずかしいけど、嬉しいかな。

 

「位置について・・・よーい」 パンッ!!

「な!?速・・・」

 

ピストルの音で一斉にスタートした各クラス代表の5人だったが、やはり陸上部の人達よりも大賀君の方が圧倒的に速かった。その余りの速さに、実況係の子も言葉を失う中、大賀君はそのままぶっちぎりでゴールテープへと駆け込んだ。

 

「(パァン!!)1位・・・E組。

・・・な、10秒98!?」

「速え・・・練習無しで10秒台って流石、大賀だな」

「っしゃあ!!」

 

実況係のそんな驚愕の結果発表に三村君が呟く中、私は嬉しそうにはしゃぐ大賀君に目を奪われていた。

 

(・・・スポーツには興味無いみたいだけど、やっぱりああやって楽しそうにしている大賀くんは格好いいな)

 

明るいのはいつも通りだけど、何ていうか・・・凄くいきいきとしているんだよね。

 

「ふむ・・・落ちこぼれのクラスにしては中々やるようだね」

「・・・げ、榊原」

 

すると、いきなりそんな声と中村さんの嫌そうな呟きが聞こえて振り返ると、確かに五英傑の榊原君がいた。

 

「しかし、本当に惜しい。こんな掃き溜めの中に、君の様な可憐な少女がいるなんて。どうだい、やはり僕の家に小間使いとして来ないかい?」

「は、はぁ・・・」

「神崎さんってホント男運無いね・・・」

「うん、大賀を見てるから尚更そう思う・・・」

 

そんな茅野ちゃんや渚君の呟きに榊原君は反応した。

 

「ん?・・・誰だい、大賀とは」

「・・・E組の生徒で、私がお付き合いしている人です」

「・・・なっ!?何故そんな馬鹿な事をしてるんだ!!」

「!! ・・・どういう意味ですか?」

 

無視できない言葉が聞こえてきて、思わず聞き返した私に、榊原君はさも当然といった顔で、

 

「当たり前だろう。君の様な素晴らしい女性が、わざわざ貧乏くじを引く必要なんて無い。E組なんかにいる男子に、ロクな奴はいない」

「・・・」

「何か弱味でも握られているのかい?ならば、僕が浅野君に特別に掛け合ってあげても構わな「いい加減にしてくれますか」・・・え?」

 

急に遮られた事で、榊原君は驚いた表情で私を見てきた。でも、私も我慢の限界だった。私はいくらでも悪口を言われても構わないけど、大切なE組の皆を・・・そして何よりも大賀君を侮辱されるのだけは、流石に許せない。

 

「大賀くんは、誰よりも私の事を大切に思ってくれる、決して貧乏くじなんかじゃない素晴らしい人です。それを貴方なんかに侮辱されて心外です」

「な・・・」

「大賀くんは、私の上辺だけを見ずに、弱さすらも全て受け入れてくれました。貴方みたいに、私達の上辺だけしか見ていない人に心配されても不愉快でしかありません」

 

言い返される事に慣れていないのか、榊原君は言葉を失っていた。お父さんみたいに今まで反撃された事が無いんだろうな・・・と思ったその時だった。

 

「・・・? どうかしたのか?有希子」

 

 

 

登志side

 

 神崎さんと榊原君が言い合う中、100メートル走を走り終わって僕達の陣地に戻ってきた大賀が、キョトンとした顔をしながら声をかけた。

 

「大賀くん」

「! 君が・・・」

 

神崎さんが名前を呼んだ事で、榊原君は大賀だと気づいたみたいだった。

 

「ちょっといいかな、君が彼女と付き合ってるというのは本当かい?」

「え?おう。まあ、俺には勿体ないって今でも思うけどな。アハハ・・・」

 

そんな照れ笑いを浮かべながらの大賀の即答の返しに、榊原君グッと一瞬言葉に詰まっていたがすぐに持ち直すと、

 

「さっき100メートルを走っていた辺り、君は運動が得意なのか?」

「んー・・・得意なのかは分かんないけど、体動かすのは好きだな」

「・・・なら、僕と賭けをしないか?」

「賭け?」

 

そんな事を言われ、頭に?を浮かべる大賀に畳みかける様に続けた。

 

「この後に行われる棒倒し、君達E組が負けたら君は彼女と別れる。その代わり、僕達A組が負けたら僕はもう2度と口を挟まない」

「・・・へ?」

「なっ・・・」

 

いきなりの爆弾発言に、大賀が再びキョトンとなり、僕は言葉を失った。そんな僕達の代わりに、前原君が異議を唱えた。

 

「待てよ!!何でお前にそんな事決められなきゃいけねえんだよ!?大賀と神崎が付き合おうがお前には関係ねえだろうが!!」

「これは彼と僕の問題だ。君こそ口を挟まないで欲しいね。

・・・僕は君が彼に相応しいとは思えない。僕が彼女を救ってみせる」

(・・・言っちゃ悪いけど、A組の人って実は僕達よりも頭悪いんじゃ・・・)

 

どうやら榊原君の中では、大賀が無理矢理神崎さんとお付き合いしてるっていうのは変わらないらしい。その証拠に目が真剣だもんね・・・

 

「・・・」

「どうだい?別に受けなくても構わないけど、もし君が本当に彼女の事を大切に思っているのなら受けると思うけどね」

 

得意げな顔でそう言った榊原君に、無言で考えていた大賀が口を開いた。

 

「えっと・・・悪いんだけど、それは受けられないわ」

「「「「・・・えっ!?」」」」

 

大賀なら受けると思っていたのか、僕や神崎さん以外のE組の殆どが驚きの表情を浮かべた。

 

「フッ、やはり君の覚悟はその程度という事か。彼女を守ろうという気すらないとはな」

「あ、いや・・・勿論その覚悟はあるんだけどさ・・・」

 

榊原君の挑発じみた言葉に、大賀頬をポリポリと掻くと・・・

 

 

 

「その・・・俺は彼女を賭けの対象にする事は出来ない」

「・・・えっ?」

 

さっきの榊原君位、真剣な表情で大賀は言いきった。その言葉に、榊原君やE組の皆がキョトンとなる中、

 

「こういう時、彼女を賭けて勝負ってのは良くあるけどさ・・・ホントに彼女が大切なら、そんな事出来ないんじゃないかって俺は思うんだ。彼女を自分が満足する為の道具みたいな扱いしちゃったら、それは彼氏失格なんじゃねえのかな」

(・・・大賀らしい考えだな)

「だから、俺はその賭けは受けられない。

・・・俺のこの考えが間違ってるなら負けを認めるし謝るわ、ゴメン。でも有希子の事を大切に思ってるのは嘘じゃないから」

 

そう言った後ペコリと頭を下げた大賀に、僕は心からそう思った。大賀みたいに彼女さんの為に頭を下げる方が、誰よりも大切にしてないと出来ない筈だよね。

 

「・・・・・なるほど、すまない。さっきの話は忘れてくれ」

 

言葉を失っていた榊原君はそう大賀に言った後、神崎さんに向き直り、

 

「さっきはすまなかった。もう2度とこんな事は言わない。

・・・良い彼氏だ。E組にもこんな男がいるんだな」

 

そう頭を下げながら言った後、榊原君は去っていった。

 

「・・・え?あれ?・・・いいのかな?俺負けたのに・・・(ギュウ)・・・?どうしたんだ?有希子」

「ううん、何も。ただ、こうしたくなったの」

(うわぁ、神崎さんすっごく嬉しそうな顔)

 

不思議そうに呟く大賀の腕を抱えた神崎さんは満面の笑みを浮かべていた。まあ、彼氏が自分の事をどれだけ想ってくれてるか知ったら嬉しくもなるよね。

 

「くそ・・・大賀の野郎見せつけやがって・・・」

「いや・・・あれは大賀にしか無理だろ。岡島では不可能だ」

「・・・言い返せねえ」

(大賀ほど優しい人なんてそうはいないからなぁ「借り物競走に出場される生徒は準備エリアにお願いします!!」・・・あ、僕の番だ)

 

そんなアナウンスを聞こえてきて、僕は準備エリアへと向かった。えっと・・・確かE組から出場するのは僕と・・・

 

「ん、伊勢か」

「イトナ君」

 

そっか、イトナ君だっけ。

 

「頑張ろうね、イトナ君」

「あぁ」

「「・・・」」

 

うーん・・・イトナ君って結構無口だから会話が弾まないな・・・ちょっとだけ気まずい。

 

「・・・お前は」

「え?」

「確か飛天御剣流という流派の使い手だったか?俺の触手を斬った剣術は」

「う、まあね」

 

思わずギクリとなってしまった。いくら当時は敵だったとはいえ、今となってはクラスメイトを斬っちゃったんだもんな・・・

 

「ご、ゴメン。そういえば僕ちゃんと謝ってなかったね」

「? 別に気にしてはいない。あの時はあのタコを殺す事しか考えてなかったしな。それに、俺もお前を弾き飛ばしたからな。お互い様だ」

「そっか、ありがとう。

・・・でも、だからって負けないよ」

「あぁ、勿論だ。手を抜くなよ」

「次のレースの方、準備して下さい!!」

 

イトナ君がフッと笑いながらそう言ったその時、スタートの係の人に呼ばれた。よーし、頑張るぞ!!

 

「位置について・・・よーい」 パンッ!!

 

お馴染みの号令と共に鳴ったピストルの音を合図に僕達や本校舎の人達は一斉に走り始めた。借り物競走だけは参加者全員が一斉にスタートするんだよね。

 

「んー・・・これだ!!(パシィ)えーっと、何だろう・・・」

 

1番最初にお題の紙が落ちている場所に着いた僕は、迷いつつも1枚を手に取った。

 

「(パラッ)・・・え?随分ざっくりとしたお題だなぁ・・・こんなの係の人のさじ加減じゃあ・・・」

 

とはいえ、イトナ君や他の人はすぐに行っちゃったし、僕も急がないと。うーん・・・

 

「・・・やっぱりあの人かな」

 

 

 

桃花side

 

「・・・あ、イトナ君がこっちに向かってくるよ」

 

 渚君がイトナ君を指差しながらそう言った。借り物競走だし、誰かに借りにきたのかな。

 

「おいビッチ。お前に用があるから来てくれ」

「あら、私を選ぶなんてアンタも結構見る目あるわね~」

「いいから来い、さっさと行くぞ」

「あん、強引なんだからぁ」

 

語尾にハートマークが付きそうな位の感じで、ビッチ先生はイトナ君に引っ張られていった。ビッチ先生が必要なんてどんなお題だったんだろう?

 

「・・・ん?伊勢もこっちに来るぜ」

(ホントだ。伊勢君、1番最初にお題見たのに何か戸惑ってたもんな)

 

前原君が言った通り、伊勢君は私達の元へとやってきた。そのまま伊勢君はキョロキョロと辺りを見渡し、私と目が合った。

 

「すみません、矢田さん。僕と一緒に来てくれませんか?」

「え、私?」

「はい、矢田さんが1番似合いそうなんです」

 

似合いそう?

 

「とにかく来て下さい!!ちょっと遅れちゃったけど、まだ1位になれるかも分かんないんで!!」

「(ぐいっ)うわっ!!」

 

伊勢君は座っていた私を片手で立たせて、そのまま走り始めた。

 

タタタッ (祭りの時も思ったけど、私よりも背が低いのに伊勢くんって結構力あるんだな・・・)

 

私の手を掴んだまま走る伊勢君の横顔をチラリと見ながら私はそう思った。やっぱり伊勢君も男の子なんだな・・・

 

「ハァ・・・ハァ・・・何とか間に合った」

 

ふぅ・・・イトナ君以外はまだ来てないみたい。

 

「・・・あ!?ご、ごめんなさい!!僕、矢田さんの腕掴んだまま走っちゃって・・・」

「アハハ、いいよ。気にしないで「ちょっとどういう事よ!!」・・・へ?」

 

と、その時ゴールの借り物を確認する場所でビッチ先生が騒いでいた。確認係の生徒も困ってるし、どうしたんだろ?

 

「えっと・・・」

「何よこのお題!!"賞味期限が近い物"で何で私なのよ!!」

「女盛りなんてすぐに終わる。お前はもう終わりに向かう一方だ」

「何ですって!?」

(そりゃあ、ビッチ先生も怒るよ・・・イトナ君)

「伊勢くん、まさか私も酷いお題じゃないよね・・・?」

「そんな酷いお題じゃ無いとは思ってるんですけど・・・すいません、お願いします」

「あぁ、はい。

・・・えっと、その人でいいんですね?ではコレを」

 

ギャーギャーイトナ君に噛みつくビッチ先生を横目に、伊勢君はお題の書かれた紙を差し出した。係の人はそんな伊勢君が差し出したお題が書かれた紙と私を見比べると、何かを手渡してきた。赤と黒のチェックのそれは・・・

 

「リボン?え、伊勢くん、お題って何だったの?」

「あ、コレです」

「・・・"リボンが似合いそうな人"?」

「はい。矢田さんみたいな髪が長くて綺麗な人なら絶対似合うかなって思ったんです。

・・・迷惑でしたか?」

「あ、ううん、そんな事ないよ。ちょっと待っててね」

(褒めてくれたのは素直に嬉しいし)

 

不安そうな伊勢君に笑い返しながら、私はヘアゴムを取って変わりにリボンを結びつけた。んー・・・結構難しい・・・

 

(・・・よし、出来た)

「・・・どうかな?変じゃない?」

「・・・・・」

「伊勢くん?」

「あ!!えっと・・・その・・・凄く綺麗で、思わず見とれちゃいました・・・」

「そ、そっか・・・ありがとう」

 

うぅ・・・伊勢君って正直に言ってくれるから嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいな。顔赤くなってるかも・・・

 

「コホン・・・えっと、どうですか?」

「はい、1位ゴールおめでとうございます!!」

「やった!!ありがとうございます、矢田さん」

「うん、良かったね。あ、コレ返します」

 

解こうとした私を、係の人は止めた。

 

「あ、それは貴方が貰って構いません。捨てるなり使うなり、お好きにどうぞ」

「へ?そうなんですか・・・じゃあ、貰っておきます」

「全く・・・お前のせいで伊勢に負けた。それでも大人か」

「うっさいわね!!アンタこそ、もう少し年上の女を大事にしなさいよ!!」

 

・・・まだやってるよ、あの2人・・・何か徐々に注目され始めちゃってるし。

 

「いい加減落ち着いて下さいよ、2人共。何の為にイトナ君をこんな目立たない競技に参加させてると思ってるんですか・・・」

「そうだよ、男子の皆はこれからが本ば「うおおおっ!!」 !!」

 

 

本番なんですから、そう言おうとした私の言葉は空気が震える程の歓声にかき消された。確かあっちでは、綱引きが行われてた筈・・・

 

「!! 実際に見てみると、本当に大きいですね・・・」

「ホントに中学生なの・・・?」

「つ、強いぞA組!!偶然、研修留学に来ていた外国の友人達の独壇場だぁ!!」

 

そこには、明らかにA組の生徒達よりも大きい外国人が4人立っていた―――

 

 

 

登志side

 

『・・・』『・・・』

「コイツらどこの国の奴らだ?最初の奴は英語だけど、他の3人は何語かも分かんねえ・・・」

 

 盗聴器付きのラジコンから聞こえてきたのは浅野君が何やら外国語でやりとりをしている音だった。そんな前原君の疑問に、威月が答えた。

 

「フランス語に韓国語に、コレはポルトガル語・・・ブラジル辺りだな。全員軽い挨拶程度の会話だよ」

「サンキュー、威月。

・・・にしても、4ヶ国語操って外人の助っ人呼べる辺り、相変わらずスペック化け物だな、浅野は」

 

太陽の言う通りだ・・・威月も通訳は出来るけど、外国人の知り合いなんていないだろうし。

 

・・・年齢を誤魔化せばまだ呼べるけど、それ位のルールは守るさ

「ケッ、よく言うぜ。アメフトやバスケのエースに、レスリングや格闘技の選手呼ぶ辺り分かりやすいな」

 

浅野君のそんな言葉に、威月が毒づいた。まず助っ人を、しかも運動神経抜群で身体も日本人よりも大きい外国人を呼んだ時点で何か企んでるよね・・・

 

「さて、皆。僕はこの棒倒し、勝つのが目的じゃない。助っ人を入れれば倍近くの人数、棒を倒すのは何時でも出来るからね。なら何故、僕はこの勝負を選んだか・・・僕はね、()()を機にE組の皆に反省してほしいんだ」

(反省・・・?)

これだけ注意しているにも関わらず、未だに校則違反を繰り返す者がまだいる。とはいえ、いくら素行不良な彼らでも見捨てるのは流石に気の毒だ。だから棒倒しを通してしっかり反省してもらおうと思っている。勿論、棒倒しのルールに則って正々堂々とね。それに、君達の期末テストの借りを返しておきたいという気持ちも分からなくはないからね

「ふん、相変わらず口が上手え野郎だ」

「清々しい位、分かりやすいな。つまり"中間テストに影響ある位に俺達を合法的に痛めつける"それが奴の狙いか」

 

とはいえ、磯貝君の退学がかかっている以上、受けないって選択肢は僕達にはない・・・

 

「「「「・・・」」」」

「そんな不安そうな顔する必要はねえよ、お前ら」

「そーそ、敵さんの狙いが分かったってのは有利だよ」

「威月やカルマの言う通りだ。俺らを潰す事が目的のエリート共の鼻っ柱へし折ってやる」

 

 

 

(太陽は自信満々だったけど、本当に大丈夫なのかな・・・?いや、確かに僕も負ける気は無いけどさ)

「・・・」

「大丈夫?磯貝君」

 

 かなり不安そうだな・・・大丈夫かな?

 

「あぁ・・・今更だけどさ、俺じゃ浅野には遠く及ばない。そんな俺なんかの為に皆が傷付いたらって思ったら・・・な」

「磯貝君・・・」

 

マズいな・・・女子の皆もかなり心配そうになってるし、何て声をかければ・・・

 

「(ポコン)いてっ!?」

「今更、何気後れしてんだよ。磯貝」

「たーくん、華ちゃん!!」

 

その時、華を抱っこしながら、手刀を頭に軽く振り下ろした太陽が笑いながらそう言った。

 

「こんにちは、ひなのおねえちゃん!!」

「遅くなってごめんなさい、華ちゃんの準備に手間取って太陽君にも迷惑をかけちゃって」

「気にしないでいいっすよ、岬さん。俺が迎えに行くって言ったんですから。棒倒しの間、華を任していいんだよな?女子の皆」

「うん、任して!!たーくん」

 

太陽は個人競技参加しないから、見てみたいって言った華を迎えに行く係になってくれていたのだ。この学校、結構複雑だからなぁ。

 

「磯貝、お前が自分に自信もてねえのかもしれねえが、俺は浅野がお前だったら手伝ってなんかない。俺達は、あくまでお前だから協力するんだ」

「太陽・・・」

「その通りですよ、磯貝君」

 

すると、殺せんせーが磯貝君に鉢巻きを結びつけながら続けた。

 

「確かに一言で言えば"傑物"の彼に勝つのは容易では無いです。ですが、皆を率いて戦う力、その1点において、君は浅野君を遙かに凌駕しています。ピンチに助けてくれる仲間がいる、先生はそんな君の担任な事が何よりも誇らしいです」

「殺せんせー・・・」

「すー・・・すー・・・「起きろ、威月。出番だ」・・・ようやくか、待ちわびたぜ」

 

太陽に声に反応して、威月は獰猛な笑みを浮かべながら立ち上がった。そんなやる気満々の僕達に、磯貝君は1度だけ深呼吸すると、

 

「よっし、皆!!いつも通り、殺る気で行くぞ!!」

「「「「おう!!」」」」

 

いつも通りの明るい表情を浮かべながら号令をかけたのだった。

 

 

 

太陽side

 

「只今より、E組対A組の棒倒しを始めます!!ルールは相手側の棒を先に倒した方の勝利となります!!また、相手を掴むのはいいが、殴る蹴るは原則禁止!!武器の使用も当然禁止です!!例外として、棒を支える者が足で追い払うのや、腕や肩を使ってのタックルはOKとします!!」

(まぁ、ここら辺は予想通りだな)

「なお、チームの区別をハッキリする為、A組は帽子と長袖を着用します!!」

(・・・どう見ても帽子じゃ無くてヘッドギアだな)

 

 ま、今更そんな程度じゃ驚かねえよ。実況のそんなアナウンスにそう思っていると、陣地から可愛らしい応援が聞こえてきた。

 

「おにーちゃん!!みんなー!!がんばれー!!」

「・・・さっきから気になってんだが、誰だあのガキ?」

「華だ。口のきき方に気をつけろ、寺坂。次、俺ら「ひまわり」の妹をガキ呼ばわりしたら許さねえから」

「お、おう」

 

これからだってのに、怪我人増やすなよ威月・・・

 

(とはいえ、華の前で格好悪いとこ見せる訳にはいかねえな)

「とりあえず作戦通りで良いんだよな?磯貝」

「おう、頼む!!」

 

リーダーの磯貝の指示で、俺達はある形を組み始めた。全員で棒を囲むそれは・・・

 

「な、何だE組・・・攻める者が1人もいないぞ!?」

―――E組初期陣形―――完全防御形態!!

(さあて、始めるか!!)

 

そんな驚いた様子の実況を聞きながら、俺は浅野をジッと見据えた。




いかがだったでしょうか。

大賀ならこう言うんだろうなって想像はずっとありました(笑)

あ、それとリボンの流れは単純な作者の好みです(笑)現実にはあんまり見ないですけど、髪の毛リボンで止めてる女性の方って好きなんですよね(笑)

次回はいよいよ棒倒しです。果たして4人を含めたE組はどんな戦いを見せるのでしょうか・・・

それでは、また次回お会いしましょう!!
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