氷菓 ~もう一人の探偵~   作:たけぽん

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氷菓映画化記念ということで(おせーよ)オリジナル要素を交えながら書かせていただきます。ちなみに、作者は「今さら翼といわれても」まで読んでいます。それでは、少しでも楽しんでいただけると幸いです。


氷菓
1. 伝統ある古典部への道のり


 高校生活と言えばバラ色、バラ色といえば高校生活、何て具合に高校生活とバラ色は深いつながりがある。西暦2000年現在じゃあまだだろうけど、いずれはそういうテーマの小説や漫画なんかができるんじゃないだろうか。

 とはいっても、全ての高校生がバラ色を望んでるかというと、それは一概にそうだとは言えない。世の中には勉強やスポーツや色恋沙汰にも関心のない高校生だって結構いるはずだ。だからと言ってそういう人にバラ色を押し付けるのは真にバラ色とは言えない。バラ色がバラ色であるためには他者ではなく自分がそれを謳歌すべきだろう。それに、バラ色って定義も人それぞれだろうし。でも、やっぱり高校生活って言うとバラ色を期待しちゃうよね。まあ、楽しければ何でもいいけどさ。

 

 放課後の教室で、僕、夏目龍之介はそんな思いを巡らせながら机の上の書類にペンを走らせる。この書類が何なのかというと、神山高校古典部の入部届けだ。この春、僕の入学した神山高校は部活動が盛んで、運動部は全国大会に出場したりしてるし、僕はまだ知らないけど、文化祭ではクイズ研やお料理研が結構凄い催しをやるようだ。まあ、古典部は部員いないらしいから、文化祭とは関係ないんだろうけど。何故僕がそんな部活に入ろうとしているかというと、今朝方面白い話が飛び込んできたわけで、『楽しくないことならやらない、楽しいことならなんでもござれ』をモットーとする、つまるところ『娯楽至上主義』の僕はそれに即飛び着いたわけだ。

 

ところで、入部届けってどうやって受理してもらえば良いんだろうか。部員はいないのだから顧問の先生かな、それとも『あの人』の言っていた、『訪れるであろう先客』とやらに渡せばいいんだろうか。その先客が部員であるかも分からないし、やっぱり顧問の先生で良いのかな。そう思い教室を出て、職員室へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ファイト!ファイト!ファイト!……」

 

 開けられたままの窓から、何か運動部のような掛け声が聞こえてくる。

いいねえ、バラ色だねえ。いや、実際彼らがバラ色かは知らないけど、僕にはそう見えた。見えただけだからそうだと断定するのはバラ色じゃないね。反省反省。実のところ、僕も運動部に入部しようかななんて思ったりもしていた。運動は嫌いじゃないし、そういうので汗をかいてバラ色!なんてのも良いかなくらいには考えていた。でも、心からそれを楽しいと思えるかというと、運動というものは『娯楽至上主義』にはどうにも向いていない気がするんだよね。厳しい練習とか、涙を流しながら勝利を噛みしめたりするのは、達成感はあっても、僕の望む『楽しさ』は無い。

 

「失礼しまーす」

 

職員室に入り、古典部の顧問を探すがその姿は無い。近くにいた先生に聞くと、どうやら今は手が離せないらしい。クレーム対応かなんかかな?分からないけど、教師って仕事は僕にはあんまり向いてなさそうだね。クレーム対応なんて何も楽しくない。まあ、そんなことをいったら楽しい仕事なんて数えるほどしかないんだろうけどね。今は多少夢見たっていいじゃない。なにせこれからバラ色の高校生活を送るんだから!

とはいっても、僕自身なにがバラ色でなにがそうでないかなんてのは全く分からない。そもそも僕が目指しているのがバラ色なのかも分からない。なにせ経験が無いからね。自分の中に無いものに対しては言葉以上に感じるものは無い。僕はとりあえずバラ色を目標設定してるけど、それは絶対でも無い。灰色のほうが楽しいならそっちに飛びつくさ。

顧問がいないならとりあえず部室に行ってみよう。見たところ、古典部の部室のカギは無い。おそらくは先客が持っていったんだろう。先客ってどんな人なんだろう。まあ、行けば分かるか。

  古典部の部室は、特別棟の四階の端っこらしい。神山高校でも最辺境にあるね。最辺境だからといって、そこまでの道のりを浪費だなんて思っているようでは娯楽至上主義は名乗れない。そこまでの道のりを楽しんでこそでしょうよ。例えば階段の掲示版なんかには噂に聞く「秘密倶楽部」の勧誘メモが隠されているかもしれないし、今すれ違った大きな脚立を持った用務員は、何か悪の組織の幹部かもしれない。まあ、大半が「そんな訳無い」で片付くわけだけど、そういった空想をしながら回りをみるのは結構楽しいもんだ。僕の16年が物語っているよ。

 さて、特別棟の端っこに来たわけだけど、この教室が古典部の部室なんだろうか。まあ、とりあえず失礼しますかね。横開きのドアに手をかけると、堅い手ごたえが返ってきた。鍵がかかってるのか。でも鍵は先客が持っていった訳だし、そうすると先客の仕業だろうか。仕方ない、扉をノックし、声をかける。

 

「すみませーん。開けてもらっても良いですかー?」

 

すると、中でガタン、と音がした。先客が驚いて古典部の備品を壊してしまったんだろうか。そうなると、厄介だね。いや、でも反省文なんて書くのもそれはそれで楽しいかもしれない。いかに先生をうならせる名文を書くか考えたりしてね。それからすぐ、鍵が開けられ、扉が開く。

 

「すまない、少し寝てしまっていたようだ。まあ、はいりたまえ」

 

そう言ったのは整った顔立ちで、髪は黒く腰まで伸びており、セーラー服が良く似合う……けど、とても小柄で、小学生と見間違うくらいの女の子だった。あくびをしており、目には隈が出来ている。先客だろうか?と思ったが、『あの人』の言う先客は、言葉通りなら今日初めて部室を訪れるはずだ。そんな人物が鍵を内側から掛け、しかも爆睡なんてするはずもない。それにしても小さいな。

 

「今、私に対して失礼なことを考えていなかったか?」

「いえいえ、けしてそんなことは」

「そうか、ならいい」

 

許されたらしい。

 

「して、わが読書研究会に何の用かね」

「……はい?」

 

この子は何と言っただろうか、読書研究会?たしか僕は古典部に来たんじゃなかったっけ?でも、この子が言うにはここは読書研究会らしい。『あの人』が間違ったとは考えにくい。ならば、これはどういうわけだろう。

 

「君、見ない顔だが、一年生かね?」

「あ、はい。一年D組の夏目龍之介です」

「ひょっとして、入部希望者かい?それはそれは!いやあよく来てくれた!」

 

どうやらこの子は勘違いをしているようだ。それもそうだ、見る限り他に人はいないようだし、最辺境に部室があるということはこの読書研究会は廃部寸前くらいの状況なのだろう。奥を見ると、本が散らばっている。さっきの音の正体はこれか。それはそうと、誤解を解かなければ。

 

「あの、古典部はどこでしょうか」

 

その言葉に彼女はひどく落胆したようだ。こちらが誤解されるようなことをしてしまったので何とも申し訳ない。

 

「……古典部ならあっちの端だ。多分君は逆端に来てしまったのだろう」

 

なるほど、端っこ違いか。向こう側は地学講義室と書いてあったので部室では無いと思いこんでいたわけだ。まあでも、これで古典部の場所が分かった。さっそく行こう。

 

「……うむ?」

 

彼女は急に首をひねりだした。

 

「どうかしたんですか?」

「いや、良く考えたら、私は鍵をかけた覚えは無いのだが……どういうことだ?」

 

ん?鍵をかけた覚えはない?でも鍵はかかっていた。単に忘れただけだろうか?どういうことだろうか。

 

「記憶違いでは?」

「いや、部室に入った後、鍵を机の上におき、それから触っていない。それは確かだ」

 

つまり、彼女は部室で寝ていたら、いつの間にか外側から鍵をかけられ、閉じ込められたというわけか。まあ、内側からでも鍵があれば開閉出来るみたいだけど。つまり、これはちょっとした事件だ。

 

「まあ、いいか、夏目君といったかな、古典部に用があるのだろう?私はいいから行きたまえ」

「いや、待ってくださいよ」

「どうした?」

 

彼女は僕の顔を覗き込む。多分、今の僕は凄くニヤついて、いや違うな、そう。満面の笑みを浮かべていることだろう。

 

「これ、凄く楽しそうじゃないですか!」

「は?」

「いや、だってですよ?閉ざされた鍵、閉じ込められた女子生徒、そこに一人の来客……これはもう謎を解けってことでしょう!」

 

僕はものすごい勢いでまくしたてる。これだ、これだよ!小説にあるようなとまではいかないけど、こんなミステリーはなかなか起こるもんじゃない。これを見過ごしてバラ色になれるものか!

 

「ふむ、確かに。私もミステリーを読むが、実際にそう言われるとなかなか気を引かれるな」

 

読書研究会だけあって、いろんな本を読んでいるようだ。今度お勧めを聞いてみようかな。

 

「で、何か分かるのか、夏目探偵?」

「いえ、まだ何も。そういえばお名前を聞いていませんでしたね」

 

捜査の基本は、周辺の事物に対しての認識から成る。ってのは今勝手に作ったんだけど、流石に名前くらい知らないとこれからの会話がやりにくい。

 

「おっとすまなかったな。私は平塚愛梨。2年生だ。」

「それで平塚先輩。先輩はいつ部室へ?」

「5分くらい前だったかな。机で本を読んでいたら寝落ちして、君のノックで目が覚めた」

 

寝落ち早すぎでしょ、面白いなこの人。でもそれを起こしてしまったのは申し訳ない。それにしても、平塚先輩の言葉通りなら、やはり内側からは鍵をかけてはいない。だが鍵は閉まっていた。ううむ。情報が少ないかな。

 

「今日、何か変わったことは?」

「そういえば、来たとき鍵がかかっていなかったな。多分、昨日顧問の先生が最後に部室をでたらしいから、閉め忘れたんだろう」

 

いや、鍵が開けっ放しって、泥棒でも入ったらそれこそ事件だ。全く、顧問の先生もものぐさだなあ。それに、先輩は貸し出し用の鍵を持っている。ということは先生の閉め忘れで無ければ何者かがマスターキーで開けたことになる。誰が?何のために?

 

「おっと、少し暗くなってきたな。すまないが、そこの電気のスイッチを入れてくれないか」

 

言われた通りスイッチを入れる。なんだいやけに明るいな。蛍光灯があたらしいのかと思ったが、よく見ると単に蛍光灯がきれいに掃除されているだけだ。ホコリひとつない。平塚先輩が掃除したんだろうか。そんなに細かいところまで掃除する人には見えないけど。

……ん?待てよ?

 

「夏目君。何か分かったね」

 

そんなに顔に出ていたとは。僕はポーカーフェイスってのがまるで出来てないんだな。

 

「下の階に行きましょう。きっと、再現されてますよ」

 

部室を出て、階段を下りると、そこには男子生徒二人、女子生徒が一人いた。

 

「あら、こんにちは。あなたたちも再現を見に?」

「千反田さん。それはないよ、聞き耳立ててた訳じゃないんだし彼らは僕たちの事情に関係してるとは思えない」

「そう……ですよね。すみません。なんだかそんな気がして」

 

千反田と呼ばれた女子生徒には見覚えがある。確か名の知れた家の跡取りだとかなんとか。男子生徒の方は、一人は知らないがもう一人は同じクラスの福部里志君……だったかな。

 

「いえ、実は密室の謎を解きに来たんですよ」

 

すると千反田さんは目を輝かせて僕の方を見てきた。

 

「密室ですか?ちょうど私たちも密室について謎を解きに来たんです!なんで知っているんですか!?」

「い、いや。そっちの事は知らないですけど、こちらの平塚先輩が読書研究会の部室で閉じ込められていたんですよ」

 

あれだね、この千反田さんって人はどうにもパーソナルスペースが狭い。こんな人にはあったことが無かった。

 

「あれ、平塚さん?」

 

千反田さんの興味はあっという間に僕から平塚先輩に移ったらしい。忙しい人だなあ。

 

「ああ、えるではないか。久しぶりだな。うちの学校だったのか」

 

えるという言葉に一瞬理解が追いつかなかったけど、どうやら千反田さんの名前らしい。

 

「知り合いか?」

もう一人の男子生徒が千反田さんに尋ねる。

 

「おいおいホータロー、まさか平塚家のことも知らないのかい?」

 

福部君は肩をすくめ首を振り、処置なしという感じだ。ずいぶんとオーバーなアクションだなあ。同じクラスだけど、今まで福部君に注意を向けたことは無い。ただ、彼が総務委員と何かの部活を掛け持ちしているってことは誰かから聞いた。……誰だろう?まあいいや。

 

「また、なんとかの名家なのか?」

 

ホータローと呼ばれた男子生徒は少しめんどくさそうに言葉を返す。見た感じ福部君と彼は親しい間柄のようだ。

 

「平塚家は千反田家と同じ地域から農業では無く福祉系の施設の運営をするようになった、

立派なお家だよ。さっき説明した病院長入須家からの信頼も厚く、これからの日本の福祉をしょってたつ家なのさ!」

 

それは知らなかった。凄いな福部君。まるでデータベースみたいだ。これは勉強も得意なタイプなのかな。

 

「まあ、私の家の話は置いておいて、君たちも密室がどうとかいっていたな」

「君たちもってことは、平塚先輩たちも密室に?」

 

福部君の問いかけに平塚先輩は今までの事を説明する。

 

「私だけじゃなく、平塚さんも密室に……?折木さん、私、気になります!」

 

千反田さんはホータロー君に詰め寄る。彼の名字が折木なのだろう。

 

「「それは、もうすぐ分かる(分かりますよ)」」

 

ホータロー君と僕の声が偶然にも重なる。それに驚き、僕らは顔を見合わせる。

どういうことだ?いや、どういうことも何も、ホータロー君も僕同様、密室の謎を解いたってことだろう。しかも、先にこの階にいるってことは僕より早く。……ん?待てよ、『折木ホータロー』だって?

ははあ、なるほどね。どうやら彼が先客のようだ。

 

そして、解は示された。僕たちの目の前で、大きな脚立を持った用無委員がある教室から出てくると、ポケットから鍵を出し、フロアの教室のいくつかに次々と鍵をかけ始めたのだ。つまり、彼のしたことは、教室の鍵を開け、中で作業をする。それが終わると次の教室で作業。それを繰り返し、最後に鍵を閉めて回る。平塚先輩と千反田さんは悪いタイミングで入りこんでしまい、閉じ込められたのだ。読書研究会の部室の蛍光灯がきれいになっていたのは、用務員が気をきかせてくれたのだろう。

 

「凄いです折木さん!それと……」

「ああ、ごめんなさい。自己紹介が遅れました。僕は夏目龍之介って言います」

 

すると、福部君が驚いた顔をする。

 

「ああ!そうか、君が夏目君か!うちのクラス名簿になんともおしゃれな名前があるなと思って気になってたんだよ!」

 

どうやら福部君も僕が同じクラスであることを知っていたようだ。それにしても、僕の名前はおしゃれかな?夏目漱石と芥川龍之介をくっつけただけなんだけど。

 

「える、どうやら彼は古典部の入部希望者らしいぞ」

「そうなんですか!よろしくお願いしますね、夏目さん」

 

千反田さんは目を輝かせる。こんな女の子とこれから部活をしていくなんて、なんだかバラ色っぽいね。でも、ホータロー君はどうにも不思議そうな表情だ

 

「なあ、夏目。お前はどうして古典部なんかに?」

 

参ったな、ホータロー君以外の人に二人きりで聞かれたら答えても良いんだけど、今は答えられそうに無いな。かといって何も言わないのも失礼だよね。あ、そうだ、あるじゃないか!ここに来た理由がもう一つ!

 

「楽しくないことならやらない、楽しいことならなんでもござれ」

「は?」

「僕のモットーなんだよね。僕は自称『娯楽至上主義者』なんだ。廃部寸前の部活を助けるなんてこんな楽しいことは無いよ」

 

ホータロー君は唖然としている。千反田さんも一瞬固まった。意外にもそれにすぐ反応したのは福部君だった。

 

「いやあ、何とも面白いね、『娯楽至上主義』とは!ホータローの『省エネ主義』とは似ても似つかない!」

「失礼な奴だな」

 

福部君がいうにはホータロー君は『やらなくても良いことならやらない、やらなければいけないことなら手短に』をモットーとする『省エネ主義』らしい。高校一年生にしては、なかなか面白いモットーだなあ。僕も人の事言えないけど

 

「あ、そうだ、夏目さん、折木さん、入部届けはもう出しましたか?」

「まあ……一応」

 

ホータロー君はどんよりしている。まあ、『省エネ』じゃないよね、部活動なんて。僕はまだ提出していなかったので、千反田さんに渡しておいた。多分、この流れだと部長は千反田さんになるだろうしね。

 

「福部さんはどうですか?古典部」

「いいね。今日は面白かったし。うん、入るよ」

 

福部君も入部決定。

 

「あ、そうだ。平塚先輩」

 

さっきから蚊帳の外だった平塚先輩に声を掛ける。

 

「ん?どうかしたのかね」

「読書研究会は、先輩に入部届けを出せばいいんですか?」

 

実際、読書研究会もなかなか楽しそうだ。楽しいことならなんでもござれさ。

平塚先輩は僕の言葉に顔をほころばせる。

 

「そうか!はいってくれるか我が研究会に!歓迎するぞ、夏目君!」

 

 

 

帰り道、千反田さんと平塚先輩は自転車で別方向。ホータロー君は本屋へ寄っていくと言ったので、僕は福部君と二人で歩いていた。

 

「ところで夏目君」

「なんだい福部君」

「君、何か隠してるよね」

 

おっと。能ある鷹は爪を隠すってやつかは知らないけど、福部君にはばれてしまったようだ。まあ、僕はポーカーフェイスが苦手だからね。

 

「なんで分かったんだい?」

「それは、君が古典部を知っていたからさ。僕はこれでもデータベースを自称してるけど、古典部の事を知ったのはつい最近なんだ。なにせ古典部を知っていたのは一部の上級生だけだった。夏目君もデータベース志望なら話は違うけど、『娯楽至上主義』の君がそんな些細な情報収集をするとは思えない」

 

確かに、僕は上級生を捕まえて部活情報を聞いたりはしない。それは僕にとって楽しくないからだ。ホータロー君に福部君。全く面白い人たちと同じ部活になったもんだ。明日からの毎日が楽しみだ。

 

「それで?僕の推論は当たってたかい?」

「そりゃあもう素晴らしいくらいにね。探偵向きだね」

「単なるデータの応用さ、探偵役ならホータローや君の方が向いてるよ。それに、データベースは結論を出せないんだ」

 

福部君なりのモットーか。ますます面白いね。

 

「実は、今朝、こんな手紙が届いてね」

 

そういって僕は鞄から便箋を取り出す。

福部君なら内容を見れば察しがつくだろう。

 

「どれどれ……。ははあ、なるほど」

 

どうやら察してくれたようだ。

 

「なるほどね、これはあの場では隠さざるを得ない」

「でしょ?あの人に逆らうと大変だからね」

 

まあ、その分あの人には恩義も感じてるけど。

 

「これで、僕も真実を知る者になったわけだ」

 

真実を知る者とは、なかなかに良いセンスだ。流石福部君。

 

「さて、福部君。僕はここを右に曲がったら家なんだ」

「そうか、じゃあ今日はここで。」

 

そう言って道を曲がろうとすると後ろから福部君の声がした。

 

「そうだ、真実を知る者同士、もっと親しくいやっていこうよ、龍之介!」

「了解したよ、里志」

 

そうして、僕たちは帰宅した。

 

 

 

 

 

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