陳寿著「呉書・徐盛伝」外伝補記―徐盛さんが頑張るそうですよ?―   作:八意 暮葉

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さすがに・・・分が悪かったか・・・

酸棗の城壁に倒れて動かない兵を見てぼやく。

―兵少なく、食尽く―

これは秦が滅び、前漢が成立する前。俗に言う楚漢戦争の最後の部分の話だ。

西楚の覇王―項羽は前漢の高祖―劉邦と戦い、和睦し、垓下の地に追い詰められた。

その時の楚軍を表したのが先程の一節だ。

董卓軍は勇猛だった。しかし、私の軍は最後まで戦ってくれた。

彼らに敬意を表し、私は董卓軍の前に表れた。

「華雄、張遼!よく聞け!私の首が欲しければくれてやる。だが、貴様ら率いる雑兵に討たれるほど橋瑁の首は易くないぞ!」

私―いや、俺は剣を抜き、首の大動脈を思いきり切り裂いた。

俺の意識はそこで途切れた。



出陣前―紅禽は何を思う―

伝令が来てから雪華に部隊を任せ、俺は単身長沙城に戻ってきた。

 

「開門!開門!徐盛文嚮、祖大栄殿の御呼びにより参上仕った!」

 

用件を告げるも門番は快く門を開いてくれた。開いたのを確認し、俺は馬を走らせた。

 

俺は祖茂の旦那に頼まれてガキを待っていた。

 

本来ならアイツは今日は休みで部隊の調練に行っていたそうだが・・・何でも急用が入ったらしく呼び戻したらしい。

 

しかし・・・あのときの旦那の顔は青ざめていたから何か良くないことでもあったのだろう。

 

馬の蹄の音が聞こえる。どうやら戻ってきたらしい。

 

「波才殿!徐盛、ただいま到着致しました!」

 

「それくらい見たら分かる。俺はガキじゃないんだ。」

 

「それは申し訳ありませんでした。」

 

「ほら、行くぞガキ。旦那が待ってる。」

 

徐盛は律儀に後を着けてきている。そのまま、庁舎に入り、廊下をいくつか曲がり目的の部屋の扉の前にたどり着いた。

 

「旦那、徐盛を連れてきたぞ?」

 

「ああ……角か。ありがとう下がって良いぞ。」

 

そう言われて俺はもと来た道を引き返す。後ろでガキがお礼を言っていた気がするが気にしない。

 

俺はそのまま歩き続け街へ出て……遂には城壁の上に来た。

 

俺は・・・どうして戦いを始めたのだろうか・・・

 

―蒼天已死 黄夫将立 歳在庚子 天下大吉―

 

清流派に憧れ前漢を変えようと燃えた青年時代。俺は太賢良師様―張角様―にこの頃出会った。

 

今は亡きあの人は太平道を説き、この国を貧しいものの居ない国に変えようとした。

 

俺はそのための矛となり腐敗した漢の軍を凪ぎ払っていった。

 

漢の軍を倒していけばいつか、洛陽の皇帝も気付くはずだと思っていた。

 

太平道による黄巾の乱を収める為に話し合いをしてくれるはずだ。

 

そう・・・信じていた。しかし、皇帝が下したのは賊軍―太平道―を討てと言う非情な勅命だった。

 

俺は泣いた。そして、己の内に眠る獣の赴くままに。

 

でも、それは間違いだった。獣の赴くままに大斧を奮えば獣はより大きくなり歯止めが効かなくなっていった。

 

そんな時、俺は孫堅文台に捕らえられた。

 

初めてだった。獣となっていた俺を負かしたのは。

 

そして、祖茂の旦那と会った。孫堅様に捕らわれた後、俺は旦那の陣に預けられた。

 

旦那は俺の縄を躊躇なく切った。今でも不思議に思える。

 

自由の身となった俺は逃げなかった。本能が逃げることを許さなかったからだ。

 

そして、旦那は地面に正座した俺を見て今でも忘れられない言葉を言った。

 

「波才。お前の武を我らが天下を買い戻すために使ってくれ。」

 

あのときは驚いた。俺の武を天下を買い戻すために使えなんて思いもよらなかったからだ。

 

でも、今は呉軍が帰る家になってしまった。後悔はしていない。

 

でも、俺は考えてしまう。天下を買い戻すために自身の武は奮えているだろうかと。

 

 

・・・嗚呼、戦乱の嵐が吹き荒れようとしている。俺は、答えを見つけられるだろうか。

 

 

 

 

 




こんばんは、八雲 暮葉です。

今回もやはり書くのに悩みました。曹操陣営を書くか、いつも通り呉軍を書くかで。

結局、いつもの話になりました。

今回の話は明日で70年経つことになる学徒出陣に影響されています。

生きて帰ることはないと家族に宛てて書いた自由主義者の大学生の手紙。

手紙を書いた人は悩み、苦しんだと思います。

だから、私たちは今ある平和の重みを真の意味で理解する必要があるのかもしれません。

次回はまた投稿が遅れるかもしれませんがどうかゆっくり待っていてください。

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