こんなにも読んでいただけて、感謝しかありません!
あまりのことにビクビクしてます。
話ですが、巻いていくことにしました!
何とかなりそうです。
そのせいと言っては何ですが、今回前半と後半で何年か飛びます。すみません…
分かるようには書いてあるはずです。
今日は、新入隊員入隊の日だ。それ自体は毎年恒例のことなのだが、今年のを、昴は少し楽しみにしていた―――別に例年がそうでないということもないが。
今年は、いつだったか藍染隊長が褒めていた阿散井恋次、吉良イヅル、雛森桃が揃って五番隊に入隊してくるのだ。特に、吉良イヅルは今年の首席卒業者だったらしい。どんな手を使って全員手に入れたのか…隊長の手際の良さというか他隊に対する容赦の無さは脱帽ものである。
兎も角、今日は彼らと話がしてみたくて入隊に際する担当官の役を買って出た。いつもは副隊長の門脇と三席の森田がやっているのだが、今年とうとう門脇が父親の跡を継ぐとかで除隊することになり、バタバタしていたところを代わったのだ。必要以上に感謝されたが、こちらにも打算があったことは黙っておいた。彼から他の隊員に‘‘四席はあの三人に期待している‘‘みたいなことを漏らされても困るし。三人が。
「――――――とまあ、基本的なことはこれぐらいかな。大切なことは先ほど配ったしおりに書いてある。ここで生活していく内に、少しずつ覚えていってほしい」
「「「「「はい!」」」」」
隣で森田が一通り話を終えたらしい。基本事項過ぎて呆っとしてしまったが、問題はないだろう。
「何か、質問のある人はいるかな?…では、そこの君。名前を名乗ってから発言してくれるかな」
「はい!阿散井恋次です!俺はいつか、目標の人を超える…隊長になりたいのですが、鍛錬はどのようにしていけばいいでしょうか!お二人はどうやってその強さを手に入れたんですか」
へェ、彼が阿散井恋次…見たところ相当鍛えているようだ。ここからではよく見えないが、あの居住まいは、ただ学生生活を送ってきた者のものではない。言うだけのことはやる奴だろう、と昴が感心していると、周りの新入隊員の殆どがいきなり笑い始めた。森田までも、意味深に、というより少し呆れたように微笑んでいた。
「隊長に?お前が?なれるわけねえだろ!」
「どんだけ頑張っても上位席官になれるのだってほんの一握りなんだぜ?」
そういう意味のことを皆が口々に言っていた。
恋次は、顔を赤らめ、手を小刻みに震わせていた。顔が赤いのはきっと、羞恥心ではなく怒りからだろう。それが、周りからの侮辱へ向けられているのか、今は何もできない自分の無力に対して向けられているのか、もしかすると両方か…
「いつ阿散井恋次以外に発言を許した?人の夢を笑うことしかできない
(スッキリした)
正直、昴はこう思った。人をビビらせるのは趣味じゃないが、こういうのは別だ。胸を張って強くなりたいと叫ぶ彼を罵る権利など誰も持ってはいない。
お通夜みたいに静かになった部屋に、自分の声が通るのが分かる。
「私は四席だ。だから、阿散井君、君の知りたい隊長になるために必要な鍛錬なるものを私は君に提示することができない。だが、一つだけ言えるのは、君がそれを諦めた瞬間から、それが君の手に届くことは無い、ということだ。挑み続ける、というのは口で言うのは簡単だが、実践できるものはそうはいない。サボりたくなるだろう。理不尽なことも言われるだろう。だが、私は今の実力をそうやって手に入れた。そして私は、こういうのは少し勝手だが、君はその努力を出来る者だと思っているよ。何か細かい鍛錬法が聞きたいなら、いつでも私のところに来るといい。私で良ければ相談に乗ろう。あァ、勿論、他の席官も君を無下にしたりしないだろうから、聞きやすい者に聞けばいいんだが…これで君の質問の答えにさせてもらってもいいかな?」
そう聞くと、恋次はその派手な赤髪をこちらに勢いよく倒しながら、
「はい‼ありがとうございますっ」
と、大きな声で言った。後で聞いた話によると、その声は三つ先の部屋にまで届いていたそうだ。
ついでに言うと、これ以降、阿散井たちの同期は‘‘橘四席には絶対服従‘‘という暗黙のルールが敷かれ、そのせいで来年からの新入隊員指導も押し付…任されることになった。
食堂で一人座って食事を摂っていると、前の席に誰かが座った。彼女はさっき、恋次の隣にいたうちの一人だ。あの時、彼を笑わなかった二人の内の一人。ということは、彼女はもしかして…
「先程は、阿散井君のためにあそこまで言っていただいてありがとうございました、橘四席!私、新入隊員の雛森桃っていいます」
「あァ、別に大したことじゃないよ。ああいう空気が私は嫌いでね。まあ、私が作ったお通夜みたいな空気も好きじゃないんだけどさ」
そういうことを言っていると、後の二人が合流した。
さっきはありがとうございました!と恋次が大声で言おうとしたのを制して、席に座らせる。吉良イヅルも、雛森桃と同様に昴に感謝した。
「良い仲間を持ったね、阿散井。こんなに君の意思を尊重してくれる友はそうそうできるものじゃない。大事にしろよ!」
「勿論です!橘四席!」
「あ~、昴でいいよ。堅苦しいのは性に合わないんだ。後の二人もそれでいい」
ひらひらと片手を振りながら昴が言うと、阿散井たちはかなり戸惑っていた。
「いい…んですか?新入隊員がそんな…」
「いーのいーの。風紀が乱れるとかなんとか森田が言い出したら止めてもらわないといけなくなるけど、呼び方なんて互いに了承済みなら第三者に口を出される謂れは無いよ」
「じゃ、昴さんで。俺のことも恋次でいいっス」
「応。それじゃあ遠慮なく」
桃とイヅルも、お互い下の名前で呼ぶことになった。
しかし、あの後すぐに昴に話しかけてきた辺り、三人とも中々肝が据わっているようだ。彼らはきっと、良い死神になる。
「ところで恋次、さっき言ってた目標って誰だ?隊長になりたいって言うからにはそいつも隊長なんだろ?」
「ええ、まあ…笑いません?」
「笑うと思うか?」
昴が片眉を上げて恋次に訊くと、恋次は思い直したように姿勢を正した。
「いえ。―――――六番隊隊長、朽木白哉です」
「ほお、それはまた大きく出たもんだ!あの堅物を、ねェ。いいじゃないか!やれやれ!朽木隊長の吠え
「良いんですか?昴さん。そんな言い方して」
「私がこういう奴だっていうのはそこそこ有名な話だし、彼はこんな言葉を一々気にするような男じゃァない。大して問題じゃないよ」
昴が笑いながら言ったのを聞いても、恋次はまだ不安だったようだ。
「そうなんスか…?」
「そ。しかしまた、何でだ?因縁でもあるのか?」
「想い人を取られちゃったんですよ」
イヅルが横から入ってきた。
「バッ!お前、吉良!アイツはそういうんじゃねえよ!」
「ほほう!想い人とな?」
にやけながら続きを促す。イヅルもまた、恋次の目を気にすることもなく言葉を継いだ。
「ええ。阿散井君は彼女と――ルキア女史と幼馴染なんですよ」
「成程。それで想い人を取られた、か。自分の持つ力の何もかもが敵わなかった、と」
「……俺は、ルキアと対等に話せるだけの力が欲しい。強くなりたいんです!」
「良いじゃないか!益々気に入った!だが、並大抵の努力じゃそこまでは昇れない。やれるね?」
「当然!」
本当に良い目をしている。どれだけかかってもやり抜いて見せろよ、恋次。
「イヅルや桃にも目標はいるのか?」
「僕は、三番隊の市丸隊長です」
「私はここの藍染隊長です!」
藍染隊長を目標にする桃の気持ちは分かる。でも本音を言えば、イヅルのようにギンを目標にしている者がいるというのは驚きだった。彼もまた強い死神だが、人望があるようには見えなかったからだ。だが、彼らは一度その二人に命を救われているのだ。当然と言えば当然かもしれない。
「今はまだまだ遠いな~。だが、私も全力でサポートしよう!」
「「「ハイっ!」」」
ゴフッ…!
手に、着物に、赤い液体が跳ねていく。
(落ち着け、どうせ今度もすぐに治まる…ッ…!)
ゴホッゴホッ…
まだ、大丈夫だ―――――
彼の時間は人間のソレとは違う。
まだ、間に合う―――――
彼にとってそれは、幸福なのか不幸なのか。それは、他でもない彼ですらも知らない―――
「うおおりゃああっ!」
「甘い」
カァン!
恋次の渾身の一撃が、昴に軽く払われた。その一瞬の隙を突き、桃とイヅルが背後から飛び上がり、上から木刀を振り下ろした。
(((…取った!)))
と三人が思った瞬間、
「え?」
昴は恋次の胸倉を掴むと
「ええぇっ⁉」
力任せに後ろに―――木刀を振り下ろしている最中の桃とイヅルの方に
「何だとおおおぉ⁉」
…投げた。
恋次は投げ飛ばされた勢いで体が横向きになっている。桃とイヅルが木刀を止めようとするも空しく、恋次は
「痛ってぇ~!てか、あんなん有りっスか、昴さん⁉」
よほど痛かったのだろう。ちょっと涙目になりながら恋次が言った。思いっきり恋次を叩いてしまった二人は申し訳なさそうにしている。
「当たり前だろ?投げ技ってのは白打なんだから」
「そういう意味じゃねえっスよ…あ~あ、折角今度こそ一本取れるって思ったんすけどね」
「そうですよ!絶対避けられないって思ったら、まさかあんな…」
「ね~?絶対取ったと思ったのに」
愚痴を言う三人に、甘いな~、と首を振る。
「その気の緩みで、折角消してた気配が駄々洩れ。恋次も、無意識のうちに後ろから来てた二人を見てただろ?そういうことがこっちに伝わってる時点で、三人だろうが四人だろうが、万に一つも勝ちはない」
「……そんなバレバレでした?」
「ああ」
「まあ、明日から隊は離れるわけだが、向こうで師の様な存在を見つけるといい。私より、あっちの空気の方が君の相に合ってるだろう」
「どっスかね」
入隊から丁度六年経った今日で恋次は五番隊ではなく十一番隊になる。彼は剣術のセンスとパワーに恵まれているから、あそこでさらに自分らしい強さを見つけていくだろう。
そんな恋次を見ながら、イヅルはため息を吐いた。
「阿散井君はいいよね、護廷隊中最強と言われる十一番隊に所属できて…僕なんて、期限付きとはいえ後方支援の四番隊に移動なんだよ?」
「イヅル、確かに四番隊は後方支援だが、戦いがある以上はあそこが最も大切な隊であることを忘れるなよ?あそこがあるからこそ、我々はギリギリまで戦える。そこでしか学べないことは多大にあるはずだ。ふてくされてその機会を
「…!はい!」
嫌だと思っていたことでも、他人に諭されれば素直に受け入れられる――それはイヅルの長所だが、短所でもある。素直過ぎるのだ。昴からすると、それが彼の不安の種だった。
(もうちょっと我を出しても良いのになァ…)
自己主張が激しすぎるのも困りものだが。
「阿散井君も吉良君もいなくなっちゃうなんて、寂しくなるよ…」
「とっ、隣の隊舎なんだし、僕は顔を出すから!」
あ、今我が出た。意外と心配は無いのかもしれない。
恋次と目が合ったので、お互いにクスリと笑ってイヅルにエールを送った。
恋次とイヅルを送り出した後、残った桃から紹介したい人がいると言われ、昴と桃は十番隊までやってきた。
「失礼します!五番隊の雛森です。冬獅郎君いますか?」
「おお!モモちゃん、いらっしゃ~い!冬獅郎なら、今書類整理で書庫だ。まあ、後ちょっとで帰ってくると思うぞ」
出迎えてくれたのは十番隊隊長、志波一心だった。普段昴は副隊長の松本乱菊としか面識が無かったので、今回初めて彼の顔を見た。短く切りそろえた髪とはっきりした目鼻立ちが、好青年という印象を与えている。
「そうなんですか。わかりました。待ってみます」
「この部屋で待ってていいぞ!ところでモモちゃん、後ろにいる美女はどちらさん?」
「私は五番隊第四席、橘昴です。初めまして、志波隊長」
昴が礼をすると、彼は片手を軽く上げて応えた。
「おお!初めまして!いつも日下の尻拭いやってる子か!」
「どんな認識ですか。別にいいですけど。ところで、さっき隊長が仰ってた冬獅郎って、もしかして日番谷冬獅郎ですか?」
「そうだぞ!十番隊のホープだ!」
日番谷冬獅郎―――彼もまた、朽木ルキアと同様に入隊時から騒がれていた人物だ。幼いながらも霊術院を一年で卒業し、入隊と同時に十番隊第三席へ据えられた。相当な実力と才能に恵まれているのだろう。
ある意味、ルキアとは対極に注目を集めていた。
「桃、君、‘‘冬獅郎君‘‘って呼んでたが、彼とは一体どういう関係なんだ?」
「おさ――――」
そこまで桃が言ったところで、急に扉が開いた。
「雛森っ!お前なぁ、そう何度も遊びに来るんじゃねぇ‼」
「あっ、冬獅郎君!」
「日番谷三席だっ!」
銀色の髪に緑色の瞳、幼い顔立ち、これは―――
「かわいいっ!」
昴は飛びついていた。
「なあっ⁉誰だよアンタ!は な れ ろォ~~‼」
「桃っ、これが冬獅郎か?」
「ふふっ!そうです。私、冬獅郎君とは幼馴染なんです。おばあちゃんのところで一緒に育ったんですよ」
「そうなのか!かわいいな~!人形みたいだ!」
「おいっ、雛森っ!見てないでコイツ剥がすの手伝ってくれ!てかマジで誰なんだよ⁉」
ふう、と一息ついた冬獅郎は、やっと離れた昴をギロリと睨んで言った。
「それで、こいつが今の雛森の上司の橘って言うんだな?」
「そうだよ!冬獅郎君と昴さんなら馬が合うかもって思ってたら、案の定だったね!」
「どこがだ⁉そいつの第一印象最悪だぞ⁉」
「声が大きいぞ、冬獅郎。静かに振舞えないのか?」
茶菓子で出された冬獅郎の甘納豆を食べながら昴が言うと、冬獅郎は青筋を浮かべながら更に大きな声を出した。
「余計なお世話だ!後、俺は日番谷
「私は五番隊だぞ?君は別に上司じゃない。隊長格になったら敬語も使うが。それに、私は君より年長者だぞ?そこのところを踏まえず発言するなんて、君は考え無しで小さい奴だねェ」
昴の最後の発言にビクリと冬獅郎が反応した。
「小さい言うな!お前マジでいつかボコボコにしてやるから、覚悟しとけよ⁉」
「はっはっはァ!楽しみにしてるよ」
「本当に仲良くなって良かったね!」
「だから、どこがだあぁぁ!!!!」
彼の声が誰かの胸に響くことは無かったという。
戦闘シーンを見るのは好きですが、想像するのは苦手です。
文章力以前の問題です。
そんな作者が、よりにもよってBLEACHの二次創作をしているというのは凄いことだなあ…
こんなポンコツ作者ですが、今回もお付き合いいただきありがとうございました!